今回は8月電撃文庫・GA文庫・カドカワBOOKS・DREノベルス・SQEXノベルの新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫続刊6点、GA文庫新作2点、カドカワBOOKS続刊1点、DREノベルス続刊1点、新作1点、SQEXノベルが新作1点の12点になります。気になる作品があったらこの機会に読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
クリムヒルトとブリュンヒルド (電撃文庫)
王国に仇なした神竜が、「竜殺しの女王」に葬られて百年。歴代女王の献身によって繁栄を享受していた王国の暗部が明らかにされるシリーズ第三部。歴代女王と同じ神の力の「蝕み」に倒れ苦しむ姉ブリュンヒルドの想いも背負い、王国を護る決意を胸に戴冠の日を迎えた五代目女王の娘クリムヒルトが知らされる王国最大の闇。王国を繁栄させる王の役割とは一体何なのか。あり方を巡って対立する初代女王から使える老臣ウォレンと姉妹たちという構図で、ブリュンヒルドと彼女を支えるアニマやベルンシュタインたちの奮闘、そして女王となることを姉に心配されたクリムヒルトの成長と覚悟を感じた一方で、過去の呪縛を断ち切ることで直面した皮肉な結末に、統治することの難しさを痛感させられました。
勇者症候群2 (電撃文庫)
秋葉原の《女神》との戦いから二ヶ月。リハビリや訓練にあたる「カローン」のもとへ、監視局からの出向という形で新女性隊員タカナシ・ハルが送り込まれる第二弾。上層部からの監視であることは明白なハルの経歴と態度に、かつての自分の姿を重ねて仲間として手を差し伸べる決意をするカグヤ。一方で全てを救いたいと奔走する彼女に突きつけられた、勇者になりかけていた少年からの明確な拒絶。戦えないのに前線に残り続けるカグヤに反発を覚えていたハルが、それでも何もかもを諦めないカグヤの熱い想いに触れて、少しずつ変わってゆく展開はなかなか良かったですけど、依然としてカローンを巡る厳しい状況が続きそうな今後の展開が気になるところではあります。
クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所2 ~ダークエルフ先輩の寿退社とスキャンダル~ (電撃文庫)
クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所2 ~ダークエルフ先輩の寿退社とスキャンダル~
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五月雨 きょうすけ/猫屋敷 ぷしお KADOKAWA 2023年08月10日
新技術『写真』が誕生し、新しいアイディアに挑戦するミイス市民。一方アーニャは先輩のエメラダの寿退社が迫り、担当引き継ぎに追われる第二弾。悪魔族で天使のようなリリスと天使族で悪魔的なリリスの取り替え騒動。ダメ人間製造人狼女子とマザコン気味ウザギ男子の嫁姑問題、そして写真を使ったブライダル雑誌出版を思いついたアーニャ。しかしそこからのゴシップ誌騒動で、幸せだったはずの人の過去が暴かれてゆく急展開には愕然としましたが、それでもスキャンダルには耳を貸さずに自分が感じたこと、見てきたものを信じてくれる人がいて、こういう時にこそ活躍する彼の存在には救われる思いでした。
命短し恋せよ男女2 (電撃文庫)
奇蹟的に退院した4人。美澄による「龍くんの許嫁になった」宣言から急転直下、龍之介の懇願で家訓による同居を婚約者の美澄だけでなく、なし崩し的に好位置とほのかも便乗して高校生活が始まる第2弾。1週間に3つのドッキリが襲いかかるという予告を受けた好位置。入学式でフォローしてくれた好位置に、ほのかは恋人のフリを本物にすべく告白のタイミングをうかがって、何だかんだで自分のことを気にかけてくれている好位置に、筋金入りに素直じゃない元カノの美澄も少しずつ変わって行くんですよね。この構図を見ていると、龍之介は…?と思わずにいられませんでしたが、ここで彼の元婚約者も登場して、立ち位置が見えてきたところで、ここから物語をどう動かしてゆくのか続刊に期待ということで。
魔法科高校の劣等生 夜の帳に闇は閃く (電撃文庫)
大国に対抗する実力を示したことで世界から恐れられる存在となった達也。現状の世界体制の維持を願いその命を狙う組織に、黒羽姉弟とその部下たちが立ち向かうスピンオフ。魔法大学に入学した黒羽亜夜子と文弥が、達也のことを狙う海外マフィアの影を感じ取り、彼らを守るべく暗闘する黒羽姉弟。実力はあってもその美少年っぷりをヒロインたちにからかわれる文弥、以前と比べると心境の変化も伺えた亜夜子の黒羽姉弟とあのチームナッツたちも絡めて対処する構図で、魔王に挑む無謀さだったり、消去法で考えればそこに行き着くよなという納得の展開でしたが、それぞれの成長や変化も感じられて面白く読めたので、ここからの物語の広がりに期待してます。
男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 7 (電撃文庫)
七菜 なな/Parum KADOKAWA 2023年08月10日
“you”へ復帰した凛音が、的確なサポートでアクセ販売会を大成功に導く様子を目の当たりにした日葵。悠宇の一番の理解者であり続けるために今度は“you”を抜けることを決める第七弾。二人の間に大きなわだかまりを残した文化祭の初日。またもや思いつきで悠宇の恋人に専念することを告げた日葵のイチャラブ攻勢。一方、凛音の家でケーキ屋のバイトをしながら試行錯誤を続ける悠宇。凛音が登場して恋愛感情を意識してからずっと続いている、あれだけ懲りずに何度も繰り返される場当たり的な迷走は、しっかりと向き合わなければいつかどこかでこうなるのは必然だったのでは…と思ってしまう結末でしたけど、想像以上に深刻な状況ですね、これは…ここから立て直せるんでしょうか。
【第15回GA文庫大賞<大賞>】
透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。(GA文庫)
透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。
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志馬なにがし/raemz SBクリエイティブ 2023年08月10日頃
内気な空野かけるが大学で出会った周りから浮くほど美人でよく笑い、自分と真逆で明るい女性・冬月小春。目が見えくても真っ直ぐな彼女のありようにいつの間にか惹かれてゆく青春小説。最初はどうすればいいのか戸惑い、それでも気がつくと目で追っていて、相手のことを考えてしまうがゆえになかなかあと一歩が踏み出せない恋。急展開から諦めたくない想いと厳しい現実の葛藤があって、念願だった花火を絡めた儚くてかけがえのない思い出を心に刻み、それぞれの近況が綴られてゆく思いもしなかったその結末から、この物語の本質はここにあったのかと改めて思い知らされました。
S級冒険者が歩む道 ~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~ (GA文庫)
さとう/ひたきゆう SBクリエイティブ 2023年08月10日頃
洗礼で詳細不明な『武器マスター』という能力を得たハイセ。幼馴染サーシャと冒険者になるものの、その能力を上手く使いこなせず、戦力になれなくてパーティーから追放されてしまう異世界ファンタジー。罠にハメられ地獄を見て異世界の武器を喚び出す能力に気づき、二度と裏切られないよう数々の魔物を単独で撃破しながら、ソロで異例のS級冒険者となったハイセ。道中で出会った少女プレセアもいい感じ存在感ありましたけど、それ以上に真逆のアプローチからS級冒険者になったサーシャとは誤解があったもののお互い意識せずにはいられない関係で、相手に対する想いという意味ではまだまだ自覚に乏しい一方、ライバルとして刺激しあえる存在となりそうな二人を軸とした今後の展開が楽しみです。
サイレント・ウィッチ VI 沈黙の魔女の隠しごと (カドカワBOOKS)
サイレント・ウィッチ VI 沈黙の魔女の隠しごと(6)
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依空 まつり/藤実 なんな KADOKAWA 2023年08月10日頃
呪竜騒動へのクロックフォード公爵の関与を疑うモニカ。しかしその確証は得られず、呪いの後遺症である左手の痛みと、第二王子への疑念を抱えたまま新学期を迎える第六弾。フェリクスが左手を負傷した学園関係者を探し始める一方、なぜかそれぞれ別の形でモニカを意識する三人の編入者がやってくる、彼女にとっては悪夢のような展開。さらには七賢人の在り方を揺るがす一大事まで発生してつい笑ってしまいたが、モニカを大切に思ってくれる人は確実に増えているのに、巻き込まれ体質は相変わらず健在で、様々な思惑が絡み合う中、今後に向けて着々と布石が打たれているのが感じられる今後の展開が楽しみです。
月花の少女アスラ2 ~極悪非道の傭兵、転生して最強の傭兵団を作る~ (DREノベルス)
月花の少女アスラ2 ~極悪非道の傭兵、転生して最強の傭兵団を作る~
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葉月 双/水溜鳥 ドリコム 2023年08月09日頃
アーニアでの仕事を終えて、今度は英雄エルナの依頼で大森林未開の地の調査へと赴くことになった一行。混迷する事態に皮肉な運命が待ち受けるダークファンタジー第二弾。大森林未開の地の調査依頼での激闘。死んだはずの伝説の英雄ジャンヌとの再会と、思ってもみなかった副団長ルミア離脱。明らかになるルミアの過去と事情と、拉致されたアスラ救出に向かう団員たち。英雄殺しを疑われても平然として、なぜかヤバい相手には妙に執着されるアスラも突き抜けていますが、優先順位がハッキリしていて迷わない団員たちの判断基準もすっかり彼女に染まっていますね。ここまでやりたいようにやるのを見ていると、これから何が起きてもおかしくないですが、やはり彼女との激突は不可避なんでしょうか…。
ルチルクォーツの戴冠 -王の誕生- (DREノベルス)
小国ハーゼンヴェリアでしがない写本屋の息子だったスレイン。母を亡くしたばかりの彼が、王族たちの急逝により実は自身が王の隠し子だと知らされ、突如王位継承を迫られる成り上がりファンタジー。最初は事態の急変についていけず戸惑いながら、覚悟を決めて知識も経験も足りないことを自覚し、副官モニカや変わらぬ忠誠を誓ってくれる者たちの支えもあって、持ち前の聡明さとひたむきな努力で周囲に認められつつあったスレイン。そんな彼が直面することになるガレド大帝国からの突然の宣戦布告。小国らしいスケール感が妙にリアルでしたが、それゆえに侮られて難しい選択を迫られる中、それでも諦めずに妙案で陥った窮地を打開することで自らの資質を示し、周囲にも改めて認められてゆくその結末はお見事でした。
華麗なる悪女になりたいわ! ~愛され転生少女は、楽しい二度目の人生を送ります~ (SQEXノベル)
華麗なる悪女になりたいわ! ~愛され転生少女は、楽しい二度目の人生を送ります~
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葉月秋水/転 スクウェア・エニックス 2023年08月07日頃
魔法国の貴族に転生した少女ミーティア。生活魔法しか使えないことが判明した彼女は父から虐げられ、十歳の幼さで危険な辺境へと追放される転生ファンタジー。いつしか『最高にかっこいい悪女になって、自由で楽しい人生を送ること』という夢を抱くようになったミーティアが、辛いときも傍にいてくれた侍女シエルや有能なワケあり執事ヴィンセントに支えられ、幽閉中も努力を怠らず、たまたま厨二的発想が上手くハマってしまったことで動き出す彼女の人生。母性からいろいろ目覚めてしまうシエルのヤバさには笑ってしまいましたが、これまで家族や周囲が酷すぎたせいで領民達からの好感度が急上昇、悪徳貴族に目をつけられてもやり返して、理想の悪女目指して邁進する彼女がとても素敵な物語でした。