読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

「このライトノベルがすごい2020」に投票しました

今年もやってきました「このライトノベルがすごい2020」。

【文庫】参考用作品リスト
http://www.uranus.dti.ne.jp/~t-myst/konorano2020list_bunko.htm
【単行本・ノベルズ】参考用作品リスト
http://www.uranus.dti.ne.jp/~t-myst/konorano2020list_novels.htm

今年は文庫・単行本の区別はつけずに10作品まで回答する形式に変更。

締切は9月23日(月)17:59まで

【参考】 

 

今回のこのラノの対象作品も読んでいる作品をカウントしましたが、読んでいるのは文庫は641シリーズのうち212シリーズでした(単行本はお察しくださいw)。その中から自分は以下の10作品を投票しました。毎回期間中に発売された新作でセレクトしていますが、どれも自信をもっておススメできる作品です。みなさんも自分のこれだと思う作品をぜひ投票してみてください。

 

1.Unnamed Memory  (電撃の新文芸)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

 

幼い頃に受けた『子孫を残せない呪い』を解呪するため、強国ファルサスの王太子・オスカーが試練を乗り越えたものに望みのものを与える魔女・ティナーシャの塔に挑むファンタジー。解呪が容易でなく呪いに負けない女であればいい、という状況で目の前に好物件がいたことに気づき求婚するオスカー(苦笑)わりとシリアスな展開ですが繰り返される二人のやりとりが微笑ましくて、感化されつつも容易には頷きそうもない孤高の魔女・ティナーシャが、どんどん強くなってゆく諦めが悪そうなオスカー相手にどこまで頑張れるのか今後に期待のシリーズです。9月に3巻目が刊行予定。

2.七つの魔剣が支配する (電撃文庫)

名門キンバリー魔法学校に入学したオリバーが運命的な出会いを果たしたサムライ少女・ナナオ。魔法生物のパレードから始まるトラブルの連続に巻き込まれつつ出会った仲間たちと乗り越えてゆく学園ファンタジー。器用に魔法を応用しながら使いこなすオリバーと剣に突出した力を持つナナオを中心に、それぞれの想いを抱えながら入学した仲間たちと力を合わせ、危機的状況の連続を乗り越えて絆を育んでゆく展開がなかなか良かったからこそ、深い因縁を感じさせるエピローグが今後の波乱を予感させて、ここからどうなるのか楽しみな新シリーズですね。現在3巻まで刊行。

3.あの日、神様に願ったことは (電撃文庫)

あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

 

一年に一度、願いが叶う宿星市に住む風祭叶羽が、十七歳の誕生日に出会った先輩・逢見燈華。願いを叶えるために星の幸魂の試練を課された燈華と、姉を喪い傷心を抱える叶羽の優しくて少し痛い奇跡の青春小説。病床にあった姉との悔いの残る別れから、写真を撮ることを止めてしまった叶羽が、人知れず試練を抱えていた燈華と出会い、振り回されながらも惹かれていく展開で、登場人物たちの不器用で甘酸っぱい想い、そして絶望を救おうと奔走する真摯で一途な想いがもたらした奇跡はとても素晴らしかったです。続巻も気になる期待の新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

4.継母の連れ子が元カノだった  (角川スニーカー文庫)

中学生の時に恋人となり些細なことですれ違い、卒業を機に別れた伊理戸水斗と綾井結女。そんな二人が高校入学を機に再婚した親の再婚相手の連れ子として同居する青春ラブコメディ。思ってもみなかった形での最悪の再会と些細なことで衝突する二人。終わったはずなのにふとした拍子に思い出す黒歴史に赤面し、素直になれないけれど何だかんだ言いながらお互いの存在を気にかけていたり再評価したり。恋愛ROM専やぐいぐい介入してくる友人たちに振り回されつつ、再び少しずつ育まれてゆく二人の関係がどう変わってゆくのか続編がとても楽しみです。現在2巻まで刊行。

5.クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫

クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫)

クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫)

 

第13回小学館ライトノベル大賞<ガガガ賞&審査員特別賞>
異世界の魔人召喚に失敗したクラスメイトの美少女・藤原千影。不可抗力で彼女を使い魔にしてしまった落ちこぼれ魔術師・芦屋想太の主従関係を描く魔法学園ラブコメ。千影と融合した皇女で想太に執着する強力な異世界の魔人ソフィア。不本意な同居生活を始めた二人のツンデレ気味なテンポの良い掛け合いには確かな積み重ねがあって、自分を救ってくれた千影を取り戻すために想太が立ち上がり、千影が魔人相手に見事決着をつけてみせる展開にはぐっと来ました。過去の因縁を抱える主従関係がこれからどうなるのか、続巻にも期待大の新シリーズですね。9月に2巻目が刊行予定。

6.幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

 

脈アリと思っていた片思いの相手・白草に彼氏ができたと知った高校生・丸末晴。失意の彼に以前告白してきた幼馴染・黒羽が復讐を持ちかける青春ラブコメディ。美少女で芥見賞受賞の現役女子高生作家・白草と、陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系の黒羽。偽恋人として白草を挑発したり、白草の恋人という先輩と勝負したり、だいぶ拗らせたそれぞれの恋愛模様にもう素直になれよ…と思いましたけど、甘酸っぱい青春の先には斜め上の結末が待ってました(苦笑)そんな彼らだからこその新展開もあって、今後に期待大の新シリーズですね。

7.友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

 

青春の一切を非効率とする俺・大星明照が目指す伯父の会社への就職。ウザい親友の妹・彩羽に絡まれつつ、就職の条件として提示された幼馴染従妹・真白の偽彼氏役に挑む青春ラブコメディ。学校では存在感皆無の生活を送る明照と、彼に絡み部屋に入り浸る親友の妹・彩羽、最悪の再会から険悪な雰囲気の真白。親友を含めた周囲の登場人物にはそれぞれ抱える事情があって、陰キャラに甘んじる明照が仲間のためなら頑張る姿を見ると、彼らに慕われているのも納得ですね。気になる関係に投げ込まれた波紋で物語がどう動くのか、今後に期待大の新シリーズ。 現在2巻まで刊行。

8.千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

 

第13回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>
クラス委員に指名されたトップカーストの千歳朔。担任から引きこもり生徒の更生を頼まれ、自信回復の手伝いをする青春小説。仲間の協力も得ながらあの手この手で引きこもりの健太を引っ張り出してみせた朔。そんな彼が魅力的な仲間やヒロインたちに信頼されるのも、周囲の期待に真摯に向き合い、大切なもののため誰かのために奔走することを惜しまないからで、テンプレートなリア充論を論破してみせる彼が、時折垣間見せる本音や葛藤がとても印象的でした。彼の恋愛模様やワケありの過去も気になりますし、続巻が楽しみな期待の新シリーズですね。10月に2巻目刊行予定。

9.リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

 

第13回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>
塵禍で文明が一度滅び、砂塵を異能力に変換できる「砂塵能力者」が力を持つ近未来。因縁の復讐相手・スマイリーを追うチューミーが、利害の一致から一時的に粛清官に協力し、ワケありの粛清官・シルヴィとコンビを組む近未来SF復讐譚。特殊な事情を抱えていたシルヴィと出会い、最初は反発しながらも徐々に育まれていく相棒としての信頼感。テンポよく進む中でスマイリーと追う二人を巡る因縁も明らかになって、何度も葛藤と絶望に直面する異端のバディが待ち望んだ宿敵との対峙と決着、確かな絆が垣間見えた結末にはぐっと来るものがありました。

10.葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

 

第24回スニーカー大賞<金賞>
様々な種族がひしめき合う小国ランタン。流浪の少年メルがランタン王に語学を買われ政略結婚を控える豹人族の姫シャルネの教育係に抜擢、なりゆきで次期王に任命され敗戦必至の戦いに挑むファンタジー。常に優しいメルに惹かれてゆく奔放な姫君・シャルネ。婚姻が最悪の形で破談となった巻き添えで亡国の危機に陥ったランタン。シャルネと並び立つ弱小国王として仲間の助力を得て異なる種族の力を糾合し、熱い想いと知略を尽くして大軍に立ち向かいつつ、巧みな心理戦で勝利を手繰り寄せる展開にはぐっと来るものがありました。続編も期待してます。

青春小説とホラーの二面性 櫛木理宇さんの14作品

 以前作家企画第一弾として相沢沙呼さんの作品を取り上げました。

今回は作家さん企画第二弾ということで櫛木理宇さんを紹介したいと思います。櫛木理宇さん2012年、『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞してデビュー、同年、『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞している作家さんです。個人的には『ホーンテッド・キャンパス』から読みはじめて、『赤と白』を読んでから今に至るまで追い続けてきた、書籍化されている作品は全て読んでいる数少ない作家さんの一人です。

 

櫛木理宇さんの作品には根底にホラーや人が隠し持つ恐ろしさの描写がありますが、その作品には『ホーンテッド・キャンパス』に代表されるような青春小説テイストを絡めた系譜と、「赤と白」に代表される狭い地域で起こる惨劇やホラーを前面に押し出した系譜があります。読んでみるとだいぶ印象が違うため、知らずになんとなく読むと驚かれる方も多いですが、この二面性こそが著者さんの大きな特徴であり魅力なのだと思います。

 

これまで前者は文庫での刊行、後者は単行本で刊行と棲み分けがされていましたが、近年単行本で刊行されていた作品も続々と文庫化が進んでいます。手に取りやすくなってきた状況ということもあり、今回その作品群を紹介してみるいい機会だと思いました。文庫化されたものはそちらを優先して紹介していますが、文庫化にあたり改題された作品もあるため単行本時のタイトルも記載しています。

 

1.ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)

ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)

ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)

 

幽霊が視えてしまう体質の森司が、心配で見守っていた高校時代の後輩こよみと大学で再会。一緒に入ったオカルト研究会での日々は、ホラーというよりはライトなオカルトミステリー。森司視点で語られるヘタレぶりがなかなか容易に進展しないことを伺わせますが「いずれその日が来るのを待ってます」「そういう人だって知っています、ずっと前から」等々、淡々と話が進む中での会話の端々に、感情があまり表に出ないこよみの森司をよく知ってます感が織り交ぜられていて、読んでいる方が付き合っちゃえよとなるジレジレ感を楽しむシリーズです。現在15巻まで刊行。

2.ドリームダスト・モンスターズ (幻冬舎文庫)

悪夢に悩まされ、クラスから孤立しつつあった女子高生晶水が、彼女に興味を持つ同級生壱とその祖母の夢見で救われたことをきっかけに、彼らが扱う夢に関する依頼に関わっていくお話。依頼者の悪夢に潜り込んで探り、依頼者自身に原因を気づかせる解決方法はある程度パターン化していましたが、「好き」とストレートにぶつけてくる壱と、いろいろ教えてくれる祖母の組み合わせに、いつの間にか馴染んでしまった晶水は由緒正しきツンデレ。毎回壱の新たな一面を知って、少しずつ縮まっていく二人の距離感が良かったです。現在3巻まで刊行。

3.アンハッピー・ウエディング 結婚の神様 (PHP文芸文庫)

幼馴染の史郎を一方的に恋慕い、彼との結婚を夢見る会社員の咲希。そんな彼女が妹の紹介で結婚資金を稼ぐために副業で結婚式の「サクラ」のバイトとして働く物語。同じサクラの百合香とともに臨む憧れの結婚式場で次々と起こる略奪婚、歳の差婚、毒親といったワケアリ結婚式の数々。長年の片想いでずっと近くにいるのに、なかなか見えてこない史郎ことシロの本音。これでもかとばかりに結婚の現実が突きつけられて、頻発するトラブルからひとつの構図が見えてきて、それでも結婚に憧れる咲希の真っ直ぐな想いとその結末は心に響くものがありました。

4.僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

 

人と話すことが大の苦手で毎週水曜日に原因不明の熱に悩まされている高校生の翼。病院の帰り道に偶然立ち寄った奇妙なペットショップで不思議な猫と出会い、家で飼うことになる物語。彼だけには別のものに見える不思議な猫・モナミとの出会いが転機となって、自身のわだかまりを解消しいろいろなものへの見る目が変わっていったり、お店でのバイトで同じようなお客と関わって一緒にその不安を解消したりで、その世界が少しずつ広がってゆくことを実感する物語は、とても読みやすくて良かったなと思える読後感でした。続刊を読んでみたい作品ですね。

5.お城のもとの七凪町 骨董屋事件帖 (朝日エアロ文庫)

お城のもとの七凪町 骨董屋事件帖 (朝日エアロ文庫)
 

城下町・七凪町の骨董店で住込みの職人見習いとして働く荒木堅吾が、狭い町内で発生する事件を解決するミステリー。老人たちに囲まれた日常のせいか主人公・堅吾は高校を卒業したばかりとは思えない落ち着きぶりでしたが、著者さんらしいホラーテイストな事件を同級生や人情味豊かな老人たちと協力しつつ解決していく物語の雰囲気はなかなか良かったです。師匠が入院で不在の中、共に生活する師匠の孫娘である樋田四姉妹は昔からお互いをよく知る間柄で、長女雪・次女菊とのお互いを思いやるような繊細な三角関係にも期待したいシリーズでした。

 

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6.赤と白 (集英社文庫)

赤と白 (集英社文庫)

赤と白 (集英社文庫)

 

地方の豪雪地帯の閉塞感を日々感じながら、親との関係があまりうまくいっていない女子高生4人が、些細な選択の積み重ねからどんな結末を迎えることになったのかという物語。この年頃は理不尽な親の物言いにどうしようもない無力感を感じるものですが、それでも決断すべき時に決断することで変わることもあるし、その時流されることでより悪くなることもある。最初に起こった事件記事が書かれているのですが、物語として描かれていた過程は思っていた以上の女の子たちのリアルなやりとりで、その生々しい感情にドキッとさせられました。

7.死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA) ※単行本名「チェインドッグ」

死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)

死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)

 

鬱屈した日々を送る大学生・筧井雅也の元に、連続殺人鬼・榛村大和から唯一の冤罪を訴える手紙が届き、彼の生い立ちや事件の再調査を進めていくことを決意する物語。榛村と面会し調査を進めていくうちに、周囲から明るくなった、変わったと言われる一方で、昔をよく知る灯里には違和感を指摘される雅也。調べていくうちに意外なところで繋がっていく過去の負の連鎖と、榛村という恐ろしい存在にいつの間にか魅入られていく恐怖。決別してようやく平穏を取り戻せたかと思われた描写の裏で、まだまだ終わらない連鎖が示唆されるエピローグは秀逸です。

8.避雷針の夏 (光文社文庫)

避雷針の夏 (光文社文庫)

避雷針の夏 (光文社文庫)

 

「よそものは、死ぬまでよそもの」それがこの町のルール。旧弊甚だしい閉ざされた小さな町で、夏祭りを前に町役場のガーゴイル像が破壊されたことをきっかけに始まる崩壊。田舎町を舞台にした物語でしたが、誰もがどこかで道を違えたことを自覚しながら目をそらし、修復不可能なまでに溜まる鬱屈。簡単には覆せない狭い世界での数の圧力。井戸端会議やSNSなどで些細な噂がいつのまにか事実になってしまうようなことはどこにでもありうることで、その生々しい描写にハッとさせられることも多かったです。少女たちの家族、やり直せるといいですね。

9.侵蝕 壊される家族の記録 (角川ホラー文庫) ※単行本名「寄居虫女」

事故で亡くした息子と同じ名前の少年・朋巳。彼を家に入れた結果、その母親や弟まで寄生を始め徐々に家を侵食されていく物語。父親があまり寄り付かない家庭の隙間に入り込んで洗脳してゆく過程があまりにも巧妙で、狡猾に煽って分断されたことでお互い対立して孤立し変わり果ててしまう母親や姉妹たちの変貌ぶり。家族内で微妙な扱いであったがゆえに、ただ一人危機感を失わなかった美海という皮肉な展開。そんなどうにも救いようがない感じに追い詰められていくのに、エピローグでは穏やかな雰囲気になってしまっているのがまた恐ろしかったです。

10.瑕死物件 209号室のアオイ (角川ホラー文庫)

※単行本名「209号室には知らない子供がいる」

瑕死物件 209号室のアオイ (角川ホラー文庫)

瑕死物件 209号室のアオイ (角川ホラー文庫)

 

 

リバーサイドに建つ瀟洒なマンションサンクレール。209号室に住む葵という名の美少年によって、一見「ちゃんとして」見える女たちが静かに歪み壊れていくホラーミステリ。ふとした隙に家庭に入り込む葵によって、歪められてゆく家族とそれによって追い詰められてゆく妻たち。マンションで立て続けに起こる怪事件と、少しずつ明らかになってゆく謎めいた209号室の事情。少しずつ壊れてゆく関係の描写がとても生々しくて、一区切りついたかに見せかけてゾクリとさせる部分を最後に垣間見せる怖さに、著者さんらしさがよく出ていると思いました。
11.少女葬 (新潮文庫)  ※単行本名「FEED」

少女葬 (新潮文庫)

少女葬 (新潮文庫)

 

家出したふたりの少女が出会ったのは最底辺のシェアハウス。お互い親友と感じていた綾希と眞美が、些細な行き違いから歩む道が分岐してしまう物語。生まれや育ちは違えども、家出して行き場のない存在としてたまたま同室になった二人。確かに綾希の方が考えて慎重に行動してはいましたが、転落してゆく眞美と転機が訪れた綾希の明暗を分けたのは、出会いや巡り合わせといった運の要素も大きかったですね。残酷なまでに差がついた二人の対比描写は辛いものがありましたが、立場を違えても親友としての絆は忘れなかった二人に微かな救いを感じました。

 

12.世界が赫(あか)に染まる日に

世界が赫(あか)に染まる日に

世界が赫(あか)に染まる日に

 

従兄妹の未来を奪った加害者へ密かに復讐を誓う中学生の櫂が、15歳の誕生日に自殺する計画を立てる同い年の文稀と出会い、文稀が死ぬまでは復讐に協力する契約を結ぶ物語。被害者の消えない傷の大きさに比して、加害者の意識の希薄さや未成年として保護されるがゆえの罪の軽さには理不尽さを感じてしまいますが、ではそれを私的に裁いていいのかと言われると…転機があれば櫂のように逡巡するようになるのは当然だし、一人になっても突き進まんでしまう文稀を取り巻く境遇の悲惨さには、どうにもやりきれないものを思わずにはいられませんでした。

13.鵜頭川村事件

鵜頭川村事件

鵜頭川村事件

 

一九七九年夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。突如、山間の村は豪雨に見舞われ閉じ込められる中で一人の若者の死体が発見され、閉塞した状況で蓄積していた鬱屈が狂気に繋がってゆく物語。村の有力者・矢萩家への鬱屈した想いと、外部と遮断された状況でうやむやにされた犯人探し。大人たちに不信を隠せない若者たちに対する扇動が暴走に繋がってゆくまでの描写には、追い詰められた人の危うさが生々しく描かれていて、ギリギリの状況で何とか娘を守ろうと奔走する岩森がとても印象的でした。

14.ぬるくゆるやかに流れる黒い川

ぬるくゆるやかに流れる黒い川

ぬるくゆるやかに流れる黒い川

 

六年前ともに家族を無差別殺人でなくした同級生小雪と再会した大学生香那。犯人武内譲が拘置所で自殺し犯行動機等が不明なままだった事件の背景を、二人で改めて調べ始める物語。調べいくうちに明らかになってゆく追い詰められていった譲の心境と、世代を越えて女性嫌悪に取り憑かれた武内家の男たち。譲を虐待していた祖父と殺された祖父の弟。「からゆきさん」を絡めた武内家の呪いや、香那と小雪の壊れてしまった家族のエピソードは厳しかったですが、それでもきちんと向き合った二人の新たな一歩へと繋がる結末には救われるものがありました。

 

また参考までに著者さんの創作に対する考え方や執筆スタイルなどをまとめたインタビュー集として、以下の作品にも寄稿されています。

「ファンタジーへの誘い-ストーリーテラーのことのは-」

ファンタジーへの誘い: ストーリーテラーのことのは

ファンタジーへの誘い: ストーリーテラーのことのは

 

 

なお、9月と10月はここから櫛木理宇さんの作品刊行が続きます。

新作が気になる方は是非チェックしてみて下さい。

世界が赫に染まる日に

世界が赫に染まる日に

 
虎を追う

虎を追う

 
ホーンテッド・キャンパス16 (角川ホラー文庫)

ホーンテッド・キャンパス16 (角川ホラー文庫)

 

2019年8月に読んだ新作おすすめ本

振り返ってみると8月は意外と新作多めに読んでいたみたいで、今回のおススメは多めでした(苦笑)ラノベでは「ぼくたちのリメイク Verβ」はもうひとつのifということで、刊行ペース的に本編との兼ね合いが気になりますが、流石の安定感がありますね。ほかにもいくつか気になる新シリーズが出てきていて楽しみです。 

 

ライト文芸だと映画化の「初恋ロスタイム」は2冊セットで読むことを推奨します。あと富士見L文庫一生夢でくわせていきますが、何か」もわりとじわじわくる好きな作品。一般文庫では光文社文庫の「彼女は死んでも治らない」はさすが大沢めぐみさんという作品でしたが、織守きょうやさんの講談社文庫「少女は鳥籠で眠らない」、高校生作家の宝島社文庫偽りの私達」あたりも注目です。

 

単行本もやや多めですが話題の「三体」や松岡圭祐さんの「出身成分」はインパクトがありますね。「店長がバカすぎて」はこれから伸びていきそうな予感を感じましたが、個人的には日本舞踊に挑む安倍雄太郎さんの「いのち短し、踊れよ男子」と意外な結末が面白い水生大海さんの連作短編集「最後のページをめくるまで」を推しておきます。

 

ぼくたちのリメイク Ver.β (MF文庫J)

ぼくたちのリメイク Ver.β (MF文庫J)

 

会社が倒産した橋場恭也が偶然河瀬川と出会い、サクシードソフトのお荷物部署・第13開発部に拾われるもう一つの物語。どういう展開になっても恭也に絡んでくる河瀬川の使い勝手の良さというか、ヒロイン力みたいなものを感じる展開でしたが、雑務ばかりの第13開発部を業務改善して時間を作り出し、同僚理都子の企画アイデアを活かしながら仲間のやる気に火をつけ、企画を何とか成立させるべく奔走する恭也の場所を選ばない有能ぶりと、諦めない想いが熱いルートでした。しかし立ちはだかる常務もなかなか強敵で、これはこれで今後が楽しみです。

吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

 

大戦と禁酒法で旧来の道徳が崩れ去った時代。非合法の運び屋シーモアのもとに、運んで欲しい荷物として正真正銘の吸血鬼の少女・ルーミーが持ち込まれる歴史ファンタジー。仕事上のトラブルから始まったルーミーとの同居生活。吸血鬼らしさを見せないルーミーと共に過ごすうちにシーモアの心境が変化してゆく中で、ふと気づいてしまったひとつの事実。確かに変わってしまった何かがあって、それでも二人の間には確かに育まれていたものがあって、ぶつかりあった本音の先にあった結末がとても自分好みでした。これは続巻に期待大の新シリーズですね。

わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)

わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)

 

最寄り駅が同じ以外接点がなく、毎朝顔を合わせるだけだった先輩と後輩。そんな二人がある日『1日1問だけ、どんな質問にも絶対正直に答える』という約束を交わす青春ラブコメディ。大部分の生徒と違う二人だけが通う通学電車で、話すことはなくても存在を意識していた二人。ふとしたきっかけから一つずつ質問を積み重ねていって、話すことや会うことが増えいくことで少しずつ二人の距離感も変わっていって、ミステリアスな小悪魔・後輩ちゃんの言動に先輩が振り回される二人の関係がこれからどうなってゆくのか続巻に期待したいシリーズですね。 

夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去 (講談社ラノベ文庫)

夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去 (講談社ラノベ文庫)

 

友人・カッツンの家に居候させてもらいだらけた日々を送る23歳、職歴半年のニートの天木颯。そんな彼が夢をコントロールする方法を記載したブログを見つける物語。颯が抱える10年前に交通事故で死んだ初恋の女の子・霧崎紗耶香に対する3つの後悔。リアルでは相変わらずな日々を送りながら、夢の世界で紗耶香と会うことにのめり込んでいく颯。著者さんらしどこか気怠そうな世界観で、夢の世界で背中を押してくれた紗耶香や、ダメンズな彼を見守るマキたちに出会い、積み重ねた思いを胸に新たな一歩を踏み出す展開はなかなか良かったですね。

世界は愛を救わない (講談社ラノベ文庫)

世界は愛を救わない (講談社ラノベ文庫)

 

幼馴染で文芸部に所属し、ささやかな特殊な力を持つ壇上貫地と石野美香、阿久津吾郎。その力を使って世界征服を目指す彼らが、目的を叶えるために求めていた能力を持つ後輩・開田環子と出会う青春小説。それぞれが抱える人に言えない密かな想いを叶えるため世界征服を目指していた三人と、その危うくも均衡していた彼らの関係に波紋を投げかけた環子の能力。世界征服のお題目はやや消化不良でしたけど、葛藤しながらも決着をつけてゆく三者三様の決断はどこまでも自らの想いに真摯で、彼らのその後が描かれたエピローグがとても印象的な物語でした

本屋の店員がダンジョンになんて入るもんじゃない! (ダッシュエックス文庫)
 

「一生本を読んで暮らしたい!」本を愛してやまない青年・アシタが、その想いとは裏腹に彼の知識を欲する顔馴染みの女冒険者エルシィにダンジョンへ連れて行かれるドタバタファンタジーコメディ。貴重本欲しさにダンジョンに潜ってみればゴブリン相手も厳しい貧弱っぷりで、エルシィやその仲間に頼りっぱなしのアシタでしたけど、強力なゴーレムを相手にするという絶低絶命の窮地に、彼の知識と仲間の力をあわせて打開してゆく展開はなかなか面白かったです。エルシィとの関係も気になりますが、一緒に潜った仲間たちもワケありのようで続巻に期待。

獣の巫女は祈らない (講談社X文庫)

獣の巫女は祈らない (講談社X文庫)

 

獣を祀り獣の耳と強靭な肉体をもつ一族が暮らす奥見島。その強さを認められ「獣の宮の巫女」に選ばれた奥見族の娘・なぎが流刑に処された明日何の姫と出会う和風ファンタジー。父が皇帝の後継者争いに敗れ、「姫」ということで奥見島に流された迅と、思いもよらなかった形でその正体を知ってしまうなぎ。そこに島の火山が胎動を始めて、都の異変も相まって巻き込まれてゆく二人が、運命に立ち向かい自らの手で切り開いてゆく展開は今後に期待してもいいんですかね。運命に翻弄された琉貴姫も結構幸せだったように思えた結末には救われる思いでした。

 

 

初恋ロスタイム -Advanced Time- (メディアワークス文庫)

初恋ロスタイム -Advanced Time- (メディアワークス文庫)

 

普通の高校生・相葉孝司に突然起こった「自分以外の時が1時間だけ止まる」不思議な現象。好奇心を抑えられず学校の外に繰り出した彼が、そこで自分以外にも動ける女の子・篠宮時音と出会う青春小説。最初は篠宮に警戒されながらも、時が止まった世界「ロスタイム」の中で一緒に楽しい時間を過ごすうちに、少しずつ確実に彼女に心惹かれてゆく孝司。けれど彼らにとってかけがえのない貴重な時間には原因があって、高校生ではままならない残酷な現実があって、それでも諦めなかった孝司の覚悟と、その引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。

初恋ロスタイム -First Time- (メディアワークス文庫)

初恋ロスタイム -First Time- (メディアワークス文庫)

 

高校入学と共に幼馴染・比良坂未緒に告白をし、見事玉砕した桐原綾人。気まずさで互いに言葉を交わす事もなくなったある日、突然「自分以外の時が止まる」という不思議な現象を彼女と共有するもうひとつの物語。日常では相変わらずな二人の関係と、昔のように接することが出来る時が止まった世界。「ロスタイム」で未緒と綾人が時間を共有することになった理由。思ってもみなかった急展開を打破してみせたのは二人がこれまで地道に積み重ねてきた成果で、最後の最後で明かされる破壊力抜群な結末には自分もものの見事にやられたと思いました(苦笑)

一生夢で食わせていきますが、なにか。 (富士見L文庫)

一生夢で食わせていきますが、なにか。 (富士見L文庫)

 

高校時代の先輩でプロのマンガ家を目指す啓汰先輩と再会したあすみ。マネージャーとして交渉役や雑務を引き受けた彼女が次々と直面するトラブルとその奮闘を描くお仕事小説。マンガ家の夢を反対したあすみをマネージャーに据えて、周囲の反対を押し切りマンガ家業を軌道に乗せてみせた啓汰先輩。職場で起きるトラブルに対処していくあすみに対する啓汰先輩の信頼は厚くて、外堀も着実に埋まって周囲もすっかり公認状態なのに、それに全然気づかないあすみを見てると啓汰先輩がちょっと可哀想になりますね(苦笑)二人の今後がまた読んでみたいです。

透明なきみの後悔を見抜けない (講談社タイガ)

透明なきみの後悔を見抜けない (講談社タイガ)

 

子供の頃から人助けが趣味だという柔らかな雰囲気の大学生・開登。そんな彼が出会った人々の手助けをして後悔を解消してゆく恋愛ミステリ。不登校の生徒を気にかける教師、ダンス仲間と仲違いしてしまった女の子、自らの後悔がわからない女子大生と、仕事に明け暮れるうちに大切なものを見失ってしまったネイリスト。出会った人々に寄り添いその後悔に一緒に向き合ってゆく開登という構図から、これまでのエピソードが次々と繋がってゆく中で見えてくるもう一つの真実があって、人のために奔走する優しい開登にもたらされた結末が素敵な物語でした。

アリア嬢の誰も知らない結婚 (集英社オレンジ文庫)

アリア嬢の誰も知らない結婚 (集英社オレンジ文庫)

 

王立学士院魔法学科で落ちこぼれの少女・アリアと、エリート研究者兼教師を務める王族の青年・ラルシェの秘密。男女交際禁止の学士院でとある事情から夫婦になってしまった二人のマリッジラブコメディ。精霊を集めるのは得意だけれど魔法制御が致命的なドジっ子アリアを、密かに愛らしいと可愛がるラルシェ。周囲には内緒の相手の想いになかなか気づけないニブい二人によるもどかしくも甘いやりとりや、誤解からの迷走といった王道展開をベースとした物語で、周囲のいろいろ気になる関係も絡めながらのお約束のストーリーは安心して楽しめました。 

鎌倉男子 そのひぐらし 材木座海岸で朝食を (集英社オレンジ文庫)

鎌倉男子 そのひぐらし 材木座海岸で朝食を (集英社オレンジ文庫)

 

鎌倉材木座の早朝から開店している食堂「そのひぐらし」。そこで働く不器用な3人のバイトたちと訪れる常連客たちのやりとりを描く青春小説。偉大な兄を持つ迷走高校生・水澄と幼馴染の関係、何でもそつなく大学生・統一郎の初恋、コミュ力は高い悩み多きフリーター・流の閉塞感が描かれてゆく展開で、ほろ苦い恋やなかなかうまく行かない人生だったり、実際にはそうそう上手くいくことばかりでもない現実があって、不器用な悩める彼らが怠惰な店長や同僚、そして常連客たちのフォローも得ながら向き合い頑張ろうとする姿は応援したくなりました。

鎌倉御朱印ガール (集英社オレンジ文庫)

鎌倉御朱印ガール (集英社オレンジ文庫)

 

いつの間にか友人たちに彼氏ができてひとり呆然とした女子高生・羽美が、衝動的に向かって江ノ島の弁財橋で御朱印帖を拾い、それをきっかけに持ち主の男子高校生・将と会う青春小説。同い年の将と出会った先でなぜか弁財天と毘沙門天のケンカに巻き込まれて、二神の代理として将と鎌倉七福神御朱印集めで勝負をすることになってしまった羽美。困惑しながらも手探りで始まった不器用な二人の七福神巡りは初々しくて、困難にきちんと向き合い成長してゆく二人のその後をもう少し読んでみたかった気もしますが、読みやすくなかなか素敵な物語でした。 

蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)

蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)

 

蠱毒をこよなく愛し周囲から「毒の姫」とあだ名される斎帝国の第十七皇女・李玲琳。そんな彼女が最愛の姉である斎国の女帝・彩蘭の指示で魁国の王・楊鍠牙のもとへ嫁ぐ物語。華やかな衣裳や宝石より蟲が大好きな著者さんらしい強烈なキャラクターですけど、嫁ぎ先もまた鍠牙が命を狙われたりいろいろ物騒なところで、彼女の特技を活かしてその存在を認められてゆく展開はいいですね。姉に劣らず鍠牙も少しばかり執着気味なのはアレですが、結果から見れば水が合ったと言うかいい居場所を見つけられたのかな。続巻あったらまた読んでみたいです。

拝み屋カフェ 巡縁堂 (小学館文庫キャラブン!)

拝み屋カフェ 巡縁堂 (小学館文庫キャラブン!)

 

結婚予定の恋人と天職だと思っていた仕事をいっぺんに失った、不運すぎるアラサー女子の藤堂朱音。傷心を抱えて地元・仙台へと戻ってきた彼女が、拝み屋カフェ「巡縁堂」を準備中の幼馴染・玲二を手伝う物語。昔お世話になった先生と亡くなった猫のエピソードだったり、新居で不審な出来事が続く友人の何ともほろ苦い結末だったり、玲二の洞察力で原因を解決してゆく展開でしたけど、傍から見たらバレバレなのに朱音が鈍いゆえになかなか気づいてもらえない玲二の頑張りを密かに応援したくなりました(苦笑)続巻あるならまた読んでみたいですね。 

(P[そ]2-1)あの夏を、いつかの君と。 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[そ]2-1)あの夏を、いつかの君と。 (ポプラ文庫ピュアフル)

 

入学早々、記憶にない過去の出会いを主張するイケメン男子・大澤祈につきまとわれる普通の女子高生・美弥緒。とある出来事で過去にタイムスリップした彼女が6歳の祈と出会い、彼の父親捜しを手伝う青春小説。タイムスリップによって繋がる九年前の出来事。育ての親を探すために家出した祈とミャオの父親探しの旅。小さな祈を巡る様々な人たちとの出会いがあって、二人の間に育まれてゆく確かな絆があって、話の筋としては分かりやすいストレートな展開ではありましたけど、不思議な経験が紡いだ二人の関係のリスタートがとても素敵な物語でした。

(P[ふ]4-7)この夏のこともどうせ忘れる (ポプラ文庫ピュアフル)
 

塾の夏季合宿に参加した受験生・圭人が抱える秘密、友人の家に姉妹で招かれる夏休みの日々、打ち上げ花火と男の子たちの夏、恋多き女子高生・梨奈が出会った篠くんとの恋、海で出会ったアオと出会い思い出す父親へ想い。夏休みという長い非日常を舞台に、いつもと違う場所で出会い、交流を深めてゆく中で、登場人物たちにこれまでなかった新たな心境が芽生えていく様子が繊細な描写で描かれてゆく連作短編集で、戸惑いながらも向き合い受け止めるようになってゆく姿がとても印象的でした。個人的には「昆虫標本」と「生き残り」が良かったですね。 

連載を打ち切られて仕事を失った崖っぷちのアラサー漫画家の月高アユムが、秋葉原の町で漫画以外のあらゆるものを漫画にする会社のJK社長・クルミと出会うお仕事物語。気力を失い秋葉原の町を彷徨っていたアユムが出会った、会社の中でもマンガに関わる変わっていたり面倒な案件だけを担当する「0課」のお仕事。時には戸惑ったり空回りするものの、挫折を知るからこそ訪れた悩める客に寄り添い、きちんと向き合ってよりよい道を見出し喜びを分かち合う、そんな一生懸命で優しいアユムにいつの間にか周囲も感化されてゆくとても素敵な物語でした。

ホームレス・ホームズの優雅な0円推理 (富士見L文庫)

ホームレス・ホームズの優雅な0円推理 (富士見L文庫)

 

自己採点ではバッチリ合格圏内と自信満々だったのに、医学部合格発表では不合格だった岩藤すず。納得行かず答案用紙の保管部屋に忍び込んだ彼女が、血まみれの巨大な犬の足跡と副学長の死体を発見するミステリ。「ワトスン」として生きることを信条とする岩藤すずの前に現れた低コストに生きるホームズ。連続殺人事件に二人が挑むわりとテンション高めな展開でしたけど、真実は何とも苦笑いな結末だったというか…エピローグで明かされたホームズの過去を読んでそれまでの展開を見る目が少し変わりました。続巻あるなら続きをまた読んでみたいです。

 

 

彼女は死んでも治らない (光文社文庫)

彼女は死んでも治らない (光文社文庫)

 

いつも殺されがちな最高に可愛い幼馴染の沙紀。普通じゃないレベルで彼女のことが好きな女子高生・神野羊子が得意の推理を巡らせるハイテンションコージーミステリ。沙紀を殺した犯人を羊子が見つけ出すと、犯人を身代わりになぜか彼女が生き返る歪な関係、そんな羊子と一緒にいてサポートする昇の存在。のんびり屋なのに核心を突く乃亜や、正義感あふれる拝み屋女子高生・楓との出会いは羊子たちの関係に変化をもたらして、あの斜め上のカオスな展開から始まったこの物語を、伏線や真相を絡めつつすっきりとまとめ上げてみせた結末はお見事でした。

少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)

少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)

 

法律事務所に務める新米弁護士木村と有能な先輩・高塚のコンビが挑む連作リーガル・ミステリ。15歳の少女に手を出したとして逮捕された元家庭教師、中退した元同期の覚悟、浮気され離婚を望む男が親権を望んだ理由、そして高名な芸術家と娘の関係の4話からなる構成で、最初は一見よくあるありふれた事件に思えますが、それが性格の違う弁護士コンビによる別視点からのアプローチによって、もうひとつの構図を浮かび上がらせてゆく構成となっていて、事件決着後に木村が垣間見るほろ苦くもなかなか味わいのある結末がとても印象的な物語でした。 

偽りの私達 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

偽りの私達 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

都市伝説として囁かれる【まほうつかい】。七月十七日から八日に時間が巻き戻った高校生・土井修治が、十七日に階段から落ちて死ぬ美少女・渡辺百香を救うため、彼女の死の原因を探り始めるミステリ。修治の大切な幼馴染・七瀬の彼氏と浮気したのが渡辺百香?そんな噂を聞いて調べ始めた修治が気づくスクールカーストを巡る不穏で狡猾な罠。読んでいくうちに浮かぶ先入観がたびたび裏切られ、新たな事実が明らかになるたびにガラリと構図を変えていって、荒削りではあるものの伏線を巧みに使いつつ、思わぬところに着地してみせた結末は見事でした。

四月になれば彼女は (文春文庫)

四月になれば彼女は (文春文庫)

 

恋人・弥生と1年後に結婚式をすることを決めた精神科医の藤代。そんな彼のもとに初めての恋人・ハルから手紙が届く、失った恋に翻弄される12ヶ月の物語。醒めた同棲生活を送る藤代の元に届いた、大学時代の恋人・ハルからの手紙。永遠に続くものだと信じていたかつての恋があったからこそ、つい今の穏やかな想いと対比して不安を生じさせてしまうわけですが、不器用な登場人物たちがそれぞれのやり方で、心残りだった苦い過去にしっかりと決着をつけて今の自らの想いに真摯に向き合い、葛藤を乗り越えようとする姿は心に響くものがありました。 

 

 

三体

三体

 

 物理学者の父を文化大革命で惨殺されて、人類に絶望した中国人女性科学者・葉文潔。その数十年後、ある会議に招集されたナノテク素材の研究者・汪淼が、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる中国SF小説。なぜそのような怪現象が起きているのか。父を殺されたその後の葉文潔が描かれて、VRゲーム『三体』が示唆するものは意味深で、明らかになった真相がまた壮大なスケールの物語でしたけど、それでいて要所で人間らしい生々しい感情がポイントになっていたのが印象的でした。三部作ということらしいので続編にも期待しています。

出身成分

出身成分

 

平壌郊外の保安署員クム・アンサノが11年前の殺人・強姦事件の再捜査を命じられ、簡単だったはずの捜査を進めるうちに思ってもみなかった真実が明らかになってゆくミステリ。再認識する捜査の杜撰さと国家の横暴さ、そして思わぬ形で浮上する元医師だったアンサノの父の存在。脱北者の証言に基づいて描かれたという出身成分によって扱いが相当異なる北朝鮮の世界には愕然としましたが、こういう何を信じていいのか分からない心休まらない日常だったり、個人の尊厳が脅かされかねない社会で生きるということをしみじみと考えさせられる物語でした。

店長がバカすぎて

店長がバカすぎて

 

とにかく本が好きで〈武蔵野書店〉吉祥寺本店の契約社員として働く谷原京子、28歳。独身。「非」敏腕店長・山本の下で、文芸書の担当として次から次へとトラブルに遭いながら働くお仕事小説。日々入ってこない注文を嘆いたり、尊敬する先輩が辞めたりする中で、問題客や増長した作家、ワンマン書店経営者といったトラブルに対処しながら、意外な繋がりがあったりガリバー出版社に新卒で入社した元後輩の奮闘を知ったり、斜め上にバカすぎる店長にイライラしながら文句だらけの書店員に愛着を持っている主人公が迎えた結末はなかなか良かったです。

いのち短し、踊れよ男子

いのち短し、踊れよ男子

 

一目惚れした清香に誘われ舞い上がり、興味のなかった日本舞踊の発表会を見た大学生の駿介。そこで華やかな舞台で堂々と踊る吉樹と出会い、日本舞踊に魅せられてゆく青春小説。清香に「踊りの上手い人が好き」と言われて下心たっぷりの稽古通いを始めた駿介に、容赦なく欠点を指摘する師匠の息子・吉樹。踊りの上手さは認めざるを得ない吉樹にも日舞への複雑な想いがあって、一緒に踊ることになった二人が抱える葛藤と、真摯に向き合おうとする気持ちに向き合いながら、お互い刺激し合えるいい関係になってゆく展開にはぐっと来るものがありました。

最後のページをめくるまで

最後のページをめくるまで

 

使い勝手のいい女が隠していたもの、詐欺に手を染めた大学生のわずかばかりの犠牲、死体が火葬されるまで落ち着かなかった理由、夫の浮気発覚から始まった意外な結末、ひき逃げされた息子の復讐を誓う母の顛末の5つのエピソードから構成される連作短編集。緊迫感ある展開の先にあった意外な結末だったり、手に染めた過去の因果応報だったりで、作中で主人公の心境が変わっていったとしても、だからといってそうそういい感じに終わらせたりしないあたりがむしろ新鮮で印象的な物語でした。個人的には冒頭の「使い勝手のいい女」が良かったですね。 

下北沢インディーズ

下北沢インディーズ

 

音楽雑誌でインディーズバンドの発掘コラム連載を任された新人編集者の音無多摩子。下北沢のライブハウスのマスター・五味淵の紹介でバンドマンたちを取材する多摩子が、思いがけない事件に遭遇するミステリ。壊されたデジタルティレイ、元カレの彼女の浮気疑惑、スタジオから盗まれたベース、ライブ中にドラマーが怒り出した理由、アカウントを乗っ取られたバンドの解散危機など、デビュー前のバンド事情に絡めた謎に遭遇する多摩子と、それを解決する探偵役の五味淵という役回りで、少し視点を変えると見えてくる真相と構図が印象的な物語でした。

ぬるくゆるやかに流れる黒い川

ぬるくゆるやかに流れる黒い川

 

六年前ともに家族を無差別殺人でなくした同級生小雪と再会した大学生香那。犯人武内譲が拘置所で自殺し犯行動機等が不明なままだった事件の背景を、二人で改めて調べ始める物語。調べいくうちに明らかになってゆく追い詰められていった譲の心境と、世代を越えて女性嫌悪に取り憑かれた武内家の男たち。譲を虐待していた祖父と殺された祖父の弟。「からゆきさん」を絡めた武内家の呪いや、香那と小雪の壊れてしまった家族のエピソードは厳しかったですが、それでもきちんと向き合った二人の新たな一歩へと繋がる結末には救われるものがありました。 

手のひらの楽園

手のひらの楽園

 

天真爛漫な夕陽ノ丘高校「エステ科」2年園部友麻の波乱な日々。全寮制の「仕事を学ぶための高校」で疲れたお母さんを癒やすためにエステティシャンを目指す青春小説。離島に育ち父親がおらず家は貧乏で、奨学金を借りての高校入学後に母親も行方知れずになった友麻。わりと悲惨な境遇でも楽観的で、素の自分のままでぶつかっていく彼女が突然告白されたり同級生の諸事情に巻き込まれたり、実は生きていた父親や初めて恋を知ったり、周囲の人たちに支えられながらひとつひとつ向き合って、ちょっぴり大人になってゆく展開はなかなか良かったですね。

2019年8月に読んだ本 #読書メーターより

8月はコミックを除いても64冊と大型夏休みがあったわりにはわりと読めました。レーベル単位で読みたい本が集中していて、そこの消化がだいぶ苦労したのと積読が増えすぎていて、減らすのにだいぶ難儀しました。でも読んだ本は新作もシリーズ続巻も全体的に満足度高めで、読んでよかったと思える本が多かったです。

 

8月の読書メーター
読んだ本の数:93
読んだページ数:23893
ナイス数:6638

出身成分出身成分感想
平壌郊外の保安署員クム・アンサノが11年前の殺人・強姦事件の再捜査を命じられ、簡単だったはずの捜査を進めるうちに思ってもみなかった真実が明らかになってゆくミステリ。再認識する捜査の杜撰さと国家の横暴さ、そして思わぬ形で浮上する元医師だったアンサノの父の存在。脱北者の証言に基づいて描かれたという出身成分によって扱いが相当異なる北朝鮮の世界には愕然としましたが、こういう何を信じていいのか分からない心休まらない日常だったり、個人の尊厳が脅かされかねない社会で生きるということをしみじみと考えさせられる物語でした。
読了日:08月01日 著者:松岡 圭祐
京洛の森のアリス III 鏡の中に見えるもの (文春文庫)京洛の森のアリス III 鏡の中に見えるもの (文春文庫)感想
ナツメのカフェ経営の夢を叶えるために別々に暮らすことになるありすたち。新たな生活のはじまりに蓮はありすと幼い頃に交わした結婚の約束を白紙に戻すことを決める第三弾。確かに蓮のことを好きだけれど結婚するとなるとどこか逡巡してしまうありす。いったん一度距離を置いて、別々の場所で周囲の人たちの恋模様も絡めながらお互いに自分の大切なものだったり、相手への想いを見つめ直してゆく展開はいろいろ気づくことも多かったりで、ありすと蓮の成長のきっかけになったようですね。リスタートした二人のこれからの物語にまた期待したいです。
読了日:08月02日 著者:望月 麻衣
一華後宮料理帖 第九品 (角川ビーンズ文庫)一華後宮料理帖 第九品 (角川ビーンズ文庫)感想
理美誘拐の真相を巡り尋問が始まり、皇帝としての判断を求められる祥飛が考仁と対立することに。考仁は宰相の地位を退くと宣言、宮城を去る最悪の事態を迎えてしまう第九弾。郷里に引きこもってしまった考仁を翻意させるため、自ら祥飛に願い出て説得に向かう理美。国のためという考仁の目指すところはハッキリしていて、そんな彼の力が祥飛には必要で。朱西との関係も絡め考仁に様々ことを気づかせた理美も流石でしたけど、積み重ねてきた祥飛の成長も感じましたね。けれどいい感じにまとまるかと思いかけたところでの朱西の態度が気になります…。
読了日:08月02日 著者:三川 みり
これは学園ラブコメです。 (ガガガ文庫)これは学園ラブコメです。 (ガガガ文庫)感想
虚構を司る力が擬人化された存在・言及塔まどかによって学園ラブコメとされた世界。まどかに振り回されながら主人公・高城圭がラブコメの世界をSFやらファンタジーの浸食から守り抜く物語。そんな話なんだろうなと思いながら読んでましたが、ファンタジーやSFといった世界観の中で、典型的な3人のヒロインたちも立ち位置を変えながら物語に絡んでくるテンションの高い展開で、要はこの著者さんらしいこのカオスなのに分かりやすい構図を楽しめるかなんですよね…個人的にオモシロイとは思うけど、好みの方向性とはちょっと違うのかなと(苦笑)
読了日:08月03日 著者:草野 原々
少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)感想
法律事務所に務める新米弁護士木村と有能な先輩・高塚のコンビが挑む連作リーガル・ミステリ。15歳の少女に手を出したとして逮捕された元家庭教師、中退した元同期の覚悟、浮気され離婚を望む男が親権を望んだ理由、そして高名な芸術家と娘の関係の4話からなる構成で、最初は一見よくあるありふれた事件に思えますが、それが性格の違う弁護士コンビによる別視点からのアプローチによって、もうひとつの構図を浮かび上がらせてゆく構成となっていて、事件決着後に木村が垣間見るほろ苦くもなかなか味わいのある結末がとても印象的な物語でした。 
読了日:08月04日 著者:織守 きょうや
(P[ふ]4-7)この夏のこともどうせ忘れる (ポプラ文庫ピュアフル)(P[ふ]4-7)この夏のこともどうせ忘れる (ポプラ文庫ピュアフル)感想
塾の夏季合宿に参加した受験生・圭人が抱える秘密、友人の家に姉妹で招かれる夏休みの日々、打ち上げ花火と男の子たちの夏、恋多き女子高生・梨奈が出会った篠くんとの恋、海で出会ったアオと出会い思い出す父親へ想い。夏休みという長い非日常を舞台に、いつもと違う場所で出会い、交流を深めてゆく中で、登場人物たちにこれまでなかった新たな心境が芽生えていく様子が繊細な描写で描かれてゆく連作短編集で、戸惑いながらも向き合い受け止めるようになってゆく姿がとても印象的でした。個人的には「昆虫標本」と「生き残り」が良かったですね。 
読了日:08月05日 著者:深沢 仁
三体三体感想
物理学者の父を文化大革命で惨殺されて、人類に絶望した中国人女性科学者・葉文潔。その数十年後、ある会議に招集されたナノテク素材の研究者・汪淼が、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる中国SF小説。なぜそのような怪現象が起きているのか。父を殺されたその後の葉文潔が描かれて、VRゲーム『三体』が示唆するものは意味深で、明らかになった真相がまた壮大なスケールの物語でしたけど、それでいて要所で人間らしい生々しい感情がポイントになっていたのが印象的でした。三部作ということらしいので続編にも期待しています。
読了日:08月05日 著者:劉 慈欣
拝み屋カフェ 巡縁堂 (小学館文庫キャラブン!)拝み屋カフェ 巡縁堂 (小学館文庫キャラブン!)感想
結婚予定の恋人と天職だと思っていた仕事をいっぺんに失った、不運すぎるアラサー女子の藤堂朱音。傷心を抱えて地元・仙台へと戻ってきた彼女が、拝み屋カフェ「巡縁堂」を準備中の幼馴染・玲二を手伝う物語。昔お世話になった先生と亡くなった猫のエピソードだったり、新居で不審な出来事が続く友人の何ともほろ苦い結末だったり、玲二の洞察力で原因を解決してゆく展開でしたけど、傍から見たらバレバレなのに朱音が鈍いゆえになかなか気づいてもらえない玲二の頑張りを密かに応援したくなりました(苦笑)続巻あるならまた読んでみたいですね。 
読了日:08月06日 著者:宇津田 晴
彼女は死んでも治らない (光文社文庫)彼女は死んでも治らない (光文社文庫)感想
いつも殺されがちな最高に可愛い幼馴染の沙紀。普通じゃないレベルで彼女のことが好きな女子高生・神野羊子が得意の推理を巡らせるハイテンションコージーミステリ。沙紀を殺した犯人を羊子が見つけ出すと、犯人を身代わりになぜか彼女が生き返る歪な関係、そんな羊子と一緒にいてサポートする昇の存在。のんびり屋なのに核心を突く乃亜や、正義感あふれる拝み屋女子高生・楓との出会いは羊子たちの関係に変化をもたらして、あの斜め上のカオスな展開から始まったこの物語を、伏線や真相を絡めつつすっきりとまとめ上げてみせた結末はお見事でした。
読了日:08月06日 著者:大澤 めぐみ
(P[そ]2-1)あの夏を、いつかの君と。 (ポプラ文庫ピュアフル)(P[そ]2-1)あの夏を、いつかの君と。 (ポプラ文庫ピュアフル)感想
入学早々、記憶にない過去の出会いを主張するイケメン男子・大澤祈につきまとわれる普通の女子高生・美弥緒。とある出来事で過去にタイムスリップした彼女が6歳の祈と出会い、彼の父親捜しを手伝う青春小説。タイムスリップによって繋がる九年前の出来事。育ての親を探すために家出した祈とミャオの父親探しの旅。小さな祈を巡る様々な人たちとの出会いがあって、二人の間に育まれてゆく確かな絆があって、話の筋としては分かりやすいストレートな展開ではありましたけど、不思議な経験が紡いだ二人の関係のリスタートがとても素敵な物語でした。
読了日:08月07日 著者:苑水 真茅
(P[す]1-2)秋葉原オーダーメイド漫画ラボ: 今日から「0課」担当します! (ポプラ文庫ピュアフル す 1-2)(P[す]1-2)秋葉原オーダーメイド漫画ラボ: 今日から「0課」担当します! (ポプラ文庫ピュアフル す 1-2)感想
連載を打ち切られて仕事を失った崖っぷちのアラサー漫画家の月高アユムが、秋葉原の町で漫画以外のあらゆるものを漫画にする会社のJK社長・クルミと出会うお仕事物語。気力を失い秋葉原の町を彷徨っていたアユムが出会った、会社の中でもマンガに関わる変わっていたり面倒な案件だけを担当する「0課」のお仕事。時には戸惑ったり空回りするものの、挫折を知るからこそ訪れた悩める客に寄り添い、きちんと向き合ってよりよい道を見出し喜びを分かち合う、そんな一生懸命で優しいアユムにいつの間にか周囲も感化されてゆくとても素敵な物語でした。
読了日:08月07日 著者:隙名 こと
アリア嬢の誰も知らない結婚 (集英社オレンジ文庫)アリア嬢の誰も知らない結婚 (集英社オレンジ文庫)感想
王立学士院魔法学科で落ちこぼれの少女・アリアと、エリート研究者兼教師を務める王族の青年・ラルシェの秘密。男女交際禁止の学士院でとある事情から夫婦になってしまった二人のマリッジラブコメディ。精霊を集めるのは得意だけれど魔法制御が致命的なドジっ子アリアを、密かに愛らしいと可愛がるラルシェ。周囲には内緒の相手の想いになかなか気づけないニブい二人によるもどかしくも甘いやりとりや、誤解からの迷走といった王道展開をベースとした物語で、周囲のいろいろ気になる関係も絡めながらのお約束のストーリーは安心して楽しめました。 
読了日:08月08日 著者:我鳥 彩子,明菜
鎌倉男子 そのひぐらし 材木座海岸で朝食を (集英社オレンジ文庫)鎌倉男子 そのひぐらし 材木座海岸で朝食を (集英社オレンジ文庫)感想
鎌倉材木座の早朝から開店している食堂「そのひぐらし」。そこで働く不器用な3人のバイトたちと訪れる常連客たちのやりとりを描く青春小説。偉大な兄を持つ迷走高校生・水澄と幼馴染の関係、何でもそつなく大学生・統一郎の初恋、コミュ力は高い悩み多きフリーター・流の閉塞感が描かれてゆく展開で、ほろ苦い恋やなかなかうまく行かない人生だったり、実際にはそうそう上手くいくことばかりでもない現実があって、不器用な悩める彼らが怠惰な店長や同僚、そして常連客たちのフォローも得ながら向き合い頑張ろうとする姿は応援したくなりました。 
読了日:08月08日 著者:相羽 鈴
りゅうおうのおしごと! 11 (GA文庫)りゅうおうのおしごと! 11 (GA文庫)感想
奨励会三段リーグで三連敗を喫して心が折れた銀子。銀子の懇願に八一が二人で旅に出かける第十一弾。なぜ八一は銀子を『姉弟子』と呼ぶようになったのか?銀子は女流タイトルを求めたのか?二人の出会いと将棋を指した修行の日々、銀子の生い立ちと支えてきた人まで、ここに至るまでの背景が明らかになっていった展開でしたが、八一も今回は頑張りました(やっぱり過去にいろいろやらかしてたけどw)。大切な絆を取り戻した銀子の諦めない強い気持ちに心揺さぶられました。しかしエピローグの二人との因縁は…執念深そうで業が深いですね(苦笑) 
読了日:08月08日 著者:白鳥士郎
ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?4 ~好きの対義語は大好き~ (GA文庫)ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?4 ~好きの対義語は大好き~ (GA文庫)感想
妹・姫のところに転がり込んだバツイチの姉・妃。アラサー女子のお泊まり会に始まり、さらに初めてのカラオケ、初めての夏祭り、初めての浴衣姿と二人の夏が熱い第四弾。え、またもやあの制服姿…?からの怒涛の展開には思わず笑ってしまいましたが、親友の雪に妃も加わったダメ出しの連続に動揺して迷走&暴走する姫が残念すぎるというか何というか…でも桃田もやっぱり年頃の男の子だったんですね(苦笑)少しずつつ前進している二人はいいとして、前半の伏線が最後の最後で回収されて、さらにややこしいことになりそう?面白くなってきました。 
読了日:08月08日 著者:望公太
おいしいベランダ。 返事は7日後のランチで聞かせて (富士見L文庫)おいしいベランダ。 返事は7日後のランチで聞かせて (富士見L文庫)感想
就職活動の手がかりに、企業インターンシップに参加して自分がどう働きたいかを考え始めたまもり。一方、葉二は神戸への転職を言い出せないまま焦りを募らせる第七弾。まもりの弟・ユウキのエピソードはちょっと意外な展開でしたけど、まもりもいよいよ就職を意識していろいろ思うところが出てきて、友人たちを含めたそれぞれのスタンスが興味深かったですけど、ヘタレな葉二を見ていて二人の今後はどうなるのかと思ったら、まさかの急展開すぎてえええ?となりました。いやこれは次巻でどんな展開が待っているのか、俄然楽しみになってきましたね。
読了日:08月08日 著者:竹岡 葉月
かくりよの宿飯 十 あやかしお宿に帰りましょう。 (富士見L文庫)かくりよの宿飯 十 あやかしお宿に帰りましょう。 (富士見L文庫)感想
ついに始まる八葉夜行会。大旦那の“真実”と自分の気持ちに向き合った葵が、彼を救う協力者を得るため妖都を奔走する第十弾。大旦那を助けるため、かつて葵の料理を否定した大湖串製菓の八葉・ザクロと勝負したり、暁とお涼コンビで天狗の松葉を説得したり、葵自身が大旦那を探しに行ったり、仲間と協力しながら逆転を目指す総力戦的展開でしたけど、これまで積み重ねてきた様々な縁や、挑戦を忘れない葵の心意気が大きなポイントになってゆく展開にはぐっと来るものがありましたね。今巻で完結はしましたけど、後日談エピソードも期待しています。
読了日:08月09日 著者:友麻碧
蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)感想
蠱毒をこよなく愛し周囲から「毒の姫」とあだ名される斎帝国の第十七皇女・李玲琳。そんな彼女が最愛の姉である斎国の女帝・彩蘭の指示で魁国の王・楊鍠牙のもとへ嫁ぐ物語。華やかな衣裳や宝石より蟲が大好きな著者さんらしい強烈なキャラクターですけど、嫁ぎ先もまた鍠牙が命を狙われたりいろいろ物騒なところで、彼女の特技を活かしてその存在を認められてゆく展開はいいですね。姉に劣らず鍠牙も少しばかり執着気味なのはアレですが、結果から見れば水が合ったと言うかいい居場所を見つけられたのかな。続巻あったらまた読んでみたいです。 
読了日:08月09日 著者:宮野 美嘉
俺の妹がこんなに可愛いわけがない(13) あやせif 上 (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない(13) あやせif 上 (電撃文庫)感想
個人的に最終巻の京介の選択にえええ...とぶん投げてからもうこんなに時間が経ってましたか。高校3年の6月、桐乃のことで相談をするあやせと京介のifルート上巻。あいかわらずあやせにだけは変態な京介と、誤解であったことは薄々感づいていたあやせが、アキバデートをしたり一緒に妹ゲーをプレイしたり、夏コミに参加したりといろいろ積み上げてゆく展開でしたけど、この流れで決定的に何かがあったというよりは、ここまでの積み重ねがあっての今回の結末ということですかね。ここからどう関係性が変わってゆくのか続巻に期待ということで。
読了日:08月10日 著者:伏見 つかさ
あの日、神様に願ったことはII girls in the gold light (電撃文庫)あの日、神様に願ったことはII girls in the gold light (電撃文庫)感想
試練を無事に乗り越えた燈華の奇跡を見届けた叶羽。しかし、ようやく訪れた穏やかな日常を過ごす彼の前に、とある小説を手に告白してきた黄金井月泪の登場で事態は一変する第二弾。同じように神様から試練を与えられた月泪。未だ胸に後悔を抱き続けている叶羽と、友達をうまく作れない不器用な月泪に、すっかり正妻感が出てきた燈華先輩やAzureの二人たちも絡めての展開はとても眩しい青春でしたけど、もちろんそのままで終わるはずもなくて、けれどみんなに支えられながら信じて乗り越えた先に待っていた結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月10日 著者:葉月 文
吸血鬼に天国はない (電撃文庫)吸血鬼に天国はない (電撃文庫)感想
大戦と禁酒法で旧来の道徳が崩れ去った時代。非合法の運び屋シーモアのもとに、運んで欲しい荷物として正真正銘の吸血鬼の少女・ルーミーが持ち込まれる歴史ファンタジー。仕事上のトラブルから始まったルーミーとの同居生活。吸血鬼らしさを見せないルーミーと共に過ごすうちにシーモアの心境が変化してゆく中で、ふと気づいてしまったひとつの事実。確かに変わってしまった何かがあって、それでも二人の間には確かに育まれていたものがあって、ぶつかりあった本音の先にあった結末がとても自分好みでした。これは続巻に期待大の新シリーズですね。
読了日:08月11日 著者:周藤 蓮
榮国物語 春華とりかえ抄 五 (富士見L文庫)榮国物語 春華とりかえ抄 五 (富士見L文庫)感想
海宝はようやく宰相となったものの、政敵・白水は財政機関を司る三司という地位を利用してさらに妨害を仕掛け、春蘭は皇帝の勅旨をもって妨害を躱そうと画策する第五弾。結果に独裁へ繋がるのではという懸念が強まり、春蘭が何者かに攫われてしまい、莉珠が春雷の言動に不信感を募らせてゆく展開。今回はやや改革を急ぎすぎたことに対する貴族側の反動が出た感もありましたけど、貴族側も歪んだ使命感があったり保守的だったり面倒そうですね。とりあえず莉珠と春雷の方は何とか関係を修復できたようですが、春蘭と海宝の方ももう少し進展を期待。 
読了日:08月11日 著者:一石月下
さようならまでの3分間 (メゾン文庫)さようならまでの3分間 (メゾン文庫)感想
マンションの屋上から転落し事故死した女子高生の花村幸。自分の未練に気づけない彼女がAと名乗る謎の女性から『交通整理人』になるよう告げられる物語。後悔があってあの世へ行けない人に過去をやり直すための3分間を与える役割を担う彼女が出会った、すれ違ったままの婚約者、初恋の人と再会できなかった老婦人、勝てないまま死んだプロボクサー、自身の死に関わった幼馴染…。過去は変えられない中でいかに未練を解消するか、それぞれのやり方で向き合った人たちの真摯な選択は印象的でしたし、誤解が解けた二人の結末には救われる思いでした。
読了日:08月11日 著者:桜井 美奈
仕事ごっこ ~その“あたりまえ"、いまどき必要ですか?仕事ごっこ ~その“あたりまえ"、いまどき必要ですか?感想
「郵送」「印刷して配布」「とりあえず打ち合わせ」「手書き」「メールを送ったら電話で確認」「押印」「メール添付で圧縮してパスワードは別送」「ひたすらテレアポ」「とにかく相見積り、コンペ」「年末年始の挨拶や表敬訪問」「スーツ&ネクタイ」等々、仕事のスピードを遅くし、時間をムダにしている「仕事ごっこ」を挙げた一冊。確かにその通りだと思うしやってみたら問題ないことも多そうな気がするけど、この無駄をなくすためには正論をぶつけてもダメで、うまく根回しして感情的なものを懐柔していかないと上手く行かないんですよね(苦笑)
読了日:08月12日 著者:沢渡 あまね
Re:ゼロから始める異世界生活20 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活20 (MF文庫J)感想
『強欲』と『憤怒』の大罪司教が陥落し、なおも戦いの続く水門都市。冴えた銀の月に見守られながら、各地の仲間たちの奮戦が火花を散らす第二十弾。思わぬ形で果たされた剣鬼の過去の因縁の決着は、 アストレア家家にとっていろんな意味で何ともほろ苦いというか、ヴェルヘルム的には伝えるべきことは伝えられたというべきか...それ以外も決着こそついたものの謎多きプリシラ陣営の不気味さだったり、ユリウスやアナスタシアのことだったり懸念すべきことはたくさんあって、これから挑む新章がどういう展開を迎えるのか続巻に期待ということで。
読了日:08月12日 著者:長月 達平
「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実 (光文社新書)「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実 (光文社新書)感想
家族の経済学を専門とする著者が、経済学の観点から見た人々の意思決定、行動を分析した最新の統計を元に定量的に分析した一冊。結婚するための出会いと見合いの減少・インターネットの登場による変化、保育園がもたらす効能、育休の年数、母乳育児の是非や日本の低出生体重児の増加、離婚の状況まで、各国の数字とも比較しながら日本の家族の現状をとても分かりやすく書かれていて説得力がありました。離婚の各国事情や離婚率上昇のからくりも興味深かったですが、子供の幸せを考えると共同親権の導入は日本でも今後検討すべきかもしれないですね。
読了日:08月13日 著者:山口 慎太郎
ホームレス・ホームズの優雅な0円推理 (富士見L文庫)ホームレス・ホームズの優雅な0円推理 (富士見L文庫)感想
自己採点ではバッチリ合格圏内と自信満々だったのに、医学部合格発表では不合格だった岩藤すず。納得行かず答案用紙の保管部屋に忍び込んだ彼女が、血まみれの巨大な犬の足跡と副学長の死体を発見するミステリ。「ワトスン」として生きることを信条とする岩藤すずの前に現れた低コストに生きるホームズ。連続殺人事件に二人が挑むわりとテンション高めな展開でしたけど、真実は何とも苦笑いな結末だったというか…エピローグで明かされたホームズの過去を読んでそれまでの展開を見る目が少し変わりました。続巻あるなら続きをまた読んでみたいです。
読了日:08月14日 著者:森 晶麿
四月になれば彼女は (文春文庫)四月になれば彼女は (文春文庫)感想
恋人・弥生と1年後に結婚式をすることを決めた精神科医の藤代。そんな彼のもとに初めての恋人・ハルから手紙が届く、失った恋に翻弄される12ヶ月の物語。醒めた同棲生活を送る藤代の元に届いた、大学時代の恋人・ハルからの手紙。永遠に続くものだと信じていたかつての恋があったからこそ、つい今の穏やかな想いと対比して不安を生じさせてしまうわけですが、不器用な登場人物たちがそれぞれのやり方で、心残りだった苦い過去にしっかりと決着をつけて今の自らの想いに真摯に向き合い、葛藤を乗り越えようとする姿は心に響くものがありました。 
読了日:08月14日 著者:川村 元気
偽りの私達 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)偽りの私達 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
都市伝説として囁かれる【まほうつかい】。七月十七日から八日に時間が巻き戻った高校生・土井修治が、十七日に階段から落ちて死ぬ美少女・渡辺百香を救うため、彼女の死の原因を探り始めるミステリ。修治の大切な幼馴染・七瀬の彼氏と浮気したのが渡辺百香?そんな噂を聞いて調べ始めた修治が気づくスクールカーストを巡る不穏で狡猾な罠。読んでいくうちに浮かぶ先入観がたびたび裏切られ、新たな事実が明らかになるたびにガラリと構図を変えていって、荒削りではあるものの伏線を巧みに使いつつ、思わぬところに着地してみせた結末は見事でした。
読了日:08月14日 著者:日部 星花
忘却城 鬼帝女の涙 (創元推理文庫)忘却城 鬼帝女の涙 (創元推理文庫)感想
死者を蘇らせる術で発展した亀珈王国。名付け師が居を構える霊昇山に、死者の代弁機関、夢無鵡予言院からの使者が訪れ、二十四大鬼の一体に不穏な動きがあり退魔を要請する第二弾。剥州に現れた大鬼・鬼帝女に絡む様々な思惑と、北砂の民に起きた悲劇。予言院の夢無鵡・氾潤虎が暗躍する中で、舞蒐や北砂の民、鬼帝女などいくつものエピソードを絡めた物語が、鬼帝女討伐に向かう曇龍・魘神の決着によって収束していく展開は良かったです。前巻より読みすくなりましたがまだまだ重厚な世界観で、いろいろと気になる点も残っているので続巻に期待。 
読了日:08月15日 著者:鈴森 琴
ぬるくゆるやかに流れる黒い川ぬるくゆるやかに流れる黒い川感想
六年前ともに家族を無差別殺人でなくした同級生小雪と再会した大学生香那。犯人武内譲が拘置所で自殺し犯行動機等が不明なままだった事件の背景を、二人で改めて調べ始める物語。調べいくうちに明らかになってゆく追い詰められていった譲の心境と、世代を越えて女性嫌悪に取り憑かれた武内家の男たち。譲を虐待していた祖父と殺された祖父の弟。「からゆきさん」を絡めた武内家の呪いや、香那と小雪の壊れてしまった家族のエピソードは厳しかったですが、それでもきちんと向き合った二人の新たな一歩へと繋がる結末には救われるものがありました。 
読了日:08月16日 著者:櫛木 理宇
宝石吐きのおんなのこ9~少女への祈り~ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)宝石吐きのおんなのこ9~少女への祈り~ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)感想
これまでの経緯と真実を知るスプートニク、ナツ、ソアラン、イラージャ。そんな彼らのもとにクリューが行方不明になったとの知らせが入る第九弾。魔法使いファンションにまつわる真実とか、少女クリューがスプートニクのもとに来ることになった経緯が明らかになって、ユキさん昔から計算高いとかやっぱりこの人怒らせたら怖いとか意外な一面もありましたけど、総力戦となったクリュー奪還では彼女のために奮闘するスプートニクの真意もいろいろ垣間見えて微笑ましい気分になりました。でもそれでそのまま終わらない…(苦笑)早く続巻出して下さいw
読了日:08月16日 著者:なみあと
時をかける眼鏡 魔術師の金言と眼鏡の決意 (集英社オレンジ文庫)時をかける眼鏡 魔術師の金言と眼鏡の決意 (集英社オレンジ文庫)感想
嵐直撃の災害復興に必要な労働力確保として囚人の起用や、資金集めのため「観光資源」の有効活用をロデリック王に進言する遊馬。与えられた初めての休日で魔術師ジャヴィードから「南からの風の備えよ」という伝言を受け取る第八弾。周囲の人たちのために奔走していた遊馬の人の葛藤があって、伝言をきっかけに南に向かった遊馬たちが直面した思わぬ事態。今回は医学の知識を活かして窮地を救う展開でしたけど、そこに至るまでの展開が今後に向けたポイントだったんでしょうね。最後で美味しいところを持っていったフランシスさんは流石です(苦笑)
読了日:08月18日 著者:椹野 道流
一生夢で食わせていきますが、なにか。 (富士見L文庫)一生夢で食わせていきますが、なにか。 (富士見L文庫)感想
高校時代の先輩でプロのマンガ家を目指す啓汰先輩と再会したあすみ。マネージャーとして交渉役や雑務を引き受けた彼女が次々と直面するトラブルとその奮闘を描くお仕事小説。マンガ家の夢を反対したあすみをマネージャーに据えて、周囲の反対を押し切りマンガ家業を軌道に乗せてみせた啓汰先輩。職場で起きるトラブルに対処していくあすみに対する啓汰先輩の信頼は厚くて、外堀も着実に埋まって周囲もすっかり公認状態なのに、それに全然気づかないあすみを見てると啓汰先輩がちょっと可哀想になりますね(苦笑)二人の今後がまた読んでみたいです。
読了日:08月18日 著者:黒崎 蒼
透明なきみの後悔を見抜けない (講談社タイガ)透明なきみの後悔を見抜けない (講談社タイガ)感想
子供の頃から人助けが趣味だという柔らかな雰囲気の大学生・開登。そんな彼が出会った人々の手助けをして後悔を解消してゆく恋愛ミステリ。不登校の生徒を気にかける教師、ダンス仲間と仲違いしてしまった女の子、自らの後悔がわからない女子大生と、仕事に明け暮れるうちに大切なものを見失ってしまったネイリスト。出会った人々に寄り添いその後悔に一緒に向き合ってゆく開登という構図から、これまでのエピソードが次々と繋がってゆく中で見えてくるもう一つの真実があって、人のために奔走する優しい開登にもたらされた結末が素敵な物語でした。
読了日:08月19日 著者:望月 拓海
威風堂々惡女 2 (集英社オレンジ文庫)威風堂々惡女 2 (集英社オレンジ文庫)感想
毎日微量の毒を皇帝に盛り続けつつ煎じた薬を与えて、着実に名声を高め皇帝を依存させてゆく雪媛。そんな彼女と碧成の娘を産み後宮の女達を掌握していた寵姫・芙蓉が対立を深めてゆく第二弾。対立の激化を目の当たりにしても動かない皇后の過去。傍目には傲岸不遜に振る舞いながらも、身代わりの侍女を庇ったり、叶わなかったはずの悲恋を成就させてせみる雪媛と、彼女の傍らに寄り添い続ける青嘉の何とも複雑な距離感がいいですね。義姉との関係も気になるところですが、やはり冒頭の悲劇が意外な形で報われた結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月19日 著者:白洲 梓
店長がバカすぎて店長がバカすぎて感想
とにかく本が好きで〈武蔵野書店〉吉祥寺本店の契約社員として働く谷原京子、28歳。独身。「非」敏腕店長・山本の下で、文芸書の担当として次から次へとトラブルに遭いながら働くお仕事小説。日々入ってこない注文を嘆いたり、尊敬する先輩が辞めたりする中で、問題客や増長した作家、ワンマン書店経営者といったトラブルに対処しながら、意外な繋がりがあったりガリバー出版社に新卒で入社した元後輩の奮闘を知ったり、斜め上にバカすぎる店長にイライラしながら文句だらけの書店員に愛着を持っている主人公が迎えた結末はなかなか良かったです。
読了日:08月20日 著者:早見和真
ロクでなし魔術講師と禁忌教典15 (ファンタジア文庫)ロクでなし魔術講師と禁忌教典15 (ファンタジア文庫)感想
いよいよ迫る魔術祭典で総監督を務めることになったグレン。自由都市ミラーノを訪れた帝国代表の教え子たちと共にかつてない大舞台で各国代表に挑む第十五弾。王国と帝国の和平交渉もある中で行われる魔術祭典で暗躍する王国過激派の暗躍。グレンが舞台裏で奔走する大会は、絶体絶命の窮地を覆してみせるメイン・ウィザードのシスティーナが大活躍でしたけど、心境の変化があったルミアもまた大きな役割を果たしそうですね。いろいろな思惑が渦巻く中で影で操る面倒な黒幕も登場したりで、波乱必至の状況をどう収めるのか続巻に期待ということで。 
読了日:08月20日 著者:羊太郎
ラストラウンド・アーサーズ4 最弱の騎士と最も優れた騎士 (ファンタジア文庫)ラストラウンド・アーサーズ4 最弱の騎士と最も優れた騎士 (ファンタジア文庫)感想
魔人の力を引き出し覚醒したことで、心地よい日常を取り戻した凛太朗。その代償として世界から消失してしまった那雪を救うため聖杯の探索に挑む第四弾。相変わらずな瑠奈のクズさと部下をこき使うブラック企業っぷりには苦笑いでしたけど、凛太朗と瑠奈の主従関係だけでなく、これまでひたすら振り回され役だった最弱の騎士ケイ卿的にもひとつのターニングポイントになった聖杯探しでは、圧倒的正ヒロイン感がある那雪にも簡単には負けない瑠奈の成長を感じました。他の聖遺物を巡る動向や我道をゆく彼の行方も気になりますし今後の展開に期待です。
読了日:08月20日 著者:羊太郎
撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろIII ―弾丸魔法とゴースト・プログラム― (ファンタジア文庫)撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろIII ―弾丸魔法とゴースト・プログラム― (ファンタジア文庫)感想
再編成された結果、西の第二世代エクセリアが猛威を振るう凄惨な戦場へと変わり果てた世界。レインたちは戸惑いながらも亡霊の鍵を握る者カイセイの手掛かりを調べ始め、アスリーもまた悪魔の弾丸に思い悩む第三弾。重要人物を消して結果的により悪化した戦況。キーマンを調べるレインとエアの行動に疑念を抱くアスリー。目の前で悲劇を目撃したがゆえに悪魔の弾丸をなかなか許容できなくて、レインとエアに対する複雑な想いも相まって、仕方なかったと感じつつもこういう構図になるしかなかったんですかね…どういう決着を迎えるのか続巻に期待。 
読了日:08月20日 著者:上川 景
豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい8 (ファンタジア文庫)豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい8 (ファンタジア文庫)感想
紆余曲折の末シャーロットと念願叶い恋仲になったスロウ。幸せな気分の日々を過ごす中、ドストル帝国から王子ネオンと従者・スズが学園にやって来る第七弾。ネオン主従に振り回されながらも妙な親近感を覚えたスロウ。スロウが他の女の子からモテないようにいっぱい食べさせるシャーロットが微笑ましいですが、複雑な事情を抱えるネオンとスズの間にもまた確かな絆が感じられて良かったですね。シューヤは今回もまた空回りに終わったな…とか思ってたら、最後に思わぬ急展開が待っていてびっくりしました。本人の想いも気になるところで続刊に期待。
読了日:08月20日 著者:合田拍子
月とライカと吸血姫 (5) (ガガガ文庫)月とライカと吸血姫 (5) (ガガガ文庫)感想
共和国の宇宙開発が停滞するなか、資金力と組織力を武器に目覚ましい成果を上げてゆく連合王国。焦りを募らせる共和国政府上層部の無理難題と教官となったレフたちの苦悩が描かれる第五弾。今回は舞台を再び共和国に移しての物語でしたけど、予算も自由にも乏しい共和国側の劣勢と、何とか挽回しようと無理を重ねる状況で起きたやりきれない悲劇。共和国にも逆風が吹き荒れるまでは史実の宇宙開発史に近い展開でしたけど、勇気を持って立ち上がったレフとイリナが作り出した転機を、何とか希望ある未来へと繋いでゆく展開を期待したいところです。 
読了日:08月20日 著者:牧野 圭祐
後宮の烏 3 (集英社オレンジ文庫)後宮の烏 3 (集英社オレンジ文庫)感想
「梟」が残した羽根に自らの行く末を重ねる寿雪。それぞれの過去が少しずつ明らかになり、幾多の謎が繋がってゆく第三弾。泊鶴宮で起きた怪異に、賀州における烏漣娘娘への信仰を脅かす八真教の台頭、そして中書令の雲永徳が密かに探りをいれていた理由。思わぬ形で偶然判明した寿雪の意外な繋がり。高峻は烏妃を「烏」から解放する一筋の光明を見出し、寿雪の頼れる部下や彼女を慕う貴妃や女官も増えて、取り巻く状況は少しずつ確実に好転しているからこそ、今後寿雪自身がどうあるべきか問われてゆくのかもしれないですね。続巻に期待しています。
読了日:08月21日 著者:白川 紺子
下北沢インディーズ下北沢インディーズ感想
音楽雑誌でインディーズバンドの発掘コラム連載を任された新人編集者の音無多摩子。下北沢のライブハウスのマスター・五味淵の紹介でバンドマンたちを取材する多摩子が、思いがけない事件に遭遇するミステリ。壊されたデジタルティレイ、元カレの彼女の浮気疑惑、スタジオから盗まれたベース、ライブ中にドラマーが怒り出した理由、アカウントを乗っ取られたバンドの解散危機など、デビュー前のバンド事情に絡めた謎に遭遇する多摩子と、それを解決する探偵役の五味淵という役回りで、少し視点を変えると見えてくる真相と構図が印象的な物語でした。
読了日:08月22日 著者:岡崎 琢磨
日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)感想
学歴と年功が評価されてきた日本社会。「大企業型」「地元型」「残余型」に分類し、それがどのような過程で成立していったのか、雇用を軸に職務重視のアメリカやドイツなどとも比較しつつ解説した一冊。経済成長が続く時には増える正社員枠も頭打ちで、社会全体で高校進学率や大学進学率が上がってゆくと、誰もが期待するような職につけなくなるのは確かに必然なのかなとも感じました。雇用改革が叫ばれて久しいですが、これまでの経緯を読むとそう単純なものでもなくて、何かを変えれば良くなるという簡単なものではないことがよくわかる一冊です。
読了日:08月23日 著者:小熊 英二
本屋の店員がダンジョンになんて入るもんじゃない! (ダッシュエックス文庫)本屋の店員がダンジョンになんて入るもんじゃない! (ダッシュエックス文庫)感想
「一生本を読んで暮らしたい!」本を愛してやまない青年・アシタが、その想いとは裏腹に彼の知識を欲する顔馴染みの女冒険者エルシィにダンジョンへ連れて行かれるドタバタファンタジーコメディ。貴重本欲しさにダンジョンに潜ってみればゴブリン相手も厳しい貧弱っぷりで、エルシィやその仲間に頼りっぱなしのアシタでしたけど、強力なゴーレムを相手にするという絶低絶命の窮地に、彼の知識と仲間の力をあわせて打開してゆく展開はなかなか面白かったです。エルシィとの関係も気になりますが、一緒に潜った仲間たちもワケありのようで続巻に期待。
読了日:08月23日 著者:しめさば,切符
ぼくたちのリメイク Ver.β (MF文庫J)ぼくたちのリメイク Ver.β (MF文庫J)感想
会社が倒産した橋場恭也が偶然河瀬川と出会い、サクシードソフトのお荷物部署・第13開発部に拾われるもう一つの物語。どういう展開になっても恭也に絡んでくる河瀬川の使い勝手の良さというか、ヒロイン力みたいなものを感じる展開でしたが、雑務ばかりの第13開発部を業務改善して時間を作り出し、同僚理都子の企画アイデアを活かしながら仲間のやる気に火をつけ、企画を何とか成立させるべく奔走する恭也の場所を選ばない有能ぶりと、諦めない想いが熱いルートでした。しかし立ちはだかる常務もなかなか強敵で、これはこれで今後が楽しみです。
読了日:08月23日 著者:木緒 なち
わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)感想
最寄り駅が同じ以外接点がなく、毎朝顔を合わせるだけだった先輩と後輩。そんな二人がある日『1日1問だけ、どんな質問にも絶対正直に答える』という約束を交わす青春ラブコメディ。大部分の生徒と違う二人だけが通う通学電車で、話すことはなくても存在を意識していた二人。ふとしたきっかけから一つずつ質問を積み重ねていって、話すことや会うことが増えいくことで少しずつ二人の距離感も変わっていって、ミステリアスな小悪魔・後輩ちゃんの言動に先輩が振り回される二人の関係がこれからどうなってゆくのか続巻に期待したいシリーズですね。 
読了日:08月23日 著者:兎谷 あおい
本業はオタクです。-シュミも楽しむあの人の仕事術 (単行本)本業はオタクです。-シュミも楽しむあの人の仕事術 (単行本)感想
銀行員・看護師・証券会社・戦略コンサルタント・メーカー海外営業・ITエンジニア・マンガ編集者・建築会社/着付け師・芸能マネージャー・アニメ制作進行…10人のオタク女子たちがどう仕事に向き合い、趣味に勤しんでいるのか、「仕事とオタ活の両立」の工夫や、知られざる「オタ活に向いた仕事」も徹底取材した一冊。 彼女たちはみんな自分の人生にアグレッシブで、オタで得た経験や知識も上手く活用しながら仕事も趣味も満喫している姿が印象的でした。オタク女子が幸せになるためのキャリア相談も興味深く、いろいろ刺激を受ける一冊です。
読了日:08月23日 著者:劇団雌猫
鎌倉御朱印ガール (集英社オレンジ文庫)鎌倉御朱印ガール (集英社オレンジ文庫)感想
いつの間にか友人たちに彼氏ができてひとり呆然とした女子高生・羽美が、衝動的に向かって江ノ島の弁財橋で御朱印帖を拾い、それをきっかけに持ち主の男子高校生・将と会う青春小説。同い年の将と出会った先でなぜか弁財天と毘沙門天のケンカに巻き込まれて、二神の代理として将と鎌倉七福神御朱印集めで勝負をすることになってしまった羽美。困惑しながらも手探りで始まった不器用な二人の七福神巡りは初々しくて、困難にきちんと向き合い成長してゆく二人のその後をもう少し読んでみたかった気もしますが、読みやすくなかなか素敵な物語でした。
読了日:08月24日 著者:後白河 安寿
初恋ロスタイム -First Time- (メディアワークス文庫)初恋ロスタイム -First Time- (メディアワークス文庫)感想
普通の高校生・相葉孝司に突然起こった「自分以外の時が1時間だけ止まる」不思議な現象。好奇心を抑えられず学校の外に繰り出した彼が、そこで自分以外にも動ける女の子・篠宮時音と出会う青春小説。最初は篠宮に警戒されながらも、時が止まった世界「ロスタイム」の中で一緒に楽しい時間を過ごすうちに、少しずつ確実に彼女に心惹かれてゆく孝司。けれど彼らにとってかけがえのない貴重な時間には原因があって、高校生ではままならない残酷な現実があって、それでも諦めなかった孝司の覚悟と、その引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月24日 著者:仁科 裕貴
初恋ロスタイム -Advanced Time- (メディアワークス文庫)初恋ロスタイム -Advanced Time- (メディアワークス文庫)感想
高校入学と共に幼馴染・比良坂未緒に告白をし、見事玉砕した桐原綾人。気まずさで互いに言葉を交わす事もなくなったある日、突然「自分以外の時が止まる」という不思議な現象を彼女と共有するもうひとつの物語。日常では相変わらずな二人の関係と、昔のように接することが出来る時が止まった世界。「ロスタイム」で未緒と綾人が時間を共有することになった理由。思ってもみなかった急展開を打破してみせたのは二人がこれまで地道に積み重ねてきた成果で、最後の最後で明かされる破壊力抜群な結末には自分もものの見事にやられたと思いました(苦笑)
読了日:08月24日 著者:仁科 裕貴
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員VII」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員VII」感想
本好きのお茶会で昏倒しエーレンフェストに強制送還されたたローゼマイン。神殿での読書三昧の日々を過ごせるのかと思いきや、聖典から謎の言葉と魔法陣が浮かび引き籠もり生活が一変する第四部第七弾。立場が変わっても本質は変わらず、知らなくてもいいことをつい知ってしまって、面倒ごとに巻き込まれてゆく展開は相変わらずですね(苦笑)それで彼女を擁するエーレンフェストの特異性が中央でも浮き彫りになってきている感。個人的にはお似合いなハルトムートとクラリッサだったり、コルネリウスとレオノーレのエピソードだったりが好みでした。
読了日:08月25日 著者:香月美夜
手のひらの楽園手のひらの楽園感想
天真爛漫な夕陽ノ丘高校「エステ科」2年園部友麻の波乱な日々。全寮制の「仕事を学ぶための高校」で疲れたお母さんを癒やすためにエステティシャンを目指す青春小説。離島に育ち父親がおらず家は貧乏で、奨学金を借りての高校入学後に母親も行方知れずになった友麻。わりと悲惨な境遇でも楽観的で、素の自分のままでぶつかっていく彼女が突然告白されたり同級生の諸事情に巻き込まれたり、実は生きていた父親や初めて恋を知ったり、周囲の人たちに支えられながらひとつひとつ向き合って、ちょっぴり大人になってゆく展開はなかなか良かったですね。
読了日:08月26日 著者:宮木 あや子
いのち短し、踊れよ男子いのち短し、踊れよ男子感想
一目惚れした清香に誘われ舞い上がり、興味のなかった日本舞踊の発表会を見た大学生の駿介。そこで華やかな舞台で堂々と踊る吉樹と出会い、日本舞踊に魅せられてゆく青春小説。清香に「踊りの上手い人が好き」と言われて下心たっぷりの稽古通いを始めた駿介に、容赦なく欠点を指摘する師匠の息子・吉樹。踊りの上手さは認めざるを得ない吉樹にも日舞への複雑な想いがあって、一緒に踊ることになった二人が抱える葛藤と、真摯に向き合おうとする気持ちに向き合いながら、お互い刺激し合えるいい関係になってゆく展開にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月27日 著者:安倍 雄太郎
魔弾の射手: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫 ち 7-35 nex)魔弾の射手: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫 ち 7-35 nex)感想
廃病院で相次ぐ転落死。一人の看護師の転落死も自殺が有力視される中、頑なに否定する娘の想いに応え鷹央と小鳥たちが謎を解くことを決意する新章第三弾。ネットで噂される廃病院での幽霊騒ぎの正体と、痕跡が残らない魔弾によって新たに起きる転落死。要所で効いていた鴻ノ池を絡めた三人の息の合ったやりとりの数々には微笑ましい気持ちになりましたけど、今回の真相はちょっとマニアックというか、医療知識ないとなかなか難しかったですね(苦笑)スポット的な登場かと思っていた新キャラがまさかのレギュラー化なるか、続巻に期待ということで。
読了日:08月27日 著者:知念 実希人
最後のページをめくるまで最後のページをめくるまで感想
使い勝手のいい女が隠していたもの、詐欺に手を染めた大学生のわずかばかりの犠牲、死体が火葬されるまで落ち着かなかった理由、夫の浮気発覚から始まった意外な結末、ひき逃げされた息子の復讐を誓う母の顛末の5つのエピソードから構成される連作短編集。緊迫感ある展開の先にあった意外な結末だったり、手に染めた過去の因果応報だったりで、作中で主人公の心境が変わっていったとしても、だからといってそうそういい感じに終わらせたりしないあたりがむしろ新鮮で印象的な物語でした。個人的には冒頭の「使い勝手のいい女」が良かったですね。 
読了日:08月28日 著者:水生 大海
夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去 (講談社ラノベ文庫)夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去 (講談社ラノベ文庫)感想
友人・カッツンの家に居候させてもらいだらけた日々を送る23歳、職歴半年のニートの天木颯。そんな彼が夢をコントロールする方法を記載したブログを見つける物語。颯が抱える10年前に交通事故で死んだ初恋の女の子・霧崎紗耶香に対する3つの後悔。リアルでは相変わらずな日々を送りながら、夢の世界で紗耶香と会うことにのめり込んでいく颯。著者さんらしどこか気怠そうな世界観で、夢の世界で背中を押してくれた紗耶香や、ダメンズな彼を見守るマキたちに出会い、積み重ねた思いを胸に新たな一歩を踏み出す展開はなかなか良かったですね。
読了日:08月28日 著者:園生 凪
世界は愛を救わない (講談社ラノベ文庫)世界は愛を救わない (講談社ラノベ文庫)感想
幼馴染で文芸部に所属し、ささやかな特殊な力を持つ壇上貫地と石野美香、阿久津吾郎。その力を使って世界征服を目指す彼らが、目的を叶えるために求めていた能力を持つ後輩・開田環子と出会う青春小説。それぞれが抱える人に言えない密かな想いを叶えるため世界征服を目指していた三人と、その危うくも均衡していた彼らの関係に波紋を投げかけた環子の能力。世界征服のお題目はやや消化不良でしたけど、葛藤しながらも決着をつけてゆく三者三様の決断はどこまでも自らの想いに真摯で、彼らのその後が描かれたエピローグがとても印象的な物語でした。
読了日:08月28日 著者:海老名 龍人
空飛ぶ卵の右舷砲 (3) (ガガガ文庫)空飛ぶ卵の右舷砲 (3) (ガガガ文庫)感想
大阪にタワー級の樹竜が出現したとの情報を聞き、新たな稼ぎを求めて向かうヤブサメとモズ。その泥炭を身に纏うタワー級が突如北上を始め、最悪クラスの災禍を前にヤブサメとモズがタワー級へと立ち向かう第三弾。愛着のある場所への想いを知ってしまったからこそ、より対応が難しい大崩壊以後最悪の樹竜がもたらす災禍。その対応で足並みが揃わない人類側。様々な思いが錯綜する中で、それを乗り越えて立ち向かうハヤブサたちの熱い戦いや、女王号を整備して祈ることしかできないツバメの想い、彼を取り巻く人間関係の機微が要所で効いていました。
読了日:08月29日 著者:喜多川 信
常敗将軍、また敗れる 3 (HJ文庫)常敗将軍、また敗れる 3 (HJ文庫)感想
後継問題でシャルナの叔母ライミリアが主導するアラストラ派とザルツボルグが介入するネビル派に割れるサラマド公国。傷を癒すために滞在するダーカスが調停役を務めることになる第三弾。今回は直接の戦争ではなく、後継者問題をどう収めるのかという調停役で、心情的に叔母を支持したいシャルナ、両派と交流を重ねてゆきライミリアの心情を見抜いたダーカス、ザルツボルグ側の思惑も絡みあって二転三転する状況で、シャルナやティナの成長も促しつつ、大局的な視点から見事な落としどころを見出すダーカスの手腕が光りました。続巻も期待してます。
読了日:08月29日 著者:北条新九郎
魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 9魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 9感想
<魔王>シアカーンの情報を得るため、そして黒花の治療で不安を抱くネフィを元気づけるため、ネフィとオリアスを引き合わせる決心をするザガン。しかし当のオリアスはメッセージを残して姿を消し二人は聖都へ向かう第九弾。新婚旅行(仮)で二人っきりになると途端にどうしていいかわからなくなる初々しい感じが萌える展開でしたが、聖都では聖騎士にビブロンスたちも集結して、いわくありげな伝承や因縁やらも明らかになって、相変わらず分厚いのにいろいろありすぎて、楽しいけれどすっきり終わらないのも仕方ない(苦笑)続巻も期待してます。 
読了日:08月30日 著者:手島史詞
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました5 (角川スニーカー文庫)真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました5 (角川スニーカー文庫)感想
賢者アレスの強襲を退け平穏な日々を取り戻したレッド。リットへ最高の宝石を贈ろうと決意したレッドは「世界の果ての壁」に向かい、道中で意外な仲間と再会する第五弾。レッドを気にかけ探していた、かつての仲間でハイエルフのヤランドララ。彼女と合流して向かった宝石を巡る冒険は美味しい食事や温泉といったのんびりな出来事だけでなく、望むものをえるための難しい戦いもありましたけど、その過程で今のレッドが得た幸せをヤランドララも感じてくれましたかね。気ままで幸せなスローライフ、気になるところも出てきましたが続巻が楽しみです。
読了日:08月30日 著者:ざっぽん
獣の巫女は祈らない (講談社X文庫)獣の巫女は祈らない (講談社X文庫)感想
獣を祀り獣の耳と強靭な肉体をもつ一族が暮らす奥見島。その強さを認められ「獣の宮の巫女」に選ばれた奥見族の娘・なぎが流刑に処された明日何の姫と出会う和風ファンタジー。父が皇帝の後継者争いに敗れ、「姫」ということで奥見島に流された迅と、思いもよらなかった形でその正体を知ってしまうなぎ。そこに島の火山が胎動を始めて、都の異変も相まって巻き込まれてゆく二人が、運命に立ち向かい自らの手で切り開いてゆく展開は今後に期待してもいいんですかね。運命に翻弄された琉貴姫も結構幸せだったように思えた結末には救われる思いでした。
読了日:08月31日 著者:中村 ふみ,THORES 柴本

読書メーター

このラノ2020投票前に読んでおきたいオススメ新作ライトノベル20選

 

毎年恒例の「このライトノベルがすごい」、今年も9月に投票開始すると思うんですが、それに向けて何か企画をできないかと考えて、投票対象期間中に発表された新作ライトノベルのうち、自分が読んでオススメしたいと思った作品を紹介することにしました。

 

セレクトとしては2018年9月から2019年8月に刊行になった作品を対象としています。最初はいったん選んだ20作品を上から10作品まで絞り込んだのですが、実際に並べてみたらさすがに選択肢として狭いと思ったので20作品に戻しました(苦笑)単行本は最後の「Unnamed Memory」のみですが、これは自分好みのクラシカルなラブロマンスファンタジーなのでぜひ読んでみてほしいシリーズです。

 

気になる本があったらぜひ手にとって読んでみて下さい。投票に向けて少しでも参考になれば幸いです。

 

1.七つの魔剣が支配する (電撃文庫)

名門キンバリー魔法学校に入学したオリバーが運命的な出会いを果たしたサムライ少女・ナナオ。魔法生物のパレードから始まるトラブルの連続に巻き込まれつつ出会った仲間たちと乗り越えてゆく学園ファンタジー。器用に魔法を応用しながら使いこなすオリバーと剣に突出した力を持つナナオを中心に、それぞれの想いを抱えながら入学した仲間たちと力を合わせ、危機的状況の連続を乗り越えて絆を育んでゆく展開がなかなか良かったからこそ、深い因縁を感じさせるエピローグが今後の波乱を予感させて、ここからどうなるのか楽しみな新シリーズですね。現在3巻まで刊行。

2.クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫

第13回小学館ライトノベル大賞<ガガガ賞&審査員特別賞>

クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫)

クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫)

 

異世界の魔人召喚に失敗したクラスメイトの美少女・藤原千影。不可抗力で彼女を使い魔にしてしまった落ちこぼれ魔術師・芦屋想太の主従関係を描く魔法学園ラブコメ。千影と融合した皇女で想太に執着する強力な異世界の魔人ソフィア。不本意な同居生活を始めた二人のツンデレ気味なテンポの良い掛け合いには確かな積み重ねがあって、自分を救ってくれた千影を取り戻すために想太が立ち上がり、千影が魔人相手に見事決着をつけてみせる展開にはぐっと来ました。過去の因縁を抱える主従関係がこれからどうなるのか、続巻にも期待大の新シリーズですね。9月に2巻目が刊行予定。

3.処刑少女の生きる道 (GA文庫)

第11回GA文庫大賞<大賞>

処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― (GA文庫)
 

過去に起きた人災で異世界からの召喚者は見つけ次第処刑される世界。躊躇なく冷徹に任務を遂行する処刑人の少女・メノウが、迷い人の少女アカリと運命の出会いを果たすファンタジー。不可避に思えた運命をあっさり乗り越えるアカリと、そんな彼女に調子が狂わせながらも決着をつけるべく二人で旅するメノウの距離感がなかなかいい感じで、それに処刑人補佐のモモや王の娘アーシュナといった魅力的なキャラを絡めて展開する物語の安定感には驚かされました。ワケありな二人の旅がこれからどのようなものになるのか、続巻が楽しみな新シリーズですね。9月に2巻目が刊行予定。

4.リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

第13回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>

リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

 

塵禍で文明が一度滅び、砂塵を異能力に変換できる「砂塵能力者」が力を持つ近未来。因縁の復讐相手・スマイリーを追うチューミーが、利害の一致から一時的に粛清官に協力し、ワケありの粛清官・シルヴィとコンビを組む近未来SF復讐譚。特殊な事情を抱えていたシルヴィと出会い、最初は反発しながらも徐々に育まれていく相棒としての信頼感。テンポよく進む中でスマイリーと追う二人を巡る因縁も明らかになって、何度も葛藤と絶望に直面する異端のバディが待ち望んだ宿敵との対峙と決着、確かな絆が垣間見えた結末にはぐっと来るものがありました。

5.ロードス島戦記 誓約の宝冠 (角川スニーカー文庫)

ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)

ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)

 

呪われた島ロードスに平和が訪れて百年、フレイムの王位継承者に禁忌を犯すディアスが現れ、不戦の誓いに仇なす帝国に対抗すべくマーモ公国の王子・ライルたちが立ち上がる新たなロードスの騎士を巡る物語。前作から百年後の世界で圧倒的な力を誇るフレイム王国を軸とした争乱に、マーモ公国の王子・王女たちがそれぞれ動き出す群像劇的な展開でしたけど、特にここからどう状況を覆すのか期待したい主人公・ライルと、あえてフレイムに身を投じたその兄・ザイードという対照的な二人が物語を盛り上げてくれそうです。いやこれは続巻が楽しみですね。

6.あの日、神様に願ったことは (電撃文庫)

あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

 

一年に一度、願いが叶う宿星市に住む風祭叶羽が、十七歳の誕生日に出会った先輩・逢見燈華。願いを叶えるために星の幸魂の試練を課された燈華と、姉を喪い傷心を抱える叶羽の優しくて少し痛い奇跡の青春小説。病床にあった姉との悔いの残る別れから、写真を撮ることを止めてしまった叶羽が、人知れず試練を抱えていた燈華と出会い、振り回されながらも惹かれていく展開で、登場人物たちの不器用で甘酸っぱい想い、そして絶望を救おうと奔走する真摯で一途な想いがもたらした奇跡はとても素晴らしかったです。続巻も気になる期待の新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

7.友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

 

青春の一切を非効率とする俺・大星明照が目指す伯父の会社への就職。ウザい親友の妹・彩羽に絡まれつつ、就職の条件として提示された幼馴染従妹・真白の偽彼氏役に挑む青春ラブコメディ。学校では存在感皆無の生活を送る明照と、彼に絡み部屋に入り浸る親友の妹・彩羽、最悪の再会から険悪な雰囲気の真白。親友を含めた周囲の登場人物にはそれぞれ抱える事情があって、陰キャラに甘んじる明照が仲間のためなら頑張る姿を見ると、彼らに慕われているのも納得ですね。気になる関係に投げ込まれた波紋で物語がどう動くのか、今後に期待大の新シリーズ。 現在2巻まで刊行。

8.幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

 

脈アリと思っていた片思いの相手・白草に彼氏ができたと知った高校生・丸末晴。失意の彼に以前告白してきた幼馴染・黒羽が復讐を持ちかける青春ラブコメディ。美少女で芥見賞受賞の現役女子高生作家・白草と、陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系の黒羽。偽恋人として白草を挑発したり、白草の恋人という先輩と勝負したり、だいぶ拗らせたそれぞれの恋愛模様にもう素直になれよ…と思いましたけど、甘酸っぱい青春の先には斜め上の結末が待ってました(苦笑)そんな彼らだからこその新展開もあって、今後に期待大の新シリーズですね。

9.千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

第13回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

 

クラス委員に指名されたトップカーストの千歳朔。担任から引きこもり生徒の更生を頼まれ、自信回復の手伝いをする青春小説。仲間の協力も得ながらあの手この手で引きこもりの健太を引っ張り出してみせた朔。そんな彼が魅力的な仲間やヒロインたちに信頼されるのも、周囲の期待に真摯に向き合い、大切なもののため誰かのために奔走することを惜しまないからで、テンプレートなリア充論を論破してみせる彼が、時折垣間見せる本音や葛藤がとても印象的でした。彼の恋愛模様やワケありの過去も気になりますし、続巻が楽しみな期待の新シリーズですね。10月に2巻目刊行予定。

10.継母の連れ子が元カノだった  (角川スニーカー文庫)

中学生の時に恋人となり些細なことですれ違い、卒業を機に別れた伊理戸水斗と綾井結女。そんな二人が高校入学を機に再婚した親の再婚相手の連れ子として同居する青春ラブコメディ。思ってもみなかった形での最悪の再会と些細なことで衝突する二人。終わったはずなのにふとした拍子に思い出す黒歴史に赤面し、素直になれないけれど何だかんだ言いながらお互いの存在を気にかけていたり再評価したり。恋愛ROM専やぐいぐい介入してくる友人たちに振り回されつつ、再び少しずつ育まれてゆく二人の関係がどう変わってゆくのか続編がとても楽しみです。現在2巻まで刊行。

11.キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

 

余命半年を宣告されて大学を中退し実家でニートと成り果てた松本修。昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れた修が、かつて突き放した因縁の幼馴染・桐山鞘音と再会する青春小説。人生に絶望して投げやりな日々を送る修の後悔と、シンガーソングライターとして不調に陥り戻ってきた鞘音の覚悟。トミさんを介して昔のような不器用な二人の交流が再開して、鞘音と最後の共演のために覚悟を決めて自らを追い込んでゆく修。その過程で取り戻してゆくお互いの大切な想いと、彼らの決意がもたらしたエピローグにはぐっと来るものがありました。現在2巻まで刊行。

12.夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

第13回小学館ライトノベル大賞<ガガガ賞&審査員特別賞>

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

 

海に面する田舎町・香崎。家族崩壊させた過去を悔やむ高校生・塔野カオルが、クラスで浮いた存在になっていた転校生・花城あんずと互いの欲しいものを手に入れるため協力関係を結ぶ青春小説。夏の日のある朝、塔野カオルが偶然耳にした、中に入れば年を取る代わりに欲しいものが何でも手に入る『ウラシマトンネル』の都市伝説。周囲との関係を拒絶していたあんずの言動はなかなかぶっ飛んでいましたが、彼女との協力関係から始まった二人の不器用なやりとりはとても甘酸っぱくて、大切なものに向き合った二人の結末にはぐっと来るものがありました。

13.子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

 

両親が共働きで5歳の妹・蕾のために日々を過ごす子守リ男子・新垣日向。そんな彼が偶然クラスメイトの芹沢悠里とスーパーで出会ったことをきっかけに、その高校生活が変わってゆく青春小説。蕾の可愛らしさに魅せられ、日向を意識するようになってゆく悠里。そんな二人を面白がる悠里の親友・唯やヒロインたちに振り回される日向の親友・雅も関わるようになって、疎遠になっていた後輩・日和との再会もあって。物語としてはまだまだこれからな感もありますが、変わり始めた日向の高校生活がどうなってゆくのか、今後に期待大の新シリーズ。現在2巻まで刊行。

14.ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

 

突然失踪した卓球部のエースで幼馴染の羽麗。父親の抱える8000万の借金返済のため彼女が裏賭場で戦うことを知った坂井修が、幼馴染を救うため共に命賭けの無謀なギャンブルに挑む物語。ゴスロリ卓球は一見微笑ましいのにレバレッジの変動で勝負と獲得金額が一致しないヤバイ闇卓球で、一歩間違えば奈落の底という緊張感のある状況でしたけど、卓球以外は残念美少女の羽麗とお世話係と化していた修の距離感や、お互いが傍らにいたらどんな境遇でも信じて頑張れると思えてしまう幸せそうな二人の関係にはぐっと来るものがありました。現在2巻まで刊行。

15.聖剣学院の魔剣使い (MF文庫J)

聖剣学院の魔剣使い (MF文庫J)

聖剣学院の魔剣使い (MF文庫J)

 

来たるべき決戦に備え自らを封印した魔王レオニス。しかし1000年の時を超えて目覚めた時には10歳の少年の姿で、聖剣学院に所属する少女・リーセリアに保護される学園ソードファンタジー。魔族も魔術もなく、聖剣を武器に未知なる敵・ヴォイドと戦う1000年後の世界。聖剣を発現できなかったりと訳ありなお姉さんたちの部隊に所属し、彼女たちのありように少しずつ感化されて、ヴォイドとの戦いに身を投じてゆく展開には安定感があって面白かったです。ヒロインたちとの関係に1000年前の因縁もあって、今後に期待の新シリーズですね。9月に2巻目が刊行予定。

16.撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろ ―弾丸魔法とゴースト・プログラム― (ファンタジア文庫)

第31回ファンタジア大賞<大賞>

機甲車と弾丸魔法による凄絶な戦争が続く世界。戦いの中で亡霊を名乗る少女・エアと出会い、被弾者の存在・功績を消滅させる悪魔の弾丸を入手した学生兵・レインが、戦争を終わらせようと立ち上がるミリタリックファンタジー。授けられた弾丸を使って世界を再編していくレイン、謎めいたエアの過去と亡霊を巡る因縁。レインの学生らしい生活と背中合わせの容赦ない戦争の凄惨さがうまく描かれていて、因縁の決着をつけるために戦う二人の間で育まれてゆく絆が印象的でした。現在3巻まで刊行。

17.葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

第24回スニーカー大賞<金賞>

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

 

様々な種族がひしめき合う小国ランタン。流浪の少年メルがランタン王に語学を買われ政略結婚を控える豹人族の姫シャルネの教育係に抜擢、なりゆきで次期王に任命され敗戦必至の戦いに挑むファンタジー。常に優しいメルに惹かれてゆく奔放な姫君・シャルネ。婚姻が最悪の形で破談となった巻き添えで亡国の危機に陥ったランタン。シャルネと並び立つ弱小国王として仲間の助力を得て異なる種族の力を糾合し、熱い想いと知略を尽くして大軍に立ち向かいつつ、巧みな心理戦で勝利を手繰り寄せる展開にはぐっと来るものがありました。続編も期待してます。

18.1/2―デュアル― 死にすら値しない紅 (角川スニーカー文庫)

殺されヒトとしての一部分を失い、引き替えに特殊能力を得て生き返る偽生者。偽生者を殺し直すために生きる限夏が、不老不死な偽生者の少女・伴を相棒とする近未来SF。ぎこちない距離感から始まった二人が挑む、偽生者による国家統一を掲げたテロ事件発生と、首謀者と伴を巡る凄惨な因縁。そんな彼女に限夏がいかにして並び立つ存在になりうるのかが問われる展開でしたけど、絶妙のタイミングで複雑な過去や葛藤も絡めつつ、絶望する彼女が直面する最悪の状況にも最後まで諦めずに挑み、見事に伴の相棒たることを証明してみせた結末は見事でした。

19.君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)
 

数百年続いた「帝国」と「王国」の戦争。その終戦記念日の慰霊祭で皇帝と国王を殺した「災厄の魔女」アンナ・マリアが世界を敵に回して戦うファンタジー。交互に語られる過去と現在、アニーとユージーンの運命的な出会いとその関係、そしてアニーの弟分・アローンとの邂逅による関係の変化。過去が明らかになってゆくたびに見えているものの印象がガラリと変わっていって、因縁に決着をつけた結末にすら皮肉な事実が提示されてしまう展開に思わず唸らされました。そうだったのか…毎回違うジャンルの作品描くのにそのインパクトは相変わらずですね。 

20.Unnamed Memory  (電撃の新文芸)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

 

幼い頃に受けた『子孫を残せない呪い』を解呪するため、強国ファルサスの王太子・オスカーが試練を乗り越えたものに望みのものを与える魔女・ティナーシャの塔に挑むファンタジー。解呪が容易でなく呪いに負けない女であればいい、という状況で目の前に好物件がいたことに気づき求婚するオスカー(苦笑)わりとシリアスな展開ですが繰り返される二人のやりとりが微笑ましくて、感化されつつも容易には頷きそうもない孤高の魔女・ティナーシャが、どんどん強くなってゆく諦めが悪そうなオスカー相手にどこまで頑張れるのか今後に期待のシリーズです。9月に3巻目が刊行予定。

9月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

いろいろ忙しくて更新が止まってましたが、毎月恒例の 9月の購入検討&気になる本ほかピックアップです。9月はもともと刊行点数の多い時期ではありますが、それに比例してか気になる本がとても多いです(いつも同じことを言っていますがw)。ここからできるだけ読みたいとは思っていますが、今も先月刊行分すらまだ読み終わっていない状態で、カオスな読書計画には終わりが見えないですね…(苦笑)

 

9月の既刊シリーズとしてはなんといっても個人的に期待大の「Unnamed Memory」の3巻目、そして延期が続いていたHJ文庫「常敗将軍、また敗れる」3巻目、ガガガ文庫コップクラフト」とファンタジア文庫キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」の7巻目、個人的に最後まで読みたい「ファイフステル・サーガ」の4巻目あたりが注目ですかね。どんな展開になるのか気になる電撃文庫スイレン・グラフティMF文庫J聖剣学院の魔剣使い」の2巻目あたりも気になるところです。

 

注目の新作も具体的なセレクトはこれからの部分が多いですが、現時点での注目としては電撃文庫シャドウ・サーガ」、犬村小六さんの新作・ガガガ文庫プロペラオペラ」、白川紺子さんがタイガで初挑戦の「三日月邸花図鑑」、勘解由小路三鈴エピソードらしいダッシュエックス文庫HELLO WORLD if」、瀬尾つかささん著による「魔弾の王と聖泉の双紋剣」、芝村裕吏さんのMF文庫Jやがて僕は大軍師と呼ばれるらしい」、単行本で相沢沙呼さんの「medium 霊媒探偵城塚翡翠」を挙げておきたいと思います。

シャドウ・サーガI -選定の剣と呪いの黒剣- (電撃文庫)

シャドウ・サーガI -選定の剣と呪いの黒剣- (電撃文庫)

 
プロペラオペラ (ガガガ文庫)

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

 
三日月邸花図鑑 花の城のアリス (講談社タイガ)

三日月邸花図鑑 花の城のアリス (講談社タイガ)

 
魔弾の王と聖泉の双紋剣 (ダッシュエックス文庫)

魔弾の王と聖泉の双紋剣 (ダッシュエックス文庫)

 
medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

 

 

ヒーロー文庫(8/29発売)
・第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様3 翠川稜/赤井てら

講談社ラノベ文庫(8/30発売)
・【新】世界は愛を救わない 海老名龍人/ももいろね
・【新】夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去 園生凪/黒田ヱリ

HJ文庫(9/1発売)
・常敗将軍、また敗れる3 北条新九郎/伊藤宗一
・魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?9 手島史詞/COMTA

スニーカー文庫(9/1発売)
・真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました5 ざっぽん/やすも

文春文庫(9/3発売)
・どうかこの声が、あなたに届きますように 浅葉なつ

アイリスNEO(9/3発売)
・エルフ公爵は呪われ令嬢をイヤイヤ娶る 江本マシメサ/くまの柚子

小学館文庫キャラブン!(9/6発売)
陰陽師と無慈悲なあやかし 中村ふみ/睦月ムンク
・マエストロ・ガールズ このコルネット、憑いてます。 天沢夏月/けーしん

ポプラ文庫ピュアフル(9/6発売)
・彼女の気持ちはわかっても、それが恋とはかぎらない 中山おかめ
・【文】Go Forward! 櫻木学院高校ラグビー部の熱闘 花形みつる

電撃文庫(9/10発売)
・【新】解術師アーベントの禁術講義 川石折夫/HxxG
・【新】シャドウ・サーガ I ―選定の剣と呪いの黒剣― 西村西/パセリ
・【新】海のカナリア 入間人間/つくぐ
魔法科高校の劣等生 (30) 奪還編 佐島勤/石田可奈
・86―エイティシックス― Ep.7 ―ミスト― 安里アサト/しらび
ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.20 聴猫芝居/Hisasi
スイレン・グラフティ (2) もすこしつづく、ナイショの同居 世津路章/堀泉インコ

TOブックス(9/10発売)
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第四部 「貴族院の自称図書委員 VIII」 香月美夜/椎名優

光文社文庫(9/11発売)
・【文】世界が赫に染まる日に 櫛木理宇

双葉文庫(9/12発売)
太秦荘ダイアリー3 望月麻衣

講談社単行本(9/12発売)
・medium 霊媒探偵城塚翡翠 相沢沙呼

GA文庫(9/13発売)
・処刑少女の生きる道2 ―ホワイト・アウト― 佐藤真登/ニリツ
・家に帰るとカノジョが必ずナニかしています2 柚本悠斗/桜木蓮
ゴブリンスレイヤー11 蝸牛くも/神奈月昇
・29とJK 7 ~さらば、憧憬~ 裕時悠示/Yan-Yam

講談社文庫(9/13発売)
・【文】病弱探偵 謎は彼女の特効薬 岡崎琢磨

富士見L文庫(9/14発売)
・あやかし万来、おむすび処はじめました。 蒼井紬希/豊田悠
・浅草鬼嫁日記 七 あやかし夫婦は御伽噺とともに眠れ。 友麻碧/あやとき
・神華後宮厨師伝 偽りの天は花梨で邂逅す 真楠ヨウ/硝音あや
・ここは書物平坂 黄泉の花咲く本屋さん 新井輝/紅木
・華仙公主夜話 三 その麗人、後宮の禍を祓う 喜咲冬子/上條ロロ
・仮そめ夫婦の猫さま喫茶店 なれそめは小倉トーストを添えて 岐川新/桜庭ゆい
・織ノ王国物語 ~七番目の王子と忠誠の剣士~ あさぎ千夜春/青井秋

ポルタ文庫(9/14発売)
・怪異収集録 謎解きはあやかしとともに 桜川ヒロ/アオジマイコ

電撃の新文芸(9/17発売)
・Unnamed Memory III 永遠を誓いし果て 古宮九時/chibi

星海社FICTIONS(9/17発売)
・コールミー・バイ・ノーネーム 斜線堂有紀/くわばらたもつ

ガガガ文庫(9/18発売)
妹さえいればいい。13 平坂読/カントク
・クラスメイトが使い魔になりまして2 鶴城東/なたーしゃ
・【新】プロペラオペラ 犬村小六/雫綺一生
コップクラフト7 DRAGNET MIRAGE RELOADED 賀東招二/村田蓮爾

双葉社(9/18発売)
・ムゲンのi(上) 知念実希人
・ムゲンのi(下) 知念実希人

ファンタジア文庫(9/20発売)
・【新】氷川先生はオタク彼氏がほしい。 1時間目 篠宮夕/西沢5ミリ
・ファイフステル・サーガ4 再臨の魔王と女神の巫女 師走トオル/有坂あこ
・キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦7 細音啓/猫鍋蒼
通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?井中だちま/飯田ぽち。

集英社オレンジ文庫(9/20発売)
・小麦100コロス マンション管理士による福音書 不正な管理会社のたとえ ゆきた志旗/純生文屋
・京都伏見は水神さまのいたはるところ 雨月の猫と夜明けの花蓮 相川真/白谷ゆう
・虹を蹴る せひらあやみ/花恵ヨシ
・きみが逝くのをここで待ってる ~札駅西口、カラオケあまや~ 乃村波緒/睦月ムンク
・うちの社長はひとでなし! ~此花めぐりのあやかし営業~ ゆうきりん/しわすだ

講談社タイガ(9/20発売)
・三日月邸花図鑑 花の城のアリス 白川紺子
・昨夜は殺れたかも 藤石波矢、辻堂ゆめ

ダッシュエックス文庫(9/20発売)
HELLO WORLD if 勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする 伊瀬ネキセ/堀口悠紀子

角川文庫(9/21発売)
・ビストロ三軒亭の奇跡の宴 斎藤千輪
・わが家は祇園の拝み屋さん11 めぐる因果と紐解かれる謎 望月麻衣

MF文庫J(9/25発売)
・【新】やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 芝村裕吏/片桐雛太
・聖剣学院の魔剣使い2 志瑞祐/遠坂あさぎ
Re:ゼロから始める異世界生活21 長月達平/大塚真一郎
Re:ゼロから始める異世界生活 短編集5 長月達平/大塚真一郎

ダッシュエックス文庫(9/25発売)
・魔弾の王と凍漣の雪姫4 川口士/美弥月いつか
・【新】魔弾の王と聖泉の双紋剣 瀬尾つかさ 原作:川口士/八坂ミナト

メディアワークス文庫(9/25発売)
・本を愛した彼女と、彼女の本の物語 上野遊
かくしごと承ります。 ~筆耕士・相原文緒と六つの秘密~ 十三湊
・今日は心のおそうじ日和 素直じゃない小説家と自信がない私 成田名璃子
・神楽坂・悉皆屋ものがたり 着物のお直し、引き受けます。 行田尚希

文藝春秋単行本(9/26発売)
・Iの悲劇 米澤穂信

新潮文庫nex(9/28発売)
・【改】さよならの言い方なんて知らない。 河野裕/越島はぐ
・犬神館の殺人 月原渉/六七質
・昭和少女探偵團2 (仮) 彩藤アザミ/マツオヒロミ

2019年7月に読んだ新作おすすめ本

7月の新作は豊作で読んでるシリーズものも多かったのでその兼ね合いでどれを選ぶかほんとに迷いました。でもそんな中でも選んだ新作はみんな面白かったですね。

 

ラノベだとやはり今後の展開に期待したくなるスニーカー文庫の「ロードス島戦記」や第13回小学館ライトノベル大賞<ガガガ賞&審査員特別賞>の「夏へのトンネル、さよならの出口」、ラノベ文庫「あなたのことを、嫌いになるから。」、オーバーラップ文庫友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ?」、ファンタジア文庫黒猫のおうて!」など、興味深い作品が多かったです。

 

ライト文芸では斜線堂有紀さんの「夏の終わりに君が死ねば完璧だったから」、一般文庫では映像化も期待したい野崎まどさんの「Hello world」、単行本では似鳥鶏さんの「育休探偵」も良かったですけど、砥上裕將さんの「線は、僕を描く」と一木けいさんの「愛を知らない」が頭一つ抜けてました。どちらも今後の作品に注目したい作家さんになりそうです。

 

ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)

ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)

 

 呪われた島ロードスに平和が訪れて百年、フレイムの王位継承者に禁忌を犯すディアスが現れ、不戦の誓いに仇なす帝国に対抗すべくマーモ公国の王子・ライルたちが立ち上がる新たなロードスの騎士を巡る物語。前作から百年後の世界で圧倒的な力を誇るフレイム王国を軸とした争乱に、マーモ公国の王子・王女たちがそれぞれ動き出す群像劇的な展開でしたけど、特にここからどう状況を覆すのか期待したい主人公・ライルと、あえてフレイムに身を投じたその兄・ザイードという対照的な二人が物語を盛り上げてくれそうです。いやこれは続巻が楽しみですね。

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

 

海に面する田舎町・香崎。家族崩壊させた過去を悔やむ高校生・塔野カオルが、クラスで浮いた存在になっていた転校生・花城あんずと互いの欲しいものを手に入れるため協力関係を結ぶ青春小説。夏の日のある朝、塔野カオルが偶然耳にした、中に入れば年を取る代わりに欲しいものが何でも手に入る『ウラシマトンネル』の都市伝説。周囲との関係を拒絶していたあんずの言動はなかなかぶっ飛んでいましたが、彼女との協力関係から始まった二人の不器用なやりとりはとても甘酸っぱくて、大切なものに向き合った二人の結末にはぐっと来るものがありました。 

あなたのことを、嫌いになるから。 (講談社ラノベ文庫 ひ 7-2-1)

あなたのことを、嫌いになるから。 (講談社ラノベ文庫 ひ 7-2-1)

 

感情が昂ぶると最悪死に至る病『感情性自己免疫疾患』。そう診断されて以来、感情を無価値なものだと思い生きてきた四東愛都が、笑顔を絶やさない元気なクラスメイト奈々川恵実と出会う青春小説。事情を知らないまま一緒に過ごす時間を増やしていく積極的な恵実、愛都を見守ってきたいとこの春乃と主治医の橙香。命を落とすかもしれないと知りつつも育まれてゆく感情と、大切な存在だからこそ分からなくなってゆく複雑な想いがあって、手放したくない共にありたいと葛藤し続けた二人の選択がとても印象的な物語でした。

友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 1 (オーバーラップ文庫)

友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 1 (オーバーラップ文庫)

 

目つきの悪さから不良のレッテルを貼られた友木優児。『主人公キャラ』池春馬以外に誰も近寄らない彼が、春馬の妹で美少女の池冬華に突然告白されるラブコメディ。腑に落ちない告白の真意を問いただす優児と、思うところあって彼とニセの恋人関係を結んだ新入生の冬華。外見がアレで不器用だから誤解されがちだけれど、困った人を助けることを厭わず、相手にきちんと真摯に向き合える優児の良さを知ってゆく人が増えていって、そんなエピソードを積み重ねて冬華の想いも変化してゆく展開がとても良かったです。これは続巻に期待の新シリーズですね。

黒猫のおうて! (ファンタジア文庫)

黒猫のおうて! (ファンタジア文庫)

 

奨励会三段リーグを全勝しながら突如理由も告げずに将棋界を去った天才棋士長門成海。そんな彼のもとに強くなりたい一心でゴスロリ猫耳姿で女流棋士三河美弦が弟子入りを志願する将棋小説。服装にインパクトはありますが、ストーリーとしては将棋から距離を置いていた成海が、将棋で強くなるために真っ直ぐにぶつかってくる美弦の熱い想いに心揺さぶられてゆく展開で、美弦の姉で女流棋士の美夏や初心者の大家の娘・茜も絡めつつ、真摯な想いを胸に秘めた美弦が因縁のプロ棋士加賀薫七段に挑む戦いとその結末には強く心に響くものがありました。

処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― (GA文庫)
 

過去に起きた人災で異世界からの召喚者は見つけ次第処刑される世界。躊躇なく冷徹に任務を遂行する処刑人の少女・メノウが、迷い人の少女アカリと運命の出会いを果たすファンタジー。不可避に思えた運命をあっさり乗り越えるアカリと、そんな彼女に調子が狂わせながらも決着をつけるべく二人で旅するメノウの距離感がなかなかいい感じで、それに処刑人補佐のモモや王の娘アーシュナといった魅力的なキャラを絡めて展開する物語の安定感には驚かされました。ワケありな二人の旅がこれからどのようなものになるのか、続巻が楽しみな新シリーズですね。

全肯定奴隷少女:1回10分1000リン (MF文庫J)

全肯定奴隷少女:1回10分1000リン (MF文庫J)

 

英雄に憧れて冒険者になった少年・レンが、公園で見かけた貫頭衣を身に纏う銀髪で奴隷姿の全肯定少女。彼女に1回10分1000リンで全肯定してもらううちに、肯定された人々の心境も変わってゆくファンタジー。怪しい看板を掲げて全肯定・全否定を使い分けつつ悩める人々を導いてゆく奴隷少女のお悩み相談。シンプルなストーリーから垣間見えてくる彼女の事情があって、彼女に励まされながら成長してゆくレンの物語があって、そんなエピソードの積み重ねが効いてくる展開が印象的でした。彼らの微笑ましい恋模様の行方も気になるところですね。 

スーサイド少女 (講談社ラノベ文庫 え 2-1-1)

スーサイド少女 (講談社ラノベ文庫 え 2-1-1)

 

立入禁止の屋上が主な生息地の高校生・因幡が、そこで出会った先輩の鈴鹿涼子。飛び降り自殺を止めた鈴鹿に興味を覚えた因幡が、いじめられっ子の後輩・小刑部智世とともに鈴鹿のストーキングを始める青春小説。死のうとしては無感動にやめる鈴鹿の背中を押したいと感じ、小刑部のストーキング技術を使って鈴鹿の心情に迫ってゆく因幡。それぞれが抱えるどうにも屈折した想いは複雑で、執着ゆえにその行動もどんどんエスカレートしていって、育まれてゆく奇妙な連帯感をぶち壊し本音でぶつかり合ってしまう不器用な彼らの結末は悪くなかったですね。

 

夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)

夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)

 

片田舎の劣悪な家庭環境に育ち将来に希望を抱けずにいた少年・日向が、身体が金塊に変わる致死の病「金塊病」を患う女子大生・都村弥子と運命の出会いを果たす壮絶で切ない最後の夏の物語。死後三億で売れる『自分』の相続を突如彼に持ち掛けた弥子と、相続の条件として提示された古い盤上ゲーム・チェッカーを通じて心を通わせてゆく日向。絶望を抱えた二人が惹かれていけばいくほど、彼女の死に三億円の価値があることの意味が重くのしかかってきて、明かされてゆくそれぞれの秘密と葛藤の末に二人が選択した「正解」がとても印象的な物語でした。

鑑定する店主は鬼の男・鬼蔵。彼を支えるのは人間の妻・渚。鴫沢古物店に集まるアンティークにまつわる小さな不思議を奇妙な縁で夫婦となった二人が解き明かしてゆく物語。真空管ラジオから流れるもう会えない母親の声、ドールハウスに住む小さな住人たちと家族の絆、戦地に向かった夫と妻を繋ぐめおと茶碗。昭和最後の夏を舞台になかなか素直になれない家族関係に関わって解き明かしたり、亡くなった夫婦の過去を探る中で鬼蔵と渚の出会いのエピソードも絡めてゆく展開は、時折切なさを感じさせつつも最後には良かったなと思える素敵な物語でした。

文具店シエル ひみつのレターセット (メディアワークス文庫)

文具店シエル ひみつのレターセット (メディアワークス文庫)

 

商店街の一角にある文具店・シエル。突然兄から店を任された空良は、無愛想な看板猫と共に毎日店に立ち、店にやってくるのは様々な悩みを抱えた人たちに文具を紹介することで解決に導いてゆく物語。辛い現実に直面して引きこもっていた空良が、文具店で手紙でやり取りをする少女、母親が消したい秘密、旅立つ部下への餞別、夫が使っていたインクを探す老齢の女性と出会い、不器用なりに訪れた人たちのために何とかしたいと思う彼女の気持ちはとても真摯で、ようやく気づけた自分の大切なものに向き合うようになってゆく展開はなかなか良かったです。

後宮妃の管理人 ~寵臣夫婦は試される~ (富士見L文庫)

後宮妃の管理人 ~寵臣夫婦は試される~ (富士見L文庫)

 

右丞相の珀皓月と結婚し、妃嬪の健康管理と美容を維持して後宮を管理することを帝より命ぜられた大手商家の娘・優蘭。女装して後宮にたびたび出入りする夫とともに夫婦で後宮の闇に挑む物語。背景に政治的対立もあったりで、妨害工作の末に身の危険を感じたりしながらも、損得勘定を計算しつつも、要所を抑えて妃嬪たちに向き合っていく優蘭がいいですね。高級貴族で美丈夫の皓月もワケありでいろいろ大変なんだなあと思いつつも、不器用なりに妻となった優蘭を大切にしようという思いが感じられてよかったです。続巻出たらまた読んでみたいですね。

主婦やめます! 家事代行チーム松竹梅 (富士見L文庫)

主婦やめます! 家事代行チーム松竹梅 (富士見L文庫)

 

育ち盛りの子供を抱えて夫が突然のリストラ。松枝梨沙は、姑の反対や子供といたい葛藤を押し切り、主婦友の奥竹美加子、汐田梅の3人で、会社の立ち上げを決意する物語。資格マニアの梨沙、人脈が広い美加子、知恵袋の梅で組んだ家事代行『チーム松竹梅』。喧嘩した雑誌編集長と奥さんの仲を取り持ったり、訪問先の引きこもりの息子を気にかけたり、訪問先の事情にやや首を突っ込みすぎる感もありましたけど、局面を打開する彼女たちのスキルや、家事代行業を始めたことで周囲との関係が変わってゆく展開はなかなか良かったですね。続巻にも期待。 

 

HELLO WORLD (集英社文庫)

HELLO WORLD (集英社文庫)

 

本好きで内気な男子高校生直実が、突如現れた「未来の自分」ナオミから未来の恋人・瑠璃の存在と彼女が事故死する運命を聞かされ、悲劇の記録を書き換えるため奔走する青春恋愛SFノベライズ。仮想と現実の混じり合う世界を舞台に、未来の自分と出会ったことでその過去をなぞって瑠璃との距離を縮めてゆく直実。けれど直実にも育まれていた瑠璃への想いがあって、ナオミにも秘められた切実な願いがあって、世界が転回する中でも変わらない彼女を真摯に想う二人が導く結末にはぐっと来るものがありました。これは映画が楽しみになる世界観ですね。 

ウタカイ  異能短歌遊戯 (ハヤカワ文庫JA)

ウタカイ 異能短歌遊戯 (ハヤカワ文庫JA)

 

短歌を歌い異能「歌垣」を互いにぶつけあう「歌会」。歌聖高校に通う一年生の登尾伊勢が、最大のライバルであり先輩の朝良木鏡霞への燃える恋心をウタに乗せて、歌会の全国高校選抜トーナメントに挑む物語。先輩に対する想いに葛藤しながら、個性派揃いの他校の少女たちとの試合を勝ち抜いていくひたむきな伊勢の想いが熱くて、つまるところ先輩への愛なんだよなあというか、先輩も何だかんだいいながら真摯に向き合っていて、対戦相手の名前やエピソードはややアバウトな印象もありましたけど、そのシンプルで真っ直ぐな展開が心地よかったです。 

自殺予定日 (創元推理文庫)

自殺予定日 (創元推理文庫)

 

再婚してわずか二年。父の死後、遺産とビジネスを継ぎ様々なものを変えてゆく継母の姿に父を殺したと確信する女子高生瑠璃は、自らの死で罪を告発するため山奥で首を吊ろうと決意するミステリ。自殺の名所で出会った幽霊の裕章と交わした、一週間以内に証拠が見つからなければ自殺するという約束。探っていくうちに継母への疑惑が膨らんでいく瑠璃。そこからの急展開と明らかになってゆく真相は、見えていたものの印象をガラリと変えていって、瑠璃が改めて実感した大切なものへと思いと、新たな人生を予感させる結末はぐっと来るものがありました。

魔法使いと契約結婚 ふしぎな旦那様としあわせ同居生活 (双葉文庫)

魔法使いと契約結婚 ふしぎな旦那様としあわせ同居生活 (双葉文庫)

 

結婚コンサルタントとして働くアラサー会社員・深月が、飲み会の帰り道に行き倒れていたイケメン魔法使い・キリヤを拾い、契約結婚を申し込んできた彼とおためしの同棲生活を送る契約結婚ブコメディ。炊事、洗濯、掃除など、全ての家事を引き受けてくれるという甘い言葉に負けて同棲生活を始めた深月。出会いはあれでも深月のそれまでの生活崩壊ぶりを思えば、胃袋掴まれて快適な生活提供されたらハマりますよねよね…という分かりやすい展開でしたが、彼の優しさを実感して自覚した想いに向き合うようになってゆく結末はなかなか良かったですね。

絵画療法の第一人者・熊沢が営む心療所にインターンとしてやってきたスクールカウンセラーを目指す大学院生・日向聡子。様々な悩みを持つ人々の本心や過去を、絵を通して解決していく物語。飛行機に強い恐怖心があるサラリーマンや、スマホ依存に悩む学生、ユニコーンの絵ばかり描く少女、認知症で自宅に帰れなくなった老女、そして幼少期の記憶がない聡子自身の過去。描かれた絵をヒントに症状を解決してゆくミステリーで、繊細な心理を抱える人に寄り添う優しさから導かれ、明らかになってゆく謎とそれぞれの結末はなかなか良かったと思いました。

(P[し]3-1)終電前のちょいごはん: 薬院文月のみかづきレシピ

(P[し]3-1)終電前のちょいごはん: 薬院文月のみかづきレシピ

 

福岡の古いビル2階にある小さなお店「文月」。三日月から満月の間だけ営業する店主の文が作る季節のちょいご飯が訪れる人たちの心を癒やす物語。思うような仕事ができないインテリアデザイナー、結婚を焦るアラサー女子、地方出版社の編集、実家の和菓子屋を手伝う男の憂鬱、突然亡くなった友人、人事部の古株女子社員、受付社員の片思い、仕事に生きる百貨店員といった登場人物同士を絡めつつエピソードを構成する中で、のんびりとマイペースな文がまたいい感じに効いていました。巻末レシピも良かったですし続編があるならまた読んでみたいです。

(P[お]5-1)世界の終わりと嘘つき少女 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[お]5-1)世界の終わりと嘘つき少女 (ポプラ文庫ピュアフル)

 

幼馴染の平間律さえいればいいと他人と距離を取っていた遠河れん。そんな彼女が不思議な空の写真を撮影する黒百合やそれに感化された赤穂と出会い、少しずつ変化してゆく青春小説。黒百合の印象的な写真をきっかけに関わりが増えていった三人が、共に過ごす時間が増えてゆく中で育まれてゆく絆と、少しずつ垣間見えてゆくそれぞれが抱える事情。不器用ゆえにすれ違いを解消できない彼女たちがもどかしかったですが、それぞれが抱える葛藤に向き合い、窮地に陥った友達のために奔走して、一緒に乗り越えた先にあった結末はなかなか良かったですね。 

 

線は、僕を描く

線は、僕を描く

 

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生・青山霜介。アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い、初めての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく青春小説。湖山に気に入られてその場で内弟子にされた霜介と、反発して翌年の「湖山賞」での勝負を宣言する湖山の孫・千瑛。初心者ながらも水墨画にのめり込んでいく霜介に、彼と関わるうちに千瑛もお互いに刺激を受けて変わっていって、才能だけでも技術だけでもない水墨画の世界で、その本質に向き合い続けた二人が迎える結末には新たな未来が垣間見えました。面白かったです。

愛を知らない

愛を知らない

 

ヤマオの推薦で合唱コンクールのソロパートを任された高校二年生の橙子。親戚でクラスメイトの涼の視点から彼女の苦悩と決意が描かれる青春小説。気難しくて周囲から浮いていた橙子に期待するヤマオ、一緒に練習することになった伴奏役の涼と委員長で指揮者の青木、共に過ごす中で意外な一面を見せてゆく橙子が抱える苦悩。これまで見えていたものがガラリと反転した世界で、どうにもならないところまで拗れてしまった関係があって、やりきって勝ち取った結果にはぐっと来ましたが、だからこそその先にあったこの物語の結末が胸に突き刺さりました。

育休刑事

育休刑事

 

生後三ヶ月の息子・蓮のため、刑事としては初めての育休に挑戦中の県警本部捜査一課・秋月春風。育休中なのになぜか次々と事件に巻き込まれてゆく物語。妻の親友でもある秋月の姉に助けられたり振り回されたりしながら、子連れで質屋強盗殺人事件に巻き込まれラッピングカーのアリバイ作りを目撃し、爆弾騒ぎに巻き込まれたりと、子連れで何度も引っ張り出されて事件解決に奔走する状況は育休としてどうなんだとも思いましたが、最後に明かされた妻の沙樹の事情を知ると育休に至った経緯には納得。彼らにはまたどこかの作品で会ってみたいですねー。

何度でも、紙飛行機がとどくまで

何度でも、紙飛行機がとどくまで

 

10年前に出会って結婚し、もうすぐ子供が生まれるはずだった明良と千花。二人が事故に遭遇し出会う日の10日前に戻って抜け出せないループに気づく青春小説。友人たちの協力を得て再び千花と出会い、自らの人生をやり直そうとする明良。しかし些細な差異がやり直しに繋がり、やり直すたびに少しずつ失われてゆく彼女の記憶。この物語の重要なポイントになったもうひとつのエピソードも印象的で、試行錯誤の中で垣間見えた別の幸せや未来を知りつつも、最後まで諦めなかった二人の物語の結末に残されたもう一つの可能性を信じてみたくなりました。

九度目の十八歳を迎えた君と (ミステリ・フロンティア)

九度目の十八歳を迎えた君と (ミステリ・フロンティア)

 

通勤途中の駅のホームで十八歳のままの姿の高校の同級生・二和美咲の姿を目撃した間瀬。周囲は感じない違和感を持った彼が、九度目の十八歳を迎える彼女の謎を追う追憶のミステリ。間もなく三十歳になる間瀬と再会した十八歳の美咲。十八歳の繰り返しから彼女を解放するため、かつての友人や恩師を訪れる展開では、再会する夢破れた同級生たちのありようや、振り返る自らの過去やかつて抱いた美咲への想い、そして回収されてゆく伏線の先には当時知り得なかったほろ苦い真相があって、けれどそれだけでは終わらない結末がとても印象的な物語でした。

みどり町の怪人

みどり町の怪人

 

埼玉県のローカルな田舎町・みどり町。以前あった未解決の殺人事件もあって、どことなく閉塞感を感じさせる小さな町に都市伝説の噂も絡んで怪人が出ると噂されるミステリ。地方FM局の放送がきっかけで全国的に広まっていくみどり町の怪人の伝説。閉塞的な地域ゆえに登場人物たちが思わぬ形で繋がっていて、そんなみどり町に住む人々の鬱屈からの魔が差したとしか思えない行動が、結果として意外な真実に結びついていって、みどり町の怪人の噂が燻るようになかなか消えない理由と、ひっそりと収束した過去の事件の意外な結末が印象的な物語でした。