読書する日々と備忘録

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シリアスな展開が魅力のラノベファンタジー15選

祝「竜と祭礼」の2巻刊行!ということで、今回はシリアスな展開が魅力のラノベファンタジーを15作品紹介したいと思います。この手の重厚なファンタジーは自分の大好物なジャンルなんですが、近年はたくさん刊行されている中では敬遠されがちで、読んでみたら面白くても苦戦する傾向が少なくありません。危惧していた「竜と祭礼」も無事2巻目も刊行されましたし、この手のジャンルがもっと盛り上がることを期待しています。

 

1.竜と祭礼 (GA文庫)

竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から― (GA文庫)

竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から― (GA文庫)

  • 作者:筑紫一明
  • 発売日: 2020/01/11
  • メディア: 文庫
 

師の遺言により少女ユーイの杖を修理することになった、半人前の魔法杖職人・イクス。姉弟子たちの助けも借りてどうにか破損していた芯材を特定した彼が、1000年以上前に絶滅した竜の心臓を求めて旅する物語。夏の終わりまでを期限とした竜の伝承を求めての探索、ユーイが抱える過去と杖が壊れた理由、明らかになってゆく竜が絶滅した真相。戦えない二人が主人公であるがために派手な展開はありませんが、その分しっかりとした世界観の中で動く登場人物の描写は繊細で、積み上げられた先で明かされた真実とその結末は心に響くものがありました。現在2巻まで刊行。

 

2.Unnamed Memory

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王

 

幼い頃に受けた『子孫を残せない呪い』を解呪するため、強国ファルサスの王太子・オスカーが試練を乗り越えたものに望みのものを与える魔女・ティナーシャの塔に挑むファンタジー。解呪が容易でなく呪いに負けない女であればいい、という状況で目の前に好物件がいたことに気づき求婚するオスカー(苦笑)わりとシリアスな展開ですが繰り返される二人のやりとりが微笑ましくて、感化されつつも容易には頷きそうもない孤高の魔女・ティナーシャが、どんどん強くなってゆく諦めが悪そうなオスカーの数奇な運命を描いたシリーズ。20年6月に5巻目刊行予定。

※20年6月には「Babel」も電撃の新文芸から同時刊行ですね。

Babel I 少女は言葉の旅に出る

Babel I 少女は言葉の旅に出る

  • 作者:古宮 九時
  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 単行本
 

 

3.マグダラで眠れ(電撃文庫

マグダラで眠れ (電撃文庫)

マグダラで眠れ (電撃文庫)

 

錬金術師クースラは罪を許される代わりに、グルベッティの工房で研究を行うことになり、監視役として純真な修道女フェネシスが送り込まれる物語。世界観としては十字軍あたりの時代をベースとした感じなんでしょうか。錬金術師とはどういうものか、その世界における背景の説明に多くを割いた序盤は、なかなかページも進みませんでしたが、それでも相棒にフェネシスの相手を丸投げされてからの繊細な心理描写、巧みな駆け引きから生まれる畳み掛けるような展開は流石です。少しずつ確実に変化してゆくクースラとフェネシスの関係が魅力のシリーズですね。現在8巻まで刊行。

 

4.グランクレスト戦記 (富士見ファンタジア文庫)

グランクレスト戦記1 虹の魔女シルーカ (富士見ファンタジア文庫)
 

意に染まぬ契約のため君主の元に向かっていた魔法師シルーカが、道中襲われたところを助けた流浪の騎士テオに運命を感じて契約、二人で君主を目指すお話。ゼロからのスタートながら、襲った君主の領土を奪いテンポよく領土を広げていくスピード感は、ベテラン作家さんらしい安定感と合わせて流石だなと感じました。今回は性急過ぎる勢力拡大の反動で、苦境に陥ってしまいましたが、君主としての地位に固執することなく、一介の騎士としてシルーカとの契約を取ったテオの清々しさに、この物語の今後への期待を感じさせてくれますね。全11巻。

 

5.ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

 

自分が書いた魔法の書を奪われたゼロが、半獣半人の傭兵と一緒にゼロの書を取り戻すため旅をするお話。全体の印象としては、結構自分好みの世界観や登場人物で、読んでいて面白かったです。かけがえのない存在となってゆく二人の関係性を構築していく過程があっさりめなのはやや気になりましたが、しっかりとした構成をベースに手堅く作られていて物語としての完成度も高かったと思います。そんな二人が旅する過程で様々な人たちと巡り合い、騒動に巻き込まれてゆく物語です。全11巻。

 

6.ファイフステル・サーガ (ファンタジア文庫)

ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団 (ファンタジア文庫)
 

古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか続巻がとても楽しみな新シリーズですね。現在4巻まで刊行。

 

7.血翼王亡命譚 (電撃文庫)

血翼王亡命譚 (1) ―祈刀のアルナ― (電撃文庫)

血翼王亡命譚 (1) ―祈刀のアルナ― (電撃文庫)

  • 作者:新八角
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 文庫
 

言葉を話す事を禁じられた王女・アルナと護舞官ユウファ。密かに想いを交わし合う二人が国を挙げての耀天祭に向かう途中で突如襲われ、放浪娘イルナや軍犬ベオルらと逃避行することになる物語。再会しても結ばれることはない二人が5年前に交わしていた約束。逃避行における不器用で繊細な交流や、育まれていった絆がかけがえのないものに思えたからこそ、いくつもの複雑な想いから引き起こされた事件の顛末はとても残念でした…。作品の世界観や概念はやや独特でしたが、新たに始まる彼らの旅の行方がどうなるのか気になるシリーズ。全3巻。

 

8.剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

 

超大国アルキランに突如侵攻されたイアンマッド王国。和議と引き替えに人質として赴くことになった国王の長男王子ルスタットと、残されて次々と危機に見舞われる弟王子レオームの二人の王子の物語。神話的な超越した力と、人が技術を覚え始めた端境期の世界観で、周囲で引き起こされる危機的状況に否応もなく巻き込まれてゆく弟レオームと、アルキランの先進的技術に触れつつ伝説の存在となってゆく兄ルスタットの数奇な運命はとても興味深いですが、それぞれの道を歩み始めた二人がどのような形で再会することになるのか楽しみなシリーズですね。現在3巻まで刊行。

 

9.悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

 

黒い海を越え呪われた悪魔の島にやってきた死霊術師の孫・シュガーリア。そんな彼女が大罪人の男・ヨクサルと出会う愛など知らない男と愛しか知らない少女の物語。可愛がってくれた大切な人たちを失い復讐を志すシュガーリアと、無数の罪をその身に刻み『孤独を力にかえる』悪魔を背負うヨクサル。最初は滅びの運命に囚われ絶望しかなかった二人が、不器用なやり取りを積み重ねていくうちに育んでいった想い、そして相手の危機に命を賭けて飛び込んでいく勇気がもたらした結末には確かな救いがあって、著者さんらしい世界観を存分に堪能できました。現在2巻まで刊行。

 

10.叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)

 

邪神カを降臨させたランドール王国の野望を挫いた六人の英雄の一人・ギュネイ。平凡なその後の人生を選ぼうとしていた彼が、ふとしたきっかけから王国の現状を探るうちに、窮状を見捨てられず巻き込まれてゆく物語。戦勝国による身勝手な戦後処理で荒廃する国土と苦しむ民衆の姿に疑念を覚えてゆくギュネイ。苦悩しながらも巻き込まれ続けて救世主に登りつめてゆく彼と、したたかな王女ミネルバや彼を監視するディドー、初恋の王女といったヒロインをうまく絡めて物語を盛り上げてほしいですね。思わぬ方向へ向かう今後が楽しみな新シリーズです。20年7月に3巻目刊行予定。

 

11.D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

 

悪魔召喚して故郷を滅ぼした兄を倒すため悪魔メルヴィーユと契約した少年が、悪魔憑きとなって二人で兄を探す旅を続けるお話。クールで素っ気ないけど優しいソーマは、強力な悪魔も打ち破る力を持っていますが、それもメルヴィーユと二人力を合わせてこそ力を発揮できる関係。そんな二人の連携が問われるところが、お話の肝なのかなと思いました。ソーマ大好きな可愛い悪魔メルヴィーユも、作中に出てくる悪魔とは一線を画する存在で、話の謎にも深く関わっている模様。テンポ良く進むストーリーも好印象で楽しめます。全3巻。

 

12.白銀のソードブレイカー  (電撃文庫)

聖剣で世界を護る7人の剣聖を殺そうとする少女エリザと、家族を殺した仇を探している傭兵レベンスの物語。バトル多めで、剣聖殺しエリザの剣技の拙さはちょっと気になりましたが、戦っている時と平時のまだ幼い感じのギャップは可愛くて、またレベンスとの組み合わせもなかなか良かったと感じました。戦ったりエリザとの話の中で剣聖と剣魔の謎も徐々に明らかになっていきますが、一方でまだエリザやその剣にも秘密があったりで、二人の道中を楽しめるシリーズですね。全4巻。

 

13.魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

 

英雄に選ばれなかった少年・ウィズと運命に振り回される少女・アローン。そんな二人が出会いアローンの護衛役として遠い彼女の故郷を目指すファンタジー。神から英雄として選ばれた幼馴染に力不足でついていけず離脱せざるをえなかったウィズと、秘密を抱え家族のもとに帰ろうとするアローン。お互いへの共感と自分が一緒にいることへのためらいでせめぎ合う不器用な二人が、それぞれ過酷な運命に直面しつつも逃げずに懸命に向き合う姿にはぐっと来るものがありました。覚悟を決めた英雄の裏で二人がどういう物語が紡いでゆくのか続巻に期待ですね。

 

14.君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)
 

数百年続いた「帝国」と「王国」の戦争。その終戦記念日の慰霊祭で皇帝と国王を殺した「災厄の魔女」アンナ・マリアが世界を敵に回して戦うファンタジー。交互に語られる過去と現在、アニーとユージーンの運命的な出会いとその関係、そしてアニーの弟分・アローンとの邂逅による関係の変化。過去が明らかになってゆくたびに見えているものの印象がガラリと変わっていって、因縁に決着をつけた結末にすら皮肉な事実が提示されてしまう展開に思わず唸らされました。そうだったのか…毎回違うジャンルの作品描くのにそのインパクトは相変わらずですね。

 

15.葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

 

様々な種族がひしめき合う小国ランタン。流浪の少年メルがランタン王に語学を買われ政略結婚を控える豹人族の姫シャルネの教育係に抜擢、なりゆきで次期王に任命され敗戦必至の戦いに挑むファンタジー。常に優しいメルに惹かれてゆく奔放な姫君・シャルネ。婚姻が最悪の形で破談となった巻き添えで亡国の危機に陥ったランタン。シャルネと並び立つ弱小国王として仲間の助力を得て異なる種族の力を糾合し、熱い想いと知略を尽くして大軍に立ち向かいつつ、巧みな心理戦で勝利を手繰り寄せる展開にはぐっと来るものがありました。続編も期待してます。

 

ついでにおまけで少しだけジャンル違いだったりもしますが、最近読んでなかなか印象的だったファンタジー作品も4作品紹介しておきます(この手の作品もわりと紹介する機会がなかったりするので)。


傷心公爵令嬢レイラの逃避行

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 上 (DENGEKI)

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 上 (DENGEKI)

  • 作者:染井 由乃
  • 発売日: 2020/05/18
  • メディア: 単行本
 

不慮の事故で2年間眠りについていた公爵令嬢レイラ。目覚めると婚約者であったはずの王太子ルイスが懐妊した妹ローゼと婚約を結び直していて、限界を迎え家を飛び出した彼女が伝説の魔術師リーンハルトに求婚されるファンタジー。いきなりこれまでの人生全否定な展開に絶望する不憫なレイラでしたけど、リーンハルトやその妹たちに支えられ癒されてゆく幻の王都での生活は微笑ましかっただけに、何とも複雑な運命を知ってしまい、彼女に執着するルイスとの再会もあって、周囲に病んだ人しかいない悲惨な状況ですけど、幸せを見出して欲しいですね。

王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

 

王妃と仲睦まじいと評判の国王のもとに、巡り合わせで第二妃として嫁いだ南部領主の娘ベルタ。王宮で無難に過ごそうと思っていたベルタが予想外の妊娠をしたことで、状況が変わってゆくファンタジー。数年したら実家に帰るつもりで後宮入りしたのに、まさかの懐妊がもたらしたベルタを巡る心境の変化。最初からボタンの掛け違えで始まった国王との関係はお互い掴み切れずにおっかなびっくりで、もっとお互いを知ろうと努力する必要を感じましたけど、ほろ苦い事件を乗り越えた二人が何だかんだでいい夫婦になりそうだなと思えた結末が印象的でした。

水使いの森 (創元推理文庫)

水使いの森 (創元推理文庫)

水使いの森 (創元推理文庫)

  • 作者:庵野 ゆき
  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 文庫
 

それはこの世の全ての力を統べる水使い。水荒れ狂う森深くに棲む水蜘蛛族の女タータが、砂漠で少女・ミイアを拾い自らの弟子とするファンタジー。跡継ぎである妹を差し置き水の力を示し、国を乱すことを危惧された王女ミイア、その力を認められながら自覚が足りないと言われるタータ、そして家に馴染めず旅をする式要らずの風丹術士・ハマーヌ。三者三様の理由でどこか燻っていた状況で、運命に導かれるように出会った彼女たちが、危機に直面して自らが何をすべきかを自覚し、乗り越える中でそれぞれ成長していく展開はぐっと来るものがありました。

夢の上-夜を統べる王と六つの輝晶 (中公文庫)

夢の上-夜を統べる王と六つの輝晶1 (中公文庫)

夢の上-夜を統べる王と六つの輝晶1 (中公文庫)

  • 作者:多崎 礼
  • 発売日: 2020/02/20
  • メディア: 文庫
 

六つの輝晶は叶わなかった六人の夢。王に謁見した夢売りによって語られる翠輝晶を巡るファンタジー。夫オープとのささやかな幸せを願いながら死影に憑かれたアイナの物語、数奇な運命の元に生まれ二人の子となったアライス、彼女が繋ぐ女騎士イズガータとアーディンの物語で構成されていて、最初はやや文章が堅いかなと感じましたけど、逆境でも彼と共にあったアイナの幸せ、そしてアーディンたちの報われない想いと、形は違うけれど深い愛を感じるエピソードでしたね。彼女らに育てられたアライスがこれからどんな人生を歩むのか楽しみなシリーズ。全3巻。

 

 

以上です。気になる本があったら是非手にとって見てください。