読書する日々と備忘録

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読めば読むほどクセになる杉井光15作品

杉井光さんの新刊「楽園ノイズ」もう読みましたか?音楽を軸に据えたストーリー、著者さんらしい主人公に、魅力的なヒロインたちとのやりとりは杉井ワールド全開で控えめに言って最高でした。まさにこういうのを待っていたんですよ。どうも刊行ペースにムラがある著者さんですけど、ほんとまた頑張ってもらいたいなと思える作品読むと、また過去作品も読み返したくなりますね。というわけで今回は新刊を含めた音楽もの、探偵もの、近未来ものなどを中心に著作15作品を紹介したいと思います。

 

1.楽園ノイズ (電撃文庫)

楽園ノイズ (電撃文庫)

楽園ノイズ (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2020/05/09
  • メディア: 文庫
 

女装して演奏動画をネットにアップし(男だけど)謎の女子高生ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまった村瀬真琴。音楽教師・華園先生に正体を知られ、その弱みからこき使われる羽目に陥った彼が、三人の少女と巡り合うボーイ・ミーツ・ガールズ。不真面目な教師・華園を通じて巡り逢うひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音。いかにも著者さんらしい主人公にヒロインたちがいて、そのテンポの良いやり取りは癖になって、熱く盛り上がってゆくストーリーは控えめに言って最高でした。

 

2.神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2007/01/06
  • メディア: 文庫
 

路地裏に吹き溜まるニートたちを統べる「ニート探偵」アリス。高校一年の冬にナルミと同級生の彩夏を巻き込んだ怪事件、都市を蝕む凶悪ドラッグ「エンジェル・フィックス」事件が少女探偵アリスの手によって解体されていく物語。孤独に屋上で過ごすことの多いナルミが園芸部員の彩夏と出会い、そのバイト先「ラーメンはなまる」に集まる面々と知り合ってと、世界が広がってゆく中で受け止めるにはあまりにも重い事件でしたが、周囲の助けを得ながら、自らも探偵助手として事件に向かうことを選択したナルミが今後どう成長していくのか、周囲と関わっていくのか注目していきたいシリーズですね。全9巻。

 

3.さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

 

ナオがお気に入りの粗大ゴミ捨て場で出会ったピアノを弾く少女真冬。転校生として再会した彼女は、エレキギターを弾くためナオが利用する廃校舎の部屋を占領してしまうボーイ・ミーツ・ガールな物語。ナオも鈍いしちょっとズレてるんだけど、部屋の奪還を賭けた勝負をきっかけに、心を閉ざしていた真冬と、音楽を通じて、そして行動を共にして少しずつ心を通わせていく描写がいいですよね。自称革命家の神楽坂先輩もいい具合にかき回してくれるし、幼馴染の千晶も好きなキャラです。ベタで王道な作品ですがテンポも良くて、今読んでも面白いですね。全5巻。

 

4.生徒会探偵キリカ (講談社ラノベ文庫)

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

 

ふとしたきっかけから、巨大一貫校の莫大な予算を扱う生徒会に巻き込まれ、生徒会会計兼探偵のキリカと一緒に解決する生徒会探偵ミステリ。個人的にはミステリ部分よりもコメディ的な要素を期待して読んだので、キリカや生徒会長の狐徹といった生徒会の個性的で魅力的な面々とツッコミ役兼詐欺師のヒカゲの掛け合いも面白く、郁乃や朱鷺子ら脇役もいい味を出していました。またキリカとともに探偵役をこなす物語のもうひとつの軸となるミステリもまたなかなか効いていて、新章もスタートして今後も注目のシリーズですね。本編6巻+新章1巻まで刊行。

 

5.東池袋ストレイキャッツ (電撃文庫)

東池袋ストレイキャッツ (電撃文庫)

東池袋ストレイキャッツ (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2014/06/10
  • メディア: 文庫
 

引きこもって音楽ばかり聞いていた不登校児のハルが、ゴミ捨場に捨てられていたギターと運命的な出会いを果たし、池袋のストリートミュージシャンとしての一歩を歩み出すお話。ギターに取り憑いていたキースはとてもミュージシャンらしい性格でしたね(苦笑)そんな後押しがあったとはいえ、理解してくれる人たちと知り合えた幸運。ハルとの交流があったからこそ、誰も気づかなかったミウの苦しみも救われました。ボリュームはなかったですが作者らしい、それでいて音楽が好きで書いていることを改めて感じさせる、良かったなと思える作品でした。

 

6.ブックマートの金狼 (NOVEL0)

ブックマートの金狼 (NOVEL0)

ブックマートの金狼 (NOVEL0)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2016/02/15
  • メディア: 文庫
 

新宿『くじら堂書店』店長・宮内の元にアイドルの桃坂琴美が現れ、元トラブルシューターだった彼にストーカー解決の依頼を持ちかける物語。バイトにも舐められ仕事に対して思うことはあっても、自らが書店人であることに生き甲斐を感じている宮内ですが、一方で困った人のために奔走する姿もまた彼らしさなんですよね。宮内も頭が上がらない店員吉村さんや意外な一面も見せた琴美、そしてかつての仲間たちも魅力的な存在で、レーベルの路線に沿いながらも著者さんらしさがよく出ていた作品でした。まだまだいろいろ書けそうですし続編にも期待です。

 

7.夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)

夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)

夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)

 

吸血鬼が科学的に認められた近未来。人々を吸血種から護る『捜査第九課』に所属する真祖の少女・櫻夜倫子と、何も知らされないまま配属された新人・桐崎紅朗がコンビを組んで吸血鬼に挑む物語。業を背負って孤独に戦い続けてきた倫子と、辛い過去がありながら底抜けにバカで前向きな紅朗。どうしても凄惨なバトルに繋がりがちな展開で、著者さんらしい二人のボケツッコミが癒やしになっていましたね。敵味方の多くに忌避される倫子の終わりの見えない戦いがどこに向かうのか、紅朗の存在が重要なキーマンになっていきそうな予感ですね。現在2巻まで刊行。

 

8.恋してるひまがあるならガチャ回せ! (電撃文庫)

恋してるひまがあるならガチャ回せ! (電撃文庫)

恋してるひまがあるならガチャ回せ! (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2018/03/10
  • メディア: 文庫
 

バイト代を全てスマホゲーに突っ込んでしまうガチャだけが生き甲斐の留年寸前大学生・遠野が、旧華族出身のガチお嬢様で廃課金ゲーマーの薗村紗雪と邂逅する廃課金ラブコメ。拗らせ過ぎて言動がキモい遠野と、そこまで突き抜けてないだけで負けず嫌いの廃課金ゲーマーな紗雪。一見まともに見える友人の樋沢も違う意味で残念なお人で、ラブコメよりもひたすらスマホゲーとガチャに突っ走る彼らの呆れ果てたやり取りには苦笑いでしたけど、だからこそ覚悟した遠野が見せた矜持とそのブレない熱い想いは良かったですし、二人のその後が気になりますね。

 

9.楽聖少女 (電撃文庫)

楽聖少女 (電撃文庫)

楽聖少女 (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2012/05/10
  • メディア: 文庫
 

ゲーテファウストあたりに着想のヒントを得たんでしょうかね。悪魔メフィストフェレスに導かれて、19世紀のパラレルワールド的なオーストリアに高校生・ユキが文豪ゲーテの身代わりとして転生する物語。歴史上の人物・設定を踏まえつつ、パラレルワールドであることを活かして自由度をもたせて、ある意味とても著者らしいキャラ試行錯誤しつつが躍動していく展開は、音楽的なものに対する情熱もあって、魅力的なものになっていたと思います。現在4巻まで刊行。

 

10.蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ (講談社タイガ)

大学を留年しネット小銭を稼ぐ生活を送る葉山理久央が、新曲の作詞を依頼してきた破天荒な天才作曲家・蓮見律子と出会い、いろいろと巻き込まれてゆく音楽ミステリ。気まぐれな律子に振り回される葉山が大学の授業で出会った美沙、そして弟で若き音楽家本城湊人との邂逅。複雑な関係の姉弟との交流からの予想もしなかった急展開は物語の雰囲気をガラリと変えて、探偵役として律子が葉山と解き明かしてみせた謎と事件の真相、ほろ苦く切ないだけでは終わらない結末には著者さんらしさがよく出ていると思いました。シリーズ化を是非期待したいですね。

 

11.電脳格技メガフィストガールズ (ダッシュエックス文庫)

学校に馴染めず授業をサボってゲーセンに入り浸っていた小野木が迷い込んだ立ち入り禁止の特別棟。学園中のあこがれの的であるお嬢様たちの「電脳格技研究会」で格闘ゲームにのめり込んでいく電脳格技青春小説。ゲーセンへ入り浸って目を付けられた彼の格ゲー好きの美少女たちに振り回される日々の始まり。安心の典型的杉井主人公にヒロイン、そして付き合わされるうちに変わっていく格闘ゲームへの思いと紡がれてゆく絆、そして大切な居場所を賭けた熱い戦いはなかなか良かったです。ヒロインたちとの関係はこれからですし、続巻あるといいですね。

 

12.終わる世界のアルバム (メディアワークス文庫)

終わる世界のアルバム (メディアワークス文庫)

終わる世界のアルバム (メディアワークス文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: 文庫
 

減っていくクラスメイト、理科の先生と暗室、公園で聞くDJサトウのラジオ、写真屋とおじいさん、幼馴染の莉子と恭子さん、そして忽然と現れた奈月。あくまで語られるのはマコの目に見える世界の出来事で、皆が忽然と消えた人を忘れていく中でカメラを通じて自分だけ覚えているマコと、消えていく自分を覚えていて欲しい、忘れて欲しいと葛藤してなかなか素直になれなかった奈月のやりとりが甘酸っぱかったけど、どうにかならんかなと思いながらずっと読んでいたので、最後はちょっと切なかったです...。

 

13.六秒間の永遠

六秒間の永遠

六秒間の永遠

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 単行本
 

生まれ持った発火能力で父親を殺した過去を持ち、目立たないように警官として過ごしていた紅藤が破天荒な上司・氷室に引き立てられて刑事となり、特殊能力を持った少女・海月と出会う物語。刑事ものとしては杉井作品らしいだけでわりと凡庸な印象でしたが、能力のせいで孤独に生きてきた紅藤が、同じように生きてきた海月とお互いを理解してゆく過程がとても不器用で、終盤で明かされてゆく彼女の能力がもたらした奇蹟の連鎖が意味するところは、何とも切なかったですね。タイトルやなぜ警官になったかの問いが最後に効いてくる構成は秀逸でした。

 

14.すべての愛がゆるされる島 (メディアワークス文庫)

すべての愛がゆるされる島 (メディアワークス文庫)

すべての愛がゆるされる島 (メディアワークス文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 文庫
 

本当に二人の間に愛があれば、祝福してくれる教会がある島を訪れた、父娘と異母兄弟という二組のカップルのそれぞれの視点から語れる物語。今まで読んだ著者の作品とはちょっと違う印象でしたね。愛の形は定義次第でいかようにも変わるけど、同時に人を縛り付けたり、傷つけたりするものでもあるわけで、描かれた手法も含めて、いろいろなことが織り込まれた、なかなか業の深い話だなあと思いました(苦笑)

 

15.放課後アポカリプス (ダッシュエックス文庫)

放課後アポカリプス (ダッシュエックス文庫)

放課後アポカリプス (ダッシュエックス文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 文庫
 

毎週水曜の放課後、全校生徒ごと謎のサバイバルゲームに巻き込まれていく中で、授業を休んでばかりいた主人公が、記憶に無い隣のクラスに在籍している唯一の女生徒未咲と出会う物語。訳が分からないまま放り込まれたゲームで主人公はクラスの司令官役になっていて、記憶が残るからこそ生徒が殺されていく中で生まれていく違和感、そして判明していく真実。こういう凄惨な状況下で出会った未咲との今後も気になるところですが、そんな未咲が毎朝行っていた行為の意味に気づいた時には切なくなってしまいました。主人公自身の秘密も気になりますね。現在2巻まで刊行。

 

以上です。改めて振り返ると続きが読みたい作品の多い著者さんですが、続巻も新作も首を長くして待ってます。頑張ってください。