今回は4月の電撃文庫新刊感想まとめです。内訳は新作が5点、続巻が3点の計8点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
汝、わが騎士として (電撃文庫)
【第30回電撃小説大賞<選考員奨励賞>】
没落貴族の娘ホーリーをバルガ帝国から亡命させる仕事を請け負った、コードを脳内に生成して戦う情報師のツシマ。護衛しながらの逃避行で二人が絆を深めてゆくファンタジー。港で帝国正規軍に待ち伏せされていただけでなく、帝国最強と名高い情報師『六帝剣』までもが追跡に参加する過酷な旅路の要因となったホーリーが抱える事情。それでも護衛を続けたことで否が応でも巻き込まれ、陥った苦境を何とか乗り切ってゆく中でツシマの秘めた実力も明らかになってゆく一方、彼女自身もまた覚悟を試される展開になっていて、雰囲気のあるキャラたちを惜しみなく投入して繰り広げられる因縁に向き合い、決着をつけてみせた二人が迎えるその結末がなかなか印象的な物語になっていました。
これはあくまで、ままごとだから。 (電撃文庫)
とある事情で地元を離れて親戚の家に身を寄せた高校生の枕木蒼一朗。そこで遠縁の親戚で幼馴染の深紅と再会して、高校生の「おままごと」にのめり込んでいく青春小説。幼い頃と何一つ変わらないノリで深紅から提案された恋人ごっこ。最初はただ楽しくバカップルを演じていただけはずが、徐々にのめり込んでいく中で蒼一朗が深紅への想いを自覚してしまう一方、明らかにされていく彼の家庭事情や深紅の置かれている境遇。そこに一度距離を置いた深紅の彼氏・赤井先輩や、複雑な想いを抱える親戚の黄純を絡めた関係は、絶妙にタイミングを逸したことでさらに迷走を繰り広げて、どこまでも捻れてしまった関係に向き合って本当に大切なものを取り戻すことができるのか、今後の展開に目が離せない新シリーズです。
吸血令嬢は魔刀を手に取る (電撃文庫)
「夜ノ郷」に住み人間を夜煌刀に変異させる力を持つナイトログ。その代表者六人が集い戦う六花戦争に巻き込まれた古刀逸夜が、落ちこぼれのナイトログ夜凪ノアに救われるバトルファンタジー。瀕死の重傷を負ったところをノアに救われて、彼女の夜煌錬成により夜煌刀に生まれ変わり、あらゆる傷を癒し身体能力を爆増させる驚異の力を発揮した逸夜。六花戦争に優勝して父に認められたいノアと利害が一致して、謎の連続失踪事件に巻き込まれた妹の捜索を条件に逸夜とノアが手を組む展開で、特異な力を持つ逸夜を奪うべく参加者たちが次々と現れる中、逸夜とノアを取り巻く背景が明らかにされてゆく中、過酷な現実を突きつけられもしましたが、集約されてゆく因縁に葛藤を乗り越えて二人で立ち向かう熱い展開はなかなか良かったです。
裏ギャルちゃんのアドバイスは100%当たる「だって君の好きな聖女様、私のことだからね」(電撃文庫)
裏ギャルちゃんのアドバイスは100%当たる 「だって君の好きな聖女様、私のことだからね」(1)
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急川回レ/なたーしゃ KADOKAWA 2024年04月10日
朝の電車で他校の表川結衣を一目見ることに癒やしを感じていた平凡な高校生・土屋文太。彼に見た目が正反対のギャル裏川が話しかけてくる青春ラブコメ。文太は密かに聖女様と呼び、その清楚な佇まいに癒されていた表川が、窮屈な自分の境遇から逃れるべく変装して作り上げたもう一つの姿・裏川。聖女様の大親友と名乗った彼女の姿で密かに文太の真意を探りながら、意外と好感触だった彼に表川へ接触するアドバイスをしていくと何というマッチポンプ展開(苦笑)文太視点の出来事を表川&裏川視点で繰り返す構図は好みが分かれそうですが、本人のアドバイスなら好感触間違いなしだな…と苦笑いしつつ、傍から見れば二人で一人の彼女に翻弄されながら、タイプの違う表川&裏川のどちらにも魅力を感じてしまっている文太と、それを嬉しいと思う彼女のこれからが楽しみな物語ですね。
凡人転生の努力無双 ~赤ちゃんの頃から努力してたらいつのまにか日本の未来を背負ってました~ (電撃文庫)
凡人転生の努力無双 〜赤ちゃんの頃から努力してたらいつのまにか日本の未来を背負ってました〜(1)
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シクラメン/夕薙 KADOKAWA 2024年04月10日
通り魔に殺される形で、モンスター《魔》を討滅する《祓魔師》の一族に転生した少年イツキ。彼が幼少期に努力しすぎて規格外の力を得る努力無双ファンタジー。生まれた時から周囲の状況や親の話している内容を把握していて、祓魔師の子は《魔》に狙われやすく弱ければ再び殺されてしまうことを知り、もう二度と死なないため最強を目指し赤ちゃんの頃から練習を積み重ねて、膨大な魔力を獲得したイツキ。結果的に数百年に一人の逸材となった彼が、見様見真似で覚えたり周囲に魔法を教わりながら、まだまだ幼いながらも着実に実績を積み重ねていって、今回でスタートラインに立った物語を、幼馴染たちや義妹も絡めてどう広げていくのか今後に期待です。
あした、裸足でこい。5 (電撃文庫)
試行錯誤の末にようやく辿り着いた、巡の隣に二斗がいる未来。しかしあれほど強く望んだのに、今度はなぜかそこにもう一人の彼女がいない未来に直面する第5弾。誰もが笑顔でいられるハッピーエンドでなければ意味がない。彼女の決断を覆せなかった巡が二斗が一緒にタイムリープしても、取り戻した関係を諦めても、文字通り皆で力を合わせた総力戦で挑んでも、タイムリープでは追い詰められた結末に繋がる彼女の選択を変えることが出来ない現実に直面する二人。そこで巡が覚悟を決めた何とも皮肉な選択は、これまでの積み重ねで仲間たちを信じることができたからこその決断で、最初の段階では気付くことができなかった手がかりから、大切なものを手繰り寄せてみせた印象的な結末になっていました。
悪役御曹司の勘違い聖者生活3 ~二度目の人生はやりたい放題したいだけなのに~ (電撃文庫)
悪役御曹司の勘違い聖者生活3 〜二度目の人生はやりたい放題したいだけなのに〜
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木の芽/へりがる KADOKAWA 2024年04月10日
雷撃のフローネによるおぞましい事件を受け、一足早い夏季休暇に突入した魔法学院。みんなと最高の夏を過ごすべく、実家のヴェレット領でバカンスを楽しむ第3弾。ヒロインたちの魅力にシリアス展開続きの学院生活を少し忘れる一方、レイナと闇属性魔法の支配とフローネによるマシロの身体乗っ取りの企てを突き止めるオウガ。その手先として悪徳侯爵アンドラウスの存在が浮上する中、手紙を残して姿を消した従者アリスの過去と因縁が明らかになってゆく展開で、愚直で不器用過ぎるアリスの想いを汲み取って、苦しい展開の中でも彼女に向き合って過去ごと受け止めてみせたオウガがカッコ良かったですね。彼に待っていたある意味必然の結末でしたけど、フローネの行方も気になるところです。
男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 8 (電撃文庫)
七菜 なな/Parum KADOKAWA 2024年04月10日
クリスマスイヴの破局から一夜明けた冬休みの朝。突然十一月の文化祭で出会った、youの一番弟子を自称する中学生・城山芽依が家出して押し掛け修業にやって来る第8弾。日葵から事情を聞いてやってきた芽依に加えて、七月の高校に遭遇した因縁の下級生・米良鎌子もコンビニのバイトとして入ってきたことで、険悪な二人に破局の感傷に浸る間もなく振り回されてゆく悠宇。再登場した彼女たちがこれからどんな役割を担っていくのかも気になるところですが、何もなくなって生きる目的を見失ってしまった日葵、それを知りなぜ自分が悠宇の親友になりたかったのか分からなくなっていく凛音、という構図で迎える次なる展開も波乱の予感しかないですね(苦笑)