今回は2月電撃文庫・カドカワBOOKSの新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫の新作が3点、続刊が4点、カドカワBOOKSの続刊が1点、新作が1点の計9点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
【第30回電撃小説大賞<大賞>】
魔女に首輪は付けられない (電撃文庫)
上司ヴェラドンナの策略により〈第六分署〉へと転属を命じられた捜査官ローグ。かつて皇国に災いをもたらした〈人形鬼〉ミゼリアをはじめとする魔女たちと共に魔術事件を捜査するファンタジーアクション。魔術が大衆化で犯罪率が急増する皇国で、厄災をもたらすまでの力を有するが故に囚われ、〈首輪〉によって魔力を制限された魔女たち。どこまで信じていいのかも分からないまま、相棒として組んだミゼリアや〈聖女〉カトリーヌたちに振り回されながら進める捜査で浮かび上がる思わぬ大物の存在。ギリギリの状況が続く中、なぜ彼女たちが魔女と呼ばれるのかを思い知らされる展開が効いていて、それでも諦めずに立ち向かう姿はなかなか良かったですね。彼と未だ謎も多く油断ならない魔女たちを絡めたこれからの展開がとても楽しみです。
亜人の末姫皇女はいかにして王座を簒奪したか 星辰聖戦列伝 (電撃文庫)
亜人の末姫皇女はいかにして王座を簒奪したか 星辰聖戦列伝(1)
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金子 跳祥/山椒魚 KADOKAWA 2024年02月09日
神別れの山脈によって二分される人間が属するワウリ界と、亜人が属するネクル界。長きにわたって断絶していた人間と亜人の聖戦と、英雄たちの生と死から人間と亜人の歴史を描く一大叙事詩。難攻不落に思われた黒い塔を陥落させてみせた竜騎兵バラド。最強の暗殺者として恐れられた猫人ニャメ。歴史に残る一騎打ちで知られる筆頭戦士ニモルドと勇者ニスリーン。鉄の虎メリヴォラ将軍や、冒険家、発明家、大神官といった存在が歴史を動かしては消えてゆく群像劇的展開になっていて、それぞれの生き様とその最期はなかなか鮮烈でしたけど、それが紆余曲折の末に功罪相半ばする感はあったものの、歴史を大きく動かすひとつのきっかけとなった皇女のもとで結実するこの物語の結末はなかなか圧巻でした。
男女比1:5の世界でも普通に生きられると思った? ~激重感情な彼女たちが無自覚男子に翻弄されたら~ (電撃文庫)
三藤 孝太郎/jimmy KADOKAWA 2024年02月09日
気づいたら元いた世界より女性の多い世界に転移していた片里将人。パラレルワールド的な世界の愛の重いヒロインたちとの無自覚たらし込みラブコメ。男女比1:5の世界ゆえに傲慢な男が多い中で、彼が振りまく優しさに惹かれていくヒロインたち。大学で出会った恋海、一緒にバスケをする仲の中学生・由佳、バイト先のボーイズバーで指名するOL星良が、印象的な出来事を積み重ねた結果自身に激重な感情を向け始めていることに気づかない将人は、まだこの世界のことをよく分かっていない感もありますが、そこからさらに恋海の友人まで巻き込みそうな勢いで、彼女たちが他のヒロインたちの存在を知ったら…将人争奪戦がどんな様相を見せるのか今から楽しみです。
ほうかごがかり2 (電撃文庫)
臆病で『ほうかごがかり』になってから、一度も自分の担当する『無名不思議』がいる部屋に足を踏み入れていないイルマ。二森啓は代理の記録依頼を引き受ける第2弾。今のイルマを作っていった彼女の背景が明らかになっていく中で、自信がない彼女に突きつけられたヒロインとして憧れを抱いていた真絢の結末。『ほうかご』を受け入れ協力し合う者、臆病で弱くて卑怯な者、自己犠牲的な者。極限状態に置かれた子供たちが見せる強さと弱さが印象的でしたけど、対象をしっかりと観察することの意味をそれぞれが考えるようになっていくストーリーは、思わぬ結末に繋がっていて慄きました…。思っていたより展開が早くて、残された彼らがどうなるのかも気になるところではあります。
教え子とキスをする。バレたら終わる。2 (電撃文庫)
暮井先生との一件を経て、俺と桐原は一時的に離れはしたが元の“秘密の悪い関係”に戻った。ただ戻っただけじゃなく、互いへの想いをより深める形で。そんなとき、恩人で元カノの高神柚香――ユズが現れ、家に置いてほしいと頼み込んできて……。葛藤の末、恩を返すために条件付きで居候を認めるも、ユズはよりを戻そうとあの手この手で誘ってくる。迷いの中で桐原にも相談できず、我慢だけが積み重なっていき――。大切だからこそ、悩んで、抱えて、見えなくなる。それでもやっぱり大事にしたくて……。目を覚まし、桐原に解決策として相談したのは、俺と桐原の“同棲”だった――。
虚ろなるレガリア6 楽園の果て (電撃文庫)
冥界門の消滅から三年を経て、崩壊を免れた緩やかな復興を続ける世界。南国の名もない絶海の孤島に隠れ住み、スローライフを送っていたヤヒロと彩葉の元に謎の少女エリが流れ着く第6弾。ギャルリー・ベリトが入手した消えたはずの魍獣が再び出現したという情報。彩葉を警戒しつつ、ヤヒロの正体と世界の真実を知っているエリ。そして絢穂が出会ったなぜかヤヒロそっくりなシグレの正体。彩葉たちの作り上げた世界を脅かす存在との激闘もありましたけど、ヤヒロと彩葉が送る日々や、彩葉の弟妹、相楽善&澄葉たちのその後の様子も伺えて良かったです。しかしあの目まぐるしく変わる状況の中でも冷静なベリト姉妹は、相変わらずしたたかで抜け目なかったですね(苦笑)
新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち6 (電撃文庫)
新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち(6)
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佐島 勤/石田 可奈 KADOKAWA 2024年02月09日
九つの魔法科高校による合同文化祭『九校フェス』。夏休みが明けた第一高校は目前に控えて浮足立つ中、義兄・勇人がアリサに新生徒会へ入るように依頼する第6弾。生徒会選挙によって新たな生徒会長となった十文字勇人からアリサへの新生徒会加入の依頼。アリス目当てで風紀委員に入った茉莉花の去就問題。そして九校フェス開催の地・奈良への視察に同行することになった2人。改めて司波達也の影響の大きさをあちこちに感じさせる展開になっていましたが、もう達也はそう簡単に殺せないよな…と苦笑いしつつも、不穏分子を黒羽姉妹が排除していく一方で、元老院の派閥勧誘だったり、十師族に復帰したい九島家だったり、様々な暗躍がどういう結果となるのか気になるところではあります。
サイレント・ウィッチ VII 沈黙の魔女の隠しごと (カドカワBOOKS)
サイレント・ウィッチ VII 沈黙の魔女の隠しごと(7)
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依空 まつり/藤実 なんな KADOKAWA 2024年02月09日頃
古代魔導具〈偽王の笛〉の影響下、上位精霊たちが牙を剥く危険な森で、戦禍を呼ぶ古代魔導具を破壊するため、七賢人は団結して事態の収拾のため行動を開始する第7弾。暗躍する宝玉の魔術師の企みに残る七賢人の大魔法が飛び交う大激闘の結末。そして学園でモニカを魔術師と看破したとある生徒の要求。普通に考えれば処断されてもおかしくない所業でも、七賢人の今後を考えての判断がなかなか興味深かったり、モニカを巡り火花を散らすイザベルたちが面白かったですが、一方でこれまで何を考えているのか、いまいちよく分からなかった彼女が秘めていた一途な想いには何とも切なくなりましたね。それにしても注目度の高さを考えれば仕方ないとはいえ、またまた巻き込まれそうなモニカの苦難は続きそうですね…。
転生令嬢は悪名高い子爵家当主 ~領地運営のための契約結婚、承りました~ (カドカワBOOKS)
転生令嬢は悪名高い子爵家当主 〜領地運営のための契約結婚、承りました〜(1)
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翠川 稜/紫藤 むらさき KADOKAWA 2024年02月09日頃
子爵令嬢に転生して、悪評を立てられつつも屈せず父に代わり貧乏領地を立て直したグレース。社交界で噂のヴィンセント伯爵からまさかのプロポーズを受けるファンタジー。理不尽に婚約破棄された過去から結婚は諦めて、領地経営を放置気味だった父に代わって当主として奔走していたグレースが、妹のデビュタントに同行して直面する思わぬプロポーズ。最初は新たに賜った辺境開拓のサポート目的の契約結婚だと思っていた彼女が、元婚約者も絡む陰謀に巻き込まれていく中、ヴィンセントが秘めていた彼女への想いを知っていって、お互いにかけがえのない存在として甘い関係になってゆく二人の距離感の変化が良かったですね。グレースと姉妹の揺るぎない絆も効いていました。