今回は4月ガガガ文庫・集英社オレンジ文庫まとめの新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫が続巻2点、新作1点、集英社オレンジ文庫新作3点、続巻1点の計7点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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帝国第11前線基地魔導図書館、ただいま開館中 2 王国研修出向 (ガガガ文庫)
帝国第11前線基地魔導図書館、ただいま開館中 2 王国研修出向
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佐伯 庸介/きんし 小学館 2024年04月18日頃
『魔導書』と『魔王雷』双方の使用禁止協定が成立したものの、それでも続く人類連合と魔族軍との戦い。王国が『魔導書』研究のために帝国から魔導司書を招聘する第2弾。帝国に期間限定で赴くことになり基地司令の王子ポロニアや部下タニーアたちと出会い、魔導書が何たるかを教えつつ、図書館整備もビシバシ指導する一方、魔導書奪取を狙う魔族軍の企みや王国の真の狙いとも対峙していくカリア。前半の導入部分からの後半の急展開にはいろいろ思うところもありましたが、本への愛と争いの火を止めるため、そのためには決して相容れないはずの相手とも組んで奔走した末の何ともほろ苦い決着ではありましたけど、それでも彼女の熱い想いが確実に王国にも遺されたその結末はなかなか印象的でした。
スクール=パラベラム: 最強の傭兵クハラは如何にして学園一の美少女を怪獣に仕立てあげたか2 (ガガガ文庫)
学園の制服コンテストにモデルとして出ることとなった有馬風香。様々な学園の陰謀に巻き込まれていく彼女を京四郎が助けながら、出場をサポートする第2弾。コンテストをコントロールする学部長連の裏の社交場コンフェス。出来レースのモデルに選ばれたことで狙われ、否が応でも渦中に巻き込まれてゆく風香に対して、仲間たちの協力も得ながらそれを助けることを決意する京四郎。コンテストの裏に国際テロリストの陰もある中、思わぬ約束もした彼がそれでも大暴れするらしさも存分に活きていましたが、何より自らの力で喧嘩に勝ってみせた風香が圧倒的でした。そういう意味では戦略的には間違っていなかったように思いましたけど、今回は挑んだ相手が悪かったということですね(苦笑)
マジで付き合う15分前: 小説版 (ガガガ文庫)
十年来の幼馴染で、家もお隣、物心ついた頃から一緒にいる家族のような関係の祐希と夏葉。ある日、ノリで付き合い始めた2人の親友から恋人への変化を描いた公式ノベライズ。きっかけがなく幼馴染のまま高校3年生になってしまった2人が、離れ離れになるかもしれない状況を前に付き合い始めて、友人のカヨコと西やん、2人の関係を推している祐希の妹・奈央からもサポートを受けて、恋人として一歩ずつ成長していく展開で、ずっと言葉にできなかった夏葉の想いがあって、祐希もまた自分にとって夏葉が大切な存在だったんだなと改めて自覚してゆく、初々しさを感じさせる2人のやり取りがとてもエモくて、そんな彼らに影響を受けて少しずつ変わり始めた妹の奈央と彼女の幼馴染の関係も良かったですね。
レディ・ファントムと灰色の夢 (集英社オレンジ文庫)
幼い頃から霊を見てきた伯爵令嬢クレア。レディ・ファントムと噂される彼女が、唯一の親友である子爵令嬢アネットの死の真相を調べ始めるオカルトミステリ。土砂降りの雨の夜、王都名物とも言える大階段から転落したアネット。なぜ雨の夜に貴族の令嬢が供も連れず一人で出歩いていたのか。彼女の元を訪れた2人の刑事の青年とともに、彼女の死の真相を探るクレア。その中で明らかにされてゆくアネットの家庭環境や彼女の知られざる一面があって、それに不遇の死を遂げたパール王女の過去だったり、王都で暗躍する企てにも巻き込まれながら、辿り着いた切ない結末にも気丈に向き合って、しっかりとその決着をつけてみせたクレアの姿が印象的な物語になっていました。
私のマリア (集英社オレンジ文庫)
全寮制の名門女子校白蓉女学院で“白蓉のマリア”と謳われる女子高生・藤城泉子の失踪。寮で同室だった鮎子が泉子を案じて、彼女の従兄・藤城薫とその行方を追う青春ミステリ。泉子の失踪は事件か事故か、あるいは彼女の自由意思によるものなのか。動揺する関係者に追い打ちをかけるように発生する、泉子の実家で放火殺人が起こり、犯人と目される大学生を15歳の少年が刺傷する事件。薫とともに調べる中で浮き彫りになってゆく、泉子と周囲を巡るままならなかった人間関係やかつて泉子と同室だった鈴との意外な関係があって、気づいてあげられなかった薫の後悔や、鮎子自身の複雑な想いも絡めながら、そんな2人が辿り着いたささやかでかけがえのない思いが垣間見える真相には少しだけ救われる思いでした。
異界遺失物係と奇奇怪怪なヒトビト 2 (集英社オレンジ文庫)
就職した警備保障会社で、異界遺失物係という謎めいた部署に配属された南。あるコンビを組む五十嵐のの過去に関係し、彼のトラウマを刺激するらしき案件に遭遇する第2弾。五十嵐が卒業した小学校に現れたイヌの住人、五十嵐の右肩にのっている一体誰のものなのか分からない謎の手の意外な正体。優しい里山歩きだったはずが憑かれて意識障害となってしまった五十嵐と兄の過去。相変わらず五十嵐絡みの案件でいろいろ振り回されて南も大変だなとは思いましたけど、一方で今回のように五十嵐を巡る背景もいろいろと明らかになっていって、様々な経験を一緒に積み重ねていくことで少しずつ変わっていく関係があって、そのあたりの関係もこれからどうなるのか続巻に期待したいですね。
天狐のテンコと葵くん たぬきケーキを探しておるのじゃ (集英社オレンジ文庫)
『キッチンハルニレ』で働く葵が、ある日、拾った怪我をした狐。翌朝目を覚まして少女の姿をしたテンコと一緒に幻の「たぬきケーキ」を探し始める物語。神通力を失ってしまい、力を回復するためには「たぬきケーキ」が必要だというテンコ。そんな彼女と一緒に探して食べ歩くことを繰り返すうちに、彼女が本当に探しているものを知ってゆく葵。そんな2人が食べ歩いている姿もだんだんと話題になっていって、そんな彼らに声を掛けてくれる人もいて、話を聞きつけて協力してくれることになった橋野と試行錯誤を繰り返すうちに、葵もまた料理人として大切なことに気づいていく中で、テンコがずっと抱いていた大切な想いを届けられたその結末はなかなか良かったです。