今回は10月の富士見ファンタジア文庫・ガガガ文庫・GCN文庫・集英社オレンジ文庫・ことのは文庫の新刊感想まとめです。内訳は富士見ファンタジア文庫の続刊4点、新作4点、ガガガ文庫の続刊2点、新作2点・GCN文庫の続刊1点、新作1点・集英社オレンジ文庫の新作1点、続刊2点、ことのは文庫の新作1点の計18点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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ロクでなし魔術講師と禁忌教典23 (富士見ファンタジア文庫)
ジャティスとの最終決戦の最中、グレンが迷い込んだのはセラと共に生きているifの世界。彼女の故郷を訪れて優しくも暖かい世界に包まれる第二十三弾。もう二年も前に命を落としたはずの、かつてグレンの最大の理解者だったセラはずの故郷に訪れて、しかし彼女と過ごす日々を幸せと感じながらもその世界に違和感を持ってしまうグレン。もう出会えないはずの人との思ってもみなかった再会があって、そっと背中を押してくれるかけがえのない人がいて、ずっと待っていてくれた教え子たちと共にジャスティスと戦う熱い展開はとても二人らしい決着だなと思いましたけど、そこからの劇的な幕切れは何とも不穏でしかなくて、それでも最終巻はハッピーエンドで終わることを期待したいと思います。
貴族令嬢。俺にだけなつく3 (富士見ファンタジア文庫)
エレナに誘われて訪れた伯爵家主催の晩餐会。そこでベレトに思いを告げるべく覚悟を決めたエレナやルーナ、さらに『麗しの歌姫』の異名を持つ公爵令嬢アリアと出会う第三弾。晩餐会で多くの男性に声を掛けられる『紅花姫』エレナ、『本食いの才女』ルーナ、そして専属侍女シアの人気ぶり。そして公爵家のために多忙なスケジュールをこなすアリアの苦悩と本音、それを偶然知ってしまったベレトのアドバイス。思いを確認し合えたエレナやルーナはまずは一歩前進でしたけど、彼の気遣いに感じるものがあったアリアもこれから動きそうで、もはや人気令嬢たちを独占する勢いになりつつある、ベレトとヒロインたちを巡る人間模様の今後が気になるところではあります。
双星の天剣使い4 (富士見ファンタジア文庫)
玄との講和決裂から半年。隻影たちは宇家の姫・オトの導きで西域に匿われ、敵の皇帝・アダイによる栄への再侵攻が迫る中、混迷極める都から皇妹・美雨が救援要請にやってくる第四弾。周辺の賊を討伐しながら今後に備える状況で、明鈴の助けを借りてやってきた美雨が持っていた乱世統一のための鍵。戦略的には意味がないのにあえて軍を二分して自ら西域を攻めようとしたり、まるで恋のライバルのように白玲を目の敵にしたり、隻影に対するアダイの異様な執着っぷりが伺えましたが、ダイナミックで大胆な奇策に立ち向かう隻影の奮闘と、そこに白玲が救援に駆けつける展開は盛り上がりましたね。流れは一大決戦に向かうのか…お互いいろいろ動いていて鍵を握りそうな南部の動きが気になるところではあります。
妹が女騎士学園に入学したらなぜか救国の英雄になりました。ぼくが。4 (富士見ファンタジア文庫)
ラマンおいどん/なたーしゃ KADOKAWA 2023年10月20日
大陸を救ったらしいスズハ兄たちを待っていたのは妹スズハの学園退学の危機。出席日数が足りないと難癖をつけられた妹のため辺境伯領に女騎士学園分校を設立する第四弾。分校設立に向けて生徒を募集したら、噂を聞きつけて志願者が殺到していたはずなのに、あまりの実力差を見せつけられて続出する辞退者。そんな状況で異大陸よりやってきて、妖刀を携えてスズハ兄に勝負を挑むサムライガール・ツバキ。彼を左遷された草むしり男と勘違いする実力者ツバキを圧倒して、異大陸からの侵攻も斜め上の方法で一蹴してしまう無自覚無双な彼のデタラメっぷりは今回も健在でしたね（苦笑）のんびりしながらどこまで伝説を作り上げるのか続刊も期待。
清楚怪盗の切り札、俺。 (富士見ファンタジア文庫)
魔術を盗む右手を持つ一匹狼の盗賊アッシュ。伝説の大怪盗が狙うお宝を横取りしようと乗り込んだ森で、清楚怪盗を名乗る少女ノアと運命的な出会いを果たす怪盗ボーイミーツガール・ファンタジー。実力行使で降参させようとする彼女を返り討ちにするものの、悪徳司教メビウスを打倒するために利害が一致して共闘することになった二人。その鍵を握る民にも献身的で優しい彼の婚約者の王女シンシアとの距離を縮めながら、その醜悪な本性を現してゆくメビウスに囚われたシンシアを救うため、二人で力を合わせて因縁の決着をつける展開はなかな良かったですね。まだまだ謎めいた部分も多いノアとの怪盗コンビで、これからどんな活躍を見せてくれるのか続刊がとても楽しみなシリーズです。
二番目な僕と一番の彼女 (富士見ファンタジア文庫)
同姓同名のイケメンの存在もあって、陰で同級生から二番と呼ばれている佐藤一。ふとしたきっかけから誰とでも気軽に話せて絶大な人気を誇るクラスの美少女・南野千夏と仲を深めてゆく青春小説。捨て猫を見捨てられない千夏を助けたことから、ハジメの家で一緒に世話をしたりゲームをするようになって、辛い過去を感じさせない、二番目なんかじゃない彼のことを知っていって、二人でかけがえのない日々を積み重ねてゆく日々。そして彼女にもまた複雑な家族の事情がありましたけど、たびたび困難に陥る彼女をサポートする冷静な対処が的確すぎて、窮地にこれだけ頼もしいと惚れても仕方ないですね（苦笑）お互いのことを知っていて揺るぎない確かな絆を育んで、とてもお似合いな二人のこれからが楽しみなシリーズです。
魔術探偵・時崎狂三の事件簿 (富士見ファンタジア文庫)
人には言えない過去を持つ女子大生・時崎狂三。そんな彼女に依頼を持ってきた縦ロールお嬢様・栖空辺茉莉花をスポンサーに、魔術工芸品犯罪を専門に扱う探偵事務所を開くファンタジーミステリ。茉莉花の依頼で散逸した魔術工芸品犯罪を集めるため、狙撃不可能な場所から放たれる『魔弾』、ドール愛好家と『生きた人形』、一食五〇〇万円の『若返りの料理』、女学園で目撃された『もう一人の自分』といった謎に挑む狂三。一緒に謎解きをするやたら声のデカい茉莉花の存在感は抜群で、彼女たちが挑むシリアスな展開からの謎解きの真相も斜め上で、それでいて最後はしっかり引き締めるストーリー構成の上手さは流石ですね。大学生している十香や折紙も登場したりと、デアラファンにはたまらない続きが楽しみなシリーズです。
わたし、コレでも女の子なんすよ? (富士見ファンタジア文庫)
四条 彼方/うなぽっぽ KADOKAWA 2023年10月20日
過去のトラウマから女子が苦手で、義妹・雛姫からのアプローチにも距離を置きがちな赤座諒介。そんな彼が気安くてノリが合うひとつ下の美少年な後輩・颯と出会ってすぐに意気投合する青春ラブコメ。近い距離感も男友達なら…と思っていたら実は美少女で、距離感は男友達のまま、颯が可愛い女の子という現実をどんどん突きつけられる諒介。事情を知った義妹の雛姫も負けじとアプローチするカオスな状況に、それぞれが距離感を掴みかねてしまう構図でしたけど、諒介だけでなくヒロインたちも訳アリの過去からどこか自分に自信を持ちきない難しさがあって、相手の事情には配慮を見せるヒロイン二人のライバル関係や、諒介を巡る三角関係がこれからどうなってゆくのか、今後の展開に期待したいと思います。
楽園殺し: 夜と星の林檎 4 (ガガガ文庫)
〈血の祭典〉が明けて、砂塵教のテロリストたちに連れ去られてしまった歌姫たち。さらにはシュテルン家当主脅迫事件で林檎が奪われたことを受けて、ロロ・リングボルド率いる第一指揮が大規模掃討戦に向けて動き出す第四弾。結果だけを見ればものの見事にしてやられたメンバーたちや、不在だったボッチを外す形で編成される粛清戦。そんな措置に当然納得いくわけもなく、密かに独自に行動を開始する第七指揮の粛清官たち。ライラとクラマ、シーリオ、シルヴィたちそれぞれに抱える想いと負けられない激闘があって、ボッチとロロの対立や様々な思惑も絡む追撃の決着は、次回以降に持ち越しといった様子でしたけど、絶対に失いたくない大切なものを取り戻すために奔走した彼らの何とも微笑ましい結末には本当に救われる思いでした。
塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い8 (ガガガ文庫)
佐藤さんと押尾君の嬉し恥ずかしクリスマスデート。その裏でコハルの親友・円花が通う緑川高校が、事故で校舎が倒壊する衝撃の事態に直面してしまい、緑川高校の生徒が当面桜庭高校に通うことになる第八弾。円花たちが桜庭高校に通い始めて未だ慣れていない状況で、勘違いからいきなり蓮と円花が付き合っていると爆弾発言をしてしまうコハル。注目を集めてしまった現状から周囲の干渉を回避するために、円花に偽装交際を提案する蓮。幸せ過ぎて匂わせ発言をしたり、何かと暴走しがちなコハルには困ったちゃんだな…と苦笑いでしたけど、意外と不器用で自覚に乏しかった蓮と円花が、遠回りしながらも、ようやく向き合えたその結末はなかなか良かったですね。
【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう (ガガガ文庫)
赤城 大空/福きつね 小学館 2023年10月18日頃
ドレス姿でダンジョン攻略するお嬢様系JK配信者山田カリン。一年経っても底辺だった彼女が、下層で迷惑配信者をボコり人気に火が付くダンジョン配信小説。あまりにも規格外すぎてフェイクを疑われ底辺配信者だったのに、危険行為をしていた迷惑配信者を止めたことで、本人も気づかぬうちにトレンド独占レベルでバズり、一夜にして超有名人になってしまったカリン。そのく強烈なキャラに加えて、上層～中層は優雅に紅茶を飲みながら片手間にRTA、下層では遭遇したイレギュラー深層モンスターを斜め上の方法で撃破するなど、視聴者たちも大混乱に陥る破格の攻略が面白すぎて笑いが止まりませんでした。
帝国第11前線基地魔導図書館、ただいま開館中（ガガガ文庫）
連合軍と魔王軍との戦いが続く世界。帝国の皇女は戦況を打破するために『魔導書』の管理運用を狙い、最前線の『基地図書館』に学院時代の同期で筋金入りの女司書カリアを配置する魔導書ファンタジー。魔力はほとんどが失われ、武器を主力とした軍隊と『勇者』『魔導具』といった数少ない切り札を使って魔族に相対する厳しい戦況。様々な人たちと出会い、時には厳しい現実に直面しながらも、少しずつ本を読む楽しみを教えてゆくカリア。基地の兵士たちには図書館内での規律をしっかり叩き込み、本とは縁遠い存在だった勇者だけでなく、敵方の魔族の指揮官にまで少なからず影響を与えていった彼女が、両軍力の限りを尽くしたギリギリの激闘を、何とも司書らしいやり方で決着させたその結末はなかなか良かったですね。
世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。2 (GCN文庫)
光輝のプロデュースによってイメチェンに成功し、学校でも人気急上昇中の雨宮さん。一方、光輝は「猛毒の暗雲姫」と呼ばれる校内四大美女の一人で後輩の雲雀鏡花と、思わぬ場所で遭遇してしまう第二弾。雨宮さんが人気者になっても、相変わらずファッション相談に乗ったり、お宅訪問をしたりと一緒に過ごす楽しい日々。しかしうっかり雲雀とお互いの秘密を共有する羽目に陥り、コンテストに参加する彼女にアドバイスすることになった光輝。今回もダブルブッキングやトラブルもあって波乱含みでしたけど、雲雀の急接近に心穏やかではいられない雨宮さんがとても可愛くて、世界一可愛いとか言いながらどこか自覚に乏しい光輝相手に、懸命に頑張る彼女の姿は応援したくなりました。そんな二人のこれからがとても楽しみです。
『人斬り』少女、公爵令嬢の護衛になる (GCN文庫)
護衛の任務に就くために育てられ、剣を極めた少女・シュリネ。しかし対面した時にはすでに護衛対象は死んでおり、暗殺したという濡れ衣を被せられて逃亡の旅に出る剣戟バトルファンタジー。シュリネが異国の旅の途上で出会った、王位継承問題のキーマンとして命を狙われる公爵令嬢ルーテシア主従。今まさに刺客に襲われていた彼女の護衛となり、執拗に襲撃してくる厄介な強敵を次々と排除してみせたシュリネ。彼女が守るルーテシアを追い詰めるようとする相手はなかなか狡猾で、それゆえに彼女たちはたびたび窮地に陥りましたけど、絶望的な状況でも彼女を守ることを愚直なまでに諦めず、活路を切り開いて見事守り抜いてみせたシュリネの覚悟が鮮烈な物語でした。
やり直し悪女は国を傾けない ~かくも愛しき茘枝~ (集英社オレンジ文庫)
第二皇子に嫁ぎ、その死後には父皇帝に寵愛された絶世の美女・汪玲枝。皇帝を誑かして贅の限りを尽くし傾国の悪女と呼ばれた彼女が、悪女評価から脱却を目指すやり直し中華風後宮ファンタジー。二度目の人生で美しい仙人に彼女の因縁を説明され「貴女が死ねば国が滅びる」と告げられたことで、やり直しの人生では勝手に国を傾けた彼らから距離を置いて、何とか第三皇子・柏心に嫁いだ玲枝。それでもどうやっても巡り合ってしまう、第二王子や皇帝の執着っぷりにはつい笑ってしまいましたが、そんな状況から周囲の女性たちの嫉妬も集めてしまい、更には以前は関わってこなかった皇太子まで執着してくるなかなかカオスな展開を、頼もしい夫の柏心とともに何とか切り抜けてみせたその結末はなかなか良かったですね。
宝石商リチャード氏の謎鑑定 ガラスの仮面舞踏会 (集英社オレンジ文庫)
地元中学で教員をしている友人・谷本の案内で博物館を訪れるため、正義に連れられて岡山へとやってきたみのる、良太、真鈴。みのるが正義たちと過ごす珠玉の夏の物語を描く第十三弾。正義に惹かれていて谷本との関係が気になる真鈴、中華街でみのるの中国人のクラスメイト・林やヒロシと名乗る人物と体験した関帝誕での様々な経験。そして実家裏のお屋敷でリチャードや正義たちと楽しんだ仮面舞踏会。なかなか病身の母と会えないことが気がかりなみのるに真摯に寄り添う正義がとてもらしいなと思いましたけど、一方で彼だけでなくリチャードや周囲の人々と過ごす日々が、みのるにとってかけがえのないものになっているのも間違いなくて、そんな彼らの優しさがとても心に沁みました。
京都岡崎、月白さんとこ 星降る空の夢の先 (集英社オレンジ文庫)
師匠である月白さんの死を長らく受け入れられなかった青藍。遺品の入った長持にあった1枚の写真をきっかけに、ある思い出の「場所」を探す決心をする第六弾。ベテラン写真家から青藍にもたらされた、娘の結婚式の絵を描いてほしいという依頼。一枚の写真から辿ってゆく師匠の過去と、そこから感じられる青藍を気にかける師匠の想い。一方、大学進学の準備に追われる日々を送るようになった茜に、頭では理解していても不満を感じてしまうすみれの複雑な想い。月白邸の人たちも関わる人たちも、少しずつ成長したり変わってゆくのを改めて感じた今回の展開でしたけど、かけがえのない居場所があって、大切な人たちがいてくれるからこそ踏み出せたそれぞれの新たな一歩でしたね。
今日、君と運命の恋に落ちないために (ことのは文庫)
運命の相手を幼い頃から信じて生きてきた大学生・立花颯太。しかしようやく出会った宝生まゆらは彼を避け続けて運命の相手に否定的で、逆に颯太にとある提案を持ちかける青春小説。彼女自身も颯太のことを運命の相手と認めつつも、頑なに恋人になることをよしとしないまゆらが抱えている秘密。恋人ではなく二人で親友を目指すことを提案して、運命が「絶対」ではないことを証明したいまゆらと、好きな相手の思いも尊重したくて思い悩む颯太の関係は相性抜群なのにとても不器用で、けれどお互いが積み重ねてゆく思いを考えれば、そのままではいられなくなるのも必然の展開でしたけど、なかなか素直になれない不器用な彼女の想いに向き合い、寄り添うことで見出してゆくその結末がとても素敵な物語でした。
