今回は8月の富士見ファンタジア文庫・ことのは文庫新刊感想まとめです。内訳は富士見ファンタジア文庫の新作が3点、続刊が3点、ことのは文庫の新作が1点の計7点です。気になる作品があったらこの機会に読んでみて下さい。
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スパイ≒アカデミー 真実を惑わす琥珀 (富士見ファンタジア文庫)
重要任務で仲間を逃がすため死亡した伝説的スパイ〈蜃気楼〉。失敗の責を取らされ、敵国の帝国スパイ養成機関に潜入した仲間の少女たちを救うため、名と姿かたちを変えて編入するスパイファンタジー。久しぶりの男子生徒エドガーとして、帝国のスパイ機関〈クリプトス〉に編入した<蜃気楼>。今回は彼と気づかぬまま全力で排除しようとしたり、懐柔しようとするかつての部下たちの攻勢をしのぎながら、同じ変装科のカリンを相棒に、実戦さながらの定期試験に潜む陰謀の真相を追う展開でしたけど、正体がバレてはいけないという制約を抱えながら、圧倒的な実力を見せつつ元部下たちも気にかけるエドガーが良かったですね。かつて慕われていたのは感じるだけに、今回はカリンがメインでしたけど、他の少女たちとのエピソードにも期待ですね。
生徒会長との待ち合わせは、いつもホテル。 (富士見ファンタジア文庫)
真面目で人気者の生徒会長・清瀬まつりが、夜の渋谷で一体何をしているのか、偶然知ってしまった志木颯大。捻くれていて実は寂しがり屋な一面も垣間見せる彼女と紡いでゆく青春小説。秘密を知ってしまった颯大をホテルに連れ込み、別人のような笑みで脅迫するまつり。彼が彼女の親友・藤沢ゆきを意識していることを見抜きその恋をけしかけ、彼を鍛えるために共に過ごす時間が増えてゆく中で、彼女のことも意識するようになってゆく颯大。まつりの複雑な事情が明らかになってゆく一方、それぞれの本音が見えてくる展開にはなかなか来るものがありましたけど、本当に大切なものを失わないために身体を張って守ってみせた気概と、いい感じに落ち着いた微笑ましい結末が印象的な物語でした。
都合のいい地雷系彼女とカラダだけの関係を (富士見ファンタジア文庫)
都合のいい地雷系彼女とカラダだけの関係を(1)
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すかいふぁーむ/みれあ KADOKAWA 2023年08月19日
ネトゲで知り合い、初対面でゲームをしながらアキを誘惑した、見た目地雷系の美少女リヨン。彼女との出会いをきっかけに、地雷系の従妹や後輩も彼にアプローチしてくる青春ラブコメ。お互い本名も知らない、付き合ってもいないリヨンとの心地よいゆるい関係。彼女の存在に触発されて、家をたびたび訪れる従妹の寧々やコンビニでよく会うバイトの沙羅にも懐かれてゆくアキ。地雷系ヒロインホイホイで妙に懐かれて、彼女たちに迫られてタジタジになる構図には苦笑いでしたけど、秘密を抱えるがゆえに突然音信不通となってしまったリヨンと再び向き合うために、彼女たちやゲーム仲間の助けも借りて奔走する展開はなかなか良かったですし、立ち位置が違うヒロインたちとアキとのそれぞれの関係性も楽しめました。
公女殿下の家庭教師15 英傑殺しの氷龍 (富士見ファンタジア文庫)
聖霊教による王都襲撃の傷も癒えぬ中。使徒となった親友の言葉に導かれるように、アレンのララノア共和国派遣が決定。使者となったリリーに、アレンの危機を予見したステラとティナも合流する第十五弾。アレンたちに課せられた任務はララノアとの対聖霊教同盟締結。他の国へも働きかけが行われる中、ララノアで蠢動する聖霊教、生けるララノアの英雄と王国を出奔した剣聖。歴史の闇に封じられた氷龍、そして旅にひょっこり同行してきた謎多き迷子の少女の正体。あちこちで策謀を重ねる聖霊教に対して、力を得たティナとステラのサポートを得ながら対峙するアレンという構図でしたけど、リルの真意も気になるところですし、何より未だ邂逅していない親友との再会がどういう決着を迎えるのか気になるところではあります。
俺と妹の血、つながってませんでした2 (富士見ファンタジア文庫)
家族水入らずな入鹿家にもやってきた夏休み。しかしいつもベタベタしてくるのに大人しすぎる兄ガチ勢な妹の久留里が、大好きな兄の光雪と血が繋がっていなかったことを知ってしまう第二弾。夏休みに友人の七尾兄妹と一緒に田舎に行ってお泊りや海水浴、浴衣で行った夏祭りに、まさかの両親の離婚危機。突っ込み不可避の両親が喧嘩した理由はなかなかあれでしたが、バイアスで全然話が通じない兄相手に、ストレスを溜めに溜め込んだ挙げ句久留里が爆発してしまうのはもう仕方ないですよね…。あそこから納得させるところまでよく持っていったよな…と感心しましたけど、スタートラインに立たせた光雪を久留里がどう振り向かせるのか、これからの展開が楽しみになってきました。
師匠に借金を押し付けられた俺、美人令嬢たちと魔術学園で無双します。2 (富士見ファンタジア文庫)
師匠に借金を押し付けられた俺、美人令嬢たちと魔術学園で無双します。2
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雨音 恵/夕薙 KADOKAWA 2023年08月19日
選ばれし者のみが参加を許される魔導新人祭。学園中が代表選抜に浮き足立つ中、謎多きルクスの秘密を探るため、王女アルクエーナが学園に体験入学する第二弾。学園にやってきたアルクエーナが、突然ルクスに弟子入りを志願して、自称妹弟子ティアや鉄拳聖女のルビィも交えた恋のバトルが勃発。一方で学園にいる彼女たちを襲う終焉教団の狡猾な罠と、明らかにされてゆくアルクエーナやルクスが狙われる理由。キーマンも登場して因縁が絡む複雑な人間関係だったり物語の構図も見えてきた今回の展開でしたけど、ルクス自身も現段階ではまだまだ強くなる必要がありそうですし、ラブコメ展開にもいろいろ期待しています。
水面の花火と君の嘘 (ことのは文庫)
久しぶりに実家に帰郷した大学1年生の早瀬瑞希。4年間抱いていた後悔から目を背けていた彼が、大切な人たちの笑顔を懸けたやり直しに挑むタイムスリップ青春小説。幼馴染の夏帆、大好きだった兄・千尋と三人で交わし、果たされなかったある約束。帰省して改めて実感する失われた大切な存在、変わり果てた家族、笑顔をなくしてしまった幼馴染の憔悴した姿を目の当たりにして、中学生の頃に部活の顧問をする先生から聞かされた『とっておきの秘密』を思い出す瑞希。事情を知る過去の先生に協力してもらいながら、当時の自分が知らなかった状況を知ってゆく中で、もうこれ以上後悔しないために、悲しい思いをさせないために代償を恐れず奔走して、懸命に手繰り寄せたその結末がなかなか素敵な物語でした。