今回は3月ガガガ文庫・GCN文庫・集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫が続巻4点、新作3点、GCN文庫が続巻1点、集英社オレンジ文庫が続巻1点、新作3点の計12点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
少女事案: 白スク水で愛犬を洗う風町鈴と飼い犬になってワンワン吠える夏目幸路 2 (ガガガ文庫)
連続殺人事件を解決した夏休み明け。今度は小学五年生の女の子風町鈴にランドセルで殴られた夏目が〈姿を偽装する〉能力で犬にされてしまう第2弾。首輪を付けられて周囲には犬にしか見えず、自身も犬っぽい行動を取ってしまう夏目。一方、政治スキャンダルに繋がる事件関係者の多くが襲われ、風町自身も多くの殺し屋に狙われる一方、夏目自身は彼女を連れて逃げたことにより、またもや幼女誘拐犯に仕立て上げられ全国指名手配される展開で、警察からも追われ続けて誰を信じていいのか分からなくなる難しい状況でも、夏目を放っておけない白瀬や月子たちの助力も得ながら、最後まで諦めずに東京を目指す熱い展開とその結末はなかなか上手かったですね。
【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう 2 (ガガガ文庫)
【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう(2)
posted with ヨメレバ
赤城 大空/福きつね 小学館 2024年03月18日頃
バズリまくってついに収益化を達成したカリン。その記念すべき初回配信に、憧れのセツナお嬢様の生みの親であるもちもちたまご先生が現れる第2弾。マンガもアニメ配信もその影響でバズって、ついには原作者に感謝されて感極まってしまうカリン。ふとしたきっかけから思わぬスキルも明らかにされて、視聴者の度肝を抜く彼女はどこまでも突き抜けていて、迷惑系配信者ゲロのリベンジも、まさかの渋谷にあるダンジョン崩壊から直面する危機ですらも、思いもしなかった方法でぶっ飛ばしてしまうカリンは半端ないですね。相変わらず斜め上の展開は今回も楽しくて笑いが止まらなかったですが、一方で知れば知るほどプロデュースする真冬の只者じゃない感も気になるところではあります…。
ドスケベ催眠術師の子 2 (ガガガ文庫)
サジの幼少期を知り、スクールカウンセラーとして真友に協力するサポーターの甕川水連。彼女との再会からほどなくして校内で辻ドスケベ催眠事件が起こる第2弾。いかにも以前の事件を思い出さずにはいられない状況で、真友に巻き込まれて彼女のビショ濡れ衣を晴らすべく事態収拾に動き出すサジ。あくが強い生徒会の面々、バカすぎる同級生など容疑者が多数いる中で見出された思わぬ犯人。しかしそれで事件解決としていいのか、真犯人は他にいるのではないか疑問を感じたサジが辿り着いたドスケベ催眠術に対する複雑な思い。囚われていたのはサジだけではなく、以前の頑なだった心境から変わりつつあるからこそしっかりと向き合えた過去があって、そんな彼らが迎える結末は悪くなかったですね。
魔女と猟犬 5 (ガガガ文庫)
異世界から来た男がもたらしたアイデアとテクノロジーで発展した島国オズ。銃器を求めるハルカリたち海賊団や魔女たちがオズの国へと集結する第5弾。海賊団が目にした島を統治するエメラルド家とそれに反発する南部の貴族たちによる南部戦線による激しい内戦。一方、西の魔女を仲間にするため、オズ島へやってきたロロとテレサリサたち。しかしすでに西の魔女は討伐されていて、南部戦線のグリンダたちが通っていた魔法学校で育んだ絆や、九使徒も絡んだ根深い因縁があって、導かれるようにオズに集まった面々でカオスになりそうな状況に、ロロたちも関わっていく今後の展開がどうなるのか気になるところではあります…。
ソリッドステート・オーバーライド (ガガガ文庫)
合衆国と首長国連邦がロボット兵同士で200年も戦争を続ける未来の地球。ポンコツトラックで移動するロボット兵マシューとガルシアが少女マリアベルを拾うSFロードノベル。ロボット兵の起用が当たり前となって人間が戦争に参加しなくなり、戦争を継続することに他人事になってしまっていた状況で、旅をしながらロボットたちに向けてラジオ番組を24時間配信し続けていたマシューとガルシアが戦場で出会った少女マリアベル。彼女の家があるという西の果てを目指す旅は、少しずつでも確実にロボットたちの戦場を変えていって、マリアベルが旅を始めた背景や様々な思惑が明らかになっていっても、それを乗り越えてみせた希望が感じられる結末がなかなか印象的な物語になっていました。
純情ギャルと不器用マッチョの恋は焦れったい (ガガガ文庫)
筋トレをこよなく愛する学校一のマッチョ須田孝士と、人気インフルエンサーのギャルJK犬浦藍那。キャラが濃いめで初心な片想いをする二人の焦れったい青春ラブコメ。ふとしたきっかけからモデルデビューも決まっている犬浦のダイエットに協力することになった須田。実はお互いに意識する密かに片想いする相手で、ダイエットを通じてやりとりを積み重ねて少しずつ確実に縮まっていく距離。だからこそ貴重なきっかけとなったダイエットが成功に終わってしまったら…そう考えてしまう奥手な二人の些細なきっかけからのすれ違いにはもどかしくなりましたけど、勇気を持って一歩を踏み出してそれを乗り越えた二人が、いつか相手に自らの想いを伝えることができるのか、続巻に期待しています。
闇堕ち勇者の背信配信~追放され、隠しボス部屋に放り込まれた結果、ボスと探索者狩り配信を始める~ (ガガガ文庫)
闇堕ち勇者の背信配信〜追放され、隠しボス部屋に放り込まれた結果、ボスと探索者狩り配信を始める〜
posted with ヨメレバ
広路 なゆる/白狼 小学館 2024年03月18日頃
ダンジョンが出現して探索や配信する現代。器用貧乏と評価される勇者クガがパーティーから追放され、美少女吸血鬼アリシアと出会う最強配信英雄譚。失意の中放り込まれ、生きては戻れぬと噂の隠しボス部屋で出会った、人間の配信に興味津々のアリシアと始める前代未聞の探索者狩り配信。ラスボスを目指すアリシアとの配信は意外とリスナーにも好評で、上級者パーティーを撃破したり眷属を増やしたり、かつての仲間たちの真意も知っていきながら、「アリシアの何者か」として彼女を支えながら自らも堕勇者となり、狡猾な手を使ってくる厄介な冒険者パーティ相手に、アリシアや眷属たちと一緒に総力戦で対峙する意外と熱い展開はなかなか良かったですね。
魔女と傭兵 3 (GCN文庫)
賞金首のモンスターが出現し、等級不足ということもあり冒険者家業の休業を余儀なくされていたシアーシャ。彼女が人と亜人を巡る複雑な問題に巻き込まれてゆく第3弾。思っていた以上に根深い人種間の問題が垣間見える中、二人が削岩竜に襲われていた緑鱗氏族のウルバスを助けた経緯から、亜人を忌避する冒険者たちに悪質な嫌がらせをされるようになってゆく二人。シグはシグで気がつくといろいろ巻き込まれがちですけど、自重することを多少は覚えたとはいえ、ブチ切れたら本当に怖いのはどちらなのか…それを改めて突きつける顛末になってましたね(苦笑)あれは怒るのも仕方ないかなとは思いましたけど、考え方という意味でも持つ力という意味でも彼女の異質っぷりが際立っていました。
京都岡崎、月白さんとこ 茜さすきみと、「ただいま」の空 (集英社オレンジ文庫)
時は流れ大学4年になり、1年間のイギリス留学から帰ってきた茜。大人になった茜と、ある決意をもった青藍の新たなる一歩を描く第7弾。茜が留学している間に朝食を作るようになり、彼氏ができていた中学生の妹すみれ。陽時もまた新たな一歩を踏み出して、みんなの成長と変化に茜が少しだけ寂しさを感じていた一方、同様に成長して世界の広がって茜に対して、眩しさのようなもの、距離のようなものを感じてしまっていた青藍。青藍の母のことが明らかになったり、東院との関係も少しずつ変わったりと、誰もが変わることを実感する中で自らの想いを自覚する茜と青藍でしたけど、二人がこれからどういう形で関係を再構築してゆくのかも気になるところではあります。
謎解きはダブルキャストで (集英社オレンジ文庫)
演技の実力は確かながら、ブレイクしないまま大人になった子役出身の俳優・粋。旬の若手俳優・夏流主演の舞台オーディションでメインキャストの座を射止め彼が夏流と入れ替わる演劇ミステリ。意気込んで顔合わせに臨んだものの主役の夏流の態度が悪く、たまらず怒った結果最悪になった雰囲気。憂さ晴らしに役者仲間と酒を飲んで起きたら、なぜか夏流と入れ替わっていて、そこに舞い込む同じ主演の人気アイドル花音が死んだいう知らせ。夏流と秘密を共有しながら花音の死の真相を追う展開で、明らかにされてゆく花音の死の真相は切なかったですが、入れ替わったからこそお互いに気づけた様々なことがあって、分かりづらかった夏流の真意も徐々に明らかになって、刺激しあえる関係になってゆく二人の結末はなかなか良かったです。
月夜の探しもの (集英社オレンジ文庫)
三年前、父が病で亡くなってしまってから不眠に悩まされていた高校生の冴島亘。幼い頃父が読んでくれた絵本に、よく眠れる魔法の呪文があったことを思い出す青春小説。亘が不眠の症状が出るのは母が夜勤で不在の夜だけ。不眠が治るわけでもないと知りつつも作者もタイトルも分からないまま父が読んでくれた絵本を探そうとして途方に暮れていた彼が、偶然同じ絵本を探している同級生で問題児と噂のある三枝致留と出会い、ともに過ごす時間が増えてゆく二人。実は意外な形で繋がっていたお互い親世代同士の関係があって、気にかかっていたものも見つけられて、何より自らが抱えていた思いを共有して、気軽に話すことができる存在の大きさが効いていました。
大江戸恋情本繁昌記 ~天の地本~ (集英社オレンジ文庫)
数人の担当作家を抱えて忙しくも充実した毎日を送っていたエンタメ小説の若手編集女子・小桜天。編集部とトラブルになっていた大御所作家・瓦崎とトラックに轢かれ、江戸時代に転生する大江戸お仕事小説。思ってもみなかった経緯で江戸時代に転生して、通りかかった侍・遠野伊織に拾われ、三味線の女師匠おふゆに預けられることになった天。世話になりながら生きる術を探すうちに、やはり本作りに興味を持ち手伝うことになった地本問屋。彼女を救って便宜を図ったり店を畳む店主の株を買うなど、いろいろと謎も多い伊織が一体何者なのか気になる展開でしたけど、おふゆに小説の才能があることを見抜いて妨害されながらも諦めずず、令和で鍛えた編集の知恵と腕で彼女の本を出そうと仲間たちと力を併せて頑張ったその結末はなかなか良かったです。