今回は8月のガガガ文庫・集英社オレンジ文庫新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫が新作2点、続巻2点、集英社オレンジ文庫の続巻1点、新作2点の計7点になります。
気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
夏に溺れる (ガガガ文庫)
【第18回小学館ライトノベル大賞 大賞受賞作】
1年と1か月前の夏に出会った光と凛。半年間休学して四月から再び二年生として学校に通い始めた凛に、光が夏休み明けの始業式の朝あるゲームを提案するひと夏の青春小説。不登校で退学しようとしていた凛と、自殺しようとしていた光の運命的な邂逅。LINEのやり取りで交流しながら親交を深めていった2人の唐突な断絶、そして交流が途絶えていた光から衝撃的な告白から始まる2人きりの危うい夏の逃避行。それぞれの過去が明らかになってゆく旅でお互いのことを知って、絆を深めていく2人の様子が伺えて、最後に描かれるようやく自覚していった想いを読んでしまうと、2人が迎えた衝撃的な結末を仕方ないと思いつつも、それでもこうするしかなかったのか…とつい思わずにはいられませんでした。
天使の胸に、さよならの花束を: ~余命マイナスなわたしが死ぬまでにしたい1つのこと~ (ガガガ文庫)
余命が尽きてしまった人々の元に、翼を失ったアイと名乗る天使の少女が現れ、与えられたあと1日だけの時間で未練に向き合ってゆく連作短編集。肉体を失った魂の最期の願いを叶えてくれる、アイとひねくれものの相棒・悪魔ディア。いつか交わした約束を守るため、好きだったあの子を笑顔にするため、愛する人に想いを伝えるため、ずっとしてみたかったデートをするため、大切な人の晴れの日を祝うため。これまでの登場人物たちのその後も時折描写される地続きの世界の中で、彼らの想いに真摯に向き合ってゆくアイとそれに寄り添うディアが、なぜそのようなことをしているのかも浮き彫りになって、ひとつひとつがとても切ないけれど忘れられない物語になっていました。
千歳くんはラムネ瓶のなか 9 (ガガガ文庫)
2か月の準備を経て、この3日間にありったけを注ぐ青春の祭典。ヒロインたちもありったけの思いを込めて、ついに藤志高祭が幕を開ける第9弾。これまでの積み重ねを遺憾なく発揮する、校外祭での優空の吹奏楽ステージ、体育祭の陽と二人三脚、応援団での紅葉や明日姉たちも交えてのアドリブ混じりで繰り広げた青色海賊団のパフォーマンス。そして優柔不断な王子様が白雪姫と暗雲姫のどちらかを選ばなければならない最終日のクラス演劇。誰もが隠しきれないかけがえのない想いを抱えて、遅れてやってきた挑戦者の諦めきれない熱い想いがあって、それぞれがこれまでで最高のパフォーマンスを見せて最後までやりきってみせた、きっとずっと忘れない青春の1ページがそこにありました。
氷結令嬢さまをフォローしたら、メチャメチャ溺愛されてしまった件 3 (ガガガ文庫)
愛坂 タカト/Bcoca 小学館 2024年08月20日頃
グレイたちの前に現れた、生き別れの姉シルヴィア。第三王子と結婚し王族に成り上がっていた彼女にグレイが連れ去られ、王城に拉致監禁されてしまう第3弾。学園の教師そして第三王子妃としてグレイに厳しい態度を示すシルヴィア。特別クラスの生徒たちに貴族としてふさわしい人間になれるよう指導をしていく一方、アリシアたちの関係に覚悟を問うていく展開で、グレイを溺愛していたシルヴィアがこれまでどこでどうしていたのかも描いていきながら、お姉ちゃん愛を再教育された結果、混乱してしまったグレイを巡るヒロインたちとのカオスな展開には大変だなと苦笑いでしたけど、それでも諦めずにそれぞれの方法で必死に食らいついていく2人が認められてゆく結末はなかなか良かったですね。
冥府の花嫁3 地獄の沙汰も嫁次第 (集英社オレンジ文庫)
廻帰の力のせいで冥府を巡る陰謀に巻き込まれ、救ってくれた双子の弟・瑞月を失ってしまった翠。悲しみに暮れる翠に、天鴦が妃になれと言ってくる第3弾。副作用もある廻帰の力を持つ翠を、妃とすることで守ろうとする天鴦。天鴦の妃になることには前向きでも、まずは家を再興して天鴦と対等になりたいと思う翠。そこに天鴦と複雑な因縁を持つ聚楽との関係や没落した結家を巡る過去が明らかになっていく一方で、閻魔王位を巡る妄執に巻き込まれる展開で、たびたび危機に陥りながらも、持ち前の前向きな行動力と相手を思う真っ直ぐな気持ちで寄り添おうことを諦めない翠には、味方になってくれる人たちが確実に増えてきていて、彼女自身の心境も含めていろいろと状況がいい方向に変わってきているのを感じました。
廃嫡皇子・珠怜永の中華宮廷推理録 ~瑞鳥来たりて叙説する~ (集英社オレンジ文庫)
希多 美咲/藤 未都也 集英社 2024年08月20日頃
皇后だった実母が禁忌を犯して廃嫡されてしまった香綺国の湊王・怜永。彼が謎の病に倒れた養母の治療法を求めて、秘術に通じる孤島の紅紗族を訪ねる中華風ファンタジー。過去に因縁ある紅紗の盟主・雀炎に認められて、都に一緒に向かうことになった彼の助力を得て養母を苦しめていた原因を究明しようとする怜永。そこから養母のことを苦しめていた呪術、高官の娘たちがなぜか次々と燃え上がってしまう蝶々炎上事件、そして実母が謎の死を遂げた過去を雀炎と探るうちに一連の事件の繋がりが明らかになってゆく展開で、雀炎との相棒感もいい感じに効いていましたし、事件を解決することで過去の不名誉も回復され、これからの希望を感じさせてくれる結末はなかなか良かったですね。もし続きがあるならまた読んでみたいです。
推しと私の怪異調査 サトリの眼 (集英社オレンジ文庫)
高校入学してから突然霊能力に目覚めてしまった椎葉里瑠。トラブル続きの彼女が相談相手の心霊系Vtuber清原こすもに心霊調査の助手のアルバイトを提案されるオカルトコメディ。家にも学校にも居場所を失いつつあった彼女が引き受けたアルバイトの依頼先は、心の拠り所となっていた推しのアキが所属する運営会社。思わぬ形で推しと対面した里瑠が、怪しい怪異がいるライブハウスや子供が神隠しに遭う朝顔屋敷、DV夫の意外な正体など、次々と怪異に対峙していく展開になっていて、その先にはまさかの展開が待っていましたけど、こすもの中の人や実は意外な繋がりがあった推しのアキもなかなか存在感があって、たびたび怪異の恐ろしさが顔をのぞかせる一方で、振り回される里瑠の相変わらずのドタバタっぷりが微笑ましくなる結末でしたね。

