今回は5月の富士見ファンタジア文庫・ガガガ文庫・GCN文庫・集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳は富士見ファンタジア文庫の新作が4点、続巻が2点、ガガガ文庫の新作1点、続巻3点、GCN文庫の新作1点、集英社オレンジ文庫の新作2点3冊、続巻1点の14点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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【電子書籍限定】二番目な僕と一番の彼女2 (富士見ファンタジア文庫)
校内屈指の美少女・南野千夏の彼氏となった、同級生から二番と揶揄される佐藤一。恋人らしい時間を過ごす当たり前の願いが当たり前に尊いと気付く第2弾。千夏の母親から許可されて一時同棲したり千夏の友達にも認められ、長野にいる千夏の祖母にも一緒に会いに行ったり。分かりやすい指標で評価されがちな学校内とは違う、大切にしてくれて困った時に頼れる存在で、欲しい時に寄り添ってくれる料理も得意なハジメにベタ惚れな千夏が微笑ましかったです。意外と複雑なことになっていた千夏の友人の人間関係には苦笑いでしたけど、少しずつ変わるクラス内での評価だったり、もう一人の佐藤一との関係を描いた熱い青春している様子もしっかりあって、2巻目を読めて本当に良かったなと思いました。
すまん! クラスで人気の文学少女がスカートを短くしたのはオレのせいだ (富士見ファンタジア文庫)
すまん! クラスで人気の文学少女がスカートを短くしたのはオレのせいだ(1)
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ヰ森 奇恋/うなさか KADOKAWA 2024年05月17日
古典的な服装と清楚で純粋な振る舞いからクラスで絶大な人気を誇る文学少女・古川葉桜。そんな彼女が大胆に垢抜けしてアプローチしてくる甘々ギャップラブコメ。見た目から女を殴ってそうな男としてクラスで避けられる筧理比斗のアドバイスを受けて、内心変わりたいと思っていた葉桜が果たした劇的な変化。天然で無駄に意味深っぽい発言をする葉桜と、イメージで語られがちな理比斗の関係は誤解が加速する中、JKインフルエンサーひめマユも絡むようになって、なぜ葉桜があまりいいイメージのない理比斗をそこまで慕うのか、その理由も明らかにされてゆく一方で、自身の誤解を解くことを諦めかけていた彼のために奔走する葉桜たちの頑張りがとてもらしくて、なかなかいい関係だなと思いました。
魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。 (富士見ファンタジア文庫)
魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。(1)
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じゃがバター/toi8 KADOKAWA 2024年05月17日
魔王討伐の旅から50年が経過して、女神の祝福によって身体を若返らせた最強の剣聖スイルーン。とある約束を果たすため、在りし日に成し遂げた冒険の旅程を再び辿るファンタジー。のんびりとした一人旅になるはずが、半世紀前、ともに魔王と対峙したかつての仲間で伝説の大神官マリウスが旅の道連れとなって、さらにすっかり懐かれた聖獣シンジュや魔女イレーヌ、「勇者」候補のアリナや魔女の弟子イオといった可愛い孫娘たちも関わって、一般人枠の傭兵タインから見たら、これから何か起きるのかと心配になってしまうのも分かる規格外のパーティーですよね(苦笑)見た目は若返ってもどこかじじい臭さが抜けないスイルーンが、仲間とのんびりと旅を続ける中でその目的も見えてきた今後の展開が楽しみです。
男女の力と貞操が逆転した異世界で、誰もが俺を求めてくる件 (富士見ファンタジア文庫)
男女の力と貞操が逆転した異世界で、誰もが俺を求めてくる件(1)
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タジリ ユウ/さなだ ケイスイ KADOKAWA 2024年05月17日
トラックに跳ねられて異世界転生したソーマ。転生した先は男女比が1:3で力も男女の貞操概念も逆転した世界で、貴重な回復職として注目を集めていくファンタジー。男女の職業や貞操概念が逆転していて、ゴブリンやオーク、女盗賊さえも狙うのは女よりも男という異世界。さらにはジョブ鑑定で唯一回復魔法を使える職業『治療士』の最上位職『聖男』と判明し、とりあえず下位職『男巫』ということにして、格安で人々の治癒に努めることで注目を集めてゆくソーマ。男女の貞操概念が逆転している感覚のズレが面白かったですが、女王に請われて王女を解毒したり、騒動に巻き込まれてゆく展開はテンポも良く読めましたし、その活躍に好感度を上げていく周囲のヒロインたちとの関係も気になるところです。
美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件2 (富士見ファンタジア文庫)
美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件2
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諸星 悠/kodamazon KADOKAWA 2024年05月17日
美少女英霊たちの弟子となり、魔物の大軍を退ける大活躍をしたウィリアム。そんな中、第三王女のカノンがクラスに編入され、何故かウィリアムに接触を図ってくる第2弾。急成長したウィリアムが覚醒者ではないかと疑い、警戒を強めていくカノンが愕然とするそのあまりにもクズな生活。彼の力に追いつくためにレインと修行するセシリーと、レインが抱えている悔恨。諸々の状況も絡む学園代表選抜戦に参加することになって、何かあるたびに毎回さらなる高みを目指して師匠たちの猛特訓を受けるウィリアムはなかなか大変そうでしたけど(苦笑)、覚醒者を巡る状況も少しずつ明らかになってゆく中で、悩めるヒロインたちの憂いとなる存在と対峙して、それを晴らしてみせる彼の確かな成長を感じさせてくれました。
貴族令嬢。俺にだけなつく4 (富士見ファンタジア文庫)
晩餐会でルーナとエレナ、二人の貴族令嬢から告白を受けたベレト。アリアもまた彼に会いに学園に通うようになって学園生活にも変化が訪れる第4弾。令嬢たちと一緒に登校したり図書室で思いっきり甘えられ、教室でこっそりキスしてくる彼女たちの変化にドキドキさせられるベレト。晩餐会でベレトと急接近した歌姫アリアもアプローチしてきたことで、ヒロインたちの間でも将来に向けて少しずつ根回しをして関係が構築されてゆく展開でしたけど、そんな中で描かれた専属侍女シアとの甘いデートも良かったですね。ベレトが覚悟を決めつつあることで、ヒロインたち同士も案外上手くやっていけそうで、いい感じに好循環が生まれて安心して楽しめる今後の展開に期待です。
小説 夜のクラゲは泳げない (ガガガ文庫)
小説 夜のクラゲは泳げない(1)
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屋久 ユウキ/popman3580/JELEE/谷口 淳一郎 小学館 2024年05月20日頃
明日話すべき話題も今週買うべき洋服も、全部スマホが教えてくれる忙しい世界。そこから少しだけはみ出した少女たちが匿名アーティストJELEEを結成するアニメのノベライズ。なかれ主義の訳あって活動休止中のイラストレーター・ヨルと、彼女の絵を評価してくれた歌で見返したい元アイドル橘ののかの運命的な出会い。そんな彼女たちの出会いを契機に、推しであるののかを支えたい謎の作曲家・木村ちゃんや、ヨルの幼馴染で自称最強Vtuberの竜ヶ崎ノクスも加わって結成された匿名アーティスト「JELEE」。彼女たちもそれぞれ事情を抱えながら、それでもかけがえのない大切なものもあって、時にはぶつかり合う彼女たちがどんな化学反応を起こしてくれるのか、今後に向けた期待感がありました。
かくて謀反の冬は去り 2 (ガガガ文庫)
紆余曲折の末に摂政になった奇智彦。しかしその基盤が安定しないうちに東国を治める豪族の長、祢嶋太刀守が3000の兵を率いて襲来し王都を取り囲む第2弾。麾下のはずの近衛兵にも味方は少なく、豪族たちも日和見ばかりという危機的状況で、どうにか太刀守の襲来を乗り切ってその娘を婚約者とすることになった奇智彦。奇智彦の許嫁となった愛蚕姫の掴みどころのないキャラに加えて、さらにそこから不穏な動きが燻っているのが明らかになってゆく展開で、当事者の奇智彦からすれば心臓に悪い状況の連続でしたけど、彼の心情とは裏腹に周囲にどんどん増えていく曲者揃いのヒロインたちは、今回もマイペースで掴みどころがなかったり、イキイキと輝いていて傍から眺めている分には楽しかったです。
恋人以上のことを、彼女じゃない君と。 (終) (ガガガ文庫)
この関係を続けるために決意した冬の二度目の告白。しかし糸のまさかの保留から連絡が取れなくなり、そこから思ってもみなかった展開に発展していく第3弾。糸からの反応がなく、落ち着きのない日々を過ごしていた冬の元に突然届いた彼女からのメッセージ。糸が出題する2人の過去をネタにしたリアル謎解きゲームを解いていくうちに、いやでも理解させられてしまう彼女が抱えていた想像以上に根深い想い。糸のご両親は最後までなかなかあれな感じでしたが、情け容赦のないゲームにはドン引きで、結末自体も少しばかり締まらなくて苦笑いでしたけど、でもこれから共に歩むことを考えたら、本当に信じていいのか、そもそもちゃんと分かってんのかと問いたくなるのも分かるような気がしました…。
塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い 9 (ガガガ文庫)
JKインフルエンサー姫茴さんの投稿をきっかけに突然の大バズりしたcafe tutuji。嬉しい悲鳴を上げる颯太が、こはるの何気ない一言で学年末テストの存在を思い出す第9弾。学年末テストのことをすっかり忘れていて、全く勉強していないことをごまかした颯太にこはるが持ちかけた彼女の家での勉強会の提案。そして漠然とカフェを継ぐと思っていた進路を父に否定されたことで勃発した親子喧嘩。相変わらずぐいぐい迫るこはるは彼が大好き過ぎて微笑ましかったですけど、颯太もまたこれまで深く考えてこなかった進路に目を向けるいい契機になっていましたし、何よりこれまで知ることがなかった両親の真意と、そう思うに至った過去エピソードも明らかになってゆくその結末がなかなか印象的でした。
コドクな彼女 (GCN文庫)
大学生・叶のもとに、転がり込んできた正体不明の少女。そのただならぬ気配に、身の危険まで感じる叶が、悲痛で弱々しい叫びを聞いて少女を迎え入れ、奇妙な同棲生活が始まる物語。「赤瀬奈紺」と名付けられた少女が、いろいろ経過観察されながら、孤独のない居場所を叶の隣に見出してゆくささやかでかけがえのない日々。叶と一緒に合コンに呼ばれたり、学園祭でお化け屋敷に怖がったり、彼女との出会いが描かれたりする一方、彼女が生み出された背景も明らかにされていって、あまりにも強大な力を持って生まれてしまった彼女だからこそ、どうしてもいろいろ巻き込まれずにはいられないわけですけど、それでもただ彼の隣にありたいだけの彼女のささやかな日常がこれからも続くことを祈らずにはいられませんでした。
魔法使いのお留守番 (上・下) (集英社オレンジ文庫)
大陸の果ての孤島に住み、不老不死の秘術を得たという大魔法使いシロガネ。不思議な青年・クロとアオが魔法使いの留守を預かる孤島に、ある日傷だらけで記憶すら失った金髪の少年が流れ着くファンタジー。不老不死の秘術をものにしようと世界中の人間が死者を送る島に流れ着いて、紆余曲折の末に2人が話し合ってヒマワリと名付けられ、共に過ごすことになった少年。その存在によって少しずつ静かだった島の暮らしや2人のあり方が変わってゆく展開で、様々な理由で島を訪れる客たちと出会ったり、厄介事が持ち込まれたりすることに対応していくうちに、類まれなる魔法の才能を開花させていくヒマワリの存在がクローズアップされて、大切なものと思っている2人との日々がこれからどうなるのか、今後の展開が気になる上巻でした。
生まれながらの天才と謳われ、若くして類まれな魔法の才能を開花させた17歳のシロガネ。彼が四大魔法使いになる夢を叶えるために西の大魔法使いに弟子入りする下巻。幼馴染で兄弟弟子の少年マホロと共に、大陸全土から若き魔法使いが集い魔法を競い合う大会・魔法比べに参加したシロガネ。ライバルたちと競い合い、時には謎の妨害工作に遭いながらも勝ち上がっていった彼が知る大会開催の真実。シロガネの過去エピを中心にクロやアオのエピソードも描かれていて、彼らの今に至る経緯が明かされた下巻でしたけど、それを踏まえてヒマワリが直面する危機に2人が奔走する展開や、乗り越えた彼らが迎えた余韻を感じさせる結末はなかなか良かったです。
百番様の花嫁御寮 神在片恋祈譚 (集英社オレンジ文庫)
梅の花咲き誇る頃。とある少女が百番目の神を有する「百生」一族の当主のもとに嫁ぐ、『十番様の縁結び』と同じ世界観のもうひとつの物語。生家で虐げられて表情を失くしてお人形のようだった紗恵。唯一彼女を気にかけてくれた異母兄・高良も亡くなり、望まない縁談が持ち込まれる窮地に陥った状況で、彼女のことを迎えに来た兄の親友で神を有する「百生」一族の当主になった百生成実。兄を自らの手で殺したという成実と、兄に託された故の縁談と遠慮しがちな紗恵の距離感はもどかしかったですが、明らかにされてゆく兄の死の真相や、積み重ねてきたそれぞれの想いもあって、因縁にも決着をつけた2人のこれからいろいろ変わっていきそうな予感のある結末はなかなか良かったです。そんな2人を見守る「百生」の女性たちの存在もなかなか効いていました。
夏にいなくなる私と、17歳の君 (集英社オレンジ文庫)
進行性の難病を抱えて、いつか来るかも知れない死に怯えていた17歳の詩音。GW明けにやってきた転校生の諒の存在が、彼女の心境を少しずつ変えてゆく青春小説。初対面なのになぜか詩音のことを知っている様子で、彼女が密かにノートに綴った5つの願いごとも知っているらしい諒。彼と関わるようになったことをきっかけに、これまで人との関わりを避けていた詩音と周囲の関係も少しずつ変わっていって、彼女自身もまた気さくで明るい諒に惹かれていく展開で、詩音がずっと意識してきた運命の日が近づく中、分岐点で彼女が声を上げたからこそ繋がったバトンがあって、そして全てが明らかになってゆく中で変わらないかけがえのない想いと、これから改めて紡いでいく未来への余韻が印象に残る物語になっていました。