読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2019年11月に読んだ新作おすすめ本

2019年11月に読んだ新作おすすめ本です。

ラノベの方では「生徒会探偵キリカ」の新章スタートということであえて新作として載せました(はてなAmazon作品紹介がまたもやバクってますがw)。それ以外だと「俺の家に何故か学園の女神さまが入り浸っている件」「お隣さんと始める節約生活。」「カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています」などヒロインが部屋に入り浸る系の波が来ているようで、どれも楽しみなシリーズです。映画製作ものとして「私に効果音をつけてよ、響くん!」も注目です。

 

ライト文芸では藤石波矢さん・辻堂ゆめさんの合作「昨夜は殺れたかも」は注目の一冊。我鳥彩子さんの「雛翔記」は今後に期待したい和風ファンタジーで、知的財産を扱った「それってパクリじゃないですか?」、個人的にデビュー時から注目している十三湊さんの「かくしごと承ります。」もオススメです。一般文庫では朱野帰子さんの「真壁家の相続」もインパクトがありました。

 

単行本ではやはり米澤穂信さんの「Iの悲劇」には唸らされましたけど、30年前に起きた連続幼女殺人事件の犯人を追う櫛木理宇さんの「虎を追う終戦直後の古書店主たちの奮闘を描いた門井慶喜さんの 「定価のない本」、未来で技術・制度が実現したとき何が起こるのか、そのひとつの可能性を描いた井上真偽さんの「ベーシックインカム」など印象的な本が多かったです。

 

 

生徒会探偵キリカS1 (講談社ラノベ文庫)

壮絶な生徒会長選の結果、なぜか副会長の座に収まった牧村ひかげ。助手を務める生徒会探偵ではキリカが料金体系を一新してリニューアルオープンする新章第一弾。議員選挙が行われた中央議会で議長朱鷺子が相次ぐ否決に悩まされた真相、四クラブ合同の『第九』コンサートに妨害工作や内紛の理由。ひかげを軸にその鈍感ぶりにやきもきするキリカや朱鷺子、暴走する美園、状況をさらにカオスにさせてゆく薫や狐徹らヒロインたちに振り回されるやりとりはますます冴え渡って、久しぶりで待ちくたびれましたけどとても楽しかったです。早めの続巻に期待。

俺の家に何故か学園の女神さまが入り浸っている件 (角川スニーカー文庫)

俺の家に何故か学園の女神さまが入り浸っている件 (角川スニーカー文庫)

 

ド底辺を自覚してバイト漬けの自堕落な一人暮らしを送る高校生・常盤木翔和。ある日同じ学年の癒し系美少女・若宮凛を空腹から救ったことがきっかけで懐かれてしまう青春ラブコメ。最初はポテトで?とも感じましたけど、ドーナツ好きもあったのかバイト先に通うようになった凛に懐かれながら、二人の距離感に配慮する翔和がいつもと違って珍しかったんですかね(苦笑)意外にぐいぐい来る凛に友人カップルの後押しもあって、頑張りつつも勘違いしないようにと必死な翔和と宣戦布告した凛の微笑ましい関係をこれからも見守っていきたいと思いました。

一人暮らしの高校生の間宮哲郎が、高校の先輩でもある同じ境遇の隣人山野さんが似たような境遇であることを知り、一緒に節約生活を始めてみる青春ラブコメディ。高校がバイト禁止という状況で、もう少し遊ぶお金を確保するには節約しか選択肢がない似たような境遇にいる二人。最初は自作の弁当を比べたり巨大なパンをシェアしたり、電気代を減らすために夏休みを一緒に過ごすようになったり、ベタながらも日常にあるドキドキの積み重ねから、お互いのことを少しずつ意識してゆく展開がいいですね。そんな二人の今後がとても楽しみな新シリーズです。

クリスマス直前に彼女に浮気されて別れた大学二年生の羽瀬川悠太。そんな傷心の彼がサンタのバイトをしていた後輩・志乃原真由と出会う青春小説。いつの間にか懐いて勝手に家にまで上がり込んでくるようになった後輩・志乃原と、付き合いが長い友人ヒロイン・彩華、そして悠太を気にかける元カノの存在。三者三様のヒロインたちはそれぞれに事情があるようで、その妙に狭い人間関係の繋がりも地味に効いていますが、単純な恋愛模様にはならなさそうな彼女たちとの繊細な距離感や関係がこれからどう変わってゆくのか、続巻に期待の新シリーズですね。

私に効果音をつけてよ、響くん! (講談社ラノベ文庫)

私に効果音をつけてよ、響くん! (講談社ラノベ文庫)

 

近隣高校の映画部から依頼を受け、映像に効果音をつける「音屋」を営んでいた高校1年の豊響。音響効果への情熱を失いくすぶった毎日を送っていた彼の元に宇津々きさらが現れ、自主映画制作にスカウトする青春小説。きさらとカンナが中心となって立ち上げた自主映画制作集団『余命三年』。魅力的な彼女たちが撮った映像に衝撃を受け、彼女たちと関わるうちに心揺さぶられ、熱い想いを取り戻してゆく彼の音響アイデアはなかなか興味深くて、困難を抱える仲間のために奔走する彼らの青春はとても良かったです。これは続巻も楽しみな新シリーズですね。

探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

 

完全無欠に巻き込まれ体質で天使のように美しい探偵・シエスタの助手だった君塚君彦。その探偵と死に別れ高校生になり、日常というぬるま湯に浸っていた彼が一人の少女と出会う物語。ひとを探してほしいという依頼を持ってきた同級生・夏川渚、三十億のサファイアが盗まれるのを防いで欲しいというアイドル・斎川唯、そして探偵のかつての弟子・シャーロット。彼女たちと出会いが探偵の死によって止まっていた君彦の時間を動かし始めて、この一冊自体がまるごとプロローグでしたけど、彼らがこれからどんな活躍を見せてくれるのか今後に期待ですね。

異修羅I 新魔王戦争 (DENGEKI)

異修羅I 新魔王戦争 (DENGEKI)

 

魔王が死んだ後の世界。魔王さえも殺しうるありとあらゆる種族、能力の頂点を極めた修羅達がさらなる強敵を、本物の勇者という栄光を求め、新たな闘争の火種を生み出すファンタジー異世界の剣豪、神速の槍兵、鳥竜の冒険者、一言で全てを実現する全能の詞術士、不可知でありながら即死を司る天使の暗殺者など、修羅たちの背景が綴られて、黄都と新公国を巡る争いの中で彼らが激突して、本物の勇者を決めるという意味でも熱い戦いを繰り広げてゆく先に何が待っているのか、一巻自体が壮大なプロローグといった感じで続巻の展開に期待したいですね。

 

 

昨夜は殺れたかも (講談社タイガ)

昨夜は殺れたかも (講談社タイガ)

 

平凡なサラリーマン・藤堂光弘。夫を愛する専業主婦・藤堂咲奈。誰もが羨む幸せな夫婦の二人が、妻の不貞と夫の裏の顔にそれぞれ気づき、互いの殺害計画を練りはじめる物語。夫パートを藤石波矢さんが、妻パートを辻堂ゆめさんが担当し競作する愛と笑いとトリックに満ちた「殺し愛」のストーリーで、勘違いがものの見事にハマってお互い疑心暗鬼になってゆく中、仲良かった相手を殺そうと巧妙な殺人計画を練るようになってゆく二人。そこに至る前に前に気づけなかったのか…とも思いましたけど、そのコメディめいた展開はなかなか楽しかったですね。

雛翔記 天上の花、雲下の鳥 (集英社オレンジ文庫)

雛翔記 天上の花、雲下の鳥 (集英社オレンジ文庫)

 

花の郷の王・異花王の妹の身代わりとして黒金の大王のもとへ輿入れ命じられた少女・日奈。輿入れのため身を清めていた川で川彦と名乗る男と運命的な出会いを果たす和風ファンタジー。異花王のために生きてきた日奈と、自分の意思のない結婚に納得いかない川彦が彼女を攫って始めた彼女の見聞を広めるための旅。多くのものを見聞きした日奈は何が正しいのか分からなくなって、川彦にも向き合うべき役割があって、異花王にも彼なりの正義があって。運命に翻弄されつつもそれに向き合う彼女が今後どのように成長してゆくのか期待の新シリーズですね。

群馬の中堅飲料メーカー「月夜野ドリンク」の知的財産部に異動になった亜季が、親会社から出向してきた弁理士資格持ちの上司の北脇とともに、商標乗っ取り、パロディ商品、特許侵害といった知的財産のトラブルを解決するお仕事小説。悪徳企業に訴訟を起こされそうになった服飾ブランドを営む親友、自社製品のロゴを改変したパロディ商品の発覚、イラストレーターとのトラブルや、社運をかけて開発してきたお茶の発売中止の危機と、みんなが努力して開発した汗と涙の結晶の技術を守るために奔走する知的財産の様々な仕事をとても興味深く読めました。

派遣社員あすみの家計簿 (小学館文庫)

派遣社員あすみの家計簿 (小学館文庫)

 

自称飲食店社長の恋人に騙され、正社員として勤めていた会社を寿退社してしまった藤本あすみ、28歳。彼が姿を消し高額なカードの支払いだけが残ったあすみが、親友に説教され、ルーズな生活を立て直すべく奮闘する物語。正社員の当たり前はかけがえのないものだった…買いたいものも買えず、派遣社員としてすらなかなか次が決まらず、日雇いで稼ぐ日々はしんどいものがありますよね。すっかり生き方が変わったように見えた彼女の相変わらずな一面も垣間見えましたけど、そんな憎めないあすみがいつか幸せになれればいいなと応援したくなりました。

陰陽師と無慈悲なあやかし (小学館文庫キャラブン!)

陰陽師と無慈悲なあやかし (小学館文庫キャラブン!)

 

いつか一人前の陰陽師になることが夢の陰陽寮の童顔な新米役人・大江春実。うっかり召喚した美形のあやかし・雪羽に取り憑かれながら左大臣家で起きた怪事件に挑む物語。先輩の頼尚ととともに左大臣の邸・万華院へと向かい、雪羽に振り回されながらも幼い七姫に出会った春実が、頓死した使用人の男の事件の謎を追う展開で、万華院に住む人々が抱える複雑な想いが垣間見えましたけど、事件の真相はちょっと意外な結末でした。今回親交を深めた七姫との今後や謎も多い雪羽との関係が気になるところですけど…もし続巻あるならまた読んでみたいですね。

卒業証書や招待状の宛名などを毛筆で書く筆耕士・相原文緒。憧れの都築先生から請け負った数々の仕事を丁寧にこなしていく中で、文字にまつわる不思議な謎にしばしば遭遇する物語。お品書きに込められた故人の思い、命名書を依頼された家にあったノートに書かれた名前、秘密の暗号に込められた意味、五度目の招待状の理由、誰かのための嘆願書、そしてラブレター。文字に込められた思いを読み解いていく展開も良かったですけど、慎重でなかなか関係が変わらないけれど意識しているのは感じられる、もどかしい二人のその後をまた読んでみたいですね。

消えてください (メディアワークス文庫)

消えてください (メディアワークス文庫)

 

ある雨の日、橋の上でサキと名乗る美しい幽霊に出会った泉春人が、自分を消してほしいと願う彼女と消すために日々を共に過ごしていく物語。全てが息苦しかった高一の夏。そんな中で彼女と過ごす時間は確かな変化で、けれど彼女に対する戸惑いも確かにあって。サキの過去が明かされてゆくエピソードの先にあった二人の関係にはまた違った印象もあっただけに、最後は唐突であっけないようにも思えましたけど、サキの心情がどのように変わったのか、そして最初に決めたルールも意外とポイントだったのか、その分岐点をいろいろ考えたくなる結末でした。

どうしても着物に興味をもてず、店の経営に腐心する日々を送る鎌倉にある呉服屋の長女・紬。そんな様子を見かねた両親の強引な指示によって、彼女は神楽坂の路地裏に建つ悉皆屋で修業する物語。経営センス皆無の両親を危惧し、祖母に経営に関するあれこれを叩き込まれた紬が、着物のメンテナンスを一手に引き受ける悉皆屋で、風変わりな店主や軟派な綾人らと共に働くうちに、これまで気づかなかった着物の魅力や着物に対する想いに触れて少しずつ変わってゆく展開はなかなか良かったですけど、紬はこれからどうするのかちょっとだけ気になりました。

 もうヒグラシの声は聞こえない (ポプラ文庫ピュアフル)

高校最後の夏休み。元競泳部で市民プールで監視員のバイトをすることになった島津満。そんなある日競泳選手用の水着を付けながら無表情で淡々と水中でもがく少女「ひぐらし」と出会う青春小説。「ひぐらし」と名乗る彼女につい声を掛けてしまい泳ぎや自転車、逆上がりを教える日々と、なかなか打ち解けない彼女が抱えていた秘密。もしそうなったらどうするのか、「ひぐらし」の絶望も浅野の決意も、諦めたくない満の想いも理解できるから複雑な気持ちになりましたけど、それでもかすかに残った淡い繋がりとこれからの未来を信じてみたくなりました。

 

真壁家の相続 (双葉文庫)

真壁家の相続 (双葉文庫)

 

大学生の真壁りんに届いた祖父の死の知らせ。急いで葬儀会場へ向かうと一人の青年が現れ、彼が祖父の「隠し子」と名乗ったことを皮切りに、相続の話し合いは揉めに揉めてゆく物語。祖父が遺した小さな家と預金のみの相続を巡る、寄り付かなった長男夫婦、独り身でデザイナーの長女、事実婚の次女たちの醜い争い。こういう時末っ子だった夫が失踪した後も同居して介護していた妻とか立場弱いんですね…話としては妥当なところに落ち着いた感もありましたけど、終わってみれば弱い立場だったりんの母が一番したたかだった…とても勉強になりました。

割れた器を修復する「金継ぎ」を仕事とする千絵。進路に悩みながらその手伝いを始めた孫の真緒が漆のかんざしを見つけ、それをきっかけに二人で千絵の故郷・飛驒高山へと千絵の記憶をたどる旅に出る物語。二人が思い切って出かけた旅の中で千絵が思い出してゆく、複雑な想いも絡む過去の記憶。真緒に助けられながら向かった過去の気がかりに向き合う旅では、様々な出会いがあったり漆に関わる現状もあって、それに単身赴任中だった真緒の母・結子との関係も絡めながら、母から娘そして孫へと確かに受け継がれてゆく温かな想いが印象的な物語でした。

 

Iの悲劇

Iの悲劇

 

六年前に滅びた簑石に人を呼び戻すIターン支援プロジェクトが実施され、南はかま市甦り課の三人が奔走する現実と真実の物語。最初に入居した二組の夫婦のいがみ合い、水田養鯉を志した入居者の誤算、行方不明になった子ども、秋祭りで起きた食中毒、なくなった仏像といった問題に、やる気の見えない課長・西野の下で、実務を担う万願寺や新人の観山が奔走する展開でしたけど、やけに西野が要所をしっかり押さえていると思ったら真相はそういうことでしたか。言われてみれば納得ですけど、苦心してきた立場からすればそれはないよって話ですよね。

虎を追う

虎を追う

 

30年前に起きた連続幼女殺人事件。刑事を引退した後もこの事件には真犯人がいるのではとずっと感じていた星野誠司が、孫である大学生の旭とその友人・哲に協力を仰いで事件を再び追う物語。孫たちの協力も得てSNSや動画投稿サイトも駆使し冤罪事件の真相解明を目指す星野班。そしてそんな彼らの活動に反応する真犯人「虎」。遺族など関係者への配慮や世論を巻き込んで事態を動かしていく手法の是非は難しいものがありますが、それでも緊張感のある展開はなかなか読ませるものがあって、物語を締めくくるエピローグにまたゾッとさせられました。

定価のない本

定価のない本

 

終戦から一年。復興を遂げつつあった神田神保町で、古書の山に圧し潰されて死んだ古書店主・芳松。事後処理を引き受けた琴岡庄治が芳松の不自然な死に気づき、そこから始まる古書店主たちの終わらない戦いを描いた物語。行方を眩ませる被害者の妻、注文帳に残された謎の名前、名もなき古書店主の死を巡る探偵行の先にあった暗躍するGHQの壮大な計画。登場した意外な人物もいい感じに効いていて、追い詰められながらも大切なもののために反撃の道を探り続けて、仲間の古書店主たちとともに戦ってみせた庄治たちの意地とその結末は圧巻でした。

ベーシックインカム

ベーシックインカム

 

AI、遺伝子操作、VR、人間強化、ベーシックインカム。未来で技術・制度が実現したとき何が起こるのか、そのひとつの可能性を描いた近未来SFミステリ短編集。日本語を学ぶために幼稚園で働くエレナが気になった言葉、豪雪地帯に残された家族と父親の奇妙な遺体、VR映画を観た妻が突然失踪した理由、視覚障害の娘が人工視覚手術で知る真実、ベーシックインカムを肯定する教授の預金通帳が盗まれた理由。確かにこれはそんな未来が実現したからこそ起きた事件で、けれどその鍵を握るのが人の複雑で繊細な心理だったりするのが面白かったですね。

しねるくすり

しねるくすり

  • 作者: 平沼正樹,ダイスケリチャード
  • 出版社/メーカー: 産業編集センター
  • 発売日: 2019/10/16
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10年の浪人期間を経て薬科大に入学した数納薫と、12年もの浪人生活をまるで青春を謳歌するかのように過ごした芹澤ノエル。心許せる関係だった芹澤の突然の自殺の真実を探る物語。二人の関係が変わるきっかけとなった芹澤の恋人・由乃に対する複雑な想い、調べるうちに明かされてゆく芹澤の意外な過去。並行して描かれてゆくたった一錠で確実に死ぬことができる薬で死に導いているのは誰なのか。事実が明らかになるたびに見える構図が変わっていって、人を救うということはどういうことなのか、いろいろ考えさせられる印象的な結末の物語でした。