読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

一冊で読める印象的なライト文芸の青春小説20選

 先日、勢いで作ったら意外に好評だった以下の企画。

作ってみてライトノベルだけでなくライト文芸にもたくさん素敵な青春小説がありますし、それも紹介したくて第二弾としてライト文芸編を作ってみました。たださすがに候補作品が多すぎて前回のように10冊で選ぶのはさすがに無理だったので、今回は20冊で選んでいます。今回選ぶ過程で部活小説は分けた方がいいかなとか、一般文庫編も作ってみたいなとかいろいろ出てきてきたので、その辺は後日改めて考えます。

 

なお、紹介した作品のうち「あの日の君に恋をした、そして」「そして、その日まで君を愛する」は対になる作品で、「どこよりも遠い場所にいる君へ」「また君と出会う未来のために」は関連作品ですが、それぞれ一冊で完結してはいます。また一部続刊の可能性がある、期待したい作品も含まれていますが、1冊でも読めると思いあえて掲載しています。

 

1.あの日の君に恋をした、そして (メディアワークス文庫)

あの日の君に恋をした、そして (メディアワークス文庫)

あの日の君に恋をした、そして (メディアワークス文庫)

 

十二歳の夏を過ごしていた少年・嵯峨ナツキ。しかしある事故をきっかけに心だけが三十年前に飛ばされ、今は亡き父親・愁の少年時代の心と入れ替わってしまい、クラスメイトの少女・緑原瑠依と運命の出会いを果たす物語。戸惑いながらも愁として三十年前の世界で過ごすナツキと、ともに過ごすうちに大切な存在となってゆく瑠依。彼女も関わる父の日記にあった凄惨な事件の解決に挑むナツキ。瑠依と繋がる意外な関係性も明らかになって、短くも濃厚でかけがえのない時間を過ごしたナツキが、現在で見出した不思議な縁にはぐっと来るものがありました。

2.そして、その日まで君を愛する (メディアワークス文庫)

そして、その日まで君を愛する (メディアワークス文庫)

そして、その日まで君を愛する (メディアワークス文庫)

 

十二歳の夏を過ごす少年・嵯峨愁。しかし彼はあるとき心だけが三十年後に飛ばされ、将来生まれる自分の息子・ナツキの少年時代の心と入れ替わってしまうもうひとつの物語。開き直ってナツキとして積極的に過ごす愁と、そっと寄り添う不思議な少女・雪見麻百合。運命の出会いから明らかになってゆくもうひとつの物語。愁はナツキとだいぶ違うタイプのキャラで、ナツキ側エピソードとも関連性を持たせつつ、2つの物語に深く関わる秘められた過去の精算と、時を超えて果たした運命の出会いがひとつの結末に繋がってゆく展開はなかなか良かったですね。

3.どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

 

訳ありの過去もあり友人の幹也と采岐島のシマ高に進学した月ヶ瀬和希。そんな彼が初夏に神隠しの入江で倒れていた少女・七緒を発見するボーイミーツガール青春小説。過去からやって来た七緒と少しずつやりとりを重ねてゆく日々。何気なく過ごせていた高校生活の突然の暗転。明かされる過去の真相と、変わらず向き合ってくれる友人たちの存在、そして覚悟を決めた七緒。甘酸っぱく初々しかった出会いの結末には切なくなりましたけど、繋がって行く過去と未来、そして意外な形で届けられた真摯な思いは、かけがえのないとても素敵なものに思えました。

4.また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

 

小学校三年生の頃、遠い未来に時間を超えたことがある仙台の大学生・支倉爽太。未来で出会った年上の五鈴を忘れられずアルバイトに明け暮れる爽太が、過去から来た人にあったことがあるという八宮和希と出会うもうひとつの物語。前作から数年後の世界で、忘れられない人との再会を渇望する爽太と和希の出会いあって、彼と向かった采岐島で再会した面々が懐かしくて。ふとしたきっかけからたどり着いた意外な真実に、それでも覚悟を決めて向き合う爽太のひたむきな想いには心打たれるものがあって、諦めなかった彼らの今後を応援したくなりました。

5.アオハル・ポイント (メディアワークス文庫)

頭を殴られてその人を評価するポイントが頭上に見えるようになってしまった高校生・青木。それをひた隠して無難に生きてきた彼が、クラスで浮いている少女・春日と出会って変わってゆく青春小説。憧れの成瀬との関係に自信を持てずにいる一方で、好きな人と釣り合う存在になるべく変わってゆく春日に対する認識が少しずつ確実に変わってゆく青木。不安で空回りしてしまう彼らの行動は痛々しくて、それでも理不尽な目に遭う大切な人のために一生懸命で、遠回りしながらも素直に向き合えるようになった等身大な彼らのありようはとても心に響きました。

6.ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 (富士見L文庫)

幼いころに出会ったハーフの女の子ユーリヤ。僕をスプートニクと呼ぶ彼女と月を見上げて宇宙飛行士に憧れた夢。そんな二人の成長を描く物語。どんどん成長するスプートニクと生まれつき身体が弱い彼女とのすれ違い。遠く離れ夢に向けて突き進むユーリヤとの再会と、焦燥を覚えつつ遅ればせながら夢を追いかけることを決意したスプートニクの思い。彼女との距離がどんどん遠くなっていっても、お互いかけがえのない存在であることは変わりなくて、素直になれない彼女にきちんと向き合ったスプートニクの覚悟には本当にぐっと来るものがありました。

7.きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

 

2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。

8.カタナなでしこ (講談社タイガ)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

 

女子高生の千鶴が駆りだされた祖父の形見分けの蔵整理で、夢に見た一振りの刀身だけの日本刀と出会い、同級生たちと無くなった「刀の拵え」作りに挑戦する物語。4人の女子高生がそれぞれクオーターな外見で日本人であることだったり、しっくりしない家族関係や将来のこと、地味であることなどの悩みを抱えながらも、挑戦を通じて様々な人と出会ったり経験を重ねて、これまで気づいていなかったことに気づいたり、自分らしさを見出したり、複雑な想いを乗り越えて試行錯誤する姿はとても心に響きました。読みやすく読後感も爽やかな青春小説でした。

9.ことのはロジック (講談社タイガ)

ことのはロジック (講談社タイガ)

ことのはロジック (講談社タイガ)

 

書くべき言葉を見失った元天才書道少年の墨森肇。金髪碧眼の転校生・アキに一目惚れした彼が、彼女とともに校内で発生する言葉にまつわる事件を解決してゆくミステリ。好奇心旺盛なアキや仲間たちと一緒に挑む回し手紙の伝言ゲーム、存在しない幽霊文字、同人誌の不可解な改変、そしてアキに対する違和感。探し続ける「月が綺麗ですね」を超える告白の言葉。彼らの心境の変化に繋がってゆくひとつひとつのエピソードがまた絶妙で、明らかになった真実にしっかりと向き合い、想いを込めた回答を提示してみせた結末にはぐっと来るものがありました。

10.きみがその群青、蹴散らすならば (集英社オレンジ文庫)

容姿端麗で成績優秀、非の打ちどころがないのに人と距離を置く月島桜子。苦悩から奇怪な秘密を抱えた彼女が原因を知る転校生・水瀬和葉と出会う青春幻怪鬼譚。桜子と同様に密かに抱える苦悩から鏡に写った自分にツノが生えはじめた、成績上位の美少年・周防紫生、クラス女子の一軍グループでいることに必死な土田知香、ムードメーカー的存在の門倉翔平。彼女たちが和葉と協力して元凶たる鬼を探す展開で、狭い世界で逃げ場もなく追い詰められてゆく彼らには仲間がいて、葛藤を抱えながらも支え合い絶望を乗り越える姿はぐっと来るものがありました。

11.Just Because! (メディアワークス文庫)

Just Because! (メディアワークス文庫)

Just Because! (メディアワークス文庫)

 

高校三年の冬、残りわずかとなった高校生活。このまま何となく卒業していくのだと誰もが思っていた中、突然中学の頃に親の転勤で引っ越した瑛太が戻ってきて、少しずつ関係が変わってゆくTVアニメ原作小説。瑛太がかつて淡い恋心を抱いていた美緒、美緒が想いを寄せていた親友・陽斗との再会。陽斗の葉月への想いや、写真部存続のために奔走する恵那の思いも絡めて展開されてゆくこの青春群像劇は、止まったままだった過去の想いにきちんと向き合う物語でもあって、ひたむきで不器用なもどかしい想いを応援したくなるとても素敵な青春小説でした。

12.モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

 

浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。

13.雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

 

地元の名士の生まれながら、幽霊が見えることで周囲から孤立する澤村千尋の前に現れた赤いマフラーの幽霊少女。協力してくれたクラスメイトの岩木君やリンたちと共に、記憶を失っている彼女の過去を探し始める青春ミステリー。過去のトラウマから逡巡しながらも始まった身元捜索。それぞれ苦い過去が明らかになってゆく岩木とリン、そして本家の魔王的存在・従兄の義孝。その過程で少しずつ広がって変わってゆく周囲との関係と、いろいろ過去や事実が少しずつ繋がってゆく構成はとても上手くて、切ないけれどぐっと来るものがある素敵な物語でした。

14.僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

 

気になる架能風香から誤字脱字だらけの恋文に散々なダメ出しを食らった深海楓が、彼女にふさわしい男になるべく小説家を志すボーイ・ミーツ・ガールミステリ。普段からヘルメットを着用し敬愛するカフカになれと告げる風香と、女好きだった過去を封印する偽装天然な楓。カフカの作品になぞらえた身近な謎を二人で解決するうちに少しずつ変化する距離感と、彼女を本当に好きになっていく楓の想い、彼に対して秘密を抱える風香の逡巡といった心情描写がなかなか良かったです。このレーベルらしい一風変わった、けれどとても自分好みな青春小説でした。

15.僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫)

生きたまま学校の七不思議に登録されてしまった中崎君と学校の七不思議の仲間たち、そして中崎君が気にかけている朝倉さんを巡るお話。心配症でちょっと自信がなさげな中崎君でしたが、朝倉さんがピンチになった時には本当に頑張ってましたね。そんな二人の関係性が徐々に変わっていく感じがとても良かったんですが、あまり深く考えずに読んでいたので、バス事故の場面から切り替わったところであれって思いました。それでも切ない終わり方になったわけではなくて、二人が新しい一歩を踏み出して、希望を感じることのできる終わり方は良かったです。

16.きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

 

物をバラバラにすることに対して人並み以上の情熱を持つ異質な少女・天使玲夏と、彼女の幼馴染で何よりも平穏を望む少年・結城友紀が総合パズル研究同好会へと入部し、同好会のメンバーと“アドレス”と呼ばれる犯人による、バラバラ連続殺人事件の謎を追う物語。独特な行動基準で動く彼女をきちんと理解してフォローしている友紀は、口ではいろいろ言ってもお互いにかけがえのない存在なんだろうなと(苦笑)一見サイコさんな玲夏も友人には優しくて、ささやかな目標を手帳に書いてる一面は可愛いかったです。

17.学校の屋上から君とあの歌を贈ろう (メディアワークス文庫)

学校の屋上から君とあの歌を贈ろう (メディアワークス文庫)

学校の屋上から君とあの歌を贈ろう (メディアワークス文庫)

 

中学時代に仲間とうまく行かずにバンドを辞め、鬱々とした気分のまま高校に入学した恭一。そんな彼を軽音楽部に勧誘するギターを背負った少女・ちとせと出会う青春小説。恭一のドラムへの想いを見抜いたちとせ、そして恭一に寄り添う幼馴染・萌子の運命の出会い。同じように共鳴した生徒会所属の伊吹のために彼らが奔走したことで直面した事態。大切な仲間のために、目標の文化祭でのライブを実現するために様々な課題に直面しながらも、協力し合い仲間を募りながら方法を探り、それを乗り越えてゆくその熱い想いにはぐっとくるものがありました。

18.放課後、君は優しい嘘をつく。 (メディアワークス文庫)

放課後、君は優しい嘘をつく。 (メディアワークス文庫)

放課後、君は優しい嘘をつく。 (メディアワークス文庫)

 

3年前の飛行機事故により両親を亡くし、足も不自由になったことで引きこもりになった少年・古賀春一。彼を連れ出すべくクラス委員を名乗る同級生の彩楓が通い、彼を支える二人と交流を深めてゆく青春小説。春一を引っ張り出すために週2日は古賀家を訪れ、ツルさん・藤野さんとも馴染んでお茶会をするようになった彩楓と彼女を拒む春一。それでも粘り強く通いながら春一の意識を少しずつ変えていった彼女が抱える秘密。春一が知った事故での真実は彼女との運命を感じさせて、きちんと向き合えた二人を祝福したくなる微笑ましくも素敵な物語でした。

19.僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

一週間後にピアノコンクールを控えた少年・中瀬と、告白の返事を待たせている少女・山田。ある日、同じ一日をループしていることに気づいた二人が、運命の出会いを果たす物語。納得したら次の日に進めていたのに、出会ったことで二人が納得する条件に変わったループ。適当な言動が多いように見えた山田の悩める心情と、堅物に思えた中瀬のコンクールに賭ける想い。困難に直面する自分のために奔走する相手への想いが少しずつ変わっていって、忘れていた過去も繋がって、乗り越えた二人が紆余曲折の末に迎えた結末はとても素敵なものに思えました。

20.やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

 

危篤に陥ったおじいちゃんが肌身離さず持っていた写真の謎。雨女の五雨がその謎を解くために、雨の日にだけ登校する不思議な雨月先輩に相談を持ちかける雨の物語。おじいちゃんの写真や七夕の催涙雨といった雨に関する謎を、どこか複雑な気持ちで雨月先輩の下に持ち込む五雨。雨に関する無駄に詳しい知識を活かして優しい解決に導いてゆく雨月先輩の謎は深まるばかりで、五雨がその謎を追うことでたどり着いた真相は切なくもありましたが、それでも相変わらずなように見えて何かが変わったようにも思える二人の今後をまた読んでみたいと思いました。

 

 以上です。

気になる本があったら是非手に取って読んでみてください。