読書する日々と備忘録

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2010年代ライトノベル青春小説ベスト20作品

今年2019年は2010年代最後ということもあり、年末恒例の下半期ベスト・年間ベストとは別に、特別企画ということでこの10年間を振り返っての10年代ベストを作ろうと思いました。今回はその第一弾としてまず「ライトノベル青春小説」を公開します。

 

ライトノベル青春小説の2010年代は、振り返るとファミ通文庫を中心とする人気作品が完結していった後のひとつの時代の終わりと、2016年以降再び盛り上がってゆく流れがあったのかなと感じています。やはり10年分ともなるとどれを選ぶのかかなり悩みましたが、2010年以降にスタートした作品を対象に、独断と偏見で印象に残った20作品を選んでいます。自分が選ぶ2010年代ライトノベル青春小説ベスト20ということですね。

 

インパクトを考えると最初シリーズもの中心になってしまうかなと思いましたけど、最終的に「下読み男子と投稿女子」「ヴァンパイア・サマータイム」は入れました。また最後の「近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係」は、時代の転換期にジャンル自体が軒並み苦戦し、読者としても希望を失いかけていた時期、あえてこの作品を発表することで一石を投じた著者さんの覚悟に敬意を表しての選出です。

 

こういうのは挙げていくと人の好みが出ますね...考えれば考えるほどこの並びでいいのか、このラインナップでいいのか、ぐるぐる堂々巡りで収集つかなくなりそうなので、えいっと決めたラインナップということでお願いします。 

 

1.やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(ガガガ文庫 2011-2019)

本編全14巻+別巻編3巻

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

 

目が腐っている以外は基本ハイスペック(自称)なはずなのに、平塚先生に強制入部させられるくらい捻くれていて、ぼっちでいろいろ残念な八幡と、容姿端麗文武両道なはずなのに、なぜか孤高を保っている残念美少女雪乃が奉仕部で出会ったボーイミーツガールで始まる物語。地の文読んでるとどれだけトラウマ積み重ねてるんだ的な痛さを感じますが、雪乃もそれはそれでまた違う意味でトラウマを積み重ねて痛い感じになっていて、この二人に結衣を絡めた奉仕部の面々の出来事を中心に描いてゆく面倒すぎる登場人物たちの物語がここまで成長するとは思いませんでした(苦笑)

 

2.冴えない彼女の育てかた(ファンタジア文庫 2012-2019)

本編全13巻・別巻5巻(GS3巻・FD2巻・メモリアル2巻)

春の坂道で飛ばされてきた帽子と白いワンピ-スの娘との出会いをきっかけに、そこからなぜか知り合いの女の子たちを集め、ギャルゲーを作ろうとヒロインが集う物語。英梨々も詩羽もほかのヒロインたちもキャラが濃いのに、逆にメインヒロイン役の恵がモブキャラ過ぎて主張もなく存在感が薄い(苦笑)結果的にその恵の行動が停滞していた話を動かしてゆくのが、このお話のポイントなのかなと思うんですが、あざといテンプレキャラやベタ展開を詰め込み過ぎなのにポテンシャルは相当高く、唸らされる展開の連続が印象的でした。

 

3.りゅうおうのおしごと! (GA文庫 2015- ) 本編11巻-

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

 

16歳で将棋界の最強タイトル『竜王』となった九頭竜八一の自宅に、小学三年生の雛鶴あいが弟子にしてもらうため押しかける物語。姉弟子の銀子とともに将棋漬けの生活を送ってきた八一と、驚異的な博覧強記と負けず嫌いな気持ちの強さで急速に成長していくあい。冒頭にインパクトのある師弟関係が描写されていた分、お互い刺激を受けて成長していく二人の関係がとても好ましいですね。熱い想いを乗せた勝負もありとても面白いですが、やたら周囲に女性の陰が見え隠れするクズ竜八一と幼馴染姉弟子銀子、幼女弟子たちとの今後にも注目ですね。

 

4.青春ブタ野郎シリーズ (電撃文庫 2014- ) 本編9巻-

図書館で突然出会ったバニーガール先輩は、なぜか周囲に存在を認識されてなくて...から始まる不思議系SF青春小説。話の骨子となる思春期症候群は、一応文中で考察されてはいるものの、いまいち分かったような分からないような設定で、周囲からどんどん認識されなくなっていく先輩と、そんな彼女と行動を共にする主人公の不器用なやりとりは結構自分好みだったりしました。ここから咲太の周囲にいるヒロインたちを絡めて繰り広げられてゆく思春期症候群を巡る物語がどういう決着を迎えるのか、とても楽しみなシリーズです。 

 

5.俺を好きなのはお前だけかよ (電撃文庫 2016- ) 本編12巻-

俺を好きなのはお前だけかよ (電撃文庫)
 

気になるコスモス先輩と幼馴染ひまわりがジョーロをデートに誘った目的は親友への橋渡し。そんな彼を好きなのは地味女のパンジーだけというドタバタラブコメディ。物語が進むと構図がどんどんややこしくなりますが各々の行動には理由があり、最初打算的に見えていたジョーロが常に周囲の友人のために行動していて、登場人物たちが利己的な理由で変節していく中でも最後までブレず、またそれを知るヒロインがいることに物語の真骨頂があったのかなと思いました。特殊なストーカー気質ながらお約束な正体を見せたパンジーを軸に、ややヒロインを増やしすぎた感もありますが、物語をどう決着させるのか今後の展開に期待のシリーズです。

 

6.生徒会探偵キリカ (講談社ラノベ文庫 2011- ) 本編6巻+新章1巻-

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

 

ふとしたきっかけから、巨大一貫校の莫大な予算を扱う生徒会に巻き込まれ、生徒会会計兼探偵のキリカと一緒に解決する生徒会探偵ミステリ。個人的にはミステリ部分よりもコメディ的な要素を期待して読んだので、キリカや生徒会長の狐徹といった生徒会の個性的で魅力的な面々とツッコミ役兼詐欺師のヒカゲの掛け合いも面白く、郁乃や朱鷺子ら脇役もいい味を出していました。またキリカとともに探偵役をこなす物語のもうひとつの軸となるミステリもまたなかなか効いていて、新章もスタートして今後も注目のシリーズですね。

 

7.エロマンガ先生 (電撃文庫 2013- ) 本編12巻-

高校生兼ラノベ作家の俺・和泉マサムネには、引きこもりの妹・和泉紗霧がいる。一年前に妹になったまったく部屋から出てこない彼女の正体とマサムネと、ヒロインたちを巡る物語。めんどくさい二人に周囲がやきもきしながら絡んでいく展開で、すれ違っていた二人は分かり合えたかに思えたのに結果的にまたすれ違ってしまったり、ヒロインたちとの気になるやり取りもあったりで、そんな積み重ねがとても印象的な物語になっていますね。方向性こそ見えたはずなのにまだまだ予断を許しません。

 

8.ゲーマーズ!(ファンタジア文庫 2015-2019) 全12巻+別巻2巻

ゲーム好きのぼっち高校生雨野景太が、学園一の美少女でゲーム部長の天道花憐に声をかけられたことから始まるラブコメディ。序盤は雨野の煮え切らなさにもやもやしましたが、天道からの入部の誘いを断り、上原や千秋といった気の合う仲間と出会うことで話も動き出しましたね。それぞれ言葉足らずで踏み込めないゆえにすれ違いが続いて、彼らの仲を取り持とうとした上原まで巻き込まれてしまうドタバタラブコメぶりが面白かったです。雨野を気にかける天道か、息が合いそうで致命的に合わない千秋か。なぜか複雑になってしまった人間関係が面白かったです。

 関連シリーズ:生徒会の一存 (富士見ファンタジア文庫)

 

9.妹さえいればいい。(ガガガ文庫 2015- ) 本編13巻-

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

 

 妹がヒロインの小説しか書けないラノベ作家・羽島伊月と、彼のもとに集まる残念天才美少女作家・那由、イケメン作家・春斗、元同級生・京、そして通いで家事をする義弟・千尋たちの物語。ラノベ作家ものとはいえわりとゆるめの日常描写で、一見気ままにお気楽に生活しているように見える彼らも、一方でそれぞれが悩みや葛藤を抱えているというギャップが魅力。テンション高めで突っ走るストーリーはやや読む人を選ぶような気もしましたが、意外な秘密を抱えたまま話が進んだりもして、どんどん人間関係がややこしくなっていったシリーズにどう決着をつけるのか、最終巻に期待。

 

10.東雲侑子シリーズ (ファミ通文庫 2011-2012) 全3巻

東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)

東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)

 

ひょんなことから兄の持っていた雑誌で、普段一緒に図書委員を務める東雲侑子が作家であることを知った英太は、長編を書くためにという理由で侑子から仮の男女交際を依頼される。英太はつかみ所のない侑子に戸惑うことも多かったようですが、その存在が英太の心境の変化をもたらし、恋愛感情のよく分からなかった侑子もまた、英太に徐々に惹かれていって、その不器用な距離感が何ともまた見ていてもどかしくて、そういった繊細な機微の描写や二人が成長してゆく姿はとても良かったです。

関連シリーズ:この恋と、その未来。(ファミ通文庫)

 

11.ヒカルが地球にいたころ…… (ファミ通文庫 2011-2014) 全10巻

"葵" ヒカルが地球にいたころ……(1) (ファミ通文庫)

 

 見た目ヤンキーっぽい是光と、平安学園のアイドル帝門ヒカル。ひょんなことで知り合った直後にヒカルが死亡し、葬儀に参列した是光は彼の亡霊に取り憑かれる羽目に陥り、ヒカルを成仏させるため心残りを解消するよう行動を開始する是光とヒロインたちの物語。最初はヒカルの幼馴染の婚約者葵の頑なな態度や朝衣の妨害に苦戦するものの、そのまっすぐな気持ちをぶつけて約束を代理で果たそうとしてゆく是光の奔走があって、ヒカルに何らかの思いを抱えていたヒロインたちも、是光やヒカルの思いに触れ、前を向いて一歩を踏み出してゆく展開はなかなか良かったですね。

 

12.明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 (電撃文庫2013-2014) 本編全3巻+別巻1巻

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 (電撃文庫)

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 (電撃文庫)

 

女子高生・夢前光の交通事故に遭遇し、自分の寿命の半分と引き換えにその生命を救った坂本秋月は、なぜか1日おきに光の人格と入れ替わる身体になってしまった物語。行動力のあるイタズラ好きな光がぐいぐい引っ張って、どんどん秋月の生活環境が変わっていくのが面白かったですね。後半は一転シリアスな展開で頑張るなあと思ったら、最後のあんまりなオチにずっこけてしまいました(苦笑)可愛い感じなのに残念な光に垣間見える真摯な思い、そして周囲を振り回す泣き笑いの絶妙なバランスはとても自分好みです。

 

13.弱キャラ友崎くん (ガガガ文庫 2016- ) 本編8巻+別巻1巻

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

 

日本屈指のゲーマーながらリアルでは弱キャラの友崎が、同じくらいゲームを極めリアルでもパーフェクトヒロインの日南葵に炊きつけられ、クソゲーと断じるリアルで自己変革を目指す物語。ゲームに対する同じ想いを抱く葵の言葉を信じ、失敗しながらもチャレンジを諦めない友崎。そんな彼のフォローに奔走する葵が、凄まじいまでの努力家であることを何度も垣間見たこともきっと大きかったんですよね。魅力的なヒロインたちを絡めたテンポよく進む物語の顛末は友崎らしいその時点での精一杯で、そんな続巻をまた読んでみたくなる期待感がありますね。


14.29とJK (GA文庫 2016- ) 本編7巻-

目つきは怖いけれど職場では一目置かれる29歳の社畜・槍羽鋭二。そんな彼が休日のネカフェで説教した女子高生・南里花恋になぜか告白されてしまう物語。運命的な出会いと信じて果敢に攻める花恋。彼女の言動にやきもきして孫との交際を業務命令してしまう社長。そんな状況に戸惑う彼が直面する仕事上での危機的状況。女子高生に社畜が迫られるラノベ的展開ながら、そんな鋭二も周囲の人々に慕われる存在で、仕事や花恋の夢にそれぞれの事情とやや詰め込み過ぎた感もありましたが、登場人物たちが奮闘する展開は心に響くものがありますね。


15.ぼくたちのリメイク (MF文庫J 2017- ) 本編6巻-

しがないゲームディレクターで会社は倒産、企画も頓挫して実家に帰ることになった橋場恭也。輝かしいクリエイターの活躍を横目にふて寝して目覚めると、なぜか十年前の大学入学時に巻き戻っていた青春リメイクストーリー。落ちたはずの大学に受かっていて憧れの芸大ライフ、さらにはシェアハウスで男女四人の共同生活。とはいえ同居人はそれぞれキラリと光るものを持っているのが垣間見えてしまう厳しい現実。これまでの経験を活かして存在感を出してもまだまだ試される状況は続きそうで、気になる人間模様も含めて続巻が楽しみなシリーズ。


16.14歳とイラストレーター (MF文庫J 2016- ) 本編7巻-

イベントでコスプレイヤー乃木乃ノ香(14歳)と知り合い、ファンだった彼女に家に手伝いに来てもらうようになったプロ絵師・京橋悠斗と、曲者揃いの仲間たちとのドタバタな日常。作中では絵師さんの描くことは楽しくても大変なことも多いその生活や、なるほどなと思うリアルな事情などもいろいろ語られていて、懇意にする個性的な濃い仲間との繋がりや彼らのために奔走する姿にはいいやつだなあと思いましたけど、そんなつもりはなくても14歳との日常は傍から見たら通報待ったなしですね(苦笑)鈍感で優秀なイラストレーター悠斗と魅力的なヒロインたちの今後が気になります。

 

17.失恋探偵ももせ (電撃文庫 2013) 全3巻

失恋探偵ももせ (電撃文庫)

失恋探偵ももせ (電撃文庫)

 

 「恋はいつか終わります―」そんなことを言う後輩の千代田百瀬に巻き込まれ、野々村九十九は「失恋探偵」である彼女に手を貸す日々を送る青春小説。特にミステリ好きでもないのにミステリ研究会に入会した百瀬は、なぜか九十九を助手に失恋探偵を始める。しかし依頼をこなすうちに、すれ違いが重なって九十九と大喧嘩。でも百瀬は、九十九にとって時々イライラしながらも、ほっとけない存在なんですよね。九十九相手になぜ失恋探偵を始めたのか、訥々と語る百瀬が乙女過ぎて、やっぱりちょっと変わった百瀬も恋する女の子なんだなあとニヤニヤしてしまいました。

関連シリーズ:「三角の距離は限りないゼロ」「読者と主人公と二人のこれから」(電撃文庫)「失恋探偵の調査ノート」 (メディアワークス文庫)

 

18.下読み男子と投稿女子 (ファミ通文庫 2015)

どんな作品も面白いと感じるラノベ新人賞の下読み高校生アルバイト・青と、厳しい祖母との生活や投稿作への酷評から自信をなくしかけていた同級生の美少女・氷ノ宮氷雪。本来出会うはずのない二人が出会い、二人で協力しながら投稿作品を作り上げていく二ヶ月間。周囲とうまく付き合うことのできなかった氷雪と、孤高の彼女に自分は釣り合わないと思う青。お互いに影響を受けて強く惹かれていきながらも、そこからあと一歩を踏み出す勇気を持てないもどかしい二人の迷いや、それを乗り越えようとする真摯な想いが心に響く素敵な青春創作物語でした。

 

19.ヴァンパイア・サマータイム (ファミ通文庫  2013年)

人と吸血鬼が昼と夜を分け合う世界。両親が営むコンビニを手伝う高校生・山森頼雅と、夕方に紅茶を買っていく自分と同じ蓮大附属に通う少女冴原綾萌と出会いを描く青春小説。頼雅と吸血鬼の少女冴原との出会いは不器用だけれどまっすぐで、容易には越えられない壁を感じながら、それでも惹かれ合う二人の思いにとても切ない気持ちになりました。そんな思い悩む吸血鬼の冴原も、夜の世界では厳しい指導ぶりにバレー部の後輩から「オニハラ」とか呼ばれてしまう存在。ファンタジーな設定が日常に溶け込んでいるステキな世界観でした。


20.近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 (ファミ通文庫 2016) 全2巻

母と二人で暮らす家で、同い年の遠い親戚の女の子和泉里奈と同居することになった高校生の坂本健一。彼女の出現によって様々な変化がもたらされてゆく物語。兄にコンプレックスを抱き他人との距離に悩む健一と、控えめながら女子校育ちで無防備な里奈。近過ぎるのにどこか遠い彼女を意識し友人たちに知られたくないと感じる健一に気づき、心穏やかではいられない幼馴染・由梨子。著者らしい繊細な心理描写がとても印象的で、遠回りしながらもあるべきところに落ち着いた結末には、三人が出会えて良かったと思える心地よい読後感がありました。

 

以上です。

 

作ってみてつくづく痛感しましたが、10年分を振り返って対象作品を挙げてセレクトする、並び順を決める、コメントするまでゼロから作るのはほんと時間かかりますね(苦笑)なんとか頑張って「ラノベファンタジー」「ライト文芸」まではやろうと思っていますが、「文庫」「単行本」あたりは状況次第かなと思っています。