今回は6月の角川スニーカー文庫、HJ文庫、講談社ラノベ文庫、KADOKAWA新文芸新刊感想まとめです。内訳は角川スニーカー文庫が新作3点、続巻4点、HJ文庫が新作2点、続巻2点、講談社ラノベ文庫の新作1点、KADOKAWA新文芸の続巻1点の計13点になります。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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捨てられエルフさんは世界で一番強くて可愛い! (角川スニーカー文庫)
捨てられエルフさんは世界で一番強くて可愛い!(1)
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月夜 涙/にじまあるく KADOKAWA 2024年05月31日
元人気声優・伊織綾乃の元に届いた、女神からのゲームが実在化した異世界へ転生を誘うメッセージ。トップゲーマーのアヤノでもあった彼女がハイエルフとして転生するファンタジー。普通は選べない種族ハイエルフを選んだ代償に、忌み子として無力だった赤ん坊の頃に種族から捨てられ、ハードモードの連続という過酷なスタート。それを知り尽くしたゲーム知識とギフトを上手く生かした戦術で何とか乗り切った彼女が、理想のキツネ美少女ホムラと出会い一緒に成長していく展開で、テンポよく進むストーリーは未だ謎の部分も多く、女神の意図を予測する駆け引きも今後のポイントになりそうで、再会していないかつてのゲーマー仲間たちもこれからどう絡んでくるのか今後の展開が楽しみです。
死亡フラグは力でへし折れ! (角川スニーカー文庫)
夏歌 沙流/おやずり KADOKAWA 2024年05月31日
気がついたらやりこんでいた美少女エロゲの悪役貴族タイタンとして転生した主人公。その極めた原作知識を活かしてバッドエンドだらけのルートを切り開いてゆく美少女ゲーム転生ファンタジー。努力や才能よりスキル持ちが圧倒的に有利な世界で、スキルを全く使えない破滅必至の悪役貴族という立場から、極めた知識と努力で死亡フラグをへし折って生き残りを目指すタイタン。周囲が忖度する世間知らずな王女シアンにも現実を突きつけてぶつかり合い、お互いを認め意識する関係になっていく一方、その関係を勘違いされ周囲は敵ばかりという状況に陥りながら、屈せずに最後まで矜持を貫いてみせる姿がヒロインたちの心を揺さぶるのも分かるような気がしました。そんな彼がブレない覚悟をどこまで貫けるのか、今後の展開が楽しみです。
貞操逆転世界ならモテると思っていたら (角川スニーカー文庫)
男女比1:20で女性の方が性欲が強く、貴重な男性たちは護衛官に守られ順風満帆な生活を送る貞操逆転世界。前世の感覚を持ったまま転生した市瀬郁人のハーレム青春ラブコメ。実は護衛官は男装した美少女たちだと気づいておらず、女の子たちに無造作に優しく接して意識される状況で、けれど自分はなぜかモテないと思い込んでいる郁人。保護される男たちと護衛官のそれぞれの関係も描きながら、ヒロインたちの真意になかなか気づけない郁人と、イベントを積み重ねていく中で彼のためにいろいろと配慮する担当護衛官・瑠衣を軸に、委員長の鹿屋や未だ男と思われている従妹の玖乃といったヒロインたちとの関係性や距離感がこれからどう変わってゆくのか、これからの展開が楽しみな物語ですね。
血の繋がらない私たちが家族になるたった一つの方法2 (角川スニーカー文庫)
血の繋がらない私たちが家族になるたった一つの方法2
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雲雀湯/天谷 たくみ KADOKAWA 2024年05月31日
家族のように心地よいの3人暮らしで、義妹の英梨花と幼馴染の美桜からのキスを妙に意識する日々を送る翔太。そんな中、英梨花が一念発起してお好み焼き屋でバイトを始める第2弾。美桜と翔太の偽装彼氏彼女関係が浸透しつつある一方で、バイトを始めて人見知りを克服しながら一生懸命自分を変えていこうとし始める英梨花。そんな彼女の成長を目の当たりにして、世話焼きな自分の居場所がなくなってしまう気がする美桜の不安という構図で、思わぬきっかけからすれ違いが起こる中、そこから美桜の過去も明らかになっていって、彼女の兄・虎哲さんもいい感じに効いていましたね。結果として改めて向き合い始めたかけがえのない、けれどどこか危うい3人の関係がこれからどうなるのか続巻に期待です。
俺の幼馴染はメインヒロインらしい。2 (角川スニーカー文庫)
2周目の人生で幼馴染の水無月彩人に自分を異性として意識させるべく、日々試行錯誤する街鐘莉里。そんな彼女を警戒する先輩で生徒会副会長の白百合小雪の背景が明らかになってゆく第2弾。誰にでも裏表のなく堅物生徒会長とでもすぐ仲良くなったり、体育祭の練習中もクラスの女子たちから人気の彩人にやきもきする莉里。一方でラブコメ主人公・春樹に1周目よりも依存するものの、なかなか上手くいかずに焦りを募らせていく小雪。そこから彼女の背景も明らかになっていく中で、一見心の機微に疎いように見える彩人の行動が流れを変えるキーマンになっていてるのが面白いですね。1周目の春樹を中心としたハーレムという構図から確実に変わりつつあるヒロインたちとの関係がどういう形に落ち着くのか、今後の展開が気になるところです。
好きな子の親友に密かに迫られている2 (角川スニーカー文庫)
夏休み、日向晴からの誘いに抗えずに関係を持ってしまった瀬古。罪悪感を抱えながら体育祭や文化祭といった重要な学校行事の準備に取り組む第2弾。晴の方は体育祭で全種目出場に抜擢され、瀬古もその練習に参加する一方で、夜咲は文化祭のクラスの出し物の準備の取りまとめをすることになって、少しずつ行動がすれ違っていく三人。そんな中で夜咲の孤独だった過去も掘り下げながら、徐々に瀬古を意識するようになってゆく姿が描かれる中で、晴もまた瀬古への想いを募らせて冷静でいられない姿が印象的で、鮮烈な印象を残した1巻目の結末があったからこそ、今回の結末の持つ意味がまたじわじわと効いてますね。どうにも危うい3人の関係がこれからどうなるのか続巻に期待してます。
極めて傲慢たる悪役貴族の所業III (角川スニーカー文庫)
氷竜を討ち従えたルークを讃えてパーティが開かれることになり、エレオノーラにミアも参集するなか、母を誘拐したと宣う賊が現れる第3弾。リリーも続けざまに拉致されてしまい、彼女を解放する条件としてアベルに突きつけられたルークの殺害。一方、本気で戦える場を渇望していたルークが期せずして参加することになった帝国で開催される剣聖祭。ルークが駒とした属性竜を意識するヒロインたちには相変わらずだなと苦笑いでしたけど、エルフのテロ組織や神聖国の暗躍といった様々な思惑も絡む中、ルークを実力を知るライバルとして足掻くアベルの成長が描かれていて、だからこそ邪魔する者たちを力でねじ伏せてしまうルークの破格っぷりが際立っていました。
灰原くんの強くて青春ニューゲーム 7 (HJ文庫)
追い詰められて自暴自棄になっていた美織を見つけ出し、ようやく日常が戻ってくると思っていたのも束の間。今度は怜太の暴力事件と停学処分が明らかになる第7弾。真相を確かめるべく怜太を探す過程で、中学時代同級生だった竜也と詩によって語られる怜太家庭事情と荒れていた中学時代。当時の仲間達とつるんでいて取り付く島もない怜太というなかなか難しい状況で、それでも解決に向けて協力してくれる仲間たちがいて、出てきた解決策には苦笑いでしたけど、暑苦しいくらいの泥臭さがまた夏希らしかったですね。何とも微笑ましい絆を感じさせる決着の一方で、本質的な部分に向き合った陽花里たちとの関係も気になるところですが、仲間たちのことを掘り下げていく展開はまだまだ続きそうですね。
ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった 2 (HJ文庫)
ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった 2
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昼行燈/福きつね ホビージャパン 2024年05月31日
サクヤたちとダンジョン配信事務所『陰陽』を設立したソラ。早速、自分が狩った魔物をカツが料理するコラボ配信を企画して、思わぬ運命の再会を果たす第2弾。ソラの式神たちもそれぞれに存在感を見せる一方で、今回もイレギュラーで生成されたソラのドッケンベルガーだったり、前世に縁がある御影家とその娘アカリと思わぬ形で邂逅したり、ダンジョン内で野菜を栽培を目指す配信者インゲン豆といった濃い新キャラがどんどんソラの周囲に増えていって、フリーダムな登場人物たちによるじわじわくる感じは健在でしたけど、ますます常識人のカツさんあたりが苦労しそうな予感しかないですね(苦笑) ヒロインたちとソラの関係も気になるところですし、物語もこれからどこに向かうのか続巻に期待。
まきなさん、遊びましょう 1 (HJ文庫)
霊障に悩む親友を救うため、三鏡高校怪異研究会の部員となった少年・戸川諒介が、怪異研究会の部室に棲んでいる美しい怨霊まきなさんと人智を超えた力をもって謎に挑む怪異ミステリ。怪異研究会に居着く妖しい上級生・西島希那子に、『まきなさん』と呼ばれる少女の怨霊の力を借りる呪文とお守りのカードを渡された彼が挑む、研究会にもたらされた棚の隙間からのぞく視線、吸血鬼による殺人動画、鏡の中から襲い来る怪物といった相談案件。異能も使いつつ怪異を解決してゆく展開は超能力者の唯の存在がいいアクセントになっている一方で、人の持つ恐ろしい一面が描かれていましたけど、怪異を背後でばらまく黒幕的存在だったり、戸川家や希那子の過去も明らかにされてきて今後の展開が楽しみです。
無敵な聖女騎士の気ままに辺境開拓 (HJ文庫)
無敵な聖女騎士の気ままに辺境開拓 1 聖術と錬金術を組み合わせて楽しい開拓ライフ
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榮 三一/なたーしゃ ホビージャパン 2024年05月31日
名誉ある聖女騎士となったものの、師匠の無茶ぶりで新人なのに初任務が難易度の高い辺境開拓となった少女ジナイーダ。それでも聖術と錬金術で辺境をやりたい放題開拓するスローライフファンタジー。魔物討伐に結界の維持、村の発展と、本来は新人には不向きな仕事ばかりの辺境開拓任務。しかし修行で身につけた力や知識を発揮できると前向きで、むしろノリノリのジナイーダがどんな魔物が現れても聖術と剣技で圧倒する一方、人手が足りず荒れた畑にも錬金術の知識を活かして開拓したりと、ぐいぐい無双していく破格の実力は圧倒的で、彼女の忘れられない過去も明らかにしながら、同期のジュリカや周囲を巻き込んで、活気のなかった辺境の地に希望をもたらしてゆくその姿には応援したくなるものがありました。
すべてはギャルの是洞さんに軽蔑されるために! (講談社ラノベ文庫)
文学部の皮をかぶったドM倶楽部に所属する陰キャの高校生・狭間陸人。そんな彼がオタクに優しいギャル是洞さんに軽蔑の目を向けられたくて試行錯誤する青春ラブコメ。ドM倶楽部の仲間たちと共にいかにダメージを最小限にしながら是洞さんに軽蔑の視線を向けられるか、あれこれ考えて「オタクに優しいギャルから嫌われ作戦」を計画するものの、優しい是洞さんにはなかなか上手くいかない状況。それどころかなぜか彼女と動物園デートをすることになってしまい、さらにそこから思わぬ伏兵が現れて激変していく状況には苦笑いでしたけど、なかなか決められない陸人に対して、彼と付き合うためにヒロインたちがぐいぐいアピールするストーリーは軽妙でテンポもよく、今後の展開が楽しみですね。
サバト軍に無条件降伏を拒否されたものの、南方で形勢を逆転させたオースティン帝国。軍が再編される中でトウリもこれまでの功績から衛生小隊長へと昇進する第3弾。一時の猶予を得て反撃のために軍の立て直しを図って、民間からの徴兵を行ったことで大量の新兵が入ってくることになり、小隊長として素人集団を率いて先行部隊に帯同することになったトウリ。窮地を切り抜けてみせた彼女の秘めた才幹を上層部も認識したことが、今後の展開にどう影響するのか。悟の定まらない新兵たちを巡るエピソードは、どうするのが正解だったのかつい考えてしまうほろ苦い結末でしたけど、戦略的に正しいのかよく分からなかった戦局の方もさらに大きく動いて、もうひとつの話の方も不穏な展開ではあります…。