今回は12月角川スニーカー文庫・11月ファミ通文庫の新刊感想まとめです。内訳はスニーカー文庫が新作5点、続巻4点、ファミ通文庫が新作1点、MFブックスなど新文芸の新作3点の計13点になります。点数が多いな…とは思いましたが、粒ぞろいでどれも自信を持っておすすめできますね。気になる本があったらぜひ読んでみて下さい。
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メンヘラが愛妻エプロンに着替えたら (角川スニーカー文庫)
第27回スニーカー大賞<銀賞>
大学で地雷系美少女として有名な琴坂静音と思わぬ形で遭遇した愛垣晋助。意外な一面を知った晋助に口止め代わりとして通い妻契約を提案する半同棲ラブコメ。これまでメンヘラ女子とのトラブルが続いて女性に臆病だった晋助。逃げ場のない彼女に居場所を提供してくれた恩を返すべく、献身的に通う静音が垣間見せる複雑な背景。渋々認めた関係が少しずつ変わってゆく一方で、優しすぎる彼を心配する幼馴染の存在もあって、二人で積み重ねてきた定義できない繊細な関係も拗れかけましたけど、隠しきれない重さや共依存の気配を感じつつも、それでも一生懸命に向き合い一緒に乗り越える覚悟を決めた彼らの物語をまた読んでみたいと思いました。
僕らは『読み』を間違える (角川スニーカー文庫)
第27回スニーカー大賞<銀賞>
消しゴムに書かれていた『あなたのことが好きです』という言葉から、憧れの文学少女・若宮雅に告白して見事玉砕した竹久優真。高校に入学した春、その勘違いが再び動き出す青春ミステリ。入学式の日の太陽少女・宗像瀬奈との運命的な出会い、瀬奈の親友で優真の親友・大我を付き合うことになった笹葉更紗、優真が所属する文芸部の部長・葵栞と優真の友人・鳩山遥斗。文学作品も絡めながら描かれてゆく彼らの人間模様は、思っていた以上に狭い世界でいろいろと繋がっていて、勘違いがあったりこじらせて、たびたび迷走する彼らの関係がこれからどう変わってゆくのか、今後がとても楽しみな期待の新シリーズですね。
腕を失くした璃々栖 ~明治悪魔祓師異譚~ (角川スニーカー文庫)
第27回スニーカー大賞<金賞>
軍の任務中に心臓を貫かれ致命傷を負った悪魔祓師の神童・皆無が、「七つの大罪」に名を連ねる腕のない悪魔で天使とすら見紛う少女・璃々栖に救われる明治悪魔祓師異譚。悪魔の力と引換えに、璃々栖と一蓮托生の命となった皆無。神戸外国人居留地を舞台に父母を殺されて奪われた祖国を奪還するため、腕を取り戻そうとする璃々栖との束の間のかけがえのない日々。けれど愛に生きる覚悟を決められなかった皆無が、璃々栖を救うために立ち上がる展開はさり気なく配された伏線がじわじわと効いてきて、二転三転する激闘の末に二人の想いが引き寄せたその結末にはぐっと来るものがありました。
我が焔炎にひれ伏せ世界ep.1 魔王城、燃やしてみた (角川スニーカー文庫)
第27回スニーカー大賞<大賞>
復活した魔王を倒すため、異世界へ招かれた5人のヘンな女子高生達。女神から特別な才能持つ彼女達にこの世界を救って欲しいと依頼される異世界コメディ。100年振りの魔王復活、混乱に乗じて蔓延る悪党共。天下動乱の世を正す為、世界の命運を託された少女たち。マッドサイエンティストに暗殺者、機械生命体に生体兵器となかなかクセの強い女の子たちが、自分の思うままにやりたい放題やりながらついでに世界を救おうとするくらいの展開で、相対的に見れば一見常識人枠にも思えた彼女もまた例外ではなくて、思わぬ一面が垣間見えましたね…そんなハチャメチャな彼女たちのこれからが楽しみな新シリーズです。
隣の席の中二病が、俺のことを『闇を生きる者よ』と呼んでくる (角川スニーカー文庫)
第27回スニーカー大賞<特別賞>
暗殺任務を請け負い高校に潜入した暗殺者・黒木猫丸。彼が他の人間と一線を画すオーラで呼びかけてきた中二病の少女・竜姫紅音と出会う青春ラブコメ。中二病の痛い言動の紅音を伝説の暗殺者レッドラゴンと勘違いした猫丸。紅音もまた同志と勘違いして猫丸をブラックキャット呼ばわりする展開で、すれ違ったままLINEのやり取りを始めるところから難儀したり、テスト対策やデートをしても数々の騒動を巻き起こすお騒がせな二人でしたけど、迷走しがちな紅音をフォローする親友コマコマもいい感じに効いていて、それでもいろいろと前途多難な二人のこれからが楽しみです。
時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん5 (角川スニーカー文庫)
遂に訪れた初恋の人との再会。彼女があの子であると認識した政近は、改めて思いを巡らせつつ夏休みも明けて二学期へと突入する第五弾。ついに明らかになった初恋の人の正体と彼女が伝えた想い。会長選に多大な影響を与えるという学園祭に意識が向く中で、アーリャの変化に心を掻き乱される政近。今回も有希&綾乃主従は全力で政近をいじりに来てましたけど、沙也加や乃々亜といったヒロインたちもいい感じに存在感があって、アーリャも新しい技を覚えると嬉しそうにそれを使いたがりますよね(苦笑)覚悟を決めた彼女もまたそのままではなくて、政近の危惧を払拭するような頑張りを見せたその確かな成長が光っていました。
カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています7 (角川スニーカー文庫)
礼奈との夏夜の一件以降、釣り合える人間に成長しようと就活に学業に勤しむ悠太。彼女の残した言葉が選択の時までのカウントダウンを早めていく第七弾。家に通ってくれていた真由、大学で一緒にいることが多かった彩華とも、多忙からなんとなく会いにくくなっていた悠太。そして悠太の家でたまたま鉢合わせた二人による彼を巡る勝負。彩華と真由それぞれに考えた末のアプローチがあって、覚悟を決めて距離を詰めようとする二人の思いが溢れていましたが、どちらもかけがえのない存在と思う悠太が果たしてどんな決断を下すのか。急展開もありましたけど、次巻で最終巻のようなのでその結末を楽しみにしています。
マッチングアプリで元恋人と再会した。2 (角川スニーカー文庫)
マッチングアプリで再会した元カノ光と再び繫がりができた大学生の翔。同じ大学の心も気になりつつ、駅前で偶然に痴漢から助けた女性・楓さんと意外な形で再会する第二弾。光との溝が少し埋まったように感じつつ、けれどやっぱりお互い素直になれず口喧嘩になってしまう翔との関係。心とはアプリの割引イベントで仮カップルデートもしたりする中、親友の縁司のためにお節介を焼くあたりがとても翔らしいなと思いましたけど、翔を通じて心とも仲良くなった光がその周囲の人間関係にも関わるようになったことで、自らが抱える複雑な思いをようやく自覚しましたけど、ヒロインたちがこれからどう動くのか、今後の展開が気になるところではあります。
男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について3 (角川スニーカー文庫)
夏休みの新婚旅行で夫婦の絆を深めた唯華と秀一。二学期を迎えて文化祭の実行委員に立候補した二人は協力して密かにイチャつく日々を楽しむ第三弾。あまりにも多忙を極める秀一が心配で、私と文化祭どっちが大事なのか問題を突きつける唯華。コスプレ喫茶やカップルコンテストと大盛況の文化祭でも転校してきた華音がわりとぐいぐい来ましたけど、隙あらば距離を縮めるチャンスを伺う二人だけに、そのイチャイチャっぷりが突き抜けてましたね(苦笑)今回は秀一の打った手がいい感じに効いていましたけど、お互いが意識して着実に距離を縮めてゆく二人のこれからに期待。
魔王のあとつぎ (ファミ通文庫)
賢者の曾孫で英雄と聖女の娘シャルロット。彼女は父の二つ名『魔王』を受け継ぐために高等魔法学院に入学する学園バトルファンタジー。偉大な魔法使いたちの技術を習得し対人戦闘訓練で圧倒的魔力と魔法を発揮するシャルロットが、彼女の家柄と血筋に嫉妬心を抱く者から対戦を挑まれながら、周囲の仲間たちと仲良くなってゆく展開で、上級生にも負けないような状況には勘違いするのも分かるような気がしましたけど、これは勘違いもしますし、このタイミングでその鼻っ柱をへし折るような存在に出会えたのは大きかったんですかね。意外な新展開もあったりで今後に期待の新シリーズです。
世界救い終わったけど、記憶喪失の女の子ひろった(1)
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龍流 TOブックス 2022年11月19日頃
魔王を倒してからは無職で燃え尽きていた勇者。謎の敵に追われていた赤髪の少女を救った彼が、素性が不明の彼女ととともにかつての仲間を訪ねる旅に出るリライフファンタジー。追手の目的は一切不明で本人も記憶喪失、けれど食いしん坊な天然の少女は一体何者なのか。そして呪いで名前が認識できなくなった勇者と、腹黒の賢者、脳筋の姫騎士、師匠の幼女、成金の死霊術師の再会。離れていて会うのが久しぶりでも、彼女たちはそれぞれに勇者に対する深くて揺るぎない愛があって、赤髪の少女の真相に迫る過程で再結集した最凶パーティーはいろいろな意味でなかなかヤバかったですけど、何とも数奇な運命の少女にしっかりと寄り添うとても優しくて素敵な物語でした。
聖女として懸命に王国を守ってきたにも関わらず、婚約者の王子と浮気相手に嵌められてしまい、冤罪で投獄された挙げ句に公開処刑されたアリシア。しかし仇敵のはずの魔王により処刑台から蘇る復讐譚。手のひらを返したような人々の悪意にこんな国滅んでしまえば良いと願った絶望。魔王の手で生き返った際に聖女の力に加えて闇属性魔法まで宿して、魔王と手を組んで王国に復讐を誓うアリシア。絶望を経験して時々壊れた様子こそ垣間見えるものの、けれど優しい彼女の本質は変わらなくて、新たな居場所を得て慕われる彼女がこれからどう生きてゆくのか、物語としても新展開を迎えそうで今後の展開が気になりますね。
みつばものがたり 1 呪いの少女と死の輪舞 (MFブックス)
みつばものがたり 1 呪いの少女と死の輪舞(ロンド)
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七沢 またり/EURA KADOKAWA 2022年11月25日頃
謎の万能感とともに永い眠りから醒めた少女ミツバ。しかし父を毒殺した継母の策略で、貴族名を取り上げられた挙句、士官学校に入学することになってしまう異世界蹂躙譚。彼女にはぼんやりとした異世界の記憶と、無自覚に発動する呪いの力が宿っていて、幽閉場所や、わずか11歳で入学することになった士官学校、軍事研修として送り込まれた先でも、どこかズレている頭のネジがぶっ飛んだ思考でやりたい放題に蹂躙して、行く先々で周囲を恐れさせてゆくミツバ。士官学校で出会ったクローネとサンドラたちと目指す道は異なりそうですけど、これからどんな展開が待っているのか続巻に期待。