今回は9月ガガガ文庫・GCN文庫・電撃の新文芸・GAノベルの新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫が続刊2点、新作1点、GCN文庫が続刊1点、電撃の新文芸の新作1点・GAノベルの新作1点の計6点になります。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
恋人以上のことを、彼女じゃない君と。3 (ガガガ文庫)
両親からは勘当同然ながらも、束縛から解放されやりたい仕事に取り組めるようになった糸。そんな彼女との正月休みを満喫する中で、二人の大学時代を思い出す第三弾。現在のエピソードと絡めながら回想する大学時代。香川の高松から上京してきた冬が、その微妙にずれた感性や、やけに綺麗な所作が新鮮で、気がつけば目で追うようになっていた糸の存在。ふとしたことから気づいた彼女の秘密を知り、付き合い始めた二人の日々と別れ。二人で過ごした楽しい思い出や、気づき得なかった当時の限界を痛感しているからこそ、今のゆるい曖昧な関係がお互いにとってかけがえのない、失いたくないものになっているのは間違いなくて、だからこそ冬が渇望する想いと真意が見えない糸の行く末が気になるところではあります…。
楽園殺し: FES3 (ガガガ文庫)
獣人事件の収束から1年。延期されていた150周年記念式典が開催されることになった偉大都市で、謎に包まれた連続食人事件が勃発。砂塵渦巻くこの街で、再び騒乱の気配が色濃くなってゆく第三弾。謎多き粛清官ボッチのバートナー・シーリオの知られざる過去。偉大都市の歌姫ノエルと父である中央連盟の盟主の一人クルトとの確執。そして祝宴の終幕を飾る歌姫のステージの背後で蠢く宗教徒たちの黒い影。突如始まった狂宴に様々な思惑が入り乱れ、後手に回る粛清官たちという構図で、自分自身ではどうにもできないけれど、それでも大切なものは絶対に失いたくないという気持ちが痛いほど感じられたからこそ、待っていたその先には絶望しかなくて、この結末がどうなるのか続刊が早く読みたいです…。
悪ノ黙示録: -裏社会の帝王、死して異世界をも支配する- (ガガガ文庫)
【第17回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>】
晩年、裏社会の支配者として君臨し、絞首台で人生の終わりを告げたレオ。異世界のスラム街で少年の姿で転生した彼が、仲間を集め再び世界を手中に収める決意をする転生ダークファンタジー。何の力も魔力も持たないレオが、スラム街でイドラやヴァイス・ユキといった仲間と出会い、力を持つために調べた結果、明らかにされる駐屯騎士団と地元マフィアの癒着の構図。たびたび強奪に遭って不正を疑い、正義とは何か苦悩する副騎士団長サフィアも巻き込み輸送物資強奪計画に介入してゆく展開で、それぞれの能力と駆け引きを駆使しながら、仲間を大切にしてギリギリの難局の連続を切り抜けてみせた彼だからこそ、最後の判断には驚かされました。そんな彼らがこれから何を目指すのか、新たな因縁も生まれた今後の展開が楽しみです。
魔女と傭兵 2 (GCN文庫)
未知の大陸にもようやく慣れて、臨時の冒険者パーティーに加入することになったシアーシャ。護衛仕事を一時離れることになったジグがいろいろ巻き込まれてゆく第二弾。空いた時間を有効活用しようと考えていた矢先、激闘の末知人となった二等級冒険者イサナから、子供誘拐事件の捜査協力を依頼されるジグ。培ってきた裏稼業の知見を駆使して事件解決に動き出す展開で、一人で行動するとどうにも誤解されたり、いろいろ巻き込まれずにはいられないジグの異質さ、引きの強さが際立っていましたが、一方で未だ自覚もないまま私の護衛がシアーシャにとってどんどんかけがえのない存在になっているようで、彼女が時折垣間見せる周囲も戦慄せずにはいられないその独占欲が怖…可愛かったです(苦笑)
ふつおたはいりません! ~崖っぷち声優、ラジオで人生リスタート!~ (電撃の新文芸)
ふつおたはいりません! ~崖っぷち声優、ラジオで人生リスタート!~(1)
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結城 十維/U35 KADOKAWA 2023年09月15日頃
現在レギュラーなしで通帳残高わずか、コンビニバイトが中心の崖っぷちアラサー声優・吉岡奏絵。そんな彼女が売れっ子生意気女子高校生声優・佐久間稀莉とラジオ番組を始める物語。デビュー当時は主役を演じたことがあるものの、すっかりオワコン声優と化していた奏絵に降って湧いた最後のチャンス。しかしやる気が感じられない稀莉に、何とかラジオを面白くしようと「よしおかん」となって果敢に彼女にチャレンジしていく展開で、調子が出てきた稀莉との軽妙なやりとりが面白くて、稀莉の秘めた想いもだんだん垣間見えてきて、楽しいからこそつい感極ちゃっただろうな…という衝撃のラストでしたけど、ここからどう盛り返すのか続刊に期待。
その王妃は異邦人 ~東方妃婚姻譚~ (GAノベル)
即位したばかりの若き国王レイモンド二世が、彼を軽んじる叔父公爵の思惑により迎え入れた東方の大国・釧の姫君シュリー。規格外の中華風姫君が国を変えてゆく異国婚姻譚。見た目も文化も違う東方の姫君を王妃にしたことでレイモンドを侮蔑する流れに、道中で異国語を理解して通訳を介さず自ら話し、礼儀作法やダンスも一度見ただけで覚えて理解し、東方より持ち込んだシルクや陶磁器を用いて新たな流行を生み出し、自分なりのやり方で状況を変えてゆくシュリー。ちょっぴり独占欲が強い部分はあるものの、社交界側からのアプローチで国に莫大な利益をもたらすことを見せつける彼女の愛に支えられながら、自信を取り戻していった国王が国を変えてゆく二人の甘い関係がなかなか素敵な物語でしたね。