今回は8月のガガガ文庫・GCN文庫新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫の新作が4点、続刊が1点、GCN文庫の続刊が1点の計6点です。気になる作品があったらこの機会に読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
獄門撫子此処ニ在リ (ガガガ文庫)
【第17回小学館ライトノベル大賞<大賞>受賞作】
霊能力者の無耶師や、化物にすら畏怖される獄門家。その末裔たる娘・獄門撫子が、自らを恐れもせずに笑う無花果アマナとの出逢いにより少しずつ変わってゆく伝奇ファンタジー。美しく忌まわしい化物を喰らうさだめの少女と、普通の人間を自称するアマナが二人で立ち向かう、無耶師の旧家に出た鬼退治、箱詰される人身御供、学園にあざなえる呪い、人を幻惑するけもの、かたちなき化物。撫子の保護者的立ち位置の叔父・桐比等や事件繋がりで知り合ってゆく祀庁の儀式官・冠、雪路、白羽といった個性的なキャラたちも絡めながら、その中で積み重ねてゆく二人の関係性、明らかにされてゆくそれぞれの背景があって、繋がってゆく過去の深い因縁を断ち切り、大切なものを見事取り戻してみせたその鮮烈な結末がなかなか印象的な物語でした。
ドスケベ催眠術師の子 (ガガガ文庫)
【第17回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>受賞作】
転校初日に驚愕の狂乱全裸祭を引き起こした片桐真友。二代目ドスケベ催眠術師を名乗る彼女が、師匠でもある初代ドスケベ催眠術師の息子・佐治沙慈を仲間にしようとする青春ラブコメ。過去と決別するため、縁を切って苗字まで変えたサジ。すっかり合理主義者となっていた彼を半ば脅すようにして仲間となる契約を交わす真友。もたらされる悩みをドスケベ催眠術師として二人で解決してゆく中で育まれてゆく契約を超えた絆や、少しずつ変わってゆくドスケベ催眠術師に対する思い。だからこそ真友の過去やサジが必死に隠していた秘密に向き合わざるをえない皮肉な展開がじわじわと効いてきましたが、どん底まで突き落とされたからこそ気づいてしまう、それでも変わらない大切にしたいものを見出してゆく結末はなかなか良かったですね。
バスタブで暮らす (ガガガ文庫)
欲望らしい欲望もほとんどなく、人とは少し違う感性を持った女の子・磯原めだか。新卒で就職のために実家を離れたものの、上司のパワハラに耐えかねて心を病み、たった一ヶ月で実家にとんぼ返りしてバスタブで暮らし始める物語。おおらかな父や二度のがんを克服した母、兄や幼馴染たちに囲まれて育ち、逃げ戻ってからは兄の協力も得て着々と構築してゆく快適なバスタブ生活。妹を支える頼れるお兄ちゃんの存在感が際立っていましたが、そこから巡り巡ってのVTuberデビューや、なかなか深い思索をする日々が待っていて、けれど磯原家の状況が変わってゆく中、家族たちそれぞれの様々な想いや覚悟を感じて受け止めためだかが、これからどうすべきかを懸命に考えるようになってゆくその成長と決意をそっと応援したくなる物語でした。
さようなら、私たちに優しくなかった、すべての人々 (ガガガ文庫)
四方を山に囲まれた閉塞感のある田舎町、阿加田町。この町の高校に通い、いじめを受けて不登校になっていた中川栞の家に、同居人として父の友人の娘・佐藤冥がやって来るラブロマンス復讐譚。誰にも心を開かない冥が栞だけに告げた、三年前に凄惨ないじめに遭い自ら命を絶った冥の姉・明里の復讐。阿加田神社に伝わる血塗られた祭儀『オカカシツツミ』を行い、七人を殺す計画を立てた冥に協力する栞。覚悟を決めた復讐と逃避行の日々の中で、二人の間に芽生えていった確かな想いがあって、力を使った代償として逃れられない定めに彼らがどう向き合うのか、複雑な想いを抱きながら読み進めたその結末は思いのほか穏やかで、救いのなかったこれまでのことを考えると正直救われる思いでした。
彼とカノジョの事業戦略2 ~詐欺師は、“嘘”をつかない。~ (ガガガ文庫)
育英生選抜試験を無事突破した真琴成と環伊那。世界権競争本戦に臨む二人の前に、最下位から6位まで押し上げ突破したダークホース的存在で、如奇抜な格好の少女・唯村阿久麻が現れる第二弾。明らかになる現経済界の<帝王>九十九弥彦と成の過去の因縁、課題として出された循環可能型未来都市モデルの提案、九十九に対抗するため奏晶や調布といったライバルたちとの協力を模索する成。今回はどうしても意識してしまう因縁の相手を前にして、焦りから足下を掬われた感がありましたけど、見方を変えれば序盤で冷静に自分たちの立ち位置を知って、その上でこれからどうすべきかを改めて考えるいいきっかけになったのかもしれないですね。環はその中で自分の可能性も見せてくれましたし、ここからの逆襲に期待。
クラスメイトの元アイドルが、とにかく挙動不審なんです。 3 (GCN文庫)
クラスメイトの元アイドルが、とにかく挙動不審なんです。 3
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こりんさん/kr木 マイクロマガジン社 2023年08月19日頃
夏休みの終わりに、ついに付き合い始めた卓也と紫音。けれど二人の関係について周りに内緒にすることにしたことで、夏休み明けの学校でちょっぴりスレ違い気味になってゆく第三弾。一緒に見に行った花火大会の思い出、夏休み明けの席替えや付き合ったことを内緒にしているがゆえのモヤモヤやすれ違い、そして文化祭本番のサプライズゲスト。イメチェンした卓也への視線や女の子に話しかけられる姿に落ち着かず、ヤキモチを焼いたりしてしまう心配性の紫音が微笑ましかったですけど、彼女にとって大切なことや性格を考えれば、いっそのことああしてしまった方が確かに安心ですよね(苦笑)微塵も迷わない彼女の愛の重さをしみじみ感じつつ、しっかりと応えてくれる卓也とはお似合い二人で、これからの展開にも期待しています。