今回は11月ガガガ文庫・GCN文庫・ことのは文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガ文庫が新作3点、続刊1点、GCN文庫が続刊1点、新作1点、ことのは文庫の新作が1点の計7点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
少女事案: 炎上して敏感になる京野月子と死の未来を猫として回避する雪見文香 (ガガガ文庫)
この夏休み、小学五年生の雪見文香を猫として飼っている高校生・夏目幸路。過去の痛みと引き換えに能力を得てしまった少女たちのトラウマを解消するために奔走する青春小説。未来のニュースを視る能力で、夏目の家で飼い猫としてふるまわないと連続殺人犯に殺されてしまうと知った文香。連続殺人犯から逃れたトラウマから火炎少女になってしまったツンチョロ美少女・京野月子。それに憧れの白瀬由美も加えた三人に振り回されながら、次々とややこしい事件が飛び込んできて、猫の目のように変わる状況の中で、彼女たちを救うために八月事件の真相に迫る展開はミステリとしてもなかなか面白かったですね。著者さんらしいところを随所に見せながら、さらなるカオスな状況になりそうな予感もあって今後の展開が楽しみです。
死神と聖女: ~最強の魔術師は生贄の聖女の騎士となる~ (ガガガ文庫)
世界に10人しかいない聖女をめぐり暗闘を繰り広げる帝国と教国。聖女暗殺の命を受けた<死神>の異名を持つ暗殺者の少女メアリが教国の全寮制女子学園に潜入する異能少女バトルファンタジー。身分を隠して学園に潜入したメアリが邂逅を果たした、孤高の聖女ステラとその騎士エリザベス。頑なで不器用だった彼女との距離が少しずつ縮まる一方で、ステラを暗殺することにためらいを覚えるようになってゆくメアリ。そんな状況を利用しようとする反教皇派などの様々な思惑が交錯する中、聖女とメアリを巡る数奇な運命が思わぬ形で繋がって、さらに深めた絆でこの難しい状況を何とか乗り越えてみせた二人の関係性がなかなか良かったですね。
スクール=パラベラム: 最強の傭兵クハラは如何にして学園一の劣等生を謳歌するようになったか (ガガガ文庫)
天才だらけの五才星学園への潜入を命じられた無敵の傭兵こと久原京四郎。次々とトラブルに巻き込まれる中、銃弾と爆薬が炸裂する学園青春アクション。父親に命じられて京四郎が潜入する学園で出会った、美しさだけで世の中を渡る顔馴染の有馬風香、絵の才能から様々な妨害に遭う霧島紗衣、そしてどこか掴みどころのない雪代宮古。キャラが立った魅力的で個性豊かなヒロインたちに振り回されながら、トラブルに巻き込まれる彼女たちの危機に駆けつけ、虚実入り交じった駆け引きの中で分かりづらいそれぞれの真意を見抜いて、彼女たちに笑顔をもたらすために戦う京四郎の熱いバトルアクションがなかなか良かったです。
衛くんと愛が重たい少女たち 3 (ガガガ文庫)
幼馴染の瑞希、強烈に束縛して女装させる姉の凛という障壁を乗り越え超え、京子の元アイドル仲間桂花というトラップもかわして、めでたく京子とつきあっている衛。今度は京子と旅行に行く計画を立てる第三弾。襲ってくる凛から避難するため、ばあちゃんの家で京子と隣部屋同棲状態。それに加えてお盆に京子と温泉一泊旅行に行くことにワクワクする一方で、自宅にいる凛のことが何だか心に引っかかってしまう衛。今回もヒロインたちの重すぎる歪んだ愛が炸裂していましたが、凛が抱えていた複雑な事情やその想い、そして京子がずっと消化できなかった憤りに、衛がしっかり逃げずに向き合って、彼女たちとの関係をしっかりリスタートさせることができたその結末はなかなか良かったですね。
霜月さんはモブが好き5 (GCN文庫)
正真正銘の恋人同士になった中山幸太郎と霜月しほ。幸太郎は自らの意志で母と向き合い。そしてしほの父と胡桃沢一徹の問題を解決するために動き出す第五弾。将来を少しずつ意識しながら、のんびりとゲームをしたりしてすごす幸太郎としほが、遊びに行ったくるりの屋敷やプライベートビーチでの水着回で出会った意外な人物。そして幸太郎との母との距離感やしほの父と胡桃沢一徹の関係も、絆を深めた今の二人だからこそフォローできることがあって、ここまでの心残りだったわだかまりをひとつひとつ解消していきながら、しっかりと最後までエンディングまで描いてくれたとても素敵な結末になっていました。
あとはご自由にどうぞ!~チュートリアルで神様がラスボス倒しちゃったので、私は好き放題生きていく~ (GCN文庫)
鬼影スパナ/Ixy マイクロマガジン社 2023年11月20日頃
突然神界に連れてこられて、男なのに女神の趣味で美少女カリーナにされた挙句、ラスボスもいなくなってしまうTS転生美少女の異世界ライフ。お手本としてのチュートリアルなのに、女神がいきなりラスボスなはずの混沌神を瞬殺してしまい、いきなり当初の目標が消失。仕方なく行商人に必要なギルド証を得るため、金を稼ぐ手段として冒険者を目指すカリーナ。欲望に忠実でカリーナからの供物を要求する残念変態女神には苦笑いでしたけど、先輩冒険者のブレイドやハルミカヅチ、行商人サティたちにいろいろ教えてもらったり、奴隷のアイシアを手に入れたりしながら、使い勝手のいい魔法を上手く使い回して気ままに生きるその姿はなかなか楽しかったです。
君と過ごした、さよならの季節 (ことのは文庫)
自らのミスで大会を敗退してしまい、学校や野球部で居場所を失ったと感じていた柚原瑛太。そんな彼が訪れた図書館で、初めて会ったのになぜか懐かしいと感じる不思議な少女・真宮栞里と出会う青春小説。雨か曇りの日だけ出会うことができる、本が好きだという彼女と一緒に図書館で本を読むことで救われてゆく日々。そんな居心地のよい時間が突然終わりを迎えてしまった理由。彼女の事情を知ったことをきっかけに、自分が抱えていた後悔に向き合ってゆく瑛太には、彼のことを見守っていてくれたり、励ましてくれる存在もいて、切なくなる展開ではありましたけど、何よりも悩める瑛太の背中をそっと押してくれた栞里の真摯な想いがとても印象的な物語になっていました。