今回は12月ガガガ文庫・TOブックス・GCN文庫・集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫が新作1点、続巻3点、TOブックスの新作1点、GCN文庫の続刊1点、集英社オレンジ文庫の新作1点、続巻3点の計10点になります。気になる作品があったらこの機会に是非読んでみて下さい。
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十五光年より遠くない (ガガガ文庫)
2025年。渋谷で偶然初恋の人・浅野水星と再会した元自衛官の陸。しかし人類観測史上最大規模の太陽フレアが発生、突然の磁気嵐が地球を襲ったに影響で異常事態に陥るSF小説。大規模停電により通信・インフラがストップする状況下で、かつての想い人の命と東京迫る危機。出産間近の姉の命の為に動き出した水星の妹・金星と共に、救う手段を得るために横須賀へ向かう陸が金星が辿り着いた大規模停電の理由。ネットも途絶して情報も交通手段も簡単には見つからない極限状況で、時には衝突しながら出会った人に助けられ、縁を辿ってようやく見えた光明に我が身も顧みずに挑んだ覚悟とその結末が、なかなか鮮烈で印象に残る物語になっていました。
負けヒロインが多すぎる! 6(ガガガ文庫)
先輩たちが卒業していく春。突然、焼塩檸檬からデートに誘われた温水が、人知れず悩みを抱えていた彼女と退部を賭けて100m走で勝負する第六弾。檸檬との竹島水族館での初デートを当然のように後をつけてくる八奈見たち。今回は檸檬回で、悩める彼女を巡る陸上部の騒動に巻き込まれる中、分かりやすい小鞠に比べて、相変わらず立ち位置のよくわからない八奈見の食い意地っぷりは相変わらずでしたが(苦笑)、悩める人には真摯に向き合う温水を、出番は少なくても存在感は抜群の志喜屋のように気にかけるヒロインは多いですね。先輩も無事何とか送り出せて、新年度を迎えて文芸部もどうなるか続刊も楽しみです。
ミモザの告白 4 (ガガガ文庫)
昔は、誰よりも兄を慕っていた槻ノ木汐の妹・操。今は汐を軽蔑する彼女の視点から絆と呪縛、ままならない家族の過去から今が語られる第四弾。汐がセーラー服を着ているところを目撃した瞬間に、消え去ったかつての憧憬。なぜこんなことになってしまったのか。操の視点で過去に遡りながら辿る汐の生涯。母を亡くして二人で支え合ってきて、父親の再婚で確実に変わってゆく生活。そんな状況であんな変化があったら簡単には認められないのも分かるような気がしますね。もう少し時間は必要でしょうけど、変わるきっかけは得られたかなと思えた今回の展開でしたけど、最後の決断でどうなるのか。次巻の最終巻期待しています。
氷結令嬢さまをフォローしたら、メチャメチャ溺愛されてしまった件 2 (ガガガ文庫)
氷結令嬢さまをフォローしたら、メチャメチャ溺愛されてしまった件(2)
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愛坂 タカト/Bcoca 小学館 2023年12月18日頃
無事、恋人として認められたグレイとアリシア。停学処分を受けていた学院への復帰も決まったものの、特別クラスに放り込まれてしまう第二弾。問題行動で停学になっていたアリシア解除の条件は特別クラスへの在籍。しかし彼女を溺愛する令嬢マインが他のクラスメイトを退学に追いやったことで直面する特別クラス廃止と停学の危機。グレイとの婚約を認めさせるため学院を卒業すると父と約束して、再びクラスメイトを集め始めるアリシア。候補者も個性派揃いで、しかも一緒に行動するマインが暴走気味で人集めに苦戦する展開でしたけど、グレイの助けもあってクラスとしても一歩前進できましたかね。そんな状況で最後に登場した人物がこれから波乱をもたらすのか続刊に期待。
女性に発現しやすい異能力・天稟の発現により、女性優位となった男女逆転世界。男ながら天稟を持ち悪の組織【救世の契り】に属する大学生イブキが、正義の組織【循守の白天秤】に属するヒナタを密かに推すシークレット・イルミナティ。大好きな漫画の推しの幼馴染の兄で、対立組織のキャラになぜか転生してしまったイブキ。ヒナタを溺愛する相棒ルイにその正体がバレても、敵対する天真爛漫な彼女のために奔走するイブキに最初は戸惑い、彼に近い幼馴染クシナの存在を知りながら、ついには感極まって彼と秘密を共有してしまうヒナタもどこか振り切れちゃいましたかね(苦笑)発現した天稟によってそれぞれに違う天稟の代償も上手く絡めながら、複雑でカオスな関係がどこに向かうのか、今後の展開には期待感しかありません。
毎日家に来るギャルが距離感ゼロでも優しくない 2 (GCN文庫)
毎日家に来るギャルが距離感ゼロでも優しくない 2
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らいと/柚月ひむか マイクロマガジン社 2023年12月20日頃
ダイエットを続けて不破も痩せて元に戻りつつある中、今度は不破と衝突した因縁を抱える、清楚さと妖しさを兼ね備えた新たなギャル鳴無亜衣梨が密かに太一に急接近する第二弾。男女カーストトップ衝突で緊張状態にあるクラス内で、不破の無茶振りもあってギャル友とも交流する機会が増えてゆく太一。一方、密かに接触を続けていた彼をデートに誘う鳴無。鳴無の思惑を警戒する不破と喧嘩した太一の結末は散々でしたけど、そのどん底から這い上がった彼のお人好しな選択から、隠されていた思わぬ真相にたどり着く展開はなかなか良かったですね。それが明らかになってしまえば必然的にそうなりますよね…とも思いましたけど(苦笑)
若旦那さんの「をかし」な甘味手帖 北鎌倉ことりや茶話 (集英社オレンジ文庫)
家事代行サービスの会社で働く秋月都。ある日、都は急病のスタッフに代わり、北鎌倉に派遣された大きなお屋敷で、出迎えた和装の若き和菓子職人・羽鳥一成と出会う物語。そのお屋敷は一成の工房兼住居で、見事な出来栄えで常連客も多い彼の作る和菓子。日々鍛えた料理の腕で、羽鳥家の定期契約プランを勝ち取った都が彼の作る和菓子に触れるうちに、密かに抱えていた和菓子の苦手意識や両親との関係も変えてゆく一方で、都での仕事関係での出会いが繋いだ思わぬ縁。一時閉店していた甘味処も再開したりと事態もいろいろ動き出していて、これからどんなエピソードが紡がれるのか今後がとても楽しみな物語になっていました。
後宮茶華伝 仮初めの王妃と邪神の婚礼 (集英社オレンジ文庫)
都のはずれの小廟で女道士として暮らす孫月娥。かつて暴漢から救ってくれた整斗王・高秋霆に密かに恋をしていた彼女が、突然下された勅命により還俗して宗室に嫁ぐことになる数奇な運命の物語。帝国の繁栄に翳りが見え始め邪教の隆盛する状況で、宗室に迎えられたその身に忌まわしい痣を持つ美しい月娥と、実は妻が忘れられない秋霆が仕方なく受け入れた仮初めの婚姻。想い人に嫁げた喜びと報われぬ複雑な想いを抱える月娥でしたけど、その報われないすれ違いに何度も切なくなりながらも、明かされてゆく愛妻家と思われていた整斗王の過去だったり、邪教の陰謀に巻き込まれてゆく中で、お互いへの想いを積み重ねていって絆を育み、少しずつ変わっていった二人の結末には救われる思いでした。
掌侍・大江荇子の宮中事件簿 五 (集英社オレンジ文庫)
不本意ながら、帝の腹心の部下となってしまった内裏女房の荇子。そんな立場の変化から様々な問題に巻き込まれてゆく働く平安女官のお仕事事件簿第五弾。仮初の東宮の立坊を機に返り咲きをもくろむかつて権門だった南院家のゴリ押しとその顛末、荇子が帝の寵愛を左右しているという噂を聞きつけた弘徽殿の動き、そして南院家の流れをくむ二の宮の法要の手伝い。不遇時にどんな態度を取られたのか、人は絶対忘れないよな…と思いながら読みましたが、関わる人々の複雑な思いが垣間見える中で、思わぬ出来事から様々なことに気づいた頭中将だったり、腹心になり難しい立ち位置となってしまった荇子と征礼の覚悟もあって、物語としてなかなか面白くなってきました。
十番様の縁結び 5 神在花嫁綺譚 (集英社オレンジ文庫)
恭司を止めて綜次郎を取り戻すため、終也と離れた真緒。帝都に向かう汽車の中で、同行する志貴に過去の思い出話を語る過去エピソード回の第五弾。廃れた神事『遠音の儀』を再開すべく終也と調べていた真緒が見つけた、不自然に破かれている先祖返りの日記。母を亡くした志貴の父帝に対する複雑な想い。十織終也と六久野恭司の邂逅と積み重ねてゆく関係。そして志貴に不穏な預言を与えた八塚暝と紫織子、そして暝の双子の弟・蛉の関係とその結末。どれも重要なポイントになっている話を丁寧に掘り下げていて、物語が終盤に向かう中で、それぞれがその奥行きを深めてくれている印象的なエピソードになっていました。