今回は4月ガガガ文庫・集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫が続巻2点、新作1点、集英社オレンジ文庫の続巻2点、新作1点の計6点になります。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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恋人以上のことを、彼女じゃない君と。2 (ガガガ文庫)
恋人以上のことを、彼女じゃない君と。(2)
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持崎 湯葉/どうしま 小学館 2023年04月18日
冬の支えもあって無事編プロに転職し、束縛する親とも距離を置くことができた糸。安堵する一方で、歪で微妙なバランスで成立する自らの曖昧な立ち位置を危惧する冬が、今後の関係性を模索する第二弾。環境の変化で忙しく充実した日々を送る糸に、久しぶりに再会した冬が密かに抱く危惧。そんな思いとは裏腹に、かけがえのない日々を積み重ねてゆく中で大きくなってゆく一方の想い。好みは違っても相手の想いを尊重して、些細な変化や不安を察してしっかりと寄り添える関係は尊いですね…一緒に家具を選んだり楽しく遊んだり、怠惰に過ごす時も共にある二人の距離感が絶妙で、そんな彼らをそっと観察し続ける花屋敷さんの存在がまたいい感じに効いていました。
冬にそむく (ガガガ文庫)
終わらないずっと続く冬に人々が絶望を深めてゆく変わり果てた世界。神奈川県出海町で育った高校生の天城幸久と、彼が密かに付き合う同級生・真瀬美波との日々を描く青春小説。高校からこの町へ越してきて別荘に一人住む美波と、雪かきスコップを手に彼女の家へと通い、密かにデートを重ねる日々。希望が見えない中でも、お互いの存在がかけがえのない救いとなってゆく一方で、終わりの見えない冬やそれぞれの置かれた環境が、少しずつ確実に影を落としてゆく二人の関係。それぞれの想いだけではどうにもならない状況に直面する中で、それでも大切なものを失いたくなかった二人の決意があって、育んできた絆を見失わなかった彼らがたどり着いたその結末には確かな希望がありました。
塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い 7 (ガガガ文庫)
塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い(7)
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猿渡 かざみ/Aちき 小学館 2023年04月18日
冬休み。カップルの鉄板イベント・クリスマスデートを終えても未だ初キスへあと一歩を踏み出せないまま年末を過ごす二人。そんな状況でこはるの家にクール系従妹の小学生・雪音が襲来する第七弾。夫婦旅行で両親不在になったこはるの年末。突然家出してきた雪音の事情にやってきた颯太も巻き込まれ、なし崩し的に始まるプチ同棲生活。小学生の雪音相手に見栄を張るこはるの様子は微笑ましかったですけど、彼女たちをサポートする颯太がこれまで積み重ねてきた信頼感も一つのポイントでしたね。事情を知ったかけがえのない仲間たちも協力してくれて、頑張る彼女の背中を押してくれたとても素敵な結末もなかなか効いていました。
ベアトリス、お前は廃墟を統べる深紅の女王 (集英社オレンジ文庫)
暗躍する「赤の王冠」によって分断され、身動きが取れずにいた三人の王。そんなイルバスの危機に帰ってきた王女カミラがクーデターの首謀者を突き止めるべく動き出すシリーズ完結編。アルバートは前線で行方不明、ベアトリスは同盟国ニカヤに留め置かれ、サミュエルは危篤状態。そんな中でニカヤで経験を積んでイルバスに帰還したサミュエルの王杖エスメの奔走。隣国カスティアも介入して苦しい状況が続く中での出来事はショックでしたけど、それでも最後まで諦めず国民たちとともに毅然と立ち向かい、その苦境を力を合わせて乗り越えてみせた、王たちがもたらした未来には少しだけ救われる思いでした。
神招きの庭 8 雨断つ岸をつなぐ夢 (集英社オレンジ文庫)
二藍との切なくも確かな邂逅が叶い、神に運命に共に抗うべく再び前に進み始めた綾芽。そんな彼女がかつて朱野の邦で共に過ごした義妹の真白に偶然再会する第八弾。二藍に逢いたい想いを耐えて女丁女丁として宮中に身を隠し、凍てつく心をやり過ごしていた綾芽に、落ち着いた振る舞いで身を案じる真白。そんな二藍から密命を負っているはずの彼女が抱えている複雑な想い。二藍も手詰まりの状況を打開すべく方法を模索する中、人定めの儀を通して立ち直ろうとする綾芽が気づいた異変から事態が明らかになってゆく急展開でしたけど、かなり厳しい状況に追い込まれても諦めない彼らが、果たしてこの苦境を打開できるのか。幸せな結末を信じて最終巻に期待しています。
金襴国の璃璃 奪われた姫王 (集英社オレンジ文庫)
金水木火土いずれかの属性を持ち、胸元に印を宿して生まれる大陸。神王から金属性を引き継いだ金襴国王族ながら印を持たずに生まれた璃璃が、婚約者・翠璋の謀略で家族と国を失い過酷な運命に立ち向かうファンタジー。愛される日常を過ごす日常から一転、流行り病で亡くなったとされる兄・王太子の死の真相に気づいてしまい、兄殺しの罪を着せられ従者の蒼仁と出奔する落ちこぼれ姫。向かった蒼仁の出身地・青金地区や協力を得るために訪れた石榴国で、民たちの苦境に真摯に向き合い、経験を積み重ねて認められて成長して、大切なものを取り戻すために立ち上がった彼女が迎えた微笑ましい結末はなかなか良かったですね。