今回は6月のガガガ文庫・富士見ファンタジア文庫・集英社文庫・オレンジ文庫新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫が新作1点、続巻3点、富士見ファンタジア文庫が新作5点、続巻2点、集英社文庫が新作1点、集英社オレンジ文庫が続刊3点、新作1点の計16点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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彼とカノジョの事業戦略: “友達”の売り方、教えます。 (ガガガ文庫)
若き天才経営者が集まるワールドビジネス育英財団。その選考試験で成功請負人の天才コンサルタント真琴成が、明るい笑顔が特徴の経営初心者・環伊那と運命の出会いを果たすビジネス頭脳バトル。故郷の窮状を救うために高校を中退して立ち上がった元JKの環と手を組み、彼女をサポートして選考試験に合格させるために高級会員制ラウンジで富裕層との繋がりを作り、自らも着々と手を打ってゆく真琴。コンビで着々と準備を進める二人に対抗意識を燃やすライバルによる妨害工作。敵対する相手には容赦しない真琴の凄みを感じましたけど、そこからもう一歩踏み込んだ環の真摯な想いが今回のポイントでしたかね。真琴にはいろいろと因縁や過去もありそうで、二人がこれからどうのし上がってゆくのか今後が楽しみです。
千歳くんはラムネ瓶のなか 8 (ガガガ文庫)
穏やかな9月が終わり10月。藤志高祭の準備も佳境を迎えて、千歳たちのクラスではなずな脚本のオリジナル演劇を行うことが決まり、千歳・悠月・夕湖が共演することになる第八弾。自らの美学よりも持てる力を出し惜しみしないことを優先するようになった悠月、置いていかれるような感覚を覚えて複雑な陽。そしてこれまでの関係をものともしない後輩・紅葉の出現によって、否が応でも自らの想いを意識せざるをえなくなって、不可逆的に変化してゆく千歳とヒロインたちの関係。三人の性格や関係をそのまま落とし込んだなずなのオリジナル演劇の構図には笑いましたが、現状維持から前に進むことを決意したヒロインたちの覚悟があって、波乱の予感しかない藤志高祭で一体何が起こるのか、誰が動くのか期待しかないですね。
ママ友と育てるラブコメ 3 (ガガガ文庫)
夏休み前日の放課後。進路について雉村先生に呼び出された響汰。自分の将来について、澄との今後について、自覚した響汰が悩み、迷い、そして決意を固めてゆく第三弾。ママ友とは違う特別な感情を抱いていることに気づいてはいても、恋なんて安直な名前はつけられない澄への想い。一方で澄もまた自覚してゆく響汰への想い。四人で回ったミニスカちゃんイベントではこの物語らしさがあって、朝のラジオ体操では相変わらずの妹への溺愛っぷりを見せてくれましたけど、一方で、澄の家族も一緒にキャンプに行ったり、二人きりで夏祭りデートで模索してゆく二人の関係性がとてもらしい着地点だなと思いましたし、そんな彼らが積み重ねてママ友の先を垣間見せてくれたその結末はなかなか良かったですね。
霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない 4 (ガガガ文庫)
霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない(4)
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綾里 けいし/生川 小学館 2023年06月20日
地獄巡りの末に「神様」と逢った藤花と朔。山査子の座敷牢に囚われていた神様と呼ばれる超常の存在が、力を抑えていた異能消去者の逃亡により暴走を開始する第四弾。世界を呪い、人間を呪い、生物を呪っている神様。伝染してゆくその殺意に取り憑かれて、他者を襲い殺し、殺意を世界に伝播させていく人々。殺意が蔓延する世界に恐怖して壊れてゆく人々の混乱があって、そんな終わりに向かう世界でも大切なものは揺るぎない二人の関係はどこまでも甘々で、二人の関係性が異質なものとして描かれるそのギャップにはじわじわと来るものがありましたけど、だからこそ二人が破滅する世界を救ってみせた先にあったその結末が鮮烈な印象として残りました…。
VTuberのエンディング、買い取ります。2 (富士見ファンタジア文庫)
VTuberのエンディング、買い取ります。2
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朝依 しると/Tiv KADOKAWA 2023年06月20日
高校に復学した苅部業が、クラスメイトで演劇部の美少女・影山花から『女性との同棲疑惑で炎上した男性VTuberを引退させてほしい』という依頼を持ち込まれる第二弾。元VTuberの姉・影山蛍を界隈から遠ざけたい妹の花からの依頼。一方でVTuberの良さを花に知ってもらいたい蛍。お互い大切に思いながら、すれ違う想いを抱える姉妹を前に過去と向き合ってゆく業。乃亜の意思を継いで転生の準備をする海那は、業が好き過ぎて花にやきもきしたりと微笑ましかったですけど、彼らしいやり方で姉妹に寄り添って、二人の仲を上手く修復してみせたその結末はなかなか良かったですし、先に繋がりそうな伏線も垣間見せてくれて今後の展開が楽しみになりました。
週に一度クラスメイトを買う話2 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ (富士見ファンタジア文庫)
週に一度クラスメイトを買う話2 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~
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羽田 宇佐/U35 KADOKAWA 2023年06月20日
高校最後の夏休みを前に揺れ動く淡くもつれた関係。キスしても何も変わらない宮城に、仙台から宮城に夏休みの家庭教師役を持ちかける第二弾。定期的に会うのが当たり前になって、一人だと物足りない気持ちになることをお互いに自覚していって、けれど不器用ゆえに距離感を掴みかねて、どうすればいいのかだんだん分からなくなってゆく二人。こういうお互い何考えているのか上手く伝わらない状況は、どちらにとっても(おそらく読者的にも)なかなかのストレスだと思うんですけど、そのもやもやを抱える彼女たちはこの先上手く落とし所を見つけることができるのか…。期限が区切られて状況はスッキリした分、今後の動きが気になりますね。
魔王2099 3.楽園監獄都市・横浜 (富士見ファンタジア文庫)
魔王2099 3.楽園監獄都市・横浜(3)
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紫 大悟/クレタ KADOKAWA 2023年06月20日
奇怪なる未来世界で旧家臣の行方を追う魔王ベルトール。今度は外界からの干渉を拒絶し続ける疑惑の島となっていた横浜に囚人として潜入する第三弾。支配領域への無断侵犯で囚人となってしまい、行き当たりばったりで高橋とともに潜入するベルトール。二人が出会った少女・青葉、別任務で潜入していた勇者グラムや、探していた自称ベルトールの姉で黒竜候シルヴァルドとの再会。久しぶりの続刊でしたけどあの独特のノリは変わらず顕在で、関係性も少しずつ変わりつつあるのかなと感じた魔王と勇者の共闘だったり、人外じみた存在ばかりの中で今回はキーマンとしてなかなか存在感を見せた高橋の姿が印象的な結末でしたね…。
双星の天剣使い3 (富士見ファンタジア文庫)
神算の軍師・瑠璃を仲間に加えた隻影たち。玄の南征に備えて瑠璃の教導で騎馬に対する陣地を構築するものの、搦手から都に調略の手が伸びる第三弾。天剣を持つ者たちの因縁を今回で全て終わらせるべく、再び侵攻を始めるアダイ率いる玄。前線の張家軍が厳しくても諦めず戦い続ける一方で、様々な思惑が渦巻く都では暗躍する者たちがいて、ここまでやられてしまうと流石に厳しいのではと感じてしまうくらいには考えうる限り最悪の展開でしたけど、隻影たちはこれからどんな選択をするのか。そしてあのアダイの妄執を見る限りでは、これからも二人の苦境はまだまだ続きそうですね…。
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦15 (富士見ファンタジア文庫)
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦15
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細音 啓/猫鍋蒼 KADOKAWA 2023年06月20日
太陽の帝国侵略をイスカたちが阻止した結果、奇しくも帝国にて集結した三王家の王女たち。王女たちが帝国との協力を決意する中、女王ミラベアもまた一つの決断を迫られる第十五弾。王女たちが魔女・イリーティアの打倒を誓う一方で、ミラベアが思い出す若き日の王女時代に好敵手だった魔人サリンジャーの存在。最盛期には戦闘人形と評されたミラベアと彼の宿敵という名の逢瀬、決別の契機となった三十年前に起きた事件の真相。聖戦に至らなかった二人を描いた今回のエピソードでしたけど、そんな時代もあったんだな…と読んでミラベアの印象がちょっと変わりましたね。二人が終盤向けてこれからどう関わってくるのか、今後の展開が改めて楽しみになってきました。
あなたの事が好きなわたしを推してくれますか? (富士見ファンタジア文庫)
あなたの事が好きなわたしを推してくれますか?(1)
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恵比須 清司/ひげ猫 KADOKAWA 2023年06月20日
登録者数一桁のゲーム配信者から推しのトップアイドル『ゆき』の推し発言で一気にバズった天宮啓太郎。超人気VTuberや活動休止中だった人気コスプレイヤーからも推されまくる青春ラブコメ。推しのケイがクラスメイトと知ってしまい、普段のクールな様子から一変して限界化してしまうゆき。さらに再会した幼馴染芹香が両推しの超人気VTuberだったり、そんな二人にコスプレイヤーの義妹・紗菜も対抗するという、両推しの主人公とヒロインたちというなかなかカオスな構図になっていましたが、ヒロインたちそれぞれの積み重ねてきた熱い想いが入り乱れる中でも、現段階では天然で揺るぎないゆきはなかなか強い印象でしたね。これからヒロインたちとの関係がどう変わってゆくのか続刊が楽しみな新シリーズですね。
お嬢様(じつは庶民)、俺の家に転がり込む (富士見ファンタジア文庫)
お嬢様(じつは庶民)、俺の家に転がり込む(1)
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八奈川 景晶/さまてる KADOKAWA 2023年06月20日
父が巨額損失の責任を取り財閥の御曹司から一夜にして庶民に転落した雑賀玄次郎。彼のもとに母が石油王と再婚して、一夜にしてお嬢様になってしまい困惑する二条玲が転がり込む青春ラブコメ。お嬢様にふさわしい自分に育ててほしいと玄次郎に依頼し、手放すはずだった彼の家で義姉の咲耶と三人も交えた同居することになった玲。庶民を自認する自己肯定感低めの玲が、ポジティブで超絶鈍感な玄次郎、彼のツンデレ幼馴染で元婚約者の薫子、玲が大好き過ぎる義姉の咲耶と過ごす日々は、可愛くて暴走する玲だけでなく、周囲もまたそれぞれがポンコツな一面を垣間見せるコメディ感満載な展開でなかなか楽しかったです。ようやく自らの想いを自覚した玲と彼らのこれからをまた読んでみたいと思いました。
教室に並んだ背表紙 (集英社文庫)
中学校の図書室を舞台に、クラスや友人たちとの言動に馴染めない違和感や未来への不安、同級生に対する劣等感など、思春期の少女たちを繊細に描く連作短編集。図書室にやってくる苦手なクラスメイト、新たに赴任した学校司書と見つけた未来への手紙、ゴミ箱に捨てられた課題図書の感想文、変わってしまった友人への複雑な想い、自分を認めてくれた友人、ふとしたきっかけから教室に居場所がなくなる孤独など、教室の中に居場所を見つけられない主人公たちが見出すささやかな繋がりがとても優しくて、そんな繊細的な描写がとても著者さんらしい物語でした。
十番様の縁結び 4 神在花嫁綺譚 (集英社オレンジ文庫)
自分自身の恋心を自覚し、終也をより確かに想うようになった真緒。そんな二人のもとに帝都より皇子たちが悪しきものの災厄により落命したとの知らせが届く第四弾。二上に滞在していて難を逃れた末の皇子・志貴、事件への関与を疑われ逃亡している終也の友人・六久野恭司。そして十織家の屋敷を訪れた志貴とともに向かう、かつて六久野の人々が暮らした禁足地・天涯島。恭司との再会から六久野と今帝を巡る過去の因縁も明らかになっていきましたけど、思ってもみなかった事実も明らかになっていって、クライマックスを迎えてそれぞれの決意がどんな結末をもたらすのか続刊が楽しみですね。
京都岡崎、月白さんとこ 彩の夜明けと静寂の庭 (集英社オレンジ文庫)
京都岡崎、月白さんとこ 彩の夜明けと静寂の庭
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相川 真/くじょう 集英社 2023年06月20日
大学進学か就職か。夏休みに入り、進路に悩み始めていた茜。そんな折り、近所の児童館で地蔵盆の手伝いをすることになった茜たちは、奇妙な足跡を児童館のあちこちで見つける第五弾。変わらないもの、変わっていくもの、見えるもの、見えないもの。晩夏の地蔵盆で、秋の文化祭で、正月訪れた父の実家の笹庵で、それぞれが持つ誰かを想う優しくて温かな気持ちを感じながら、これまでいつも他人のことが優先だった茜が、本当は自分はどうしたいのかを自覚していく展開で、やはりかけがえのない大切な妹・すみれの存在や、温かく見守ってくれる青藍さんや陽時さんの存在も大きいですけど、ようやく見えてきた彼女らしい選択をこれからどういった形にしていくのか今後の展開が楽しみですね。
掌侍・大江荇子の宮中事件簿 四 (集英社オレンジ文庫)
異界遺失物係と奇奇怪怪なヒトビト (集英社オレンジ文庫)
ともに帝を支えていく。幼馴染みで帝の腹心の部下・征礼の言葉に覚悟を決めた荇子。しかし一つの嘘と秘密が新たな仕事を呼んで、またいらない秘密を知ってしまう第四弾。目にすることさえ叶わないはずの三種の神器に起きた明らかな異変の真相。帝が原因不明の病に倒れたことで加速する東宮擁立の動き。代替わりした出雲国造の上京と、神楽舞を奉納した女祝の因縁の頸珠。それぞれのエピソードに複雑な因縁がある中で、帝の信任も厚いせいで期せずして関わってしまう巻き込まれ型の荇子には苦笑いでしたけど、ようやく具体的な将来像も見えてきた征礼との今後の関係も楽しみになってきました。
異界遺失物係と奇奇怪怪なヒトビト (集英社オレンジ文庫)
異界遺失物係と奇奇怪怪なヒトビト
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梨沙/ねぎし きょうこ 集英社 2023年06月20日
実家が貧乏だったゆえ金に対してシビアで、大手警備会社で事務職に就き、安定した生活を送ろうと目論む早乙女南。彼女が謎の部署『異界遺失物係』に配属されてしまうお仕事小説。奇跡的に採用されたものの、配属されたのは希望の事務職ではなく、甘い物が主食の部長や世話焼きの山ガール事務員、特殊性癖持ちの観察員などなどクセだらけの面々がいる『異界遺失物係』。分からないままコミュ力に乏しい五十嵐先輩と組んで、顔のない男や花をキる女、成長する胎児といった死者の未練を探して解決してゆく展開は、意外と二人がいいコンビっぷりを見せてくれて、周囲の濃いキャラたちもよく動いていて、彼女たちの物語をまた読んでみたくなりました。