今回は2月のガガガ文庫、集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫が新作2点、続巻6点、集英社オレンジ文庫が新作2点、続巻2点の計12点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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白き帝国1 (ガガガ文庫)
異なる種族同士が争いを続ける葡萄海。猫耳を持つ「ミーニャ」族が支配するガトランド王国の第二王子トトが、黒薔薇騎士団からの人質として里子にやってきたアルテミシアと出会うファンタジー戦記。繁栄する王国でトトたちと打ち解けてゆくアルテミシアが過ごしたかけがえのない日々。人間とミーニャの間にある根深い差別意識と、トトが語る全ての種族がひとつにまとまる理想の白き帝国の夢。ついにガトランド王国が踏み出した覇道に向けた第一歩の裏で、年月を掛けて着々と準備されてきた謀略。思ってもみなかった形で崩壊してゆく激動の展開には言葉もありませんでしたが、聖珠を持つ八剣士や浮遊圏を飛ぶ飛行艦隊といった魅力的な設定に、様々な出会いと因縁も積み重ねて、これから始まる壮大な物語の行方には期待感しかありません。
ノベルライト: 文系女子、ときどき絶叫女子。 (ガガガ文庫)
夕方の河原でガガガSPの『ノベルライト』をきっかけに運命的な出会いを果たした早乙女青春と田中京子。京子に弱みを握られた青春は、軽音部の設立に協力する青春パンク小説。ゴリゴリのパンクロック・ガガガSPとガガガ文庫。まさかのガガガ違いで相容れるはずがなかった二人のガガガ少女が協力関係を結んで、因縁めいた出会いからコスプレ女装ベーシストやサークルクラッシャーなサキュバスドラマーを仲間に加えながら、軽音部とラノベ部のW設立を目指す展開で、あくまで創部を認めない教師から文化祭で100人の観客とラノベ100冊販売という無茶振りに直面しながら、諦めずに目標達成に向けて仲間たちと奮闘する彼女たちの熱い想いが感じられるとても素敵な青春小説になっていました。
変人のサラダボウル 6 (ガガガ文庫)
芸能界にスカウトされ、惣助と一緒に東京の事務所へ見学に行くことになったサラ。一方、ヤクザと半グレ組織とカルト教団を一手に束ねることになったリヴィアは組織の健全化を図る第6弾。名古屋を経由しての東京旅行や、アイドルを目指すライバルとの出会い。夏休みの様々なイベントを通してさらに絆を深めていくサラと惣助。一方でそれぞれの思惑で動き出す惣助を想う女たち。期せずして岐阜の裏社会の帝王となってしまい、警察からマークされるリヴィアが目指した健全化の一手。サラが少女らしい青春を謳歌している一方で、成り行き任せで波乱万丈のカオスな人生を受け入れて、生きたいように生きるリヴィアには笑ってしまいましたが、異世界人側の動きも気になるところではあります。
獄門撫子此処ニ在リ: 赤き太陽の神去団地 2 (ガガガ文庫)
怪異ひしめく古都・京都の裏側に隠された、現世と幽世のはざまの神去団地。無耶師たちが赤い太陽が秘めた力を巡り争う異形の地で記憶を失った状態で獄門撫子が目覚める第2弾。かろうじて記憶を取り戻したものの、何か大切なことを忘れている気がする撫子。空に焦がれた天狗の一族、奇妙に身軽なタタリコンサルタント、向こう見ずなガスマスクたち、蹂躙する狂信者たち、終わってしまった一族の生存者。様々な思惑と欲望が絡み合う中でそれを利用し暗躍する存在がいて、ここでも顔を出す華珠沙を巡る因縁には苦笑いでしたけど、忘れていた大切な約束を思い出して、異形の地に巣食っていた因縁を見事断ち切ってみせたその決着はなかなか良かったですね。
星美くんのプロデュース: 女装男子でも可愛くなっていいですか? vol.3 (ガガガ文庫)
星美くんのプロデュース(vol.3)
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悠木 りん/花ヶ田 小学館 2024年02月19日頃
夏休み明けに転校生としてやってきた未羽美憂。星美の幼馴染でかつて幼少の頃に彼の可愛いを否定しながら、笑顔でまた仲良くなりたいと言う彼女の存在が星美の心を揺さぶる第3弾。久しぶりに再会して過去の出来事を謝罪されても、可愛いを否定するその本質は変わらない彼女に複雑な心境を抱いて距離を置こうとする星美。しかし彼女が可愛いに抱く葛藤に気づいて、プロデュースを手伝ったことで結果的に女装がバレてしまい、美憂の言葉が思い出させてゆく星美の辛い過去。それでも彼の想いを受け止めてくれる友人たちがいて、何より相変わらずズレいて何度も空回りしながら、懸命に星美に寄り添おうとする心寧の決意があって、一緒に縛られていた過去や契約関係を乗り越えてみせたとても素敵な結末でした。
魔王都市: -血塗られた聖剣と致命の亡霊- 2 (ガガガ文庫)
魔王都市内で発生した派出騎士の変死事件。偽造聖剣の製造元<致命者>の痕跡を追うキードとアルサリサの捜査を危惧する不滅工房が調整官フォレークを派遣する第2弾。フォレークの一方的な捜査方針で無実の魔族達が容疑者にされかねない危うい状況に、僭主七王それぞれの思惑や、偽造聖剣製造を担う天才を巡る複雑な想いを絡めた展開でしたけど、正義の名の下に、正しい裁きを遂行しようとするアルサリサと、仁義の名の下にはぐれ魔族を救おうとするキード。二人の思惑がすれ違い、別々のアプローチから分かれて捜査をすることになっても、二人の間には確かな信頼関係が生まれつつありますね。最後に思わぬ窮地に陥ったものの、今後の展開が楽しみになってきました。
たかが従姉妹との恋。3 (ガガガ文庫)
高校生としての初めての夏休み。紆余曲折の末に凪夏と付き合い始めて乱れた日々を送る幹隆。一方の眞耶は幹隆への想いを整理するために日記を綴り始める第3弾。幹隆の心を繋ぎ止めようと彼をひたすら追い込み、求め続ける凪夏の執心。流南が思わず口を滑らしたことがきっかけに従妹全員に知れ渡ったキス事件。従妹たちとの関係をどうにかしたい凪夏の策略には愕然しましたが、ちょっとやり過ぎと感じたところにあれはないなと思いましたし必然の結末でしたね…。忘れられないトラウマを刻みつけられるような出来事が続いた幹隆も、振り回された従妹たちも大変だったなと思いましたけど、だからこそ彼らがたどり着いた、希望を感じさせてくれるそれぞれの結末には救われる思いでした。
お兄様は、怪物を愛せる探偵ですか?: ~とぐろを巻く虹~ 2 (ガガガ文庫)
お兄様は、怪物を愛せる探偵ですか?(2)
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ツカサ/千種 みのり 小学館 2024年02月19日頃
前回の事件を解決し新たな義妹を得た混河葉介。今度は25年前に失踪した少女・虹野瑠依珠が記憶を失った状態で発見されたとの報を受け、夕緋と調査に赴く第2弾。外部と遮断された霧の中で出会った「神隠しに遭った」と噂されている虹野瑠依珠。彼女とともに失踪事件の現場となった戸黒家の洋館を訪ねる葉介たちが、そこに集っていた当時を知る戸黒家の人々から真相を探ろうとした矢先に起きた惨劇。葉介も意識を失い、なぜか洋館到着時に巻き戻る時間。鍵を握る地多と揺の伝承に戸黒家、虹野家を絡めた背景があって、それを解き明かかしてゆく中でたどり着いた瑠依珠の正体とその結末がなかなか印象的でしたけど、一方で徐々に明らかになってきた混河家の事情も気になるところではあります。
煙突掃除令嬢は妖精さんの夢を見る ~革命後夜の恋語り~ (集英社オレンジ文庫)
煙突掃除令嬢は妖精さんの夢を見る 〜革命後夜の恋語り〜
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倉世 春/長門 さわこ 集英社 2024年02月19日頃
十年前に行き倒れていたところを煙突掃除人のラザールに拾われ、自身も煙突掃除の仕事をしながら暮らすニナ。訳ありの彼女が革命の英雄ジャンと運命の出会いを果たす物語。十二年前の革命で共和国となって以来、彼女が心の奥底に封じてきた秘密。彼とは関わりたくないのにニナを何かと気にかけるジャン。真っ直ぐな彼に惹かれていく一方で、ジャンがかつて袂を分かった時の権力者ロジャースに目をつけられ、抱いた疑惑を晴らせないまま利用されジャンが窮地に陥る中、明らかにされてゆく様々な知られざる過去の真実があって、我が身を省みずに決然と立ち上がったニナの覚悟が変えた未来と、かけがえのないものを取り戻してみせたその結末はなかなか良かったですね。
西荻窪ブックカフェの恋の魔女 迷子の子羊と猫と、時々ワンプレート (集英社オレンジ文庫)
西荻窪ブックカフェの恋の魔女 迷子の子羊と猫と、時々ワンプレート
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菅野 彰/ふろく 集英社 2024年02月19日頃
とある恋愛相談をきっかけに、西荻窪駅のコンビニで噂を囁かれるようになったブックカフェの店主・月子。恋に悩めるお客さんが本と魔女を求めてブックカフェにやってくる物語。ワンドリンクワンプレートのオーダーで読書をするカフェで、時々魔女に持ち込まれる仕事にやりがいを感じながらも結婚を考えている相手の転勤に悩む女性や、絵を描いている時にヴァイオリンを弾いている彼との関係に悩む美大生、そしてずっとお店に通いながらもなかなか切り出せなかった男の話。本になぞらえながら相談相手にそっと寄り添ってくれる月子さんの距離感がなかなか良かったですけど、たびたび出てきて月子の話し相手になっていた二階にいる山男の思わぬ正体に繋がってゆく結末には正直驚かされました。
仮面後宮 2 修羅の花嫁 (集英社オレンジ文庫)
前代未聞の女東宮候補選びの最中、八雲の院との顔合わせ直後にが命を落とした和歌の宮。病死や事故死ではありえない明らかな殺人に候補者たちも動揺する第2弾。火の宮たちが滞在する雷光殿の状況から、外部ではなく内部犯行しかありえない状況に、お互いが疑心暗鬼に陥って殺伐とした雰囲気になってゆく候補者たち。そんな中で生まれてしまうさらなる犠牲者の存在。それでも候補者選びを続けようとする八雲の院に憤りすら感じる非道なやり口もあって、候補者たちの本性を容赦なく暴きながら、それぞれが抱いていた密かな希望すら打ち砕く壮絶な結末には言葉もなかったですけど、それでもこの物語はまだまだ続くようで、一体どんな結末が待っているのか想像もつきません…。
春華杏林医治伝 気鋭の乙女は史乗を刻む (集英社オレンジ文庫)
春華杏林医治伝 気鋭の乙女は史乗を刻む
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小田 菜摘/ペキォ 集英社 2024年02月19日頃
実家に居づらくなり女性医官になった春霞。そんな彼女が街で少し変わった青年・犀阮陽と出会い、その姉で原因不明の病に悩む皇帝妃の看護役に抜擢される第2弾。莉国で女子太医学校が初めて創設されて数年が経過して、誕生して間もない女性医師への偏見と旧弊に抗う春霞。なかなか治らない妃の症状を巡るストーリーに、お互い辛い過去を抱えている春霞と阮陽の関係や、年月を経ても変わらない前作の主人公・珠理や碧翔の強い絆も絡めながら描かれる展開で、試行錯誤の末に辿り着いた、皇帝を恋い慕う妃ゆえの意外な真相にはほろ苦さもありましたが、だからこそ彼女たちが迎えた相変わらず不器用で微笑ましいその結末には救われる思いでした。