【BWコイン40%還元】アニメ化作品・全巻セットも対象!(6/19 9:59まで)
今回はBookWalkerの方で5/16までに配信された全作品コイン40%還元!ということで対象作品の中から、文庫小説のおすすめ30作品をセレクトしました。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。ライト文芸・ライトノベル編はこちら↓
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍シリーズのBookWalkerページに飛びます。
1.特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来 (宝島社文庫)
特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来
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南原 詠 宝島社 2023年02月07日
特許権をタテに企業から巨額の賠償金をせしめていた凄腕の女性弁理士・大鳳未来が、「特許侵害を警告された企業を守る」ことを専門とする特許法律事務所を立ち上げるリーガルミステリ。彼女と組む弁護士・姚のもとにもたらされる完成済の特殊なTVの特許侵害、映像技術の特許権侵害を警告され活動停止を迫られる人気VTuber。一見そこからの逆転は難しいと感じる状況から、やや不自然とも思えるその訴えの背後関係を探り始めたことで、見えてくる様々な企業の思惑を逆手に取って、上手い落とし所を見極めながらきちんと問題を解決してみせるその展開の妙はなかなか面白かったです。
2.スター (朝日文庫)
新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。大学卒業した二人が名監督への弟子入りとYouTube発信という真逆の道を選ぶクリエイター小説。名監督の助監督にはなったものの自分の作品をなかなか表に出せない尚吾の葛藤。一方でYouTubeで注目を集めてはいるものの、果たしてそのクオリティでいいのかと疑問を感じてしまう紘。同様に激変してゆく表現者の世界に対する紘の仕事仲間、尚吾の先輩や同棲相手、後輩たちの苦悩や試行錯誤で実感のこもった言葉が突き刺さりましたけど、彼らが追い求めた先に見えてくるそれぞれの形がとても印象に残る物語でした。
3.お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。案内されたレファレンスコーナーで司書さんが一風変わった選書をしてくれる連作短編集。婦人服販売に行き詰まりを感じる女性社員、雑貨店主を夢見る経理部員、子供を生んだ雑誌編集者の複雑な想い、夢破れ仕事も辞めたニート、そして定年退職した夫。無愛想なのに聞き上手なインパクト抜群の司書さんが、適切なオススメとちょっと変わった一冊とともに渡してくれる付録が印象的で、意外な本との出会いをきっかけに新しい道を見出してゆく、そんな著者さんらしさが詰まった物語でした。
4.ヴィクトリアン・ホテル (実業之日本社文庫)
明日をもって百年の歴史にいったん幕を下ろす伝統ある超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」。ホテルを訪れた宿泊客たちの様々な人間模様が描かれる長編ホテルミステリ。悩める人気女優、自暴自棄なスリ、新人賞受賞作家、軟派な宣伝マン、そして人生の最期をホテルで過ごそうとする夫婦たちがホテルで出会う一期一会の縁。そんな登場人物たちの交錯する人生を描いていく展開と見て読んでいたのですが、途中からあれ?と思うような一面がいろいろと垣間見えてきて、結果的にええっ?となって見事にやられたと思いましたけど(苦笑)、でもとても優しくて素敵な物語だったと思いました。
5.法廷遊戯 (講談社文庫)
五十嵐 律人 講談社 2023年04月14日
法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義と織本美鈴。二人の過去を告発する差出人不明の手紙をきっかけに不穏な出来事が続き、意外な形で事件に巻き込まれてゆくリーガル・サスペンス。ある日を境に、二人の「過去」を知る何者かによる嫌がらせが相次ぐ状況で、清義が相談を持ち掛けたのは異端の天才ロースクール生・結城馨。思いもしなかった形で起訴された美鈴と、それを弁護することになった清義という構図になる中、人生を諦めたくなかった久我清義と織本美鈴の苦い過去、明らかになってゆく意外な事件の真相があって、突きつけられる司法界の問題と、それぞれの良心が問われる中で導かれてゆく結末の持つ意味がなかなか深い物語でした。
6.ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介 (講談社文庫)
ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介
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川瀬 七緒 講談社 2023年05月16日
東京の高円寺で小さな仕立て屋を営む桐ヶ谷京介。美術解剖学と服飾の深い知識で服を見ればその人のすべてがわかる彼が、少女殺害事件に疑問を抱き調べ始める仕立屋探偵ミステリ。京介が偶然目にしたテレビの公開捜査番組。10年前とはいえ遺留品として映された奇妙な柄のワンピースのあまりにも時代遅れのデザイン。服を見ればその人の受けた暴力や病気などまでわかる特殊な能力を持つ彼が、ヴィンテージショップの小春とともにそのわずかな手がかりから、犯人はおろか少女の身元さえわかっていない痕跡に寄り添い、未解決事件の真相に迫る展開はなかなか読み応えがあって面白かったですけど、結末はなかなかやるせなかったですね…。
7.凪に溺れる (PHP文芸文庫)
二〇一九年、突如ネット上で拡散され始めた一人の無名のアーティストが歌う曲『凪に溺れる』。その曲と運命的な出会いを果たし、夢と理想、そして現実とのはざまで藻掻いた6人の人生を描く連作短編集。出会った人の心を揺さぶらずにはいられない霧野十太の音楽。彼と水泳少女の出会い、燻る高校時代に出会った少女、大学時代のバンド仲間、夢を思い出したフリーライター、彼の父を巡る過去。彼と関わる第三者視点で語られ、音楽に邁進し続けた十太の複雑な想いは想像することしかできないですけど、それでも彼が生み出した音楽は生き続けて、多くの人の心を揺さぶって受け継がれてゆくことを予感させる結末がとても印象的な物語でした。
8.私が先生を殺した (小学館文庫)
桜井 美奈 小学館 2023年05月02日
全校生徒が集合する避難訓練中、屋上から飛び降りた学校一の人気教師・奥澤先生。しかし彼が担任を務めるクラスの黒板に「私が先生を殺した」というメッセージがあったことで、状況は一変する学園ミステリ。奥澤先生と女生徒のスキャンダルめいた動画を見つけ騒ぎ立てる落ちこぼれの砥部、突然有力視されていたはずの指定校推薦を失い納得できない女生徒・黒田、大好きな先生相手に取った誤解を生むような行動を今更周囲に言えない百瀬、そして不可解な指定校推薦を押し付けられて困惑する小湊。生徒に真摯に向き合ってきたはずの先生を追い詰める、何とも理不尽な歪みが招いた悲劇に対して、痛烈な皮肉にしか思えない最後の厚顔な挨拶が何ともあれな結末でしたけど、せめて卒業する生徒たちは幸せな人生を送ってほしいです…。
9.銀色の国 (創元推理文庫)
自殺対策NPO法人の代表として日々奔走する晃佑のもとに届いた友人の自殺という悲報。元相談者の友人が今になって死を選んだ原因を調べるうちに、恐ろしい計画の一端に辿り着くミステリ。逃げたい衝動を抱える詩織が陥った罠、SNSに死をほのめかす投稿を行い自傷行為を繰り返す浪人生のくるみ、そして自殺者の原因を探るうちに明らかになってゆくVR「銀色の国」の存在。その仮想と現実で一体何が起きているのか。死を願う人々に忍び寄る常軌を逸した悪意と、影響されてありようを変えてしまった人々がいて、それでも諦めずに細い繋がりから活路を見出して、向き合い続けた晃佑の熱い想いが引き寄せた結末には心揺さぶられるものがありました。
10.京都・梅咲菖蒲の嫁ぎ先 (PHP文芸文庫)
京都 梅咲菖蒲の嫁ぎ先
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望月 麻衣 PHP研究所 2023年05月10日頃
四神の力を持つ『神子』が存在する大正時代。幼い頃、許婚として紹介された京都の桜小路家の御曹司・立夏に一目惚れした曰くつきの梅咲家の令嬢・菖蒲が、成長して憧れの立夏と再会する和風ファンタジー。立夏を一途に思い続けて、十五歳で婚姻の準備のために東京から桜小路家へ越してきた菖蒲。その想いをなかなか信じられず、冷たい瞳で彼女を拒絶してしまう立夏。両家の事情や積み重なってきた複雑な因縁もあって、それが一気に顕在化する壮絶な展開でしたけど、それでも変わらない真摯な想いが少しずつ二人を変えてゆく中で、それぞれが本当に大切なものは何かを見出してゆくことで紡がれたその結末が見事にハマった物語でした。
11.虜囚の犬 元家裁調査官・白石洛 (角川ホラー文庫)
虜囚の犬 元家裁調査官・白石洛
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櫛木 理宇 KADOKAWA 2023年03月22日頃
過去の苦い事件から家裁調査官を辞め、妹の専業主夫代わりの日々を送る白石洛。友人の刑事・和井田からかつて担当した少年・薩摩治郎が死体となって発見されたことを知らされるサスペンスミステリ。穏やかな日常を送っていた洛が、治郎の自宅を訪れて判明する監禁虐待されていた女性たち。なぜ治郎は彼女たちを監禁したのか、そしてその史上最悪の監禁犯を殺したのは一体誰なのか。強権的な父や無力な母、家政婦や庭師、精神医を通じて明らかになる凄惨な背景があって、中学生二人の動向も絡めながら組み上げらてゆく構図に覚えた違和感の正体は見事に打破されましたけど、それでも根深く逃げられないその連鎖には戦慄を覚えました…。
12.マヨナカキッチン収録中! (双葉文庫)
テレビ番組制作会社で働く浅生霧歌が、深夜の料理番組『マヨナカキッチン』アシスタントプロデューサーとして、誰かの心に残る番組を作りたいと仕事に奔走するお仕事×お料理ストーリー。妹の結婚話に自分も結婚したいな…と感じつつ、ライフプランなんて考える暇もない忙しさの中、なかなか打ち解けてくれない自分が推した出演者だったり、ロケでの連絡ミス、失敗からの深夜におよぶ編集作業。トラブル続きの番組制作の現場などで、要所要所で得意の美味しそうな時短料理をテキパキ作って、疲れたり落ち込んだ人たちの背中を押してくれる浅生の存在がいい感じに効いていますね。思わぬ急展開もあってこれは続刊に期待したいシリーズです。
13.横浜ネイバーズ (ハルキ文庫)
横浜中華街を舞台に、かつて<山下町の名探偵>と呼ばれ、ぶらぶらと暇を持て余すロンこと小柳龍一のもとに、次々と厄介事が持ち込まれる連作ミステリ。祖父の中華街料理店が閉店してしまい、あとを継ぐあてが外れた彼を頼って持ち込まれる、妹がビルから転落死した理由、夫が突然七百万の借金を作った理由、中華街に貼られた迷惑シール、特殊詐欺の犯人探しといった調査依頼。困った人を放っておけず、引きこもりでネットに強い幼馴染ヒナや、先輩の刑事といった仲間たちの協力も得て調査するロンの粘り強さが見出す、それぞれの真相が印象的でしたが、幼馴染ヒナの闇はなかなか深そうですね…続きが気になります。
14.遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト (角川文庫)
遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト
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小松 亜由美 KADOKAWA 2023年02月24日頃
京都府警に持ち込まれた傷害致死事件。新興宗教に傾倒していた母親の虐待を疑う京都府警は、大学で法医解剖医を務める加賀谷千夏に検死と司法解剖を依頼する法医学ミステリ。異様な姿で死亡した引きこもりの大学生の死因、河川敷で発見された首のない遺体の死因、発見された足だけの遺体の真相、同時に発見されたのに腐敗した死体と凍結した死体が並んでいた理由。新人助手・久住とのコンビで真摯に取り組む精緻な解剖描写と、事件の真相を導き出す千夏の推理力が目を引きましたが、毎話ごとに違う関係者視点から角度を変えて千夏の様子が語られる構図もなかなか興味深かったですね。
15.無実の君が裁かれる理由 (祥伝社文庫)
突然、身に覚えのない同級生へのストーカー行為を告発された大学生・牟田幸司。周囲の犯人扱いに追い詰められてゆく幸司に冤罪の研究する先輩・紗雪が疑いを晴らすために協力する連作短編集。二人が挑むストーカー扱いされた裏に潜んでいたもう一つの事件、ドローンを破壊したという自白の真相、冤罪痴漢事件に隠されていた真実、そして紗雪の父にまつわる冤罪事件の究明。読んでいると冤罪に繋がる証拠や自白、証言に対する信頼性といったものがいかにあやふやなものでしかないのか、そんなもので周囲に疑われてしまう恐ろしさをしみじみと感じましたが、それでも信じてくれる人の思いがあって、事件に真摯に向き合ってその思い込みを覆してゆく展開には救われるものがありました。
16.絞首商會 (講談社文庫)
秘密結社「絞首商會」との関わりが囁かれる血液学研究の大家・村山博士が殺され、頭脳明晰にして見目麗しく厭世家の元泥棒・蓮野が遺族に事件解決を依頼される大正ミステリ。なぜ遺体が移動させられていたのか、鞄の内側がべっとり血に濡れていたのか。そもそも遺族が以前村山邸に盗みに入った元泥棒に事件解決を依頼するのも不可解で、蓮野の友人・井口やうら若き乙女の峯子も絡めながら、なぜか事件解決に熱心過ぎる四人の容疑者相手に緻密な推理を積み上げていって、それが一気に組み上がってひとつの形となってゆく終盤の展開はなかなか良かったです。今回の蓮野と井口のコンビで別の物語をまた読んでみたいと思いました。
17.白銀の逃亡者 (光文社文庫)
致死率95%、凶悪なウイルスの大流行が収束した世界。罹患したことを隠して深夜の救急医療室で働く岬純也のもとに現れた同じヴァリアントの少女・悠に、ある計画を打ち明けられ巻き込まれてゆく物語。患者が差別され隔離され自身も公安に追われる状況で、それでも拘置所に収監されている兄に会おうとする悠に振り回される純也。悠の兄に異様な執着を持つ刑事・毛利の執拗な追跡、そして明らかになる計画の真意。追いつめられ後戻りできずに突っ走るなかなかテンポの良い展開でしたが、二転三転するストーリーをスッキリとした結末に上手くまとめ上げていて面白かったです。
18.レモンと殺人鬼 (宝島社文庫)
十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、一緒に不遇をかこつ日々を送っていた妹の妃奈が遺体で発見されて、運命の輪は再び回りだすミステリ。母親も失踪して別の親戚に引き取られていた妹。惨殺された彼女の潔白を信じて、その疑いを晴らすべく行動を開始する姉の美桜。そんな彼女たちの過去を探り、様々な思惑を秘めて美桜と出会う人たち。誰を何を信じるべきなのか、状況が二転三転する中で思わぬ事実も明らかになっていって、どいつもこいつも裏の顔とか考えることは…と正直思ってしまうぶっ飛んだ展開でしたけど、その結末もまたなかなか衝撃的でした。
19.魔女のいる珈琲店と4分33秒のタイムトラベル (文春文庫)
魔女のいる珈琲店と4分33秒のタイムトラベル
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太田 紫織 文藝春秋 2023年04月05日
留学先のイギリスで手を怪我してしまいピアノが弾けなくなった中学生・岬陽葵。引っ越した札幌の珈琲店「タセット夕暮れ堂」で、後悔を抱えた人を過去へ連れていきやり直しをさせてくれる魔女と出会うファンタジー。失意の陽葵を励ますおばあさんが教えてくれたお店の秘密。チャンスは一度、珈琲を淹れる4分33秒の間だけ。言いたい放題言う女性客の後悔、そして親友だった友人のためにもう一度時を飛ぶ陽葵。時守として時を跳ぶ力は得ても、自分の後悔自体を取り戻すことはできない辺りなかなか切ないですけど、弾けなくなったピアノを諦めない母に対する複雑な思いだったり、自らの行動が思わぬ波紋を引き起こしていたりもして、これから物語がどう動くのか、今後が楽しみなシリーズですね。
20.うしろむき夕食店 (ポプラ文庫)
料理おみくじが名物で、出てくる料理とお酒は絶品揃いのうしろむき夕食店。食事も人生もいろいろ迷うお客さんに、意外な出会いを与えてくれる連作短編集。女将の志満さんと不幸体質の孫娘・希乃香さんの二人で切り盛りする店にやってくる、抜擢に空回りしてしまうラジオ局のパーソナリティ、異動に戸惑う製薬会社MRや、義母との距離感に戸惑う新妻、夢を追いかけ続けるかどうか悩む夫、そして孫娘・希乃香が探している生き別れの祖父の存在。悩めるお客さんたちに寄り添うように美味しそうな料理が振る舞われて、新たな気づきを得て進むべき道を見出してゆくとても優しい物語でした。
21.SHELTER/CAGE 囚人と看守の輪舞曲 (双葉文庫)
SHELTER/CAGE 囚人と看守の輪舞曲
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織守 きょうや 双葉社 2023年03月15日
民営刑務所で働くことになった河合凪が興味を惹かれた、長期受刑者だが悠々自適に生活しているように見える殺人犯の阿久津。看守と囚人が織りなす人間模様を描いたミステリ。新任女性刑務官が垣間見る様々な受刑囚たちの意外な姿。クールな刑務官・北田が抱える鬱屈、刑務所にいる女医の過去、やむをえず引き受けた弁護士・高塚といった周囲の人々の心理描写もまた印象的で、受刑者も悔恨を抱えていたり、後悔はしていなかったり、変わりそうにもなかったり、その心境は様々なんですよね。あの高塚弁護士がさりげなく登場している驚きもありましたが、舞台のわりには意外と落ち着いたストーリー展開で、いろいろと興味深い物語でした。
22.本のない、絵本屋クッタラ: おいしいスープ、置いてます。 (ポプラ文庫)
本のない、絵本屋クッタラ
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標野 凪 ポプラ社 2023年02月02日
札幌にある『本のない、絵本屋クッタラ』。店主・広田奏と共同経営の八木が切り盛りするカフェで、季節のスープと奏のセレクトする絵本が訪れた人々の心を癒やしてゆく連作短編集。最初は絵本屋と思っていたのに、スープセットとコーヒーのみのカフェと知って戸惑う訪問客たち。彼らが抱える育児での迷いや、仕事に忙殺されていたり、今の立ち位置に迷っているといった苦悩に耳を傾けた奏、そして彼がセレクトした絵本を受け取るためにもう一度店を訪れることになる展開で、外な繋がりも明らかになりましたけど、時に温かく、意外な一面を持った本に込められた優しさがとても心に響く物語でした。
23.神さまのいうとおり (幻冬舎文庫)
バラバラな家族を救ってくれたのは、曾祖母の暮らしの知恵だった。言い伝え、風習、おまじない…幸せに生きるための秘訣は、昔からずっと側にあることを知る連作短編集。会社を辞めて主夫になった父親、そんな父親を恥ずかしいと思ってしまう思春期の娘、何も相談してくれない夫との関係に悩む母親。息子も含めた一家で曽祖父の住む田舎に引っ越してきた、それぞれ鬱屈を抱えている彼女たちが、ふとしたきっかけからこれまで知らなかった様々なことに気づいてゆく展開で、いろいろなものの見方も変わっていって、相手をきちんと知ろうと向き合い始めた家族が迎える結末は、とても優しくて心に響くものがありました。
24.赤ずきんの森の少女たち (創元推理文庫)
神戸に住む高校生・熊丸かりんが、従兄の大学生・栗原慧に訳してもらった祖母の遺品であるドイツ語の本。そこに描かれる十九世紀末の寄宿学校を舞台にした少女たちの物語。祖母が残したドイツ語の本に描かれる赤ずきん伝説の残るドレスデン郊外の森、学校でささやかれる幽霊狼の噂、校内に隠された予言の書と宝物の言い伝え。それらを読み進めるうちに物語と現実を結ぶ奇妙な糸に気づく二人。物語の中で描かれるロッテと個性豊かなルームメイトたちの寄宿学校の様子や、それぞれの謎解きのエピソードがなかなか楽しくて、積み重ねられた伏線が解き明かされてゆくとても素敵な物語でした。
25.全部ゆるせたらいいのに (新潮文庫)
全部ゆるせたらいいのに
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一木 けい 新潮社 2023年03月29日
生まれたばかりの娘・恵と一日中向き合い、仕事の苦しみから酒に逃げる夫に苦悩する千映。明日何が起きるか予測がつかない日常とその過去を描く物語。安心が欲しいだけなのに、あきらめて生きる癖がついてしまった千映。言葉が通じない小さな子供と一日中向き合うだけでも大変なのに、酒に溺れたびたび何かやらかすようになった夫に振り回される日々も突き刺さりましたが、それ以上にアルコール依存症だった父と家族の歪んだ関係があって、それでも希望を見出したくなる気持ちが切なくて、上手くいくようになるといいなと思わずにはいられない結末がとても印象的でした。
26.初恋写真 (角川文庫)
藤野 恵美 KADOKAWA 2023年03月22日頃
男子校出身で女子に免疫がない大学2年生の星野。所属している写真部の新入生勧誘で、カメラを首から下げた新入生の花宮まいと出会い、一瞬で心を掴まれる青春小説。写真部に入部して、新歓撮影会などを経て少しずつ星野と仲良くなっていく花宮。一方である理由で高校に行けなくなった彼女の過去があって、付き合うことになったものの、実は男性が苦手な花宮のトラウマを刺激してしまう星野。こういうのはなかなか難しいなと感じながら読んでいましたけど、不器用な二人がお互い相手を尊重しながら、少しずつ距離を詰めてゆく初々しい距離感が良かったですね。花宮が星野を好きになった理由もなかなか効いていました。
27.京都家守夫婦の白い契り 雪割家の花嫁 (宝島社文庫)
京都家守夫婦の白い契り 雪割家の花嫁
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雪中 松柏 宝島社 2023年04月06日
優れた方術士を輩出する京都の名家で元次期当主だった鈴夏文人と、海外との貿易も盛んな大阪の豪商の令嬢・雪割一華の結婚。 『家』に縛られ、秘密を抱えていた二人が紡ぐ婚姻譚。政略結婚とはいえ夫婦として歩み寄ろうとする文人に対し、今回が四回目の結婚で夫婦関係を拒絶して離縁まで勧めてくる一華の出会い。それでもぎこちない夫婦生活の中で少しずつ何とか一華を知ろうとして、彼女が抱える複雑な事情を共有したいと願う文人。彼自身もまた秘密を抱えていて、究極の選択を突きつけられながら、それでも献身的な文人の想いが一華を変えてゆく展開はなかなか良かったです。
28.料理なんて愛なんて (文春文庫)
ずっと好きだった真島に高級バレンタインチョコを渡したものの、料理が下手でフラれた優花。彼が憧れていた相手は料理教室の先生だったことを知った彼女が、料理を好きになろうと奮闘する物語。一念発起して自炊に挑戦したり、料理男子と合コンしたりする一方で、自炊しなくてもいい食べるものが充実した街に引っ越したり、自炊をしない後輩につい共感してしまう優花。そんな中、料理を作ってくれる男にアプローチされて、どうあるべきかで心揺れてしまう彼女の葛藤はなかなか切実でしたけど、「料理は愛情」という呪いに囚われながら、それでも上手く行かない自分にしっかり向き合った彼女のありようがとても愛しくなりました。
29.ゆるコワ! ~無敵のJKが心霊スポットに凸しまくる~ (角川文庫)
ゆるコワ! 〜無敵のJKが心霊スポットに凸しまくる〜(1)
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谷尾 銀 KADOKAWA 2023年01月24日頃
悪魔的頭脳を持つ残念美人の茅野循に誘われ、オカルト研究会を結成することにした最強女子高生・桜井梨沙。怖いもの知らずのコンビを組んで心霊スポットを探索する青春ホラー小説。設立して早々に病院の廃墟に向かった二人が、呪いの神社、最凶事故物件、そして「カカショニ」と次々と攻略してゆく展開で、心霊スポットだけでなく、たびたび人の悪意にも晒されたり、ネット怪談もありましたけど、不穏な展開になっても補い合う循と梨沙の最強コンビがなかなか強いので、それを跳ね除ける力強さがありますね。ミステリ要素もあったりでこのレーベルらしい魅力に溢れた作品でした。
30.百合小説コレクション wiz (河出文庫)
百合小説コレクション wiz
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深緑 野分/斜線堂 有紀 河出書房新社 2023年02月07日頃
実力派作家の書き下ろしと百合文芸小説コンテスト発の新鋭が競演する、八つのアンソロジー。斜線堂さんの選挙に絶対行きたくない見解の相違、小野さんの私たちが失った三年間、櫛木さんの夫とその愛人と三人の奇妙な同居生活、宮木さんの教師とパートナーの別離と女子高生、アサウラさんの彼氏ができた友達を拉致する話、坂崎さんの嘘つき姫とみんなの嘘、南木さんのとある魔術師の恋の物語、深緑さんの恋人を助けないと崩壊する世界と運命。男も絡む作品などは好みが分かれそうですけど、著者さんらしいそれぞれのアプローチで描かれる思っていたよりもカオスな関係があって、個人的にわりと楽しく読めた短編集でした。