「2023年本屋大賞」発表記念フェア(4/20まで)
本日、ついに今年の本屋大賞が発表になりました。個人的には候補作の中で安壇美緒さんの「ラブカは静かに弓を持つ」を応援していたのですが、やはり凪良ゆうさんは強かったですね(苦笑)BOOK☆WALKERではノミネート作品10点がコイン+20%還元です。※「光のとこにいてね」のみ、コイン+30%還元で、コイン還元終了日も4月27日(木)まで。気になる本があったらぜひこの機会に読んでみてください。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
1.汝、星のごとく
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく物語。夫に逃げられた母を放っておけない暁海と、母の恋愛に振り回されてきた漫画家になる夢を持つ櫂。急速に惹かれ合ってゆく二人が、けれどままならない状況に不器用すぎて少しずつすれ違う展開にはもどかしくなりましたけど、彼らを見守り続けて寄り添ってくれた北原先生との存在も大きくて、いつまでもずっと心に残り続けた鮮烈な想いに殉じる一途な姿は、傍から見たら歪でも、他の人に何と言われようとも、かけがえのないとても美しいものに思えました。
ラブカは静かに弓を持つ
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安壇 美緒 集英社 2022年05月02日頃
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への二年間の潜入調査を命じられた全日本音楽著作権連盟の職員・橘。チェロを武器に傷を抱えた潜入調査員の孤独な闘いと葛藤を描くスパイ×音楽小説。著作権法の演奏権を侵害している証拠を掴むため、身分を偽ってチェロ講師・浅葉のもとに通い始める橘。師と仲間との出会いや奏でる歓びを積み重ねて、愚直にチェロに真摯に向き合い続けた彼が、過去の苦い思い出で凍っていた心を溶かし、自らの行為に葛藤するのも必然の展開だと思いましたけど、対照的な構図も絡めながら描かれる、自分にとって本当に大切なものは何か、自分はどうすべきなのか、その先に見出した不器用な彼らしい決断がとても印象に残る物語でした。
3.光のとこにいてね
母に連れられて来た古びた団地の片隅で出会った結珠と果遠。着るもの食べるもの、住む世界も何もかもが違うのに、お互いに惹かれ合う二人の四半世紀の物語。週に一回だけ古びた団地で育んだ二人の交流。高校時代の束の間の再会と突然の別れ。そして社会人になってからの偶然で運命的な再会。初手から強烈に惹かれ合う二人の縁みたいなものがあって、出会ってしまったらもうお互い意識せずにはいられなかったり、それぞれが抱える親子関係に対する葛藤を拗らせていて、それでも大人になっても大切なものはいつまでも変わらない不器用な二人のありようがとても印象的な物語でした。
4.爆弾
些細な傷害事件で野方署に連行されたとぼけた見た目の中年男スズキタゴサク。たかが酔っ払いと見くびる警察に、男は「十時に秋葉原で爆発がある」と予言するノンストップ・ミステリ。男の予言直後に秋葉原の廃ビルが爆発。今後の展開を示唆するこの胡散臭い中年男が果たして爆弾魔なのか。対話を試みて情報を引き出そうとする警察と男の駆け引き、鍵を握る過去の事件との繋がり。状況が二転三転して構図もガラリと変わる中で浮かび上がってゆく意外な真相があって、恐怖に支配されて不安を突きつけられた登場人物たちの生々しい感情がなかなか印象的な物語でした。
5.月の立つ林で
青山 美智子 ポプラ社 2022年11月09日頃
それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』。それを聴くつまずいてばかりの日常を送る人々の変化を描いてゆく連作短編集。長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。著者さんらしい登場人物の思いが繋がってゆく短編集で、手くいかない時だからこそ、ふとしたことから気づく優しさが、そして変わってゆく世界がとても心に染みる素敵な物語でした。
6.君のクイズ
生放送クイズ番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央。その対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答されて、優勝を逃すという不可解な事態に直面するミステリ。一体なぜ本庄絆は問題も聞かずに正解することができたのか。真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返ってゆく三島。振り返った過去には三島と本庄絆のこれまでのクイズプレイヤーとしての積み重ねが垣間見えて、その覚悟すら感じる変化には共感すら覚えていたはずなのに、そうするに至った理由を聞いてしまったことで、どうやっても埋められない決定的な溝を感じてしまう何とも皮肉な結末が効いていました。
7.方舟
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れ、偶然出会った三人家族と地下建築の中で夜を越すことになった柊一。その地下建築が水没の危機に陥った矢先に殺人事件が起きるミステリ。地震が発生して扉が塞がれ、水没までのタイムリミットまでおよそ一週間。9人のうち死んでもいいのは、死ぬべきなのは誰か?殺人犯を一人犠牲にすれば脱出できる。そんな思いで犯人探しが始まる中で発生する連続殺人事件。わりとオーソドックスなクローズドサークルなのかなと思いながら読む中で、ディテールにこだわった推理はなかなか鮮やかでしたけど、それだけでは終わらない何とも衝撃的な結末には度肝を抜かれました。
8.宙ごはん
育ててくれたママと産んでくれたお母さんがいる小学生の宙。育てのママ・風海が夫の海外赴任に同行することになり、産んでくれたお母さんの花野と同居を始める家族の物語。花野と一緒に暮らし始めた宙が直面する、ご飯も作らず子供の世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活。けれどそんな彼女を支えてくれる人たちがいて、宙が成長していく過程でいろいろなことに気づいたり、また違う一面も見えてきたりして、いろいろな人たちのとの大切な出会いや哀しい別れも経験しながら、成長してゆく宙と周囲のひとたちとのかけがえのない日々にはぐっと来るものがありました。
9.川のほとりに立つ者は
悩み多きカフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受け、恋人が自分に隠していた過去と明かされなかった秘密を知ってゆく物語。親友の樹とつかみ合いの喧嘩をして病院に担ぎ込まれたという松木。すれ違いやコロナもあってしばらく音信不通だった彼の部屋を訪れ、彼が隠していたノートをきっかけに明らかになってゆくその背景。樹の想い人・天音も絡めながら、上手くやれない事情を抱えながら周囲の理解も得られず、不器用に生きることしかできなかった登場人物たちの複雑な思いは、なかなか根の深い難しい問題だと感じましたけど、だからこそ気にかけてくれる周囲の人の存在、安心できる居場所の大きさを改めて痛感させられました。
10.#真相をお話しします
日常に潜む小さな歪みが、違和感とともに浮き彫りになっていってそれが衝撃の結末へと繋がる五つの連作短編ミステリ。家庭教師の派遣サービスに従事する大学生が母子に抱いた違和感、女の子をホテルに連れ込んだ男の真の目的、精子提供によって生まれた自分の娘と会ったことで気づいてしまった思わぬ真実、リモート飲み会から始まる浮気発覚騒動の顛末、ある事件をきっかけに島の人々がやけによそよそしくなった理由。話の流れの中に感じた違和感は何だったのか?そこから導き出される意外な真相と、そこからさらに明かされてゆく思っても見なかった結末にはなかなか強烈なインパクトがありました。