今回は4月電撃文庫・PASH！文庫・二見サラ文庫・DREノベルス・カドカワBOOKSの新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫が続刊3点、新作3点、PASH！文庫が新作2点、二見サラ文庫続刊1点、DREノベルスが続刊2点、新作1点、カドカワBOOKSが新作1点の計13点になります。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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86―エイティシックス―Alter.1 ―死神ときどき青春― (電撃文庫)
安里 アサト/しらび KADOKAWA 2023年04月07日
アニメのエピソード原案にもなった店舗特典SSやフェア限定SS、電撃文庫MAGAZINEやカクヨムに掲載された短編。未発表短編や書き下ろしも多数収録した戦う合間のささやかなアオハルを詰め込んだ短編集。絶死の戦場で、行き着いた安息の中で、再び舞い戻った戦場で、初めて足を踏み入れた雪の王国で、戦うことのみが日常と定められたシンやレーナたちに訪れる平和なひととき。それぞれの誕生日を巡るエピソードが微笑ましかったですけど、二人のアオハルなやりとりを突然聞かされて轟沈する将官たちやわけがわからないことになっていたカオスなオールスター香水バトルには笑いました。普段のシリアスなこの物語には不足しがちな要素をたっぷり詰め込んで充足させてくれるサービス短編集ですね（苦笑）
姫騎士様のヒモ4 (電撃文庫)
迷宮都市へと帰還したマシューたちを待ち受けていた、想像とは正反対の『建国祭』に浮かれる住民たちの姿。疑問を打ち消すような喧騒のなか、密かにヤツらは街の暗部を色濃く、赤黒く染めていく第四弾。突如収まったスタンピード、討ち果たしたとされる太陽神教の伝道師。そんな楽観的なムードの中でなぜか囁かれる姫騎士アルウィンの悪い噂。本当に危機は去ったのか、密かに調査を進める中で辿り着いた黒幕が引き起こす最悪の事態。マクタロード王国に起きた悲劇の真相も明らかになる中で、周囲も上手く使いながら戦い、必要とあらば最悪の一手すら躊躇わないアルウィンの振り切れっぷりが際立っていましたが、その鮮烈な復活劇もまた命綱の存在あってのものなんでしょうね…。いろいろまた動き出しそうな第二章も期待しています。
三角の距離は限りないゼロ9 After Story (電撃文庫)
岬 鷺宮/Hiten KADOKAWA 2023年04月07日
奇妙な三角関係が終わりを告げて、北海道から西荻へと戻ってきた暦美と矢野が過ごす当たり前の何よりも願っていた日常。切なく愛しい三人の関係のその後を描いたアフターストーリー。認識のすれ違いでお互い空回りする暦美と矢野の微笑ましいデート、ブログに書いた文章がバズった暦美の迷走、矢野たちをプールに誘った後輩・霧香の密かな決意、矢野と喧嘩した暦美が参加したトークイベント、そしてそれぞれの受験と卒業。今回はバズった暦美の微笑ましい勘違いっぷりだったり、わりとのんびりしたエピソードメインで、今回あまりいいところのなかった細野には頑張ってほしいと思いましたけど（苦笑）丁寧に描かれたそれぞれのその後の様子を読めて良かったです。
30ページでループする。そして君を死の運命から救う。 (電撃文庫)
秋傘 水稀/日向 あずり KADOKAWA 2023年04月07日
幼い頃助けてくれた女の子を探し続ける少年・志道計助。ペンギンの着ぐるみをまとった少女・時湖と出会い、悲劇を巻き起こす怪物の凶行を止めるべく、ループして試行錯誤する青春ファンタジー。抜け出す条件は、空に浮かぶマキナボードに記述される30ページ分しか行動できない制約の中で、夏祭り会場の銃撃事件を止めること。駆け引きと奔走の試行錯誤を繰り返し、次々と浮かび上がる事件の謎、明らかになってゆく用意周到な怪物と数々の困難。時湖が抱える秘密も明らかにしながら、孤軍奮闘でも自分や彼女を犠牲にするのでもなく、持ち札を使い切ることでようやく乗り越えることができた結末はなかなか良かったですね。
未練タラタラの元カノが集まったら (電撃文庫)
戸塚 陸/ねいび KADOKAWA 2023年04月07日
以前付き合っていた幼馴染の水沢美優と三年前に別れてから疎遠な関係になっていた高校生の羽島広季。ところがある日、美優が他の元カノと交流していることを知った広季が、思わぬ事態に巻き込まれてゆく元鞘ラブコメ。過去の話で未練もなく良い思い出として前向きに過ごしていた広季が巻き込まれる、SNSで人気者な幼馴染の美優、広季への好意を隠さない後輩・花音、バイト先の先輩・千夏が三人で始めた動画配信。初っ端から危うい配信に危惧を抱いてマネージャーとしてそれに関わることになった広季と、元カノとしてお互いを意識せざるをえない、三者三様の魅力を持ったヒロインたちそれぞれの思惑も垣間見えて、そんな四人で紡ぐ物語がこれからどのように動いてゆくのか、今後が楽しみな新シリーズですね。
天才少女、桜小路シエルは異世界が描けない (電撃文庫)
春日 みかげ/Rosuuri KADOKAWA 2023年04月07日
性格に癖がありすぎる自称天才マンガ家桜小路シエル。従兄で担当編集に任命され、異世界ファンタジーの原稿回収を命じられた保父星レナが、取材しないと書けない彼女のために異世界を訪れる異世界コメディ。潔癖症の引きこもりで超偏食、人見知りで、仲の良い人と喋れば饒舌だが人と目は合わせられないシエル。そんな彼女と突然異世界に導かれてしまったレナが、異世界を体験するために奴隷商人を懲らしめたり、エルフと意気投合して友達になったり、さらにはシエルが魔王城へ行くとまで言い出す展開で、めちゃくちゃ面倒くさいシエルとそれを放っておけないレナが、友人がいないエルフのスモールを仲間にして、魔王まで巻き込んでゆくメタい展開は、なかなかクセが強いですけど面白かったですね。
悪役御曹司の勘違い聖者生活 ~二度目の人生はやりたい放題したいだけなのに~ (電撃文庫)
木の芽/へりがる KADOKAWA 2023年04月07日
お人好しだった社畜が悪徳領主として名高いヴェレット家の長男オウガとして転生し、これを機にやりたい放題の悪役御曹司ライフを謳歌する勘違いやり直しファンタジー。努力して魔法が使えない状況を克服して、追放された正義感の元女騎士団長を手駒に加えて魔法学院に入学し、いじめられている女の子たちを助けて無双するオウガ。本人は悪徳のつもりでも根がお人好しなので、思うがままにやりたい放題やっているように見えても、そもそも発想が善行なんですよね。しかも王太子の婚約者になっていた幼馴染含めて、彼の周囲にいるヒロインたちはみんな可愛いけど、誰もが何となくヤバい（苦笑）気軽に読めるこれからが楽しみなシリーズですね。
さぁ、悪役令嬢のお仕事を始めましょう 元庶民の私が挑む頭脳戦（PASH！文庫）
緋色の雨/みすみ 主婦と生活社 2023年04月07日頃
余命わずかな妹・雫を気にかける庶民の少女・澪。とあるきっかけから財閥令嬢の紫月と取引をして、彼女の身代わりとして破滅へと向かう悪役令嬢になることを決意するファンタジー。実はこの世界は乙女ゲーム世界で、引き立て役の悪役令嬢になる代わりに妹を救うことを提示され、養子として財閥御用達の学園に入学する澪。血の滲むような努力で嫌われ者の悪役令嬢を演じるものの、根っこの部分で彼女はどうしようもなく優しくて、それが分かるから周囲の人たちに好かれるんですよね。なかなか思うようにいかない澪の悪役令嬢生活ですけど、ここから軌道修正はできるのか、あるいは落とし所は見つかるのか、今後の展開が気になるところではあります。
アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい 1 (PASH!文庫)
翠川 稜/白クマシェイク 主婦と生活社 2023年04月10日頃
後輩の結婚式二次会の店を出たところで新郎新婦を庇い、不運にもトラックに撥ねられたコミュ障ボッチで陰キャのアラサー会社員・真崎幸星。そこから15歳に戻って現代の別世界線を生きるやり直し青春小説。母の再婚でできた家族に、いなかったはずの義妹・莉奈の存在。溺愛したくなる可愛い妹の存在が家族の中でいいアクセントになっていて、好きな料理でしっかりと胃袋を掴んだ義父の隆哉さんや同い年の義兄・優哉といった新しい家族とのいい感じな様子は、なかなか微笑ましいものがありましたね。友人もできてイベントでは要所で存在感を出せている二回目の高校生活や、いい距離感のヒロイン水島さんとの進展も応援したくなる、今後の展開が楽しみなシリーズですね。
女王の結婚(下) ガーランド王国秘話 (二見サラ文庫)
久賀 理世/ねぎし きょうこ 二見書房 2023年04月11日頃
辛くもガイウスの勝利で幕を閉じた女王アレクシアの祝福を賭けた馬上槍試合。しかし昏倒したガイウスは生死の境をさまよい、王国を巡る状況も不穏に満ちてゆく下巻。遺恨を残したまま宮廷を去る敗者のレアンドロス。処刑を待つ身でセラフィーナの懐妊を知らされ、予想だにしない行動にでたウィラード。そこからの思ってもみなかった事実が発覚し、絶体絶命の状況にアレクシアとディアナ、そして仲間たちがそれぞれ立ち向かう激動の展開はなかなか熱かったですね。終盤はやや駆け足だった感もありましたけど、苦境を打開して跳ね返し自らの目指すところを切り開いてみせたそれぞれの結末はなかなか良かったです。
月の白さを知りてまどろむ2 (DREノベルス)
アイリーデの秘された真実を知った上でサァリの力になろうと、化生斬りの任務を果たす青年シシュ。しかしそんな折、新しく招いた化生斬りの周りで少しずつ人々の様子が変質し始める第二弾。豹変してゆくアイリーデの状況に気づき、サァリを逃して原因を探ろうとするシシュ。その過程で明らかになってゆくかつてこの大陸に召喚された女神の兄神の存在。そして月白にやってきて娼妓になろうとする、シシュの過去を知るミフィルの存在と、一時的に力を借りたディスティーラを巡る複雑な因縁。ただでさえ危なっかしいのに堅物相手に拗らせて迷走するサァリに戸惑いながら、苦戦必至のヤバい相手と戦うとかいうなかなかハードな展開の代償はあまりにも大きかったですね…これは今後に大きく響いてきそうな気がしました。
ド田舎の迫害令嬢は王都のエリート騎士に溺愛される2 (DREノベルス)
青季ふゆ/有谷 実 ドリコム 2023年04月10日頃
すっかりロイドの家で家政婦が板についてきたクロエ。途中トラブルはあったものの心地よい日々が続く中、とある事件をきっかけに二人はますます距離を縮めてゆく第二弾。ようやく日々の生活にいろいろ慣れて余裕が出てきて、出来た時間をどう使うべきか、ロイドの後押しもあって考え始めるクロエ。騎士ものの恋愛小説にときめく微笑ましい姿だったり、得意な刺繍を頼まれてやりがいを見出す一方で、本屋を営み本を勧めてくれる青年イアンとの出会いがあったり、忘れたお弁当を届けに来てのトラブルや思ってもみなかった終盤の急展開もありましたけど、そんな中でお互いへの思いを自覚して、絆を深めた二人のこれからが楽しみですね。
月花の少女アスラ ~極悪非道の傭兵、転生して最強の傭兵団を作る~ (DREノベルス)
葉月 双/水溜鳥 ドリコム 2023年04月10日頃
前世でも傭兵として生き、命を懸けた闘争をこよなく愛する傭兵団《月花》の団長アスラが、新しい兵科を用いた戦いで頭角を現してゆくダークファンタジー。不遇な境遇を変えたいと願う、共感する仲間を集めて、魔法を有効に使えて、魔法だけに頼らず戦える魔法兵とし、偽り、謀り、欺きながら類い稀な魔法の才能と才覚で戦場を巡るアスラ。国同士の戦争で邪魔な英雄殺し、憲兵隊に依頼される犯罪組織壊滅など、持ち込まれる依頼に交換条件を持ちかけながら暗躍するアスラの突き抜けっぷりが際立っていましたが、彼女を慕う仲間たちもまたそれぞれキャラが立ってましたね。因縁もいろいろ明らかになってきて今後の展開が楽しみです。
「女王の靴」の新米配達人 しあわせを運ぶ機械人形 (カドカワBOOKS)
ゆいレギナ/夏子 KADOKAWA 2023年04月10日頃
武器と荷物を手に、モンスター蔓延る危険地帯を駆け抜ける運び屋『女王の靴』。愉快で過激な戦う配達人が集う運び屋に入社した新人フェイが、先輩と共に初任務へ向かうハートフルファンタジー。面倒見の良い副局長ゼータの下で見習いとして働き始めたフェイが、なぜかモンスターたちに妙に狙われる理由。サポートしてくれる先輩アキラや、フェイが仲良くしたいのにライバル視する同期のミツイ、オネエ言葉の先輩レヴィたちが抱える想い、そしてゼータやフェイが運び屋を志望した理由など、配送エピソードと絡めながら掘り下げられてゆく、魅力的な運び屋たちそれぞれの生き様と覚悟がとてもカッコよくて、そんな彼らの物語をまた読んでみたくなりました。
