少し前から #1日1文庫 のハッシュタグで読んだ本の中から1日1作品紹介するようにしていますが、このまま流して終わりなのもあれなので、ここから10日ごとにまとめていこうと思います。Twitterの紹介は140文字に収まるようあっさりめですが、こちらはもう少し長めの紹介です。
【#1日1文庫11日目】
緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)
自分を出せない性格に悩む学級委員長・由宇と「誰も仲良くしないでください」と衝撃的な挨拶をした転校生・緋紗子さんの出会い。偶然、緋紗子さんの身体の重大な秘密を知ったことで二人の関係が変わってゆく青春小説。学級委員長を押し付けられ両親が離婚の危機、幼馴染への恋心も封印していた由宇。秘密を抱えるがゆえに孤高を貫いていた緋紗子さんとの不器用な交流は微笑ましくて、だからこそままならないすれ違いがもどかしくもなりましたが、二人の出会いと育んだ友情がそれぞれにもたらした確実な変化の兆しは、とても素敵なものに思えました。
【#1日1文庫12日目】
契約結婚ってありですか (富士見L文庫)
契約結婚ってありですか 利害一致から始まる恋?
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紅原 香/さかもと侑 KADOKAWA 2018年03月15日頃
美容師を辞めて福岡に戻ってこいという両親を振り切るため、結婚相談所に駆け込んだ西依咲。切実な状況を訴えた目の前の相談員・成嶋玲司から利害一致の契約結婚を提案される新婚生活物語。良くも悪くもざっくばらんで素直な性格の咲と、人の機微に疎く神経質だという自覚はある玲司がルールを決めながら、職場の人招待だったり、義妹や幼馴染・両親の突然の襲来だったり、二人で生活していく中で一緒にいろんなことをこなしていくうちに、それぞれ心境だったり距離感も変わってゆく展開は良かったですね。全2巻。
【#1日1文庫13日目】
あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)
結婚を考えていた恋人に振られ、将来に不安を抱く持田麻衣。地元に帰ることを決めた麻衣が偶然高校のときのクラスメイト今井優人に再会、「恋のない結婚」を現実的に考えはじめる物語。高校時代の30歳になってもお互い独身だったら結婚しようという今井との冗談めいた約束。かつてお互いの恋を協力する関係だった二人の共同生活はしっくり来る部分もイライラする部分もあったりで、そんな二人が一つ一つ乗り越えて迎えたラストにはじんわり来るものがあって、積み重ねていったエピソードが見事に繋がってゆくとても素敵な物語だったと思いました。
【#1日1文庫14日目】
僕が僕をやめる日(メディアワークス文庫)
困窮し生きることに絶望した立井潤貴。そんな彼を救った高木健介の代わりに大学に通うようになった二年後、高木が突如失踪するミステリ。作家でもある高木との充実した共同生活、そして失踪から始まる突然の暗転。残された数少ない手掛かりと作品をもとに高木の過去を知る人に会い、その行方を追う立井が知ってゆく意外な繋がりと高木の壮絶な過去。彼らが置かれた環境の過酷さと、何度も絶望感を突き付けられる彼らの生々しい感情描写はインパクトがあって、繋がってゆく複雑な因縁とその結末に至るまでを描く著者の熱い想いで読ませる物語でした。
【#1日1文庫15日目】
レトリカ・クロニクル(メディアワークス文庫)
レトリカ・クロニクル 嘘つき話術士と狐の師匠
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森 日向 KADOKAWA 2015年02月25日頃
人間と獣人との戦いで命を落としかけたシンが、狐の話術士カズラに助けられて自らも話術士となり、狼の部族の若き族長の少女レアと出会うレトリック・ファンタジー。些細なきっかけから熊の部族と紛争状態にありながら、内部抗争状態にある狼の部族に乗り込むシンと、彼に助けられるだけでなく自らも成長していくレア、そして熊の部族若頭グスタフも交えて戦いの回避に奔走するギリギリな駆け引き、真摯な思いが心を動かす展開も緊張感があって少し切なくなる感傷めいた思いも感じる終わり方も良かったですね。現在2巻まで刊行。
【#1日1文庫16日目】
向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)
ストーカー対策員原向日葵19歳。実は元ストーカーの過去を持つ彼女が、接近禁止を言い渡された元恋人を殺人現場で見かけてしまい、再び運命が動き出すほろ苦青春ミステリー。容疑者とされた彼の無実を何とか証明したいと思うものの、すれ違いの結果として接近禁止になった過去から行動を制限されている向日葵。頭では理解していても強い想いに揺れる彼女の複雑な葛藤が痛いほど伝わってきて、その自らの思考に向き合うことが事件解決の伏線に繋がってゆく皮肉な結末でしたけど、前に進むことを決意した彼女の幸せを願わずにはいられませんでした。
【#1日1文庫17日目】
ことのはロジック (講談社タイガ)
書くべき言葉を見失った元天才書道少年の墨森肇。金髪碧眼の転校生・アキに一目惚れした彼が、彼女とともに校内で発生する言葉にまつわる事件を解決してゆくミステリ。好奇心旺盛なアキや仲間たちと一緒に挑む回し手紙の伝言ゲーム、存在しない幽霊文字、同人誌の不可解な改変、そしてアキに対する違和感。探し続ける「月が綺麗ですね」を超える告白の言葉。彼らの心境の変化に繋がってゆくひとつひとつのエピソードがまた絶妙で、明らかになった真実にしっかりと向き合い、想いを込めた回答を提示してみせた結末にはぐっと来るものがありました。
【#1日1文庫18日目】
アンハッピー・ウエディング(PHP文芸文庫)
幼馴染の史郎を一方的に恋慕い、彼との結婚を夢見る会社員の咲希。そんな彼女が妹の紹介で結婚資金を稼ぐために副業で結婚式の「サクラ」のバイトとして働く物語。同じサクラの百合香とともに臨む憧れの結婚式場で次々と起こる略奪婚、歳の差婚、毒親といったワケアリ結婚式の数々。長年の片想いでずっと近くにいるのに、なかなか見えてこない史郎ことシロの本音。これでもかとばかりに結婚の現実が突きつけられて、頻発するトラブルからひとつの構図が見えてきて、それでも結婚に憧れる咲希の真っ直ぐな想いとその結末は心に響くものがありました。
【#1日1文庫19日目】
虹を待つ彼女 (角川文庫)
優秀で予想できてしまう限界に虚しさを覚えていた研究者・工藤が、死者を人工知能化するプロジェクトに参加して、衝撃的な自殺でカルト的な人気のゲームクリエイター・水科晴を知る物語。過去の事件や水科晴のことを調べてゆくうちに、彼女に共鳴し惹かれてゆく工藤。重要なキーパーソン「雨」の存在と調査中止を警告する謎の脅迫。我が身が危険に晒されながらも諦めず、晴を人工知能で再現することに妄執する工藤の姿には鬼気迫るものがありましたが、真相を知った彼のほろ苦くも粋な決断は少なからず心に響くものがありました。
【#1日1文庫20日目】
ポップコーン・ラバーズ (集英社オレンジ文庫)
友人の紹介でミニシアターでバイトを始めた大学生・森園真広。彼が図書館で見かけた印象的な女性・明神みなもが実はバイト先で殺された被害者で、そんな彼女が周囲に現れるようになる物語。彼女と出会い共に過ごしてゆくうちにで変わってゆく森園。物語が進む中で明らかになるみなものこれまでの人生。淡々としているように見えて何だかんだで面倒見のいい森園と、恵まれないなりに懸命に生きてきたのに理不尽に殺されたみなもが最後に出会えて良かったと思う一方で、違った形で二人が出会うことができれば良かったのにな…とちょっぴり切ない気持ちになりました。