読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

等身大の苦悩や繊細な描写が光る相沢沙呼さんの11作品

当ブログは本の紹介を中心としたまとめ記事で構成されています。なのでブログで記事作るのにどういう切り口がいいのか、最近いろいろ試行錯誤しているのですが、その中で著者さん企画もありかな…?と構想にありました。今回はその第一弾として相沢沙呼さんの作品を紹介したいと思います。

 

【2019年11/3記事修正】

相沢沙呼さんは2009年『午前零時のサンドリヨン』で東京創元社主催の第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー、そこから「マツリカシリーズ」「小説の神様シリーズ」などのほか、印象的なミステリも絡めた青春小説、繊細な青春短編集を刊行している注目の作家さんです。19年に刊行した「medium 霊媒探偵城塚翡翠」はこれまでの集大成ともいえる鮮烈なインパクトがあって、ここからさらなる飛躍を期待しています。

 

 

1.medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

 

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎が出会った、霊媒として死者の言葉を伝える城塚翡翠。そんな彼女の霊視と論理の力を組み合わせて殺人事件に立ち向かうミステリ。殺された香月の後輩、招待された別荘で殺された先輩作家、女子高生連続の犯人を警察に協力する二人が翡翠の霊視と香月の論理で何とか解決してゆく展開で、けれど最後の連続殺人犯との対峙は、これまで積み重ねて来たものの何が虚で実だったのか分からなくなる急展開に繋がって、その何とも鮮烈で皮肉に満ちていた決着をいろいろと想起させるエピローグが際立たせていました。

2.マツリカ・マジョルカ (角川文庫)

マツリカ・マジョルカ (角川文庫)
 

冴えない高校生柴山が雑居ビルで一日中望遠鏡で観察している謎の女子高生マツリカと出会い、徐々に変わっていく物語。マツリカの理不尽な無茶ぶりに振り回されながらも、クールでミステリアスな彼女が気になって仕方ない柴山は、交流を通じて快活な同級生小西さんと絡むようになったり、目を背けていた辛い事実に向きあうようになったり、彼女が不器用なだけで一種のリハビリだったんですよね。上手く話せないのにマツリカさんの太腿注視し過ぎな柴山とか、著者さんの妙にこだわりを感じるリアルな太腿描写には苦笑いですが、安楽椅子探偵的な謎解きも面白いシリーズです。
【関連作品】「マツリカ・マハリタ」(角川文庫)、「マツリカ・マトリョシカ

3.午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

 

著者さんのデビュー作。不器用な須川くんが不器用なマジシャン酉乃さんに出会って、身の回りに起こる様々な事件を解決していく青春ミステリ。時にはうまくやろうとして失敗したりはあっても、最終的に事件を解決に導くことができたのは、酉乃さんや須川くんの、何とか事件を解決しようとする真摯な気持ちがあったからこそだと思います。途中残念なところもあったけれど、最後きちんと酉乃さんに言葉で思いを伝えた須川くんは、とてもカッコ良かったです。
【関連作品】「ロートケプシェン、こっちにおいで」(創元推理文庫)

4.小説の神様講談社タイガ

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)

 

作家としてデビューするも酷評されて書く自信を失っていた高校生・一也が人気作家の転校生・小余綾詩凪と出会い、彼女との小説合作を提案される青春小説。重い病気の妹のためにと思いながら、厳しい評価にネガティブになりがちな一也と、小説の力を信じていて彼に辛辣な詩凪。書く楽しさを思い出してゆく一也に突きつけられた残酷な現実はとても苦しかったですが、そんな彼が完璧に見えていた詩凪の苦しみに気づき、再び向きあおうと決意する姿は応援したくなります。作品を書くことに対するとても繊細で、強い想いを感じられる素晴らしい作品です。現在三巻まで刊行。

5.雨の降る日は学校に行かない (集英社文庫)

スクールカースト保健室登校…学校生活に息苦しさを感じる女子中学生たちの揺れ動く心を綴った連作短編集。短編の主人公は自分の居場所を見いだせない女の子たち。時が経てば分かることも、今見えている世界だけではなかなか分からないんですよね。誰もが不安を抱えていて閉塞感のある世界は些細なきっかけで変わる。周囲のストレートな悪意に葛藤しながらも向き合い変わっていこうとする少女たちを描いた物語は、雨上がりのようなこれから良くなる期待を予感させる読後感でした。スカートの長さとカーストを対比させてみせる視点もまた秀逸です。

6.ココロ・ファインダ (光文社文庫)

ココロ・ファインダ (光文社文庫)

ココロ・ファインダ (光文社文庫)

 

高校の写真部を舞台とした、女子高生たちの心の揺らぎとミステリーの物語。写真部へのスタンス、好きなカメラや性格も違う4人ですが、容姿にコンプレックスを持つミラや、自分らしさについて悩む秋穂だけでなくて、人気者のカオリや周囲と交わろうとしないシズもまた人知れず悩みを抱え込んでいました。そんな不安定な彼女たちがファインダーから見える風景や写真をめぐる謎をきっかけに、悩んでいるのが自分だけでないと気づいたり、等身大の自分を受け入れて前向きに生きるきっかけを見出していく描写には、素直に応援したい気持ちになれました。

7.卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫)

卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫)
 

一緒に住むようになった妹との距離が変わってしまった理由、入院している友人との訳ありなやりとりと顛末、蔵から消えた花瓶の犯人探し、死んだはずの祖母から祖父に届いた手紙の謎など、友情や姉妹、家族の絆の確かさを再確認するような短編集。相手のことを大切に思っているというその気持ちは、近しい存在だからこそいつの間にかわかりづらくなってしまっていて、きちんと言葉にして伝えることの大切さを思い出させてくれますね。謎解き要素としてはやや薄味でしたが、著者さんならではの繊細な心理描写にはらしさがよく出ている青春小説でした。

8.スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫nex)

スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫nex)

スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫nex)

 

近未来の街で起きている連続変死事件、女の子の間で流通しているピーキーという薬、噂される人狼の都市伝説。そして金髪ハーフの女子高生此花ねむりの際立った存在感。そんな彼女に魅了されたり、その秘密を嗅ぎつけて様々な人物が関わって話は大きく動いていきますが、退廃的で背徳感のある雰囲気を漂わせながら、孤独な彼女たちが惹かれてやまない存在に対する葛藤が、とても繊細な描写で描かれていました。自分の欲求に素直に向きあう彼女が印象的で、著者得意の描写は健在でしたが、今までと少しテイストの違う物語ですね。

9.緑陽のクエスタ・リリカ 魂の彫塑 (MF文庫J)

落ちこぼれだった魔術師学校を自主退学し、冒険者を目指すジゼルが姉を探す少女の依頼を受け、途上で多くの襲撃者と戦っていた少女・アルミラージを助太刀し、事件に巻き込まれてゆく物語。優しく困った人を見捨てられないジゼルが出会ったアルミラージもある組織を追っていて、それらがひとつに繋がってゆくミステリ要素もあるファンタジー。著者さんらしい登場人物たちと緻密に作り込まれた因縁、それらをうまく絡めて作られていくストーリーには大きなポテンシャルを感じました。

10.放課後探偵団 (書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー) (創元推理文庫)

放課後探偵団 (書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー) (創元推理文庫)
 

バレンタインの日、教室に戻った生徒たちが見たのは、教卓に積み上げられたチョコレートの山の謎を解く短編「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」を収録。

 

11.現代魔女の就職事情 (電撃コミックスNEXT)

 原作が相沢沙呼さん。修業のため仕事探しに見知らぬ田舎町へやってきた魔女・玉城禰子15歳の奮闘を描く物語。共存こそするものの、魔女という存在そのものが希少種となりつつある時代に生まれた禰子が直面する理想と現実のギャップ。特にやりたいことや夢もなく普通の高校生になりたかった彼女が知り合った同年代の友人たちとの繊細な距離感だったりやりとりだったり、不器用なりに奮闘する禰子の頑張りやそれを支えてくれる友人たちといった構図が良かったです。全5巻。

 

相沢沙呼 (@sakomoko) · Twitter 

相沢沙呼 - Wikipedia