今回は10月電撃文庫・GA文庫・TOブックス新文芸・DREノベルス・カドカワBOOKS・富士見L文庫の新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫の新作2点、続巻4点、GA文庫の新作2点、TOブックス新文芸の続巻1点、ツギクルブックスの新作1点、DREノベルスの続巻2点、カドカワBOOKSの新作1点、サーガフォレストの新作1点、富士見L文庫の新作1点の計15点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
がらんどうイミテーションラヴァーズ (電撃文庫)
運命の恋だと思った百瀬由衣に告白したものの、ものの見事に玉砕した鷲谷相馬が、同じく藤峰幸太郎に振られて美術室で暴れていた鳩羽彩音と出会う青春小説。諦めきれない想いと利害関係が一致して、身なりや自己中心的な性格を顧みて変革する必要性を突きつけられた2人が立てた、お互いの想い人を模倣して運命の相手を略奪する計画。本音ではありのままの自分が認められることを求めているのに、それとは矛盾したことを目指した結果は何ともカオスな関係で、けれど誰もが見た目そのままな性格であるはずもないんですよね。これまで気づかなかったことを知って心境や状況も変わっていく中、どうすべきなのかわからなくなり、迷走して遠回りもしながらようやく見出したかけがえのない存在が何とも印象的でしたね。
ふれる。 Spin-off Wanna t(ouch) you (電撃文庫)
ふれる。 Spin-off Wanna t(ouch) you(1)
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岬 鷺宮/ヤス/映画「ふれる。」 KADOKAWA 2024年10月10日
同じ島で育った幼馴染、秋と諒と優太。東京・高田馬場で共同生活を始めた、目指す方向は違っても親友な彼らの関係を描いた映画の公式スピンオフ小説。テレパシーにも似た力で趣味も性格も違う彼らを結び付けていた、島から連れてきた不思議な生物「ふれる」の存在。以心伝心だった3人の関係が、縁あって知り合った奈南とその幼馴染・樹里と共同生活をすることになったことで少しずつ変わっていく展開で、意外と上手くやっているようにも見えた共同生活が、ふとしたきっかけからすれ違い、崩壊する様子には慄きましたけど、そんな状況に直面した「ふれる」の暴走も描きながら、人と人とをつなぐその存在を通してかけがえのない3人の絆を改めて感じさせる結末は、これはこれでなかなか良かったです。
青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない (電撃文庫)
青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない(15)
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鴨志田 一/溝口 ケージ KADOKAWA 2024年10月10日
美織が《霧島透子》の真実に触れた時、咲太にも突きつけられたもうひとつの真実。最後の思春期症候群を解決するために動き出す第15弾。霧島透子騒動を解決するために麻衣さんに協力を仰ぐ一方で、咲太自身もまた思春期症候群に向き合う覚悟を決めたことで、今回は並行正解の問題を含めた怒涛の解決編になっていきましたけど、それぞれの様子を見ていると本来のあるべき形に戻っていったのかなと感じさせる一方で、いくつかの変わったこと、それでも変わらない揺るぎない思いがあって、途中間が空いたりもしてどうなることかと思いましたが、最終的に咲太の成長と卒業を最後までしっかりと見届けられて良かったです。
バケモノのきみに告ぐ、2 (電撃文庫)
バルディウムに現れた連続殺人鬼・ウィスパー。ロンズデーが過去に逮捕したはずの男が復讐にやってくる第2弾。エルとロンズデーの2人が《アンロウ》となったきっかけでもある連続殺人鬼ウィスパーの事件。一方、見た者は心神喪失となってしまう怪異・泣き女の噂に、クラレスが連れ込んできた女生徒が口にするかつてシズクが自殺に追い込んでしまったたった一人の親友。かつてシズクだけが気づいていなかった状況が明らかになったように、人間らしさと一緒に捨てたはずの過去に向き合う展開でしたけど、その中で彼女たち同士の関係も少しずつ変わっていって、最後で明らかになるアイリスの意外な関係性も、今後に少なからず波紋を投げかけそうです…。
千早ちゃんの評判に深刻なエラー2 (電撃文庫)
今日も働く根暗なぼっち少女・千早ちゃん。不運にも行く先々で現地生物や外部勢力との闘いに巻き込まれる彼女の受難が続く第2弾。本人は平和な依頼を求めて苦心しているつもりなのに、その成果から戦闘依頼ばかりが優先表示されるようになってしまった千早ちゃん。その中からアクタノイドの回収やクレップハーブの観測など、比較的安全な仕事を選んでいるはずなのに、なぜか抗争に巻き込まれ敵味方を混乱させるのは相変わらずで、とはいえ周囲と連携できずに最適解を選んで単身係争地に突っ込んで多大な戦果を挙げ続けたら、それは結果的に正解でもあちこちで警戒されるのも仕方ないですよね。懐柔のために専用機提供の話とかも出てましたが、ボマーに特化した専用機とか喜んでいいんでしょうか(苦笑)
悪役御曹司の勘違い聖者生活4 ~二度目の人生はやりたい放題したいだけなのに~ (電撃文庫)
悪役御曹司の勘違い聖者生活4 〜二度目の人生はやりたい放題したいだけなのに〜
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木の芽/へりがる KADOKAWA 2024年10月10日
周囲の勘違いから評価は上がり続け、国王陛下から【聖者】の称号を授かったオウガ。右腕に代わる義手を求め、ヒロインたちを連れ独立機械都市エンカートンへ向かう第4弾。この街で随一の工房を訪れ出会った、親子喧嘩の真っ最中だった工房長の娘ユエリィ。父と肩を並べ魔道具制作に携わりたい彼女の熱い想いと卓越した手腕を認めて、彼女に義手の制作を依頼して完成に向けて試行錯誤する一方、ヒロインたちの想いが垣間見えるそれぞれとデートする展開も良かったですけど、一度は心が折れかけていたユエリィが魔龍襲撃で再起して、完成した義手を手に入れたオウガの熱い戦いがあって、そこに至るまでの様々な想いもなかなか効いていましたね。ここからフローネとの戦いがどうなるのか続巻が楽しみです。
光属性美少女の朝日さんがなぜか毎週末俺の部屋に入り浸るようになった件 (GA文庫)
光属性美少女の朝日さんがなぜか毎週末俺の部屋に入り浸るようになった件
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新人/間明田 SBクリエイティブ 2024年10月13日頃
ゲーマーの闇属性陰キャオタク高校生・影山黎也が、偶然に乗り合わせたバスで同じゲーム好きだと知ったことで、光属性陽キャ美少女・朝日光と仲良くなってゆく青春ラブコメ。人気者でテニス界期待の選手としても活躍する光の存在感に気後れしながらも、彼女の真性ゲーマーっぷりを見せつけられて、週末のたびにゲームをするためやってきて黎也の部屋へ入り浸る日々を許容する黎也。積み重ねた日々がかけがえのないものだからこそ、入り浸る理由が気になるのは必然で、知れば知るほど立ち位置の差を思い知らされ、葛藤する彼の選択は難しかったですが、それでも彼の存在と声援が悩める彼女の乗り越えるきっかけになってゆく2人の絆がなかなか良かったですね。光のお兄さん意外なウブっぷりも効いていました。
誘拐されそうになっている子を助けたら、お忍びで遊びに来ていたお姫様だった件 (GA文庫)
誘拐されそうになっている子を助けたら、お忍びで遊びに来ていたお姫様だった件
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ネコクロ/Noyu SBクリエイティブ 2024年10月13日頃
夏休みの真っ只中に誘拐されそうになっていた少女ルナを救い、数日匿った平凡な高校生の桐山聖斗。夏休み明けに転校してきた彼女と再会するイチャ甘青春ラブコメ。同じ屋根の下で過ごす中で意外と甘えん坊でぐいぐいくるルナに惹かれていく聖斗。始業式に留学生として再会したルナは、実はとある国の王女で、さらには聖斗が婚約者だと爆弾発言する急展開で、外堀からしっかり埋めていって、周囲に関係を認めさせてゆくルナの意外なしたたかさが際立っていましたけど、前向きに受け止めて婚約者として始まった2人の関係が、これからどうなるのか今後の展開が楽しみですね。いったんは引き下がったもののかつての想い人で義妹になった幼馴染や、ルナに婚約破棄された元婚約者の動向も気になるところではあります…。
ラインおじさんと一緒に向かうお母さんの故郷への旅。しかしすぐ寄り道したがるラインおじさんの提案で思わぬ騒動に巻き込まれてゆく第4弾。狼のレンとも再会して憧れのレガ山脈にも連れていってもらった先で遭遇した、隣国の内乱から脱出した貴族の姉弟と主従との邂逅。そして温泉街に住むガンツのところに運び込まれた、馬車に轢かれた男の子。レン視点から見たミーシャを隠してしまった森の神様のいたずらエピソードもありましたが、衰弱した女の子をいかに救うのか、輸血も含めた外科手術と、ミーシャに厳しく真摯な指導をしながらも、何だかんだで姪のお願いに甘くてついフォローしてしまうラインおじさんが印象的でした。アンジェリカとガンツの今後も気になりますね。
公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。 (ツギクルブックス)
公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。
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池中織奈/RAHWIA SBクリエイティブ 2024年10月10日頃
魔術を使えず家族から疎まれ、政略結婚として嫁いだ先でも事実無根の冤罪で離縁された公爵家の次女クレヴァーナ。実家からも勘当されて隣国へ向かう第二の人生の物語。以前本で読んで憧れていた隣国ラスファーの知識の街エピスにある図書館で縁あって働き始めたクレヴァーナが、優秀さを認められていく中で出会った王弟カウディオとの交流。彼女が頑張りを積み重ねたことで多くの人に認められつつある中、一転ここでもかつての悪評に苦しめられる展開でしたけど、多くの人と出会い様々なものに触れてきた彼女が、そこからあえて困難に立ち向かう覚悟を決めて覆していく評価と、そんな彼女の頑張りを支えてくれる人たちもいて、誇りを取り戻して幸せを引き寄せてみせたその結末がとても素敵な物語でした。
無才王女、魔王城に嫁入りする。 ~未来視の力が開花したので魔族領をお助けします!~ (カドカワBOOKS)
無才王女、魔王城に嫁入りする。 〜未来視の力が開花したので魔族領をお助けします!〜(1)
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高 文緒/昌未 KADOKAWA 2024年10月10日頃
能力がなく役立たず扱いされ、使用人のような暮らしをしていた王女カトリーヌが、ある日突然和平のために魔族の王子に嫁がされてしまうファンタジー。魔族に嫁ぐことを嫌がった義妹の身代わりとして嫁いだ先は、異形の生き物が溢れる恐ろしい土地と聞いていたのに、明るい首なし騎士や誠実なフェリクス王子に出迎えられ魔王や王妃も歓迎ムード。可愛らしいチェリーたちと一緒に家事に邁進したり、へんてこだけれど楽しく温かな日々を過ごすうちに、封印されていた未来視の能力を開花させて貢献する一方で、偏見まみれの実家側は相変わらずどうしようもない感じでしたけど、不器用なフェリクスや周囲の人々にも大切にされて、自分の居場所を得たカトリーヌが幸せそうでなかなか良かったです。
ジジババ勇者パーティー最後の旅2 ~老いた最強は色褪せぬまま未来へ進むようです~ (DREノベルス)
ジジババ勇者パーティー最後の旅2 〜老いた最強は色褪せぬまま未来へ進むようです〜
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福郎/ジョンディー ドリコム 2024年10月10日頃
知古を訪ねる最後の旅でサザキとララの息子が先生をやっているグリア魔術学園に到着した元勇者パーティー一行。人生最後の学園で奇妙な事件に巻き込まれる第2弾。正体を隠してのんびりと授業参観をしながら、自分たちの偉業を授業で聞いて恥ずかしい思いをしたり、魔の者たちとの大戦を終わらせたことでもたらされた、学生たちの青春する姿を見て満足する一行。一方で自分が間違っていなかったことを証明したい者による大魔神王の復活を目指す動きがあって、それに師事した弟子の学生や学園が巻き込まれていく展開に、密かにかつての勇者たちが若者たちの日々を守るために再び立ち上がり、パーティーで復活した魔王に立ち向かう熱い展開はなかなか良かったですね。
処刑された悪女は、大国で皇妃の座を掴む2 ~毒杯を飲み干したあとに、やり直しの物語がはじまりました~ (DREノベルス)
曽根原ツタ/雲屋ゆきお ドリコム 2024年10月10日頃
前代未聞の皇妃選定延長でエリザベートと再び争うことになったウェスタレア。予算内で半年後までに造花を集めることを告げられる第2弾。改めて行われる最終試験はレイン公爵家の後ろ盾があるエリザベートに明らかに有利な条件。それに疑問を覚えたウェスタレアは、そこに込められた皇帝の真意を考えて、エリザベートの父親で悪の貴族と噂のレイン公爵の所業に目を向けていく展開で、どこか抜けた部分はあっても困った人々を放っておけず、皇妃を争うライバルすら救う彼女が、私欲を満たすために娘さえも利用する悪の貴族に立ち向かっていく姿と、抜け目なく目的も達成した上で自らが並び立つにふさわしいと証明してみせた結末は、とても彼女らしいなと思えてなかなか良かったです。
魔女姫クレアは人形と踊る1 (サーガフォレスト)
逃亡中の老騎士たちに赤ん坊を託されて、王国と帝国の間に広がる大樹海で弟子として育ててきた黒き魔女ロナ。成長した見習い魔女クレアが人形遣いとして成長するファンタジー。日本の劇団で人形繰りをしていた前世の記憶も活かしながら、魔女として才能の片鱗を見せるクレアが、師匠のロナと訪れた領都でセレーナという少女と出会い、弟子仲間として切磋琢磨しあえる仲の良い関係になっていっていく一方で、怪しげな思惑で動き出した帝国の影響で遺跡探索に協力したりと、少しずつ外の世界の関わりも増えていく展開で、その過程で冒険者の実力者たちとも知り合いになって、いわくありげな生い立ちも気になる彼女がこれからどう成長していくのか、今後の展開が楽しみですね。
後宮の人形師 ひきこもりの少女、呪術から国を救う。 (富士見L文庫)
後宮の人形師 ひきこもりの少女、呪術から国を救う。
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猫田 パナ/薔薇缶 KADOKAWA 2024年10月15日頃
国で唯一、命ある人形「魂人形」を作ることができる黄鈴雨。人が怖くて祖母のくれた猫の仮面がないと人と話せない彼女が、勅命で後宮で働きはじめる中華風ファンタジー。帝からの「不幸続きの後宮の妃たちを守れ」との勅命を受けて、官吏の李長雲に世話を焼かれながら工房で人形作りに勤しむ鈴雨。喋らず仮面を付ける姿ゆえに嫌がらせを受けていたところを徳妃に救われ、そこから仕事を認められ、人の繋がりも増えていって少しずつ彼女の世界が広がっていく展開で、そこから明らかにされてゆく後宮の事件の真相は何とも皮肉な構図でしたけど、それでもいつの間にか増えていた大切な人たちやかけがえのない居場所を守るために奔走して、陰謀を見事阻止してみせた彼女の姿は確かな成長を感じさせてくれました。