今回は8月のMF文庫J、ダッシュエックス文庫、オーバーラップ文庫、TOブックス新文芸の新刊感想まとめです。内訳はMF文庫Jが新作3点、続巻1点、ダッシュエックス文庫の続巻1点、オーバーラップ文庫の新作3点、続巻4点のTOブックス新文芸の新作1点計13点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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ソフィア、君は死んでいないのか? (MF文庫J)
風深 模杳/Noyu KADOKAWA 2024年08月23日
魔法学園入学式当日の海難事故で亡くなったとの報が届いたフィンランド王国の第四王女ソフィア。実感もないまま彼女の死体も確認したはずなのに、彼女の婚約者・火神陽太の元に彼女が現れるファンタジーミステリ。研究者を退いて学園都市で青春を謳歌するため、同棲するはずだった新居で彼を待っていたソフィア。けれど事故の記憶がなく、なぜか学園都市外には出られない彼女は果たして本物なのか。入学した学園生活では様々な出会いがあって、彼女の双子の妹・リサの協力も得ながら、彼女の正体と海難事故の真相の様々な可能性を検証する陽太に対して、不安を抱くソフィアと再び向き合うために勝負を挑む展開でしたけど、格上の彼女相手に苦戦しながらも最後まで諦めず、ありったけの想いをぶつけてみせた熱い戦いとその結末はなかなか良かったですね。
余命わずかなキミと一緒に、初恋を探しに行く (MF文庫J)
鳴海 雪華/popman3580 KADOKAWA 2024年08月23日
余命宣告をされたクラスメイト・暁月杏の寿命を延ばすために、密かに協力している高校生の柊透葉。そんな彼が暁月から思わぬ提案をされる青春小説。明るく可愛く真面目な優しい優等生で、余命宣告から既に三年が経過した暁月が密かに抱える、月に一度エモいと感じた想いをカゲに食らわせないと死んでしまうという契約。唯一彼女の秘密を共有して一緒に深夜のプールに忍び込んだり、夕暮れの教室に黄昏れたりしていた透葉と暁月の関係の変化。積み重ねたかけがえのない思い出が消化されていく中、けれど暁月が生き延び続けるための異質な手段に代償がないわけがなくて、それでも自分は生きるべきなのか。悩みに悩んだ末に彼女が選択したその結末の意味を考えずにはいられませんでした。
ヤクモとキリヱ (MF文庫J)
幼い頃から最恐の怨霊キリヱにとり憑かれ、まともな人生が送れていない山田厄雲が、海外由来の外来呪に対処する日神代寮と名乗る組織と邂逅するバトルストーリー。外せない仮面に呪われ、これまでまともな職にありつけなかった厄雲。彼が日本古来の土地神や妖怪、霊を食い荒らす超常的存在である外来呪に対する個性豊な霊能力者たちと出会う展開で、そんな中でも相変わらずマイペースで、スネイルヘッドやブギーマン、グレゴールといった強力な外来呪相手に「殴った方が早い」とぶっ飛ばしてしまう厄雲の存在はやはり異質でしたけど、彼に取り憑いているちょっとヤキモチ焼きな怨霊キリヱとの関係もなかなか面白かったですね。続巻では他のキャラたちの掘り下げにも期待しています。
ド屑2 (MF文庫J)
高校時代に別れた元カレ・晴人を忘れられない占い好きな大学生・祈里。報われないと諦めかけていた片想いが、サークルの先輩・智也に相談したことで事態が動き出す第2弾。同じ大学に合格してかつてと同じように親しく声をかけてくれる晴人。しかし祈里の他にも距離の近い女子愛里がいる状況で、アドバイスを受けて実践したことで変わっていく状況。祈里と晴人それぞれの視点で描かれる登場人物たちの様子や、物語の構図はガラリとその様相を変えていきましたけど、それ以上に一連の状況とその結末の種明かしとなる最後の答え合わせで明らかになってゆく、2人の関係性にきっかけを加えながら観察していた彼らの特異性が際立っていました。
山本君の青春リベンジ! 2 (ダッシュエックス文庫)
柏木さんととの二人三脚で過酷な闘病を乗り越え、見事DeBSを克服した山本流伽。経過観察の日々を送る中、同じ病院に入院中の少女リリアと出会う第2弾。克服した結果、街を歩けば多くの女性が足を止め振り返る美貌、陸上の代表選手をも凌ぐ脅威の身体能力を得てもどこか無自覚な流伽。闘病を乗り越えた柏木さんと夏祭りデートしたり、頑ななリリアに心を開いてもらうべく、同人誌を貸したり、一緒に料理やスポーツをしたりと粘り強く接していく一方、彼女の病気の正体も明らかになっていく中で、無茶を貫き通した流伽の覚悟もありましたけど、激動の展開を乗り越えて帰国した彼の、あの激変っぷりを見たらそりゃそうなるよなあ…と思ってしまった結末はなかなか微笑ましかったですね。
アメリカ帰りのウザかわ幼なじみが今日も俺を踊らせてくる 1 (オーバーラップ文庫)
六海刻羽/こむぴ オーバーラップ 2024年08月22日
とある理由で大好きだったダンスを辞めてしまった舞織流斗。夏休みに六年ぶりに再会したアメリカ帰りの幼馴染優月・アーリング星蘭と再会する青春小説。迷子の幼女に声をかけていた流斗を誤解して、いきなり尻に蹴りを入れるとかいう最悪な再会を果たして、ホームステイで彼の家に一緒に住むことになった星蘭。彼女はすっかり美少女に成長して人気モデルとなっていて、けれどそんな彼女が素の笑顔を見せることができるのは相変わらず流斗の前だけで、彼女と約束していたダンスをなぜ辞めてしまったか、その過去も明らかになりましたけど、それでも彼女を笑顔を取り戻すためにもう一度立ち上がってみせる流斗の覚悟が眩しかったですね。ダンスパートナーだった乃羽の逆襲にも期待しています。
天下の大悪人に転生した少年、人たらしの大英雄になる 1 (オーバーラップ文庫)
千月さかき/もきゅ オーバーラップ 2024年08月22日
中華風RPGゲーム『剣主大乱史伝』の世界に転生した少年・黄天芳。天下の大悪人として倒されることを思い出し、破滅回避のため行動を始める悪役転生ファンタジー。10年後に傾国の悪女となってしまう義妹・柳星怜、自らの破滅を回避するためにゲーム知識を活用しながら努力を重ね、秘めた才能を開花させていく天芳。星怜と仲良くなって慕われるようになり、本来敵対するはずの最強の武術家を師匠として力を付けて、正ヒロインも味方につけていく彼の行動は、原作の展開にだいぶ影響を及ぼしていろいろ変わってきているように感じますが、思わぬ因縁も生まれたり、未だ見えていない真相もありそうで一筋縄ではいかなそうですね。ここからどんな展開が待っているのか続巻が楽しみです。
ギャルの自転車を直したら懐かれた 1 (オーバーラップ文庫)
いつもの帰り道、クラスの美人ギャル溝口星架がチャリで横転しそうになっている場面に遭遇した沓澤康生。チャリの修理をきっかけに彼女に気に入られて、だんだんと日常が変わっていく青春ラブコメ。チェーンの修理作業を見て、手先の器用な康生やしっかりと自分を持っている彼の生き方を素直に尊敬し、興味を持つようになる星架。思わぬきっかけから彼との意外な繋がりも明らかになって、(特に星架側が)俄然盛り上がっていく展開でしたけど、修理してくれたお礼のご飯を奢るためにデートしたり、体育祭での出来事から彼女のことを知っていって、どこか違う世界の人間だと実感がなかった康生の意識も少しずつつ変わってきましたね。時にはドキドキしながら、焦らずじっくりと積み上げていく2人の関係がとても楽しみです。
悪役令嬢はしゃべりません 2.漆黒の駒と創り出された異形 (オーバーラップ文庫)
由畝 啓/ミユキルリア オーバーラップ 2024年08月22日
解呪で声を取り戻したものの、身を守るために相変わらず喋れない非力な公爵令嬢の振りを続けるリリアナ。ライリーの地方視察に同行した彼女は隣国からの侵攻の影を察知する第2弾。繰り返される魔物襲撃、陥れられかけた騎士団長たちや拘束された魔導省副長官、そしてリリアナの前に現れた最強の刺客。俗物たちも上手く利用しながら、不安定な国内に混乱をもたらそうとする動きが見え隠れする状況で、全貌は未だ見えないながらも原因を探り、動かせる手駒を増やしていきながら、打てる手を打っていくリリアナが印象的でしたけど、むしろ彼女の思惑とは裏腹に、年齢不相応に冷静でその秘めた実力を垣間見た王太子ライリーや有力貴族たちの間で、どんどん彼女の評価が高まっていってしまうのはもう仕方ないですね(苦笑)
真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます 2 (オーバーラップ文庫)
アラサム/刀 彼方 オーバーラップ 2024年08月22日
契約精霊なしで学位戦での激闘に勝利を収めたものの、周囲の勘違いをさらに助長させたローク。邪霊が封印された祠のメンテナンスへの同行を学院から依頼される第2弾。学園に侵入した謎の闇組織の襲撃者を何とか撃退し、その邪霊の解放を企む目的が明らかになったことで依頼を受けて祠へ赴いたロークたち。そこで対峙したなぜか邪霊と契約を成功させた強力な力を持つ謎の男ホーンテッドとのギリギリの激闘、そしてそこからヒントを得たロークの試行錯誤があって、その成果を見せることになった学年3位のケイとの激闘は、これまでとはまた違う意味で今持てる力を使い切ったギリギリの戦いで熱かったですね。確かな成長を感じる一方で、ますますカオスな評価になってきたこれからの展開が楽しみです。
幼馴染たちが人気アイドルになった 3 ~甘々な彼女たちは俺に貢いでくれている~ (オーバーラップ文庫)
くろねこどらごん/ものと オーバーラップ 2024年08月22日
自身と同じく働きたくないを標榜する夏純紫苑の悩みを無事解決した葛原和真。一件落着したのもつかの間、担任のユキちゃん先生から相談される第3弾。間近に迫った球技大会に向けてクラスをまとめてほしいという先生からの依頼を、抜け目なく条件付きで承諾した和真。「ダメンズ」のリーダー春風舞白からネットで匿名相談を受ける一方でリアルで邂逅したり、紫苑からの依頼やすぐヤンデレ化する雪菜&アリサも絡めたカオスな展開でしたけど、言動や発想が残念な上にやる気がないだけで、和真は基本的にスペック高いんですよね(苦笑)しかし正体が和真だと気づかれないまま、本人に和真のことを相談する状態になっている舞白は、垣間見える言動があれはあれでヤバそうなのがまた…。
凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ 4 (オーバーラップ文庫)
味山只人が死んだ後も続く人知竜の侵蝕。地獄と化したバベル島に耳の怪物・耳男と成り果てた只人が立ち上がる第4弾。追い詰められつつある状況で耳男に提示される、何かを選べば何かを諦めざるを得ない究極の選択。それでもそんな選択肢を否定して、どこまでもありふれたご都合主義最高のトゥルーハッピーグランドエンドルートを目指す味山が戦場を蹂躙する展開で、絶望的な状況に諦めつつあった人々を困惑させて、希望をもたらしていく姿には笑いましたが、大規模魔術式を発動させた来瞳もミサイルも協力して何とかしてみせた只人の覚悟が圧巻でしたね。でもそれで良かった、めでたしめでたしで終わらないあたりが著者さんだなと思いましたけど…。
八針来夏 TOブックス 2024年08月17日頃
容姿と王国最強の武勇で名を轟かせた醜女将軍ローズメイ。婚約者の王太子が騙されて謀略で命を散らしながら、神の気まぐれで絶世の美女として蘇るファンタジー。その圧倒的な力はそのままに絶世の美女として生まれ変わったローズメイ。その力で龍を殴り倒して生贄の少女を救い、圧倒的なカリスマでならず者や敵将の心さえも打ち、配下に志願する者も現れる傾国の美女(物理)として、出会った人から様々な反応を引き出す快活な彼女の存在感は圧巻でしたけど、民を虐げる貴族を懲らしめて、噂が噂を呼んで祖国の仇の帝国にも目をつけられてゆく彼女がこれからどんな活躍を見せてくれるのか、今後の展開が今からとても楽しみです。

