今回は10月角川スニーカー文庫・HJ文庫・講談社ラノベ文庫・9月KADOKAWA新文芸の新刊感想まとめです。内訳は角川スニーカー文庫の新作3点、続巻3点、HJ文庫の続巻5点、講談社ラノベ文庫の新作1点、KADOKAWA新文芸の続巻2点の計14点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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死神公女フリージアは、さよならを知らない (角川スニーカー文庫)
死神公女フリージアは、さよならを知らない(1)
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綾里 けいし/藤実 なんな KADOKAWA 2024年10月01日
『死』を学ぶために現世を旅をする死神公女フリージア。付き人の《人の死期がわかる》異能を持つ黒朗夏目と一緒に、様々な人間の『死』を看取ってゆく連作短編集。異世界の中でも高位な存在であり、現世の『死』を知りたいと願った彼女が、特権を活かしてコクローとともに目の当たりにしてゆく、祖母に最後の想い出を残したい青年、預言師の死の宣告、異世界珍味の試食、宿りの花。やたら食うフリージアのシュールな描写とのギャップには苦笑いでしたけど、これまで寿命という概念と無縁で、人間と親しくなったことがなかったから気付かなかった彼女が、突然訪れた最期にようやく全てを理解した心境の変化は劇的で、紆余曲折の末に彼女が辿り着いたかけがえのない幸せが印象的な物語でした。
あの頃イイ感じだった女子たちと同じクラスになりました (角川スニーカー文庫)
あの頃イイ感じだった女子たちと同じクラスになりました(1)
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御宮 ゆう/えーる KADOKAWA 2024年10月01日
「イイ感じ」という感覚がピンとこない高校生吉木涼太。彼とかつてイイ感じの雰囲気になった3人の女子の未練と後悔を救ってゆく青春ラブコメ。転校してきて再会した小学生時代の幼馴染・二階堂麗美、気の置けない女友達ギャル柚葉由衣、マイペースな受験塾仲間だった花園優佳。かつて涼太と両想いだった彼女たちが再び同じクラスに集まったことで、再び動き出す燻り続けていた未練に対する想い。無人の教室や放課後の街デート、夜の自宅といった場所で彼女たちと積み重ねるかけがえのない時間と想いがあって、想いを自覚していった涼太とヒロインの物語としてはいったん決着しましたけど、それでは終わりそうにもない雰囲気のヒロインもいて、これからの物語がどう動くのか続巻が楽しみです。
エロゲの悪役に転生したので、モブになることにした (角川スニーカー文庫)
エロゲの悪役に転生したので、モブになることにした(1)
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時雨 もゆ/ういり KADOKAWA 2024年10月01日
気が付けば大人気エロゲ『そしてセカイはあい色に』の破滅を辿るクズ悪役キャラ錦小路楓として転生してしまった主人公が、その人生を変えていくエロゲ転生ハーレムラブコメ。ゲームが進めばどんなルートでも待っているのは破滅というクズ悪役キャラ錦小路の状況から逃れるため、極力ヒロインたちと関わらず遠巻きに見守りながらモブに徹することを決意する主人公。しかしヒロインがたびたび窮地に陥ってしまう状況を放っておけず救ったり、図書委員として一緒に地道な仕事を続けたり、家出したところを救ったりなど、生来のお節介でヒロインたちにむしろ慕われるようになってしまう展開で、彼の行動を観察する本来の主人公・才田もどうも本来とは違う思惑で動いているようですが、今後の動向が気になるところです。
彼女にしたい女子一位、の隣で見つけたあまりちゃん2 (角川スニーカー文庫)
彼女にしたい女子一位、の隣で見つけたあまりちゃん2
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裕時悠示/たん旦 KADOKAWA 2024年10月01日
クラス1の美少女の親友、陰の薄い薄葉あまりと互いの恋を応援する協力関係となった地味すぎる男子・福助。そんな2人の甘酸っぱい関係を描く第2弾。良い子すぎるあまりの魅力をもっと他の人にも知ってほしい福助が、結愛と訪れた夏祭りの会議で見つけた「浴衣コンテスト」開催。一方、自分が憧れているのは勇星ではないという誤解を解きたい気持ちと、今の関係を壊したくないと悶々とした日々を送るあまり。そんな2人の様子を傍から見ていて、あまりに一番近い親友ポジ、そして気になる男の子という意味でも複雑な心情を抱くようになってゆく結愛、という構図がなかなか興味深かったですけど、誤解したままながらも着々と絆を育む初々しい距離感の2人がなかなか微笑ましかったですね。
捨てられエルフさんは世界で一番強くて可愛い!2 (角川スニーカー文庫)
捨てられエルフさんは世界で一番強くて可愛い!2
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月夜 涙/にじまあるく KADOKAWA 2024年10月01日
ゲームの際に世界の救済に最も貢献した六大ギルドの会議でアヤノが告げた今の絶望的な状況。元人気声優エルフが、歌って踊って世界を救う第2弾。このままプレイヤーが減り続ければ、グランドキャンペーンに挑む前に詰むという状況で、この世界に娯楽と希望を生み出し、現実世界に戻ろうとするプレイヤーを減らすためにアヤノが選んだ手段は元声優ハイエルフとトップVtuberの夢の共演ライブ。このゲーム世界の思わぬ死因の1位には言われてみれば確かにそうだよなと納得しましたけど、クリア困難と思われたゲームの攻略条件にも、思い込みによる前提を崩して活路を見出し、意地悪な女神のミッションを攻略してみせた発想の転換がなかなか面白かったです。
クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった7 (角川スニーカー文庫)
クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった7
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たかた/日向 あずり KADOKAWA 2024年10月01日
季節は秋口。朝凪海と前原真樹が友達になってから一年が経過して、順調にバカップル化が進む中、なぜかニーナが海の前で真樹を堂々と花火大会に誘う第7弾。結局いつもの皆で行くことになるものの、夕の様子も少し挙動不審で、先日の夏休みや体育祭での出来事も重なって、浮かび上がってゆくニーナと夕のギクシャクした関係。2年生になって高校卒業後のことも視野に入ってくる状況で、夕の進路や初恋模様が思わぬ波紋をもたらしていく展開でしたけど、その点、真樹は良くも悪くも優先順位がハッキリしていて微塵もブレていないですし、理性的に考えてどうにかなるものでもないので、結局本人がどこかで折り合いつけるしかないんですよね。上手い感じに関係を再構築していけるといいですけど…。
-インフィニット・デンドログラム-22.星辰揃いしとき (HJ文庫)
<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラムー22.星辰揃いしとき
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海道左近/タイキ ホビージャパン 2024年10月01日頃
ギデオンで開催されていた〈トーナメント〉もついにクライマックス。王国最強の決闘王者フィガロの優勝が確実視されていた最終日の舞台で、誰もが想定しない事態が発生する第22弾。様々な思惑の結果として、王国にいるはずのない【殲滅王】アルベルトと激突することになったフィガロ。一方、ジュリエットがギデオンの街で出会い、意気投合したのちに友人となった配信者が実は【嫉妬魔王】ジーで、レイたちと共闘する形で闘技場を賭けて激闘を繰り広げることになってゆく展開で、最終日はイレギュラーなキャラの強引な行動を起因とした思わぬ展開が待っていましたけど、フィガロとアルベルトの激闘はもとより、ジュリ、マックス、チェルシーと力を合わせながら戦うレイという構図もなかなか楽しかったですね。
-インフィニット・デンドログラム-SP.1 南海編(上) (HJ文庫)
海道左近/黒田ヱリ ホビージャパン 2024年10月01日
【屍要塞アビスシェルダー】討伐を目指すグランバロアの冒険船団の若き女船団長リエラが、海を漂う不審なクマの着ぐるみを拾うスピンオフ。数多の人々を飲み込んだ怪物を討伐するべく、団員たちの反対を振り切って討伐しようとするリエラ。味方も少数で追っ手もかかり、敵も強大という絶望的な状況でシュウに助けられるという運命的な出会いを果たすストーリーで、シュウが放浪していた時代のエピソードは今後もいろいろ出てきそうですが、数多の人々を飲み込んだ怪物を討伐するべく、団員たちの反対を振り切って討伐しようとするリエラ。味方も少数で追っ手もかかり、敵も強大という絶望的な状況でシュウに助けられるという運命的な出会いを果たすストーリーで、シュウが放浪していた時代のエピソードは今後もいろいろ出てきそうですが、彼らに絡んでくる巨大艦が大好きなミリオタ超級<建造王>ヤマモトのウザさが半端なかったですね(苦笑)何だかんだで彼らとも力を合わせてアビスシェルダーに挑む展開になっていくんでしょうか。
精霊幻想記 26.虚構の在処 (HJ文庫)
賢神リーナが仕込んだ結界の効果により、遂に大切な人たちとの絆を取り戻すことが出来たリオ。皆と喜びを分かち合う中、彼は美春に憑依したリーナから重要な助言を授けられる第26弾。思ってもみなかった提案を素直に消化しきれないまま、リオから関係者に語られる勇者の性質。一方、レストラシオンの先行きに苦悩し、リオを何とか自陣営に引き込もうと画策するユグノー公爵の動きに端を発する騒動と結末。久しぶりに親交を温めたリオやヒロインたちの様子が楽しそうで良かったですが、思わぬ形で蒸し返された過去の一件もこれでようやく決着ですか。美春の覚悟が定まるかどうかも気になるところですが、重い責任を負って悩める例の彼女にも救いがあるといいんですけどね…その決断の行方が気になるところではあります。
孤高の王と陽だまりの花嫁が最幸の夫婦になるまで 2 (HJ文庫)
孤高の王と陽だまりの花嫁が最幸の夫婦になるまで 2
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鷹山 誠一/ファルまろ ホビージャパン 2024年10月01日
庶民育ちな王女アリシアの温かさに癒されていく孤高の王ウィルフレッド。次代の王後継者を確立するため、ウィルフレッドの甥アーサーに白羽の矢を立てる第2弾。隣国に踊らされた弟を失ったことで、新たな後継者確立の必要に迫られた2人。幼く聡明ながらどこか陰のあるアーサーを、まるで母のように接するアリシアと一緒に見守るウィルフレッド。その関係が温かいからこそ苦悩を深めていくアーサーという皮肉な構図で、実母の残念っぷりが際立っていたものの、どうするのがいいのかと迷いながら、闇の深いアーサーと懸命に向き合う2人が絆を深めてゆく様子もなかなか良かったですし、なぜ相手の言動に嫉妬してしまうのか、自覚に乏しいままお互いにますます惹かれていく様子も微笑ましかったです。
ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった 3 (HJ文庫)
ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった 3
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昼行燈/福きつね ホビージャパン 2024年10月01日
アカリとアオという仲間も増え、活動を活発化させていく配信事務所『陰陽』。そんなある日、とあるダンジョンで妖怪が暴れる事件が起きる第3弾。アカリの家の古い蔵を開けてみた配信をして平安時代に使っていた道具を見つけたり、アオの術式を魔改造したりと、常識はずれの大バズリを繰り返していたソラ。今回出会った妖怪・天狗センの正体は何とも可愛らしかったですけど、どんどん取り込み仲間を増やして賑やかになってゆく『陰陽』は、彼らをプロデュースするサクヤもますます欠かせない存在になっていて、ソラの足りないところを上手く補っていますね。それぞれの特色を活かした配信はますます盛り上がりそうで、今後の展開が楽しみです。
最果ての聖女のクロニクル (講談社ラノベ文庫)
墜落の危機に瀕する天空王国フォルトゥナ。陰謀に気づき、逆に異例の聖女狩りに追い詰められた聖女サラの前に時の賢者ハルトが現れるファンタジー。聖女と相容れない女神を否定する偏屈者ハルトの素性を知った上で契約を結び、気まぐれな彼に助けられながら宝珠を使った王太子の野望を打ち砕くために立ち上がるサラ。そこで明らかになっていく天空に浮かぶ王国フォルトゥナの背景、そして教会<ノヴァ派>が密かに進めていた進める方舟計画。そしてかつて共に聖女を目指し競い合ったアニマとの再会と激突があって、窮地に陥っても諦めないサラの熱い想いに誰もが心を揺さぶられて、いろいろ意外な展開も待っていましたが、キャラも良く動いて可能性も広がる今後の展開が楽しみです。
アラサーがVTuberになった話。5
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とくめい/カラスBTK KADOKAWA 2024年09月30日頃
デビューして早8ヶ月の神坂怜。因縁あるVtuber事務所所属で「狂犬」と呼ばれている女性VTuber犬神狂衣嬢がなぜか彼に突然DMを送ってくる第5弾。うっかり人生相談をして3時間も話を聞いてもらううちにすっかり怜に懐いてしまった犬神。彼女の友人でもあるVtuberデビューした元プロゲーマー天羽と3人でゲームコラボ配信したり、柊先輩のポシェモン大会に参加したりする一方で、新担当の新人マネージャーと一緒に戦略を考えてみたりもありましたが、けれど自分のことよりも人のために奔走したり、親身になって相手にすっかり懐かれる姿は、もはやお約束というか相変わらずですよね(苦笑)ツッコミを入れたくなる斜め上のASMR配信もあって、最後までどこかズレた彼らしさを満喫しました。
アラサーがVTuberになった話。サブチャンネル(1)
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とくめい/カラスBTK KADOKAWA 2024年09月30日頃
1~3巻までの特典小説に発売記念でWEBで公開したSS、書き下ろしを追加した全22編を収録した本編ストーリーを補完する短編集。社畜として働きすぎて路上で倒れて緊急搬送されたという年の離れた兄が、家に戻ってきてVTuberデビューするまでを描いた前日譚的エピソード、謎の多い休日の兄の行動を尾行する妹、玲を心配する親バカイラストレーターmikuriが秘めていた長女との悲しき思い出と酢昆布たちとの関係だったり、掲示板の名物キャラ駄馬とガチ恋ネキの意外な素顔など、心に響くエピソードがたくさんあって、普段意識して特典SSを集めていない身としては、こういう形で1冊にまとめてもらえると助かりますし、細かい描写の積み重ねが良かったですね。