今回は4月角川スニーカー文庫・HJ文庫・講談社ラノベ文庫と3月ヒーロー文庫・GCノベルズ・KADOKAWA新文芸の新刊感想まとめです。内訳は角川スニーカー文庫が新作1点、続巻3点、HJ文庫が新作2点、続巻3点、講談社ラノベ文庫の新作1点、続巻1点、ヒーロー文庫の続巻1点、GCノベルズの新作1点、KADOKAWA新文芸の続巻2点の計15点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
死霊魔術の容疑者 (GCノベルズ)
人買いに育てられた今となっては希少の民アスラの少女ルナが、大金を払って買った死霊魔術師カーンと共に過ごすようになっていくファンタジック・サスペンス。カーンの弟子となって魔術を習い修練を積み重ねる日々を送り、ある村の怪しげな屋敷に出入りするルナに声を掛けた、謎の死霊魔術師の行方を追う王国の騎士・コンラート。一方で彼女がラトやルシアナと出会い、外の世界を知ることで少しずつ変わってゆく中で起きた不器用なすれ違いからの悲劇。もう少し語り合うことがあれば、あるいはまた違う展開もあったのか…と思わずにはいられませんでしたが、そうするしかないと決意しても、それでも交わした約束を最後まで違えなかった二人の再会が鮮烈な印象に残る物語になっていました。
怠惰な悪辱貴族に転生した俺、シナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった (角川スニーカー文庫)
怠惰な悪辱貴族に転生した俺、シナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった(1)
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菊池 快晴/桑島 黎音 KADOKAWA 2024年03月29日
学園ゲームの凌辱悪役貴族ヴァイス・ファンセントに転生した主人公が、破滅エンドを回避するために圧倒的な力を身につけるべく奮闘する異世界学園ファンタジー。将来の破滅に向けた最初の分岐点となる入学試験の結果を変えるため、これまでの行いを悔い改めて周囲に謝罪し、S級冒険者ミルクから剣術と魔法を学んで、血の滲むような努力の日々を重ねたヴァイス。結果として想定以上の力を身につけメイドのリリスや貴族令嬢シンティアとともに注目を集める彼が、実力主義の学園で本来の主人公アレンをライバルとしてお互い意識する一方、思わぬ脅威に遭遇して共闘する熱い展開は良かったですね。改変されたことがこれからどう影響するのか、またクセがありそうなヒロインがどう絡んでくるかも楽しみです。
性悪天才幼馴染との勝負に負けて初体験を全部奪われる話2 (角川スニーカー文庫)
性悪天才幼馴染との勝負に負けて初体験を全部奪われる話2
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犬甘 あんず/ねいび KADOKAWA 2024年03月29日
負けず嫌いな性格を上手く利用されて、大事だったキスすらも勝負で心地よく感じてしまったわかば。今度は夏休みの一週間を小牧に奪われる第2弾。二人で一緒に過ごすプールに水族館、ホテルでのお泊まりで、忘れられない記憶を刻みつけるかのようにわかばにちょっかいを掛けてくる小牧。少しずつ彼女のことを意識し始めて言われるがままにデートに付き合っているのに、本音が見えにくい小牧の言動に振り回されるわかばという構図は相変わらずで、夏織や茉凛といったキャラとの絡みも出てくる中、あんなにわかばのことが大好きで執着しているのに、思うようにいかず焦燥感を募らせる小牧がほんと不器用すぎてあれでしたけど、わかばに優しい茉凛の距離感も気になるところではあります…。
物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました2 (角川スニーカー文庫)
物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました2
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音々/Genyaky KADOKAWA 2024年03月29日
ルクスがトラブルに巻き込まれた際、偶然知り合って助けた少女セブン。レジスタンスのリーダーでもある彼女が、その正体を隠したまま彼と交流を持つようになり、少しずつ惹かれてゆく第2弾。ゲームへの配慮を意識しているものの、結果的にシナリオに少なからず影響を及ぼしながら、相変わらずブラック企業で無能扱いされ、ラスボスだったはずのリヴィア&タナトスに懐かれて一緒に過ごすルクスのどこか微笑ましい日々。そこにルクスとの平和な時間を新鮮に感じるセブンを絡めていく展開で、無意識のうちにいろいろトラブルに巻き込まれる天然タナトスには苦笑いでしたけど、ルクスを巡り徐々にニアミスしつつある彼女たちが本格的にエンカウントし始めたらどうなるのか…すでに不穏な気配が見え隠れしている気もしますけど(苦笑)
最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い13 (角川スニーカー文庫)
最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い13 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する
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タンバ/夕薙 KADOKAWA 2024年03月29日
ゴードンを討ち長い反乱を終わらせたアル陣営。戦功報酬として北部全権代官に任命され、北部の復興を任されたアルは同時に藩国攻略という難題に取り組む第13弾。藩国攻略のために最強の幼馴染エルナと最強の姉リーゼロッテが派遣されてくるアルにとっては悪夢のような状況。相性が悪そうなエルナとシャルには苦笑いでしたけど、一方で明らかになってゆく藩国と連合王国それぞれが混乱する事情があって、様々な思惑が絡み合い判断が難しい状況が続きましたけど、藩国王女マリアンヌの帝国への亡命が事態を動かして、復讐に燃えるリーゼロッテに振り回されながらもそれを御してみせたアルが見事でしたね。しかしそれにしても裏でいろいろと暗躍しているのは誰なのかも気になるところではあります。
孤高の王と陽だまりの花嫁が最幸の夫婦になるまで 1(HJ文庫)
孤高の王と陽だまりの花嫁が最幸の夫婦になるまで 1
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鷹山 誠一/ファルまろ ホビージャパン 2024年04月01日
父王に厭われて辺境で育ち、腹違いの兄王を弑して王位に就いた暴虐武尽の魔王として恐れられるウィルフレッド。彼の下に隣国の王女アリシアが政略結婚で嫁いでくるファンタジー。皆が彼に怯えて恐れる中、庶民育ちでわけあって身代わりとして嫁いできたアリシア。持ち前の明るさと人懐っこさでグイグイと距離を詰めてくる彼女に、ウィルフレッドも次第に心を開いてゆく展開でしたけど、そんな彼のことを信じきれずにどうしても疑心暗鬼になってしまう人は出てくるんですよね…。状況を踏まえて冷徹に下した決断にはなかなか来るものがありましたけど、ウィルフレッドを励まして支えるアリシアの存在がこれからどう効いてくるのか、今後の展開が楽しみ新シリーズですね。
「門番やってろ」と言われ15年、突っ立ってる間に俺の魔力が9999(最強)に育ってました 1 (HJ文庫)
「門番やってろ」と言われ15年、突っ立ってる間に俺の魔力が9999(最強)に育ってました 1
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まさキチ/カラスBTK ホビージャパン 2024年04月01日
身体は大きいのに武器をうまく扱えず15年間門番だった青年ロイル。門番をリストラされた彼が空想で膨大な魔力を練り上げていたことに気づくファンタジー。魔道具推進でリストラされ、一念発起して冒険者を目指して旅に出たロイルが、窮地を救った殴り系聖女ディズに誘われパーティーを組むことになり、自分が膨大な魔力を持ち空想上の魔法を使えることに気づき、彼の実力を見て弟子となることを志願したサンディもパーティーに加わる展開で、魔法が強力すぎるがゆえに手加減含めてまだまだ手探り状態で、結果として無双してモテてもその謙虚さは変わらないロイルという構図が、この作品の肝なのかもしれないですね。
幼馴染に陰で都合の良い男呼ばわりされた俺は、好意をリセットして普通に青春を送りたい 2 (HJ文庫)
幼馴染に陰で都合の良い男呼ばわりされた俺は、好意をリセットして普通に青春を送りたい 2
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ホビージャパン 2024年04月01日
リセットした幼馴染の華と一から関係をやり直すことになったことで、徐々に普通の青春を取り戻し始めた剛の前に彼の生い立ちに関わる重要人物エリが現れる第2弾。リセットしたはずなのに胸の痛みを覚える剛の前に現れた、彼を導いてきた存在のエリ。周囲の人々が姿を消していく小学校時代、そしてリセット前以上の関係を剛と作るためさらに距離を縮めてくる華と波留。前巻でちょっと変わった特殊主人公だなと思いながら読んでいた剛の背景が明らかにされていって、彼女たちに支えられ呪縛を乗り越えた剛が、一度はリセットした笹身や道場たちの苦しみにも向き合い関係をリスタートさせて、彼を認めてくれる人たちとのかけがえのない関係を噛みしめるその姿には強く心を揺さぶられるものがありました。
凶乱令嬢ニア・リストン 5 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録 (HJ文庫)
魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 18 (HJ文庫)
凶乱令嬢ニア・リストン 5 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
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南野海風/刀彼方 ホビージャパン 2024年04月01日
他国への魔法映像の普及を進めるため、ニアたち撮影班は世界初となる魔法映像を導入した結婚式企画の海外撮影に挑むことになり、殺人的なスケジュールで強行され撮影から演出まで何とか乗り切った素敵な結婚式。一方で、ついに学院放送局が開設されたり、弟子たちと出稼ぎに行った先でトラブルに巻き込まれたりもする展開で、いやほんと転生した身とはいえ子どもがやるようなハードスケジュールじゃないよなとしみじみ思いましたけど、本人も満喫してるからいいんですかね(苦笑)いよいよ武道大会に向けて動き出した今後の展開が楽しみです。
魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 18
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手島史詞/COMTA ホビージャパン 2024年04月01日
迫りくる数々の危機や問題に対抗すべく行動を起こすザガン。そこにザガンの旧知の仲にして敵の首魁でもある、マルコシアスが突如現れる第18弾。マルコシアスによって告げられる果ての地で開かれる、現〈魔王〉が勢揃いする集会。それに出向くことを決意したザガンは、せっかくの機会だからと仲間たちを連れて道中で刊行をする展開で、バルバロスがザガンとネフィのために何やら企む一方、様々な調略の手が伸びる配下たちの反応がらしくて、サガンたちが積み重ねてきた関係を改めて感じましたね。最後の最後に思わぬハプニングもありましたけど、後手に回っていたサガンもようやくといったところで、ネフィの幸せそうな姿が見れてよかったです。
孤高の令嬢と甘々な日常 (講談社ラノベ文庫)
誰にも笑顔を見せないクールな性格から『孤高の令嬢』と呼ばれる女子高生・水無月綾音。持谷奏太が不慮の事故から彼女を救ったことでその関係が変わっていく青春ラブコメ。親からの貸し借りの教えもあって、命を助けてもらった奏太に何とか借りを返そうとする綾音。考えた末に実家の和菓子屋をバイトとして手伝ってもらうことになり、奏太と一緒に宣伝のアイデアを考えたり、綾音に勉強を教えてもらったり共に過ごす時間が増えて、少しずつ距離も縮まっていく展開で、意外とチョロインでたびたび勘違いする綾音も微笑ましかったですけど、かけがえのない存在だからこそ絶対に失敗したくない、そんな気持ちを乗り越えて、新たな関係を再構築し始めた二人のこれからが楽しみです。
ちいさな君と、こえを遠くに3 (講談社ラノベ文庫)
桜が散り、緑が芽吹き――やってくるのは、新しい季節。旅立ちの――季節。進級した奏太たちは、声優養成所のレッスンに通いつつ、音楽活動や受験勉強など、それぞれの目標へと取り組む日々を送っている。中でもソラはその才能が評価され、プロへの道を着実に歩んでいた。だがそれは、この町を――奏太たちのもとを離れることを意味する。そして、ある雨の日――奏太はソラから自らの気持ちを伝えられる。気付かぬふりで優しい嘘。けれどどうしても捨てきれないこの想い。「“きみ”がどこにいてもこの声を届けよう。どこまでも――遠くに」夢を諦めかけた少年と、夢に向かう少女たち。その声は、きっと――。
薬屋のひとりごと 15 (ヒーロー文庫)
禁書でありながら優れた医学書『華佗の書』を手に入れた猫猫たち。その書が復元されるのを待つ彼女が、医官たちとともに抜き打ち試験を受けさせられる第15弾。市井の病人たちを使った羅門の下で投薬実験。薬が効かない者が場所を移されて行われる外科手術。なぜこのような大掛かりな投薬実験が繰り返されるのか。実験の目的に薄々気づきつつも誰も答えをはっきり言おうとしない状況の中で、気がつけば猫猫もまた当然のごとく厄介ごとに巻き込まれてゆくというある意味いつも通りのお約束な展開でしたけど、不測の事態が起きた場合の話し合いが行われる中で、一歩間違えばそういうことも起こりうるというか、それが責任ある立場というもので、二人の関係の難しさを改めて突きつけられた思いでした。
人間を苗床に増殖する異界の怪物インクブスの出現によって絶滅の淵に立たされている人類。超常の存在から力を与えられたウィッチが蟲を操り、怪物を喰らう異端の魔法少女ダークファンタジー。能力もバラバラで単独では非力なことも多く、一歩間違えば時には蹂躙されてしまうウィッチ。そんな中、異端の魔法少女シルバーロータスとして、数多の蟲を操り次々とインクブスを屠って、それをパートナーであるファミリアの糧としていく女子高生の東蓮花。本人の力としてはさほどでもなく、大量の蟲を駆使する異端のスタイルがゆえにウィッチたちすらなかなか姿を見せず神出鬼没で、意外な一面も垣間見せる彼女が、狡猾なインクブスたち相手に駆け引きを繰り広げながら殲滅してゆくその姿はなかなか圧巻でした。
十二歳までに〈神の恩恵〉が人々に与えられる世界。授かった珍しい恩恵を隠していた狩人のルカが、魔術使いと判明した弟リヒトの従者枠として一緒に魔術学校に行く学園ファンタジー。天才的頭脳に恵まれて新しい魔術具を次々と作り、入学前から天才ぶりを発揮する魔術使いの弟リヒト。一方、兄のルカもまた珍しい特殊能力を持つ弓の名手で、密かに王都の「白い狩人」として有名になっていく展開で、兄弟と様々な人々との出会いや、丁寧に構築された世界観もなかなか良かったですが、何よりも深い絆で結ばれた兄弟の仲の良さが際立っていて、微笑ましい一面も見せてくれる彼らがこれからどんな出来事に遭遇してどんな姿を見せてくれるのか、続巻がとても楽しみな物語になっていました。