今回は2月角川スニーカー文庫、HJ文庫、講談社ラノベ文庫、アース・スタールナ、TOブックス、1月ファミ通文庫、KADOKAWA新文芸の新刊感想まとめになります。内訳は角川スニーカー文庫が新作2点、続巻4点、HJ文庫が続刊2点、新作2点、講談社ラノベ文庫が新作1点、続巻1点、アース・スタールナが続刊2点、TOブックスが新作1点、1月ファミ通文庫が新作1点、KADOKAWA新文芸新作1点の計17点になります。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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【第28回スニーカー大賞受賞作】
人類すべて俺の敵 (角川スニーカー文庫)
無差別に発生する魂魄剥離によって、一ヶ月で八億もの命が失われた人類。突如、全人類の前に降臨した神は、人類が魔王によって滅ぼされると告げ、人類と魔王による聖戦の火蓋が切られるファンタジー。あどけない少女にしか見えない《魔王》による厄災を阻止すべく、人類を代表して選出された十人の天使。そんな中で唯一人、高坂憂人だけは魔王とされた少女レーヴェが、世界の敵に仕立て上げられた弱き存在でしかないと知ってしまう展開で、なかなかえげつないことを考える神もあれですけど、憂人は最後まで彼女を守り続けることができるのか、彼とその周囲を巡る人間関係も、これからじわじわと今後の展開で効いてきそうな予感もあって、なかなか業が深い物語になりそうですね…。
物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました (角川スニーカー文庫)
音々/Genyaky KADOKAWA 2024年02月01日
人生を費やして、何度も周回するほど愛したゲーム『ネオンライト』にチートキャラとして転生したルクスが、ボスキャラヒロインたちを拾って無自覚無双する異世界ファンタジー。悪の組織「十三階段」や抵抗するレジスタンスとは無関係の、魔法剣の力を得たチートキャラ・ルクスに転生した主人公。偶然トラブルに巻き込まれる中でボスキャラ・リヴィアの妹タナトスを拾い、戦う目的を失ったリヴィアまで居着いてしまう展開で、何が起こったのか分からずに混乱する両陣営をよそに、彼女たちとほどほどに生きようとする彼と、物語のバランスを注視する観測者という構図が生まれる中で、いい感じに主人公に懐いている姉妹との関係や、両陣営から彼女たちを守るために戦うルクスがなかなか良かったですね。
時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん8 (角川スニーカー文庫)
戸惑いとトキメキが交錯した体育祭を経て、遂に自分の気持ちに気付いたアーリャさん。一方、政近は約束の誕生日会に向けて慣れないプレゼントの購入に苦戦する第9弾。有希に茶化されながらも背中を押され、誕生日会の当日パートナーに大切な言葉を伝えることを決意する政近。しかし順調に絆を深めてゆく二人の関係に不安の影をもたらす存在。今回もヒロインたちそれぞれのいきいきとした様子が魅力的に描かれるなかなか楽しいイベントが目白押しでしたけど、一方で想いを自覚し始めたばかりの不安定な時期だからこそ、面白半分にさりげなく不安な状況を作り出す悪意の存在は思っている以上に効いてましたね…そのあたりも今後が気になるところですけど、政近がしっかりフォローできて良かったです。
恋愛相談役の親友♀に、告白されたことを伝えたら2 (角川スニーカー文庫)
彰吾が気になるタイツの人こと真優と対面して、ライバル心が芽生えた梓とゆいな。一方で彰吾の恋愛相談から二人の恋心を知る真優は、まずは彼女たちと仲良くなろうと試みる第2弾。白熱のゲーム対決を通じて、同じ男子を好きな者同士で認め合う一方、素直で裏表なく優しい真優に対照的な想いを抱く二人。危機感を持った梓は後押しもあってアプローチに動き始めて、彰吾からは次なる相談を持ちかけられる真優。彰吾と過去を共有することができた真優もなかなかいい雰囲気でしたけど、やや空回り気味ながらも頑張る幼馴染の梓や、冷静に状況を見守る義妹ゆいなにも存在感があって、物語を動かす存在として真優の姉・千聖やバイト先の後輩・南條もいい感じに効いていました。
依存したがる彼女は僕の部屋に入り浸る2 (角川スニーカー文庫)
猛暑の夏休み。相変わらず主人公の家に入り浸り続けて、様々なものを持ち込むロクでもない見た目だけは魅力的な彼女たちと、いろいろ厄介事に巻き込まれていく第二弾。大家の孫娘で廃ゲーマーVtuber八重とその妹・七野と組むゲーム配信バイトでのトラブル、主人公の家で消えた同人誌の謎、西園寺・東雲・北条たちに振り回される夏休みの日常、うっかり知ってしまった七野の思わぬ一面、海の家でのバイト、そして高校時代の先輩に目をつけられストーカーされる北条。すっかり居着いてしまった三人組に大家さんの孫娘姉妹も加わって、賑やかで振り回されてる感ありありの主人公には苦笑いですが、それでも彼女たちの窮地を放っておけないあたりがらしいですね。大家のおばあちゃんの存在も効いていました。
仕事帰り、独身の美人上司に頼まれて3 (角川スニーカー文庫)
慣れたやり取りで桃生の部屋に呼ばれ、いつものようにペアリング―恋人じゃない二人のいつもの日常。気付いてしまった本心をだんだん隠しきれなくなってゆく第3弾。以前から抱いていた桃生への恋を自覚した実沢と、それに気づかないフリをする桃生。好きになったらおしまいという契約が重くのしかかる状況で、矛盾した行動に気付きつつも、もう少しだけと結論を先延ばしにする日々を送った先に待っていた結末。桃生の何とも複雑な事情も掘り下げられる中で、自覚しているのに素直になれないがゆえにすれ違うもどかしさが何とも切なかったですけど、そんな背中を押してくれる周囲の存在もあって、しっかり向き合って幸せになれた二人が良かったです。実沢の同期・鹿又の存在もなかなか効いていました。
精霊幻想記 25.私達の英雄 (HJ文庫)
貧民街から上がる煉獄の炎を呆然と見つめていたガルアーク王城の面々のもとに、突如としてレイスが差し向けた神造兵器のゴーレムが投下される第25弾。はまるで歯が立たず、焦燥と恐怖を隠せない一同。そんな中で見知らぬ圧倒的な力を発揮して状況に変化をもたらして、遠く離れたリオたちをこの場に召喚してみせた存在。とはいえそれでもなかなか厳しい戦いでしたけど、…。条件付きではあるものの、記憶を失っていた彼女たちと再会して喜びを分かち合えたことは救われる思いでした。
愛され天使なクラスメイトが、俺にだけいたずらに微笑む 2 (HJ文庫)
水口敬文/たん旦 ホビージャパン 2024年02月01日
試食係と見守り役という不思議な関係を結ぶことになった颯真と千佳。お菓子が結ぶいたずらな天使との甘くて刺激的なラブコメ第2弾。いきいきと颯真に迫ってからかう友人には見せない千佳のドSっぷりだったり、颯真の家に招待された千佳が暴走したり、一緒にスイーツを食べに行ったり、その反動に彼女が悩んだりと、無意識な行動の数々で周囲からイチャラブカップルと呆れられる二人。颯真にはなかなか厳しい指摘もありましたけど、予算も少ない子供会のハロウィンイベントを、役割分担しながらいろいろ工夫して協力して盛り上げた二人が、より絆を深めてお互いの存在を意識するようになってゆく様子に、今後がますます楽しみになりました。
無防備かわいいパジャマ姿の美少女と部屋で二人きり 1 (HJ文庫)
叶田キズ/ただのゆきこ ホビージャパン 2024年02月01日
テストで名前書き忘れを救済された借りから、担任命令で同級生・真倉こいろの補習を手伝うことになった根来学道。補修プリントを届けて出会った引きこもりパジャマ美少女との幸せ堕ちラブコメ。こいろの一人暮らしの部屋に向かうと、何故か昼からパジャマ姿の彼女に出迎えられ、話をする内に気に入られて部屋に招待されるようになっていく学道。こいろのパジャマに対するこだわりがなかなか微笑ましかったですが、そんな彼女が引きこもりになってしまった事情が明らかになってゆく一方、取り憑かれたように勉強していた学道にもまた事情があって、そんな二人で果たした逃避行と、お互いの存在があったからこそ見出した希望が印象的な物語になっていました。
【第3回HJ小説大賞中期受賞作】灰色の叛逆者は黒猫と踊る 1.闘士と魔女 (HJ文庫)
虹音ゆいが/kodamazon ホビージャパン 2024年02月01日
常に死と隣り合わせの人間と魔獣の戦闘が、見世物として扱われる闘技都市アイレム。見習い闘士序列第１位の少年レーヴェが、闘士昇格試験で魔女として迫害される少女ミィカと出会うバトルファンタジー。仲間たちが次々と死ぬ過酷な環境で、自らも魔女と並んで灰色と呼ばれ、忌避される存在のレーヴェ。そんな彼が闘士昇格試験で殺し合いを命じられた同じ境遇の対戦相手ミィカに覚えた共感。紆余曲折の末にレーヴェたちと共に過ごすようになった彼女が、これまで孤独だったがゆえに戸惑い、様々な思惑に振り回される展開でしたけど、生きる目的を見失っていた二人が、お互いの存在が生きがいとなって絆を育んでいく、それぞれの姿がなかなか印象的な物語になっていました。
アイアム・ゴブリン ~おバカなクラスメイトたちと過ごす異世界スローライフ~ (講談社ラノベ文庫)
赤月 カケヤ/chiri 講談社 2024年02月02日頃
高校生で元プロゲーマーの神輿屋誉が従姉の美園先生に頼まれて、5人のおバカな美少女たちが集うゲーム部の部長となり、一緒に始めたゲーム世界に移転してしまう物語。それぞれ天然エルフ乳ヶ崎、ギャルブラックマジシャン桃井、中二病気味のスライム山田、大人しいサキュバス小日向、バカボーパルバニー天音とアバターに姿を変えた彼女たち。そんな容姿ゆえになかなか人間と交流もできず、魅力的でも残念過ぎてあまり頼りにならない彼女たちを率いるゴブリン姿の誉が、頭を悩ませながらエロ目線を向ける村人や、美人ぞろいなのに雑な冒険者パーティー、モンスターたちと交渉をしたり、使えるものを駆使してサバイバルするシリアスになりきれないどこかゆるい展開は、これはこれでなかなか味がありました。
推しの清楚アイドルが実は隣のナメガキで俺の嫁2 (講談社ラノベ文庫)
むらさき ゆきや/春日 秋人/かにビーム/さいたま 講談社 2024年02月02日頃
いろいろあって、アオツバを守るために舞香とニセの恋人同士になった竜也。そんな彼が以前ピンチを助けてくれた天瀬川優姫会長への恩返しのために学園祭の準備を手伝う第2弾。舞香から誘われた水族館デートで、振り回されっぱなしの一日のあとに渡された意外なもの。一方で姉妹校と合同で行われる学園祭の準備で、優姫会長に忍び寄る魔の手。1巻目は舞香のナメガキっぷりが印象に残っていましたけど、今回は憧れの推しでもある彼女のギャップに振り回される竜也と、からかいながらも彼をわりと気に入っている様子の舞香との距離感が、だいぶいい感じにこなれてきましたね。時には会長との関係に嫉妬したりしながら、彼に対する様々な表情を見せてくれる舞香がなかなか魅力的に描かれていました。
さぁ、悪役令嬢のお仕事を始めましょう 元庶民の私が挑む頭脳戦2 (PASH!文庫)
緋色の雨/みすみ 主婦と生活社 2024年02月02日頃
余命わずかな妹・雫を救うため、財閥御用達の学園で悪役令嬢を演じる元庶民の女子高生・澪。覚悟とは裏腹に周囲に周囲に慕われ始めた彼女が体育祭に挑む第2弾。敵対していたはずの西園寺沙也香と東路明日香の謝罪を受け入れて、ゲーム世界のメインヒロイン乃々歌の嫌われ役を演じながら、彼女が目指す体育祭のクラス優勝に向けて奮闘する澪。そこで勃発する予想外の事態に対する彼女の決断、それによって生じた結末のフォローもとても澪らしかったですが、批判を甘んじて受け入れる彼女のいい意味での暗躍は徐々に周囲に漏れつつあって、自身としては悪役令嬢を演じているつもりなのに、どこかお人好しツンデレ扱いされつつある微笑ましい彼女の今後に期待です。
非科学的な犯罪事件を解決するために必要なものは何ですか? (ファミ通文庫)
色付きカルテ/よー清水 KADOKAWA 2024年01月30日頃
目が死んでいる以外特段目立つところのない女子高生・佐取燐香が、密かに持っている異能で正義にあつい警察官・神楽坂の捜査に協力する異能ミステリ。他人の精神に干渉する力を隠しひっそりと生きていくはずだった燐香。しかしある日巻き込まれたバスジャック事件で、異能犯罪を独り捜査する警察官・神楽坂と出会った彼女が、たびたび異能犯罪に巻き込まれてゆく展開で、危機に遭遇するたびに冷静に状況を見極めて凄まじい異能の力を振るう一方で、勘違いしていた厨二病的黒歴史があったり、どこかポンコツな一面を垣間見せる燐香のギャップがあって、熱い正義感を失っていない神楽坂とのコンビもなかなか良かったですね。二人がこれからどんな事件に挑むのか今後の展開に期待です。
お局令嬢と朱夏の季節 ~冷徹宰相様との事務的な婚姻契約に、不満はございません~3 (アース・スタールナ)
メアリー＝ドゥ/Shabon アース・スターエンターテイメント 2024年02月01日頃
新婚旅行とは名ばかりの視察旅行中のアレリラとイースティリア。タイア子爵領を出立し、次なる目的としてロンダリィズ伯爵領に向かう第3弾。タイア子爵領とは違った意味で驚きに満ちていたロンダリィズ伯爵領の様子と、明らかにされてゆく王家のもうひとつの秘密。来るべき災厄を避けられそうもない状況で、同時にそれに備えてきた人たちの思いがあって、それを受け止めて覚悟を持ってやりきった夫妻の生涯がなかなか良かったですね。どうしてこうなった…と親と逆転現象状態の二人を始めとして、アフターエピソードで描かれた様々な組み合わせもなかなか絶妙な感じで、それぞれがぴたっとハマるお似合いで幸せそうな様子が微笑ましかったです。
ライブラリアン 本が読めるだけのスキルは無能ですか!? 2 (アース・スタールナ)
南の月/HIROKAZU アース・スターエンターテイメント 2024年02月01日頃
スキル狩りから逃げるため、高山病にも悩まされながら隣国の帝国へ向かうテルミスたち。途中、助けた侯爵令嬢のアイリーンと行動を共にする第2弾。国王不在の間に次期王のハリスンから突然婚約を破棄されて、国外追放までされてしまった侯爵令嬢アイリーン。彼女が騎士に処分されそうになったところを助けたテルーとイヴが、帝国までの道のりを一緒に旅をする展開で、途中でスタンピードに巻き込まれる中で三人も奮闘するわけですけど、苦しい戦いの中で自分のできることをと奮闘したこの辺りの活躍は、彼女の今後にもいろいろ影響しそうですね。紆余曲折の末に帝国で学生になった彼女にこれからどんな生活が待っているのか、続巻に期待しています。
紅の魔術師に全てを注ぎます。好き。〜聖女の力を軽く見積もられ婚約破棄されました。後悔しても知りません〜
日向雪 TOブックス 2024年02月01日頃
国の慣習に従い婚約した第二王子から婚約破棄された第二聖女ロレッタ。就活をすべく職安に向かった彼女がエース侯爵家ルークの侍女になる盟約ファンタジー。見る目のない周囲のせいで自己肯定感が低く、住み込み侍女となった終身雇用を目指すロレッタがさりげなく見せる魔術の凄まじさに目を剥くルーク。元々聖女推しで推し活をしたい王太子にもその力を絶賛されて、三人で深夜まで繰り広げる熱い魔術オタク談義には思わず笑ってしまいましたが、状況が読めない第二王子とはしっかり決着をつけて、ロレッタの実力が再評価されつつある一方で、建国時から続く雷と火と水の三魔術師を巡る因縁は何とも切なくて、今後の展開がどうなるのかいろいろと気になりますね。
帝国内の毒殺事件に関わり稀代の悪女として殺されたアリアドネ。彼女が二十年後の帝国で同じなの公爵令嬢に成り代わるやり直しファンタジー。12歳で自ら命を投げ出したアリアドネの日記に綴られていたフィルベルン公爵家の闇。彼女の無念を晴らすため、同じ名を持つアリアドネ・フィルベルンとして生きていくことを決意する展開で、現公爵が幼少を理由に兄の子を追い出して公爵の座についた事情や、再会したかつての弟クローゼは亡くなった姉のことを慕っていて、状況を巧みに利用しながら公爵家夫妻を周到に罠にはめていった、彼女と周囲を巡るこれからの物語が楽しみですね。
