今回は12月オーバーラップ文庫・ダッシュエックス文庫・富士見ファンタジア文庫の新刊感想まとめです。内訳はオーバーラップ文庫が続刊3点、ダッシュエックス文庫が新作1点、富士見ファンタジア文庫が続刊1点、新作6点の計11点になります。気になる作品があったらこの機会に是非読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ 3 (オーバーラップ文庫)
凡人探索者である味山只人の活躍によって退けられた耳の怪物。しかし今度は人類を、味山を抹殺せんと人知竜によるバベル島攻略戦が開始される第三弾。カエルの化物との対峙を味山が撮影するチームアレタの動画配信に始まって、貴崎とのデートに介入してくる雨霧、アレタと貴崎による遠隔監視下で行われるナイトビーチでのあめりやの面々との合コンと坂田たちの乱入。例のヒントですら匙を投げてしまう斜め上のカオスな展開の連続でしたけど、今回はそれですら束の間の平穏でしかなくて、呆然としてしまう怒涛の展開の先にあった一体これ先どうなるの…？という結末には、いやこれ書いてる著者さんほんと楽しそうだな…としみじみ思ってしまいました（苦笑）
創成魔法の再現者 6 (オーバーラップ文庫)
みわもひ/花ヶ田 オーバーラップ 2023年12月22日
王国北部の反乱に立ち向かうも、大司教ヨハンの未来予知の力により行動を読まれ続け、苦戦を強いられ、リリアーナ陣営は窮地に立たされるも、エルメスは冷静に反撃への緻密な作戦を創り上げていく第六弾。分析の結果、作戦の重要な鍵となる役割を託されたリリアーナ。一方、家族を人質に取られたことでエルメスと敵対することを強いられ、密かにヨハンの持つ予知能力の真相を知るとともに、自身もその力を手に入れることになったニィナ。今回相性も悪くエルメスだけでは打開できない局面でしたけど、予知に対抗する駆け引きの中で、自分だけでなく仲間を信頼するエルメスの変化があって、それに応えた鍵を握る二人の少女や仲間たちの奮闘も力にして強敵を打ち破ってみせた展開は、ヒロインたちの覚悟も感じられてなかなか良かったですね。
かみつら 2 (オーバーラップ文庫)
北条新九郎/トーチケイスケ オーバーラップ 2023年12月22日
少女達が仮面を被り、伴侶となる者以外の異性に素顔を見せずに暮らす神面島。真璃と直の2人の少女と想いを交わした少年・志郎が、彼女達と関係をもう一歩進めたいとあれこれ思いを巡らせる第二弾。志郎のことをもっと知りたい真璃と直が聞き出した、どこまで本当なのかよくわからない衝撃の世界放浪エピソード。一方、未公表の三人の恋人関係を知らないまま、志郎との距離を縮めようと密かに動き始める素敵な恋人を手に入れたい少女・大夢と、男性への苦手意識を克服したい幼馴染・文。どうも動きが鈍い志郎にやきもきする二人からしたらあわやという展開は、特殊な環境下にあるのどかな島ならではの展開なのかなと苦笑いでしたけど、ようやく進展したと思ったら最後にそうきたかという展開が待っていて続刊が楽しみです。
俺は義妹に嘘をつく ~血の繋がらない妹を俺が引き取ることにした~ (ダッシュエックス文庫)
城野 白/Aちき 集英社 2023年12月22日頃
悪友に勧められ、酔った勢いでマッチングアプリを始めたフリーターの三条六郎。そんな彼と離れて暮らす義妹の三条悠羽のマッチングが成立してしまう青春小説。お互い相手が誰なのかを認識していて、他人を装い交わしていくメッセージ。高校を不登校状態の悠羽が心配で様子を見に行き、家庭崩壊で居場所がない状況を知る六郎。六郎も悠羽もなかなか過酷な状況に置かれていて、明らかになる彼の過去や家を出た覚悟が何ら報われていない現状には目眩がしましたが、それでも彼女のために奔走する思いは変わらなくて、なかなか前途多難な現状ではありますけど、悪友や元カノ、恩師など彼らのことを気にかけてくれている人たちもいますし、いつか二人の人生に光明が見えてほしいですね…。
週に一度クラスメイトを買う話3 (富士見ファンタジア文庫)
羽田 宇佐/U35 KADOKAWA 2023年12月20日
夏休みが終われば、全て元通りになると思っていた二人の関係。けれどルールが曖昧になってお互いの距離感も変わってしまい、お互いに意識している相手の考えていることが分からなくなってゆく第三弾。夏休みが終わって、何となく気になるお互いの進路。宮城は仙台に志望大学を問い、逆に同じ大学を受けたらと言い出す仙台。学校でもさりげなく接触の機会を伺う仙台の変化に戸惑いながらも、意識せずにはいられない宮城が微笑ましいですけど、肝心の仙台へのベクトルが相変わらず不器用過ぎて傷つけずにはいられないのがもどかしいですね…。もう少しお互い素直になるきっかけがあれば、二人の関係もだいぶ変わるような気もするんですが、現状ではそれがなかなか難しい…。
やり直し悪徳領主は反省しない! (富士見ファンタジア文庫)
悪徳領主として反乱軍に捕らえられ専属従者エトナとともに処刑された若き伯爵フラッド。直後に彼女とともに二年前にタイムリープして、今度は死なないために二度目の人生をやり直す悪徳領主ファンタジー。二周目の人生で前世を共有するエトナと一緒に目指すのは、死なずに領主の座を譲って気ままな平民生活。そのために私腹を肥やしていた部下を断罪、前世の反乱者を後継者に指名して、飢饉対策に励むなど反乱に繋がる要因を次々と潰していったことで、逆に国を救った聖人として称賛されてしまうフラッド。王女や隣国の皇女にも慕われ、打つ手打つ手がいい意味で裏目に出る彼の活躍はなかなか面白かったですし、暗躍する黒幕もしっかり生き残っていて、これから物語をどう動かしていくのか続刊への期待感が高まりました。
性別不詳VTuberたちがオフ会したら俺以外全員女子だった (富士見ファンタジア文庫)
最宮 みはや/あやみ KADOKAWA 2023年12月20日
性別不詳VTuberとして活動する高校生・甘露ケイ。グループで集まったオフ会がどうせ男ばかりと思っていたら、実は自分以外全員美少女だったというVTuber小説。集まったエロネタを連発する親友VTuberの藤枝トモが実は清楚系で、それに小学生にしか見えない女子大生が中の人のアマネに、実は中学生だったミィというカオス。アマネやミィの困りごとを助けながら、リアルのケイは女子だったという噂だったり、思い込みがなかなか激しいトモの迷走もあって、勘違いが積み重なった虚像に振り回されるカオスな展開に陥り、時には笑わせてくれながら、それでも大切な仲間たちのために懸命に向き合おうとするその姿がなかなか印象的な物語でした。
美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件 (富士見ファンタジア文庫)
諸星 悠/kodamazon KADOKAWA 2023年12月20日
誰もが持つはずの魔力を持たず、嘲笑を受け無気力に育ったウィリアム。退学の危機に直面した彼が、千年前の戦争で活躍した美少女英霊たちを召喚してしまう学園ファンタジー。超越の指輪を探すうちに出会った三人の美少女英霊たち。魔王イリスの英霊により体内で滞っていた魔力を引き出され、彼女の従者レインにサポートされながら大天使ソフィア、剣聖ミオたちに徹底的にしごかれるうちに、彼女たちがやったことを即座に覚えてしまう、眠っていた才能を覚醒させるウィリアム。そのあまりの怠惰っぷりを見かねて才能があることを懸命に隠す英霊たちには苦笑いでしたけど、かつて約束を交わした幼馴染を救うため、怯懦を乗り越えたウィリアムがこれからどう変わってゆくのか、今後もいろいろありそうで続刊が楽しみです。
魔女狩り少女のぼっち卒業計画 孤高の対魔女兵器、女子校に潜入する (富士見ファンタジア文庫)
熊谷 茂太/瑠奈璃亜 KADOKAWA 2023年12月20日
人類と魔女の戦争で活躍した魔女狩りの少女クオが、戦争終結後自身の安全性を証明するため、入学した学園で魔女の生き残りルカと出会う学園ガール・ミーツ・ガール。生徒として通うくらいなら処分されたいと願う、最強の戦闘力に反してコミュ力最弱の超人見知りという難問を抱えるクオと、仇敵である魔女の生き残りにして、人間の生活に溶け込み平和を望む変わり者ルカの鮮烈な出会い。それにクオの任務を監視する後輩ノエルと少しずつ交流を積み重ねてゆく展開で、たびたびコミュ障っぷりを炸裂させるクオには苦笑いでしたけど、様々な思惑が渦巻く上層部に振り回され葛藤しながらも、それでも本当に大切なものを守るために少しずつつ変わってゆく彼女たちの結末はなかなか良かったですね。
強すぎて学園であぶれた俺。ボッチな先生とペア組んだら元王女だった (富士見ファンタジア文庫)
穂積 潜/おやずり KADOKAWA 2023年12月20日
元傭兵の少年ナインが入学試験で見せた戦い方に周囲がドン引きして誰ともパーティーを組めず、見かねたアリシア先生と一緒にパーティを組む学園ファンタジー。棄民兵として地獄のような戦場で生きてきた実戦的過ぎる破天荒なナインの行動も、優しくフォローしてくれる元王女の聖女でいろいろ訳ありのアリシア先生。彼女の助力で光神教徒なのに光魔法が使えない才媛ヘレンや入学試験の因縁で引きこもっていた貴族マリシーヌといった訳ありの仲間も増えていって、まさかの展開には驚かされましたけど、立場に囚われるあまりなかなか本音を言えない先生のために、仲間たちと彼女にとって大切なものを取り戻してみせたその結末はなかなか良かったですね。
俺に義妹が出来た後の実妹の変化がこちら (富士見ファンタジア文庫)
外では文武両道で才色兼備な優等生、でも家ではだらしなく兄嫌いな実妹・雪姫。しかし、父親の唐突な再婚によって、兄・一戸瀬皇季に甘える義妹が二人もできてしまう兄妹ラブコメ。お兄ちゃんを取られたくない雪姫の豹変に加えて、それぞれの理由からそもそもデレデレな中学時代のバスケ部の後輩・美穂と、彼女の妹でバスケの天才少女・未桜。彼女たちを甘やかし過ぎる兄・皇季の明らかな重度のシスコンっぷりも垣間見えるわけなんですが、それ以上に過去の苦い思い出から家族に不幸になって欲しくないという強い思いが感じられましたね。彼が抱いていたひとつの懸念も解消されて、どんな家族になっていくのか、実妹・義妹との関係含めて彼らの今後が楽しみな物語ですね。
