【Kindle最大50%オフ】早川書房 夏の大感謝セール! (8/17まで)
今回は主要電子書籍ストアで「早川書房 夏の大感謝セール」が開催されるのを受けて、対象商品の中からおすすめ作品を30作品セレクトしました。気になる作品があったらこの機会に読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
同志少女よ、敵を撃て
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逢坂 冬馬 早川書房 2021年11月17日
独ソ戦が激化する1942年、突如として日常を奪われたモスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマ。赤軍の女性兵士イリーナに救われた彼女が、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵を目指す物語。母を撃ったドイツ人狙撃手と母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するため、理不尽で過酷な戦争を多くの仲間を喪いながら生き延び、狙撃兵として成長してゆく展開で、何が正しく間違っているのか難しい状況が続く中、時折垣間見える彼女の危うさにはたびたびハラハラさせられましたが、多くの葛藤を抱えながらもその戦争を生き延びて、過去の因縁にも見事決着をつけてみせた彼女の生き様がとても印象的な物語でした。
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
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アンディ・ウィアー/小野田 和子 早川書房 2021年12月16日頃
大ヒット映画「オデッセイ」のアンディ・ウィアー最新作。映画化決定!未知の物質によって太陽に異常が発生、地球が氷河期に突入しつつある世界。謎を解くべく宇宙へ飛び立った男は、ただ一人人類を救うミッションに挑む! 『火星の人』で火星でのサバイバルを描いたウィアーが、地球滅亡の危機を描く極限のエンターテインメント
3.三体
物理学者の父を文化大革命で惨殺されて、人類に絶望した中国人女性科学者・葉文潔。その数十年後、ある会議に招集されたナノテク素材の研究者・汪淼が、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる中国SF小説。なぜそのような怪現象が起きているのか。父を殺されたその後の葉文潔が描かれて、VRゲーム『三体』が示唆するものは意味深で、明らかになった真相がまた壮大なスケールの物語でしたけど、それでいて要所で人間らしい生々しい感情がポイントになっていたのが印象的でした。
ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。
「それが、ここに流れてるあたしたちの血。あたしたちは無法者なの」 アメリカ、カリフォルニア州。海沿いの町ケープ・ヘイヴン。30年前にひとりの少女命を落とした事件は、いまなお町に暗い影を落としている。自称無法者の少女ダッチェスは、30年前の事件から立ち直れずにいる母親と、まだ幼い弟とともに世の理不尽に抗いながら懸命に日々を送っていた。町の警察署長ウォークは、かつての事件で親友のヴィンセントが逮捕されるに至った証言をいまだに悔いており、過去に囚われたまま生きていた。彼らの町に刑期を終えたヴィンセントが帰ってくる。彼の帰還はかりそめの平穏を乱し、ダッチェスとウォークを巻き込んでいく。そして、新たな悲劇が……。苛烈な運命に翻弄されながらも、 彼女たちがたどり着いたあまりにも哀しい真相とは――?人生の闇の中に差す一条の光を描いた英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作。
もし別の道を選んでいたら...良心の呵責に悩みながら、きな臭い製薬会社の顧問弁護士をつとめるアフリカ系アメリカ人のジョアンナ。穏やかな家庭人にして、無数の偽国籍をもつ殺し屋ブレイク。鳴かず飛ばずの15年を経て、突如、私生活まで注目される時の人になったフランスの作家ミゼル...。彼らが乗り合わせたのは、偶然か、誰かの選択か。エールフランス006便がニューヨークに向けて降下をはじめたとき、異常な乱気流に巻きこまれる。約3カ月後、ニューヨーク行きのエールフランス006便。そこには彼らがいた。誰一人欠けることなく、自らの行き先を知ることなく。圧倒的なストーリーテリングと、人生をめぐる深い洞察が国際的な称賛をうける長篇小説。ゴンクール賞受賞、フランスで110万部突破のベスト・スリラー2021。
7.不快な夕闇
マリーケ・ルカス・ライネフェルト/國森 由美子 早川書房 2023年02月21日頃
敬虔な改革派プロテスタントの両親のもと、4人の兄妹で暮らす10歳の少女ヤス。死ねばいいのにと軽い気持ちで神に祈った長兄が本当に湖で溺死してしまう。だが一家はその悼み方がわからない。赤いジャケットを脱がずその下のへそに画鋲を刺しっぱなしにするヤス。食事を摂らず痩せ細っていく母親。ハムスターを弄んで殺す次兄のオブ。喪失という穴が生み出すその暗闇に一家は呑み込まれ、聖書の言葉はある種の呪いのように子どもたちに降りかかる。性の目覚めと死の恐怖は渾然一体となって、彼女たちだけの奇妙な儀式に発展していく。ブッカー国際賞を史上最年少で受賞。いま注目のオランダ人作家のデビュー長篇。
暗い森の家に住む男。過去に囚われた女。レコーダーに吹き込まれた声の主。様々な語りが反響する物語は、秘密が明かされる度にその相貌を変え、恐るべき真相へ至る。巨匠S・キングらが激賞。異常な展開が読者を打ちのめす、英国幻想文学大賞受賞の傑作ホラー
9.女たちの沈黙
トロイア戦争、最後の年。トロイアの近隣都市リュルネソスが、ギリシア連合軍によって滅ぼされた。都市の王妃ブリセイスは囚われ、奴隷となった。主は、英雄アキレウス――彼女の家族と同胞を殺した男。ブリセイスは、やはり「戦利品」として囚われたイーピスらと、新たな日常を築いていく。ところが事態は急変する。アキレウスと不仲である総大将アガメムノンが、ブリセイスを無理やり自分のものにしようというのだ。男たちの争いは激化し、軍内部は混乱を極める。そんななか、女たちに与えられた選択肢は、服従か死か。だが、ブリセイスが選んだのは――。 数々の戦争小説を手掛けてきたブッカー賞作家が、西洋文学の起源にある暴力へ遡り、抑圧された者たちの声を高らかに響き渡らせる傑作歴史小説!
10.帝国の亡霊、そして殺人
1949年、インド・ボンベイ。共和国化を目前にした大晦日の夜、パーティーの最中に英国外交官ジェームズ・ヘリオット卿が殺された。犯行現場の金庫は空。さらにジェームズ卿の上着からは暗号めいたメモが見つかった。捜査に当たるのはペルシス・ワディア警部。インド初の女性刑事として警察組織の内外で逆境に立たされながらも、明敏な頭脳と不屈の精神で国家を揺るがす大事件の真実に迫る。独立運動の遺恨と共和国化の混沌の只中にあるボンベイを舞台に、女性警部の活躍を描いた歴史ミステリ。
11.ペストの夜 (上・下)
オスマン帝国末期の1901年。東地中海に浮かぶミンゲル島では、ペスト流行の噂が囁かれていた。ペスト禍を抑え込むため皇帝アブデュルハミト二世の命で派遣された疫学者は、何者かの手によって惨殺される。代わりに送り込まれたヌーリー医師と、その妻、アブデュルハミト二世の姪にあたるパーキーゼ姫は、ペスト撲滅のために島に降り立つ。だが二人は秘密裡に、疫学者殺害の謎を解き明かす使命も負っていた――。 トルコ初のノーベル文学賞作家、オルハン・パムクが、架空の島を舞台に人間と疫病との苛烈な闘いを克明に描く傑作歴史長篇。
12.時ありて
時を超えて彷徨う二人の男の物語。英国SF協会賞受賞作 戦記ノンフィクションを専門に扱う古書ディーラーが、即売会で手にした一冊の詩集『時ありて』。彼は詩集に挟まれた手紙に書かれた事実を追ううちに、第二次大戦の戦火を生きた二人の男をめぐる迷宮を彷徨うことになる。英国SF界のレジェンドによる傑作時間SF
13.シャギー・ベイン
1980年代、英国グラスゴー。“男らしさ"を求める時代に馴染めない少年シャギーにとって、自分を認めてくれる母アグネスの存在は彼の全てだった。アグネスは、エリザベス・テイラー似の美女。誇り高く、いつも周囲を魅了していた。貧しさが国全体を覆っていくなか、彼女は家族をまとめようと必死だった。しかし、浮気性の夫がアグネスを捨ててから、彼女は酒に溺れていき、唯一の収入である給付金さえも酒代に費やしてしまう。共に住む姉兄は、母を見限って家を離れていくが、まだ幼いシャギーはひとり必死にアグネスに寄り添い──。デビュー作にして、英国最高の文学賞ブッカー賞を受賞。英語圏で100万部突破の話題作。
14.鹿狩りの季節
鹿狩り帰りの車の血痕と雪の翌朝の少女失踪事件は田舎町の平和な仮面を剥ぐ大きなうねりとなる―― 1985年11月、ネブラスカ州ガンスラム。鹿狩りの季節を迎えた田舎町で、女子高生ペギーが失踪した。当初は家出と見られたが、弟マイロは不審に思い、周囲に聞き込みをする。やがてペギーに好意を抱いていた知的障害のある青年ハルが鹿狩りの帰りに血が付いたトラックに乗っていたことから疑惑の目を向けられる。ハルの無実を信じて事件を調べる保護者代わりの中年夫婦、姉の行方を追うマイロ、何かを隠している町の人々とハル……様々な思惑の果てに浮かぶ真実とは? アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作。
15.真珠湾の冬
1941年ハワイ。アメリカ陸軍上がりの刑事マグレディは、白人男性と日本人女性が惨殺された奇怪な事件の捜査を始める。ウェーク島での新たな事件を経て容疑者がマニラ・香港方面に向かったことを突き止めた彼はそれを追うが、折しも真珠湾を日本軍が攻撃。太平洋戦争が勃発する。陥落した香港で日本軍に捕らえられ、東京へと流れついたマグレディが出会ったのは……。戦乱と死が渦巻く激動の太平洋諸国で連続殺人犯を追う刑事の執念。その魂の彷徨を描く世界最大のミステリ文学賞エドガー賞最優秀長篇賞受賞作。
16.狼の幸せ
人生に疲れた40歳の作家・ファウストは、パートナーとも別れ、長年暮らしたミラノを離れてフォンターナ・フレッダにやって来る。イタリアンアルプス近くのレストランでコックの職を得、そこで知り合ったウエイトレスのシルヴィアと付き合うことに。レストランのオーナーや元森林警備隊の男らとも交流を深めていくが、なかなか小説は書けない。そして冬が終わり、山からはスキー客たちもいなくなった。シルヴィアから「富嶽三十六景」の画集を贈られたファウストは、葛飾北斎に触発されてもう一度本を書き始める。やがて狼たちがイタリアンアルプスからおりてきたころ、ファウストも本来の自分を取り戻していくが――。ストレーガ賞受賞作家が描く、人生やり直し山岳小説。
17.ガーンズバック変換
ネット・スマホ依存症対策条例が施行された近未来の香川県から、女子高生の美優が大阪へやってきた大阪観光サイバーパンクの表題作ほか八作品のSF短編集。売れないファンタジー作家がゴーストライターを引き受けた理由、中世の南仏を舞台とした貴族少女と吟遊詩人の出会い、詩をテーマとした三つの掌編、スマホゲーム開発をめぐる知的遊戯、表題作のほか存在していないオーストリアSF作家の架空伝記や、百合SFアンソロジー。実在の歴史をモチーフに虚構を織り交ぜて、いかにもありそうなそれっぽい雰囲気を作り出す作家の上手さを感じました。
18.スター・シェイカー
人間 六度/ろるあ 早川書房 2022年01月19日頃
人類がテレポート能力に目覚めた近未来。不慮の事故がトラウマとなり能力を失った赤川勇虎は、違法テレポートによる麻薬密売組織から逃亡した少女ナクサと運命的な出会いを果たす物語。ふとしたきっかけから出会ったナクサにうっかり関わってしまったことで、その逃亡生活に巻き込まれてゆく勇虎。失われた地に住むロードピープルの助けを借りて、敵の襲撃に対応しながら組織の拠点に向かう展開でしたけど、そこで明らかになってゆく壮大な計画、苦悩しながらも勇虎が立ち向かう展開は粗削りながらもスケールの大きさを感じさせてくれる物語でした。
19.サーキット・スイッチャー
サーキット・スイッチャー
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安野 貴博 早川書房 2022年01月19日頃
完全自動運転車が急速に普及した2029年の日本。自動運転アルゴリズムを開発する企業の代表・坂本義晴は、仕事場の自動運転車内で襲われ拘束されてしまう近未来小説。「ムカッラフ」を名乗る謎の人物に突如拘束され、とある死亡事故が起きたロジックの説明と開示を要求された坂本。襲撃犯の様子が動画配信で中継される中、首都高封鎖が要求されて封鎖しなければ車内に仕掛けられた爆弾が爆発する緊迫感がある展開で、エンジニアと組んだ刑事が意外なルートからのアプローチで真相に迫ってゆくストーリーはテンポもよくてなかなか面白かったです。
20.氷の致死量
櫛木 理宇 早川書房 2022年05月10日頃
聖ヨアキム学院に赴任した教師の鹿原十和子。そしてまた一人、犠牲者である彼女の生徒の母親を解体する殺人鬼・八木沼武史。十和子と八木沼、二人の運命が交錯するシリアルキラー・サスペンス。自分に似ていたという教師・戸川更紗が14年前、学院で殺害された事件に興味を持つ十和子、更紗に未だ異常な執着を持つ八木沼に、十和子や周囲の様々な親子関係や夫婦夫婦関係、セクシャルな問題など様々なこと問題にも直面しながら、運命ともいうべき絡み合った糸が解き明かされてゆく展開で、視点が変わるととまた新たな構図が見えてゆく先にあった、執着とボタンの掛け違いから起きた悲劇とその結末がなかなか印象的な物語でした。
21.死刑にいたる病(ハヤカワ文庫JA)
鬱屈した日々を送る大学生・筧井雅也の元に、連続殺人鬼・榛村大和から唯一の冤罪を訴える手紙が届き、彼の生い立ちや事件の再調査を進めていくことを決意する物語。榛村と面会し調査を進めていくうちに、周囲から明るくなった、変わったと言われる一方で、昔をよく知る灯里には違和感を指摘される雅也。調べていくうちに意外なところで繋がっていく過去の負の連鎖と、榛村という恐ろしい存在にいつの間にか魅入られていく恐怖。決別してようやく平穏を取り戻せたかと思われた描写の裏で、まだまだ終わらない連鎖が示唆されるエピローグは秀逸です。
22.ヤキトリ(ハヤカワ文庫JA)
地球人類は国籍の区別なく商連と呼ばれる異星の民の隷属階級に落ちた未来世界。閉塞した日本から抜け出すため、アキラは募兵官の調理師パプキンの誘いで商連の惑星機動歩兵―通称ヤキトリに志願する近未来ファンタジー。国籍も違う癖の強いメンバー四人と実験ユニットK-321に配属され、火星に向かうアキラ。その過程で嫌というほど思い知らされるヤキトリの過酷な待遇。どれだけ屈辱的な扱いを受けたり凹まされても反骨心を失わないアキラたちには凄いなと感心しきりでしたが、だからこそ見出した活路が変革の兆しになるか続巻に期待。
23.裏世界ピクニック(ハヤカワ文庫JA)
裏側で「くねくね」を目にして死にかけていた時、仁科鳥子と運命的な出会いを果たした女子大生の紙越空魚。危険と隣合わせで謎だらけの裏世界に二人で足を踏み入れる怪異探検サバイバル。研究とお金稼ぎを目的とする空魚と、姿を消した大切な人を探すために非日常へと足を踏み入れる鳥子。始まりと出会いはやや唐突にも思えましたが、成り行きから何となくコンビを組んだ感もあった二人に絆めいたものが生まれて、相手のために奔走する展開は悪くなかったですね。タイトルにあるようなピクニックとはとても言えない怖いテイストでしたが続巻に期待。
24.法治の獣 (ハヤカワ文庫JA)
春暮 康一 早川書房 2022年04月20日頃
あたかも罪と罰の概念をもつかのように振る舞う異星の草食獣シエジーたちの衝撃的な秘密を描く表題作を含む、3つの宇宙SF中短編。近隣の海洋惑星への調査行で集合的精神体を持つルミナスに遭遇した探査チームが直面する衝撃的な悲劇、知性を持たず群れ単位で法を作るシエジーを使った社会実験の結末、生体の迷宮状態「方舟」のカオスな状況が描かれていて、知性を持った生命体とのファーストコンタクトで痛感する人類側の対応の難しさや、それによって何が引き起こされてしまうのか、ひとつひとつの描写を積み重ねていった先にあるそれぞれの結末がとても印象的な物語でした。
25.なめらかな世界と、その敵 (ハヤカワ文庫JA)
なめらかな世界と、その敵
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伴名 練 早川書房 2022年04月20日頃
いくつもの並行世界を行き来する少女たちの1度きりの青春を描く表題作ほか、テイストの違う独特な世界観が描かれた6つのSF連作短編集。ゼロ年代SF論、脳科学とインプラントと複雑な想いが交錯する愛憎劇、ソ連とアメリカの超高度人工知能を巡る争い、未曾有の災害で新幹線が陥った低減世界など、それぞれの作品らしい良さが感じられて面白かったです。個人的には「美亜羽へ贈る拳銃」「ひかりより速く、ゆるやかに」が好み。相手を思う真摯な気持ちの中にも複雑な想いが入り混じるからこそ明示されない結末がとても印象的なものに思えました。
26.僕が愛したすべての君へ/君を愛したひとりの僕へ(ハヤカワ文庫JA)
並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。
並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て父親と暮らす少年・日高暦が、父の勤務する虚質科学研究所で佐藤栞という少女に出会う物語。親同士が離婚した研究者という共通点から、共に過ごすうちにほのかな恋心を育んできた暦と栞。全てを一変させるきっかけとなった親同士の再婚話と二人を襲った悲劇。諦めきれずに彼女を取り戻すために生きることを決意した暦の執念は凄まじいと感じましたが、そんな彼に寄り添うように支え続けた同僚の研究者・和音の献身ぶりにも思うところが多かったです。同時刊行のどちらを先に読むのかは悩ましいですね。
僕が君の名前を呼ぶから (ハヤカワ文庫JA)
人々が並行世界間で日常的に揺れ動くことが実証された時代。虚質科学を研究する母と専業主夫の父とともに暮らす今留栞が運命の出会いを果たす、別の並行世界を生きたもう一人の栞の物語。中学2年の夏休みに訪れた元病院の敷地内で栞が出会った、鬼隠しに遭って姿を消した少年について調べている青年・内海進矢との出会い。両親が離婚しなかったら…ということで分岐してゆくもうひとつの物語で、積み重ねてゆく栞と進矢の思いや精一杯生きた日々はなかなか良かったですけど、それでもやっぱりな人生を送っていたあの二人にもしっかりと会えるあたりに、彼らとの結びつきの強さを感じましたね。
27.楽園とは探偵の不在なり (ハヤカワ文庫JA)
二人以上殺した者は天使によって地獄に引き摺り込まれるようになった世界。細々と探偵業を営む青岸焦が、大富豪・常木王凱に誘われ天使が集まる常世島を訪れる孤島×館ミステリ。激変した世界でかつて無慈悲な喪失を経験した青岸が直面する、起きるはずのない連続殺人事件。犯人はいかにして連続殺人を成し遂げたのか。復讐に人生を賭けた犯人の「天使」の特性を逆手に取ったその真相には善悪とは何かを考えさせられましたね。そんな中で青岸が見出してゆく、天使と役割を逆転させたような探偵の存在意義にはなかなか皮肉が効いていて印象的な結末だったと思いました。
28.鈴波アミを待っています
鈴波アミを待っています
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塗田 一帆 早川書房 2022年03月16日頃
Vtuber鈴波アミがデビュー1周年を迎えた夜。しかし待望の配信は始まらず彼女は突如失踪してしまい、諦めない視聴者たちは推しの復帰を信じ続けるVtuber小説。主人公に偶然見出され、かけがえのない日々を積み重ねて成長してきた鈴波アミ。彼女の原因不明の失踪を、1年分の配信アーカイブを同時視聴しながら推しを待ち続ける主人公たちの思い。拗らせすぎて時には揶揄され炎上する主人公には苦笑いでしたけど、彼女を応援してきた人たちの熱い思いを胸に、再びステージへ向かおうとする彼女を支えながら、それでも自分はあくまで1ファンとして彼女を推すその矜持と結末にはぐっと来るものがありました。
29.ツインスター・サイクロン・ランナウェイ(ハヤカワ文庫JA)
ツインスター・サイクロン・ランナウェイ
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小川 一水 早川書房 2020年03月18日頃
人類が宇宙へ広がってから6000年。辺境の巨大ガス惑星では、都市型宇宙船に住む周回者(サークス)たちが、大気を泳ぐ昏魚(ベッシュ)を捕えて暮らしていた。男女の夫婦者が漁をすると定められた社会で振られてばかりだった漁師のテラは、謎の家出少女ダイオードと出逢い、異例の女性ペアで強力な礎柱船(ピラーボート)に乗り組む。体格も性格も正反対のふたりは、誰も予想しなかった漁獲をあげることに――。日本SF大賞『天冥の標』作者が贈る、新たな宇宙の物語!
30.転生令嬢と数奇な人生を
転生令嬢と数奇な人生を1 辺境の花嫁
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かみはら 早川書房 2021年12月02日頃
ファルクラム王国の中流貴族キルステン家の令嬢に転生したカレン。温かい家族に囲まれて幸せに暮らしていたが、14歳の頃、なぜか兄姉弟の中で自分だけ母親の記憶から忘れ去られてしまった。家を出て平民として暮らすことにして2年が過ぎた16の春。ここでまた転機が。皇帝の愛妾となった美貌の姉に呼び戻され、カレンは結婚をすすめられる。平民に落とされた妹を貴族籍に戻そうという姉心であったが、いわゆる政略結婚だ。婿候補は2人いた。侯爵家の次男で容姿端麗・将来有望な騎士ライナルトと妻に先立たれた地方領主のコンラート老伯爵。果たして、カレンの選択は……?
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