【Kindle最大50%ポイント還元】新潮社 書籍 ポイント還元キャンペーン (8/10まで)
今回はKindleストアで「新潮社 書籍 ポイント還元キャンペーン」が開催されるのを受けて、対象商品の中からおすすめ作品を30作品セレクトしました。気になる作品があったらこの機会に読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
1.木挽町のあだ討ち
疑う隙なんぞありはしない、あれは立派な仇討ちでしたよ。語り草となった大事件、その真相は――。ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顛末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。新田次郎文学賞など三冠の『商う狼』、直木賞候補作『女人入眼』で今もっとも注目される時代・歴史小説家による、現代人を勇気づける令和の革命的傑作誕生!
日常に潜む小さな歪みが、違和感とともに浮き彫りになっていってそれが衝撃の結末へと繋がる五つの連作短編ミステリ。家庭教師の派遣サービスに従事する大学生が母子に抱いた違和感、女の子をホテルに連れ込んだ男の真の目的、精子提供によって生まれた自分の娘と会ったことで気づいてしまった思わぬ真実、リモート飲み会から始まる浮気発覚騒動の顛末、ある事件をきっかけに島の人々がやけによそよそしくなった理由。話の流れの中に感じた違和感は何だったのか?そこから導き出される意外な真相と、そこからさらに明かされてゆく思っても見なかった結末にはなかなか強烈なインパクトがありました。
病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。調査に赴いたまま戻らない助手を心配して教団の本拠地に乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。奇蹟を信じる人々に、現実世界のロジックは通用するのか? 圧巻の解決編一五〇ページ! 特殊設定、多重解決推理の最前線!
4.ループ・オブ・ザ・コード
5.神の悪手
6.覇王の譜 (新潮文庫)
7.クローゼット (新潮文庫)
8.か「」く「」し「」ご「」と「 (新潮文庫)
9.わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)
10.コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―(新潮文庫nex)
11.ケーキ王子の名推理(新潮文庫nex)
12.龍ノ国幻想(新潮文庫nex)
13.さよならの言い方なんて知らない。(新潮文庫nex)
14.幽世の薬剤師 (新潮文庫nex)
15.探偵AIのリアル・ディープラーニング(新潮文庫nex)
16.呪殺島の殺人(新潮文庫nex)
17.処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな(新潮文庫nex)
18.エナメル (新潮文庫nex)
19.どうぞ愛をお叫びください (新潮文庫nex)
20.それでも、あなたは回すのか(新潮文庫nex)
21.RE:Bel ROBOTICA/RE:Bel ROBOTICA0 (新潮文庫nex)
22.青の数学(新潮文庫nex)
23.1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)
24.この恋が壊れるまで夏が終わらない (新潮文庫nex)
25.額装師の祈り 奥野夏樹のデザインノート(新潮文庫nex)
26.モノクロの君に恋をする(新潮文庫nex)
27.太陽のシズク~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~(新潮文庫nex)
28.いまは、空しか見えない (新潮文庫)
29.死に至る恋は嘘から始まる(新潮文庫nex)
30.放課後の宇宙ラテ (新潮文庫nex)
疫病禍を経験した未来。世界生存機関に所属するアルフォンソは、児童200名以上が原因不明の発作に見舞われる奇病の現地調査を命じられる近未来小説。20年前に民族のアイデンティティが消去され、再生のテーマパークとも揶揄されるその国での調査中、抹消の元凶となった生物兵器が強奪されて、悲劇の再来を恐れる事務総長から密命を言い渡される展開で、国がなくなってしまうことによってアイデンティティが喪失することの意味だったり、多様な価値観が配慮される未来ではどういうことが起こるのか、やや情報量が多めではありましたけど、思考実験としてもいろいろと考えさせてくれるなかなか読み応えのある一冊でした。
避難所でなかなか勝ちきる手を打たない子がそれでも将棋を指し続けた理由、将棋人生を賭けたアリバイ作りに挑む追い詰められた男、詰将棋雑誌に投稿した訳あり少年の秘められた想い、対戦した棋士二人だけが感じることができる世界、駒師が指定対決の駒選びで感じた複雑な想い。将棋を題材とした運命に翻弄される登場人物たちの連作短編集で、思ってもみなかったことに気付いてしまい、それでも将棋に向き合い、前に進むことしかできない不器用な人々の苦悩や葛藤はどこまでも真摯で、その先に見出してゆく彼らの結末がとても印象に残る物語でした。
プロになって7年。将来を嘱望されながら未だC級2組に留まっている「賞味期限切れの元天才」直江大が、王座としてトップ棋士の一員となった奨励会同期の剛力英明に挑む将棋小説。旧友との間に開いた目も眩むような格差。諦めかけていた彼の転機となった京都の天才少年・高遠拓未との邂逅、棋界の第一人者・北神との対局、そして現在の師である師村の猛特訓。これまで最底辺だった境遇から這い上がろうとする直江が自分の実力を信じ続けることは容易ではなくて、高い壁に何度も跳ね返されながら、それでも諦めず挑み続ける熱い展開とその結末が心に響く印象的な物語でした。
千早 茜 新潮社 2020年11月30日頃
男なのに女性服が好きというだけで傷つけられた過去を持つ芳と、幼い頃のある事件のせいで男性恐怖症を抱えていた纏子。服飾美術館を舞台に洋服の傷みと心の傷みにそっと寄り添うお仕事小説。芳が働くデパートでの特別展示を機に出会った服飾美術館の洋服補修士・纏子。芳は機会あって訪れた服飾美術館でめくるめく服の奥深い世界に魅せられて、美術館の中で働く人たちの雰囲気もなかなか興味深くて、それぞれの過去が繋がってしっかりと向き合い、服だけでなく心もまた少しずつ補修されて、新たな一歩踏み出す展開にはぐっと来るものがありました。
8.か「」く「」し「」ご「」と「 (新潮文庫)
みんなには隠している、ちょっとだけ特別なちから。なんの役にも立たないけれど、そのせいで最近気になって仕方ない。そんなクラスメイト5人のかくしごとがそれぞれの視点で描かれる連作短編集。それぞれ誰にも言えない秘密があって、抱えている想いがある。みんな頑張っているけど不器用だから勘違いして空回りして、傍から見てるともどかしいばかりなんですが、そこで思い切って一歩踏み出してみたらなあんだと思うようなことだったりで、そんな青春している5人が十年後どうなっているのかちょっと知りたくなるような、そんな素敵な物語でした。
苦い過去の経験から定時で帰ることをモットーにウェブ会社で働く東山結衣。ブラック上司に曲者揃いの同僚相手に定時で帰る?仕事する気あるの?という空気の中奮闘するお仕事小説。働き方も婚約者もやや極端から極端に走りがちな感もあった結衣でしたが、無理を精神論で通そうとする天敵の勘違い上司や、同僚や取引先に振り回され続ける展開には共感めいたものを覚えてしまいますね。それでも何とかしてみせた結衣の奮闘っぷりは流石で、婚約者は正直どっちもどっちだけれど、とりあえず巧は止めておいて正解だった気がしました(苦笑)
九州に展開するコンビニ「テンダネス」の門司港こがね村店。勤勉なのに老若男女を意図せず籠絡するフェロモン店長・志波三彦と、彼を慕ってやってくる常連客たちがコンビニを舞台に繰り広げるお仕事小説。バイト野宮が密かに抱えていた後悔、夢と現実の狭間で悩む塾講師・桐山、幼馴染との関係に悩む梓、定年後妻との距離感が分からなくなった夫、パート・光莉の息子・恒星が抱いた疑惑、クリスマスの騒動など、店長や周囲の登場人物たちを絡めたドタバタ劇が楽しくて、その優しさが関わる人たちの心を癒してゆくとてもじんわりと来る物語でした。
美味しいケーキ大好きな女子高生・未羽が、失恋直後に迷い込んだケーキ屋でパティシエ修行をしている同級生の冷酷イケメン王子・颯人に遭遇する物語。少女漫画のような設定や展開でミステリとして見るとあっさりめですが、出会った当初はお互いあまり印象が良くない二人が、夢に向かって頑張る颯人を徐々に応援する気持ちになっていったり、ケーキであっさり釣られるもののイケメンだからといって特別視しない未羽は信用できると感じたり、飾らない二人の距離感が心地良かったです。そんな二人の恋の予感はこれからですかね。続きが楽しみなシリーズです。
一原八洲の一つ龍ノ原で皇尊が崩御。三人の候補が皇位の座を巡り競う状況で、実は女の異端の皇子・日織皇子が運命に翻弄されながら新しい国を目指す男女逆転建国宮廷ファンタジー。龍の声を聞く力を持たない女が「遊子」呼ばれ虐げられる現状を変えるため、男として皇尊を目指す日織。持たざる者と持たない者の邂逅から動き出す運命、そして過酷な現実を突きつける展開にはぐいいぐい読ませるものがあって、多くの人に思いを託されて乗り越えた先に、ここからどういった新展開が待っているのか、未だ先の見えないこの物語には期待感しかありません。
さよならの言い方なんて知らない。
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河野 裕 新潮社 2019年08月28日頃
臆病であることを誇る高校生・香屋歩と幼馴染秋穂が迷い込んだのは、8月がループする街「架見崎」だった。戦闘の役に立たない能力を希望した二人が、乏しい物資を巡る戦争に巻き込まれてゆく物語。設定されたルールの中で戦うゲームのような世界に飛ばされ弱小「キネマ倶楽部」に所属することになった二人が、いきなり戦闘に巻き込まれてゆく展開でしたけど、ゲームの本質を見極めつつ強者との駆け引きの読み合いで一歩先を行く二人は存在感がありましたね。もう一人の幼馴染がちょっと意外でビックリでしたが、続巻でどうなるか期待のシリーズです。
紺野 天龍 新潮社 2022年03月28日
自身が専門とする漢方と現代医療の狭間で苦悩する薬剤師の空洞淵霧瑚。そんな彼が帰り道で不思議な少女に導かれ、幽世で謎の感染現象に苦しむ人々に直面する異世界医療ファンタジー。認識が現実を書き換えてしまう異世界で急増する吸血鬼化のような症状。幽世の巫女・御巫綺翆のサポートを受けながら、漢方の知識を活かしてその症状を緩和して原因を探ってゆく霧瑚。ふとした気付きから真相に至るまでの展開はなかなかテンポも良くて、わりと鈍感気質な霧瑚を巡る人間模様も気になるところですが、一方で霧瑚と幽世にもいろいろと因縁もありそうな様子が垣間見えてきて、この物語の続きをまた読んでみたいと思いました。
探偵AIのリアル・ディープラーニング
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早坂 吝 新潮社 2018年05月29日頃
密室で謎の死を遂げた人工知能研究者の父。その死に疑問を持った高校生の息子・輔が、探偵AI・相以とともに父を殺した真犯人を追う過程で、犯人AI・以相を奪い悪用するテロリスト集団「オクタコア」の陰謀を知るミステリ。対となる存在の探偵と犯人という双子AI。明らかになる人工知能による世界統治を目指すオタクコアの存在。分かりやすい解説を加えながら語られる発展途上の存在から深層学習で成長する人工知能たちを軸とする展開は、やや強引かなと感じられる部分もありましたがなかなか興味深くて楽しめました。
呪術者として穢れを背負った赤江一族が暮らした呪殺島。伯母・赤江神楽に招待され、友人の古陶里とともに島を訪れた秋津真白が、記憶を失い神楽の遺体の前で目を覚ます密室ミステリ。ミステリ作家の神楽に招かれた8人が密室状態の殺人事件に遭遇し、連絡も絶たれた孤立状態で発生する連続殺人という典型的な展開でしたが、お互い疑心暗鬼な状況で肝心の真白が記憶を失っていることも効いていて、前提を覆される意外な事実と人物配置の妙、これこそ呪いだったのかと唸らされた結末がなかなか印象的でした。
処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな
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葵 遼太 新潮社 2020年05月28日頃
留年して二回目の高校三年生となった佐藤晃に話しかけてきた同級生・白波瀬巳緒。それをきっかけに居場所がないと思っていた学校で周囲に輪ができて、かけがえのないものを取り戻してゆく喪失と再生の青春小説。留年の経緯で明らかになってゆく深い愛には驚かされましたが、あっけらかんとしたギャルの白波瀬巳緒、綺麗な声が耳に残る少女・御堂楓、そしてアニメ好きな和久井と出会い、大切な友人・藤田たちにも支えられながら、みんなで結成したバンドを通して熱い想いをぶつけ合い、未来に希望を見出してゆく結末にはぐっと来るものがありました。
寝たきりの高飛車美少女で大金持ち天才探偵の甘宮メルと、彼女に献身的に付き従う寡黙な彼氏兼助手の江名。二人が都市伝説や日常の謎を気まぐれに解決してゆく青春全否定暗黒恋愛ミステリ。女子高校生小説家をめぐる嘘と真実、殺人鬼予備軍をめぐる顛末、もうひとりの幼馴染との再会と格差再生産、二人のデートと過去の真相。二人にもとにもたらされる重い社会的テーマを背景とした事件の解決に挑む展開でしたけど、何よりも一見強気そうでもどこか不安で何回もエナを試してしまうメル、掘り下げれば掘り下げるほど、その献身は贖罪なのか愛なのか考えてしまうエナの何とも絶妙な関係がとても印象に残る物語でした。
引っ込み思案で帰宅部の松尾が幼馴染の織田に「ユーチューバーやろうぜ」と誘われ、戸惑いつつも織田と同じバスケ部の面白担当・坂上、軽音部で一つ年上の個性派イケメン・夏目も誘ってゲーム実況に挑戦する青春小説。普段なら接点のないタイプの仲間たちと、気軽に始めたゲーム実況動画配信の思っていた以上に大変な現実。人気が出てきたからこその楽しいだけではない葛藤もあって、窮地にもきちんと向き合える彼らの育んできた友情があって、それを乗り越えてずっと見守っていくれていた大切なものを取り戻す結末はなかなか良かったですね。
編集者になりたくて出版社を受けるも、就職活動がまったく上手くいかず、ソーシャルゲーム開発会社に入社した友利晴朝。そんな彼が同期の青塚凛子と「サ終(サービス終了)」と呼ばれる赤字チームに配属されるお仕事小説。拾い上げからから始まった社会人生活で待っていたのは自社のゲームプレイ。周囲の言葉も刺さって、少しずつやるべきことの理解を深めていった中で起きたチームの危機。今できることをやろうと奮闘した結果自体は及第点でも、自らは本当にこれだけしかできなかったのか。突きつけられた悔しさを乗り越えて頑張って欲しいですね。
RE:BEL ROBOTICA -レベルロボチカー
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三雲 岳斗/Mika Pikazo 新潮社 2022年09月28日
2050年の東京渋谷。先天的なバグ体質で、高度な超越現実(MR)社会の恩恵を受けらない高校生・タイキと、ある事件をきっかけに同居する超高度AIの美少女・リリィが旧資料館の亡霊に挑む近未来SF小説。学校内で囁かれる旧資料館の亡霊(ブレーメン)の噂、失踪したMRペット、クラスメイトの不可解な自動ミュート、辿り着いた怪物・キラモンの正体。真似をしても顧みられない複雑な思い、そしてバラバラに思えたぞれぞれの出来事が少しずつ繋がっていって、調査するリリィとタイキの凸凹コンビに、彼の幼馴染くるみやオタクMRゲーマー・アサトたちを巻き込みながら事件を解決してゆく展開はなかなか面白かったです。事件の鍵を握る二人の謎も残ったままで、秘密を共有した彼らの今後に期待のとても楽しみな新シリーズです。
RE:BEL ROBOTICA 0 -レベルロボチカ 0-
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吉上 亮/Mika Pikazo 新潮社 2022年09月28日
2050年、東京。脳内MRチップにより便利で快適な生活を享受する超越現実(MR)社会で、原因不明のMRバグを抱えた高校生・タイキと、屋上で一人の少女が出会う近未来SF小説の前日譚。二人が出会うきっかけとなった空飛ぶ幽霊の噂。調べてゆくうちに明らかになってゆくMRアバター連続投身自殺。そんな中で屋上で謎のAI少女リリィと運命的な出会いを果たして事件解決に協力する展開で、真相に迫る中で二人が気づく否定された切ない思い、そして育まれてゆく彼らの絆があって、シリアスなストーリーのわりにはどこかしまらない結末でしたけど、だからこそ始まった二人のこれからの物語がとても楽しみです。
数学オリンピックを制した女子高生・京香凜と、雪の日に偶然出会った高校生の栢山。「数学って、何?」と問いかける彼女に意識され、それに触発されるように栢山もまた数学にのめり込んでゆく青春小説。若き数学者が集うネット上の決闘空間「E2」。そこで他校のライバルたちと出会い競う中で、香凜に対する答えを探す栢山。立ち位置が違う友人たちや考え方が異なるライバルたちと対比させながら、理由も分からないままひたむきに数学に向き合い続ける栢山の姿はとてもまっすぐで、ここから物語として広がっていきそうな今後の展開が楽しみですね。
由井が好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。ひりひりと肌を刺す恋の記憶。出口の見えない家族関係。人生の切実なひと筋の光を描く恋愛連作短編集。母子家庭で絶望的な日々を送る由井と桐原の恋。彼女の親友ミカが再会した高山に抱く複雑な想い、家族関係に鬱屈を抱える泉と高山の関係と別れ。それぞれが絶望の中に見出した鮮烈な想いとすれ違いが描かれる中で、少しずつ明らかになってゆく由井が紆余曲折の末に得た未来はわりと幸せそうで、だからこそ最後に描かれたエピソードと桐原の手紙が意味することをいろいろと考えてしまいました。
この恋が壊れるまで夏が終わらない
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杉井 光 新潮社 2022年04月26日
時を遡る力を持つ高校生・柚木啓太。彼が初めて恋をした先輩が夏休み最後の日に凄惨な死体で発見され、先輩を救うために時を遡るタイムリープ青春グラフィティ。力もさして活用せずひっそりと過ごしてきた彼が、密かに恋をした図書委員の純香先輩。放課後は司書室に入り浸り、勧められるままに美術部に入部して絵を描いた啓太が直面する悲劇。遡るたびに変わる状況、止まらない彼女の死、ボロボロになりながら明らかになってゆく状況がまた何ともほろ苦くて切ない気持ちになりましたけど、けれどそれだけでは終わらない、その先に待っていたもうひとつの結末がなかなかに効いていて、著者さんらしいとても印象的なひと夏の物語に仕上がっていました。
事故で婚約者を喪った額装師・奥野夏樹。少し変わった依頼でも真摯に向き合う夏樹が、彼女の作品の持つ雰囲気に惹かれた表具額縁店の次男坊・久遠純と出会う物語。時には依頼人の想いを暴いてしまう一方で、婚約者との過去にどう向き合うべきか悩む不器用な夏樹と、掴みどころのない純との微妙な距離感。そして二人の重要な過去に繋がる池端の存在。明らかになっていったそれぞれの過去に向き合うことにはほろ苦さも伴いましたけど、そんな自分に寄り添ってくれる存在がいて、新たな一歩を踏み出す姿が描かれる結末にはぐっと来るものがありました。
浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。
太陽のシズク 〜大好きな君との最低で最高の12ヶ月〜
posted with ヨメレバ
三田 千恵 新潮社 2019年10月29日頃
死に至る「宝石病」を患い海の見える高校に転校してきた理奈。親友や彼氏を作って最高の学園生活を送ろうと決意する理奈と、彼女のために受験を頑張る翔太が過ごした最高の12ヶ月の物語。運命の恋人と出会い、印象的な出会いを果たした美里と様々な出来事を経て大切な親友となってゆく理奈。彼女と自分の夢のために受験勉強する翔太が予備校で出会った仲間たち。違う時を過ごす中で不安やすれ違いもあって、それでも二人で育んできた確かな絆があって。そんな二人のかけがえのない日々を必ず読み返したくなる、とても鮮烈で印象に残る物語でした。
抑圧する父親に反発して日帰り旅行を決行したホラー映画好きの優等生・智佳。偶然長距離バスで乗り合わせた同級生のギャル・優亜と出会い、人生が変わってゆく連作短編集。父親に縛られていた智佳、祖母の呪縛を看取った母、辛い過去に苦しめられる優亜、そして彼女の背中を押してくれた翔馬との出会い。外の世界を知って飛び出してみてもそうそう現実は甘くなくて、それでも多くの人と出会ってゆく中で、過去は断ち切れなくてもきちんと向き合えるようになってゆくその結末には心に響くものがありました。文庫書き下ろしショートストーリーも良かったです。
高二の夏、教室で息を潜めて日々をやり過ごしていた宮下永遠の前に現れた転校生・長瀬刹那。傷だらけの嘘から、永遠と刹那の恋が始まる苦くて甘い恋と嘘の物語。交換条件で一週間だけ恋人になった、高慢で傍若無人な自称・人魚の美少女転校生・刹那と、心を閉ざし続ける傷だらけの永遠。正反対の二人が強烈に惹かれ合うようになっていくからこそ、暴かれてしまう隠されていた嘘。登場人物たちの印象をガラリと変えてゆく苦い過去の真相は何とも鮮烈でしたけど、改めて気付かされてしまう二人の命がけの恋の結末には切ないものを感じてしまいました。
高校生になって超常現象なんか信じない平凡な青春を過ごすつもりだった圭太郎。しかし幼馴染の未想が持ってきた数理研の廃部室の鍵が、退屈な日々を一変させる青春SF小説。実質オカルト研だった数理研の部室で出会った自称超能力者の転校生・曖。彼女の消えた夏休みの記憶と怪しいの機械を自作しての人体実験。仲良くなってからはほんと楽しそうだなあと読んでいたら、後半は思ってもみなかった斜め上の展開が待っていて、いろいろツッコミを入れたくなりましたけど、それを何となくいい感じにまとめあげていった着地点はなかなか良かったですね。
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