読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

今だからこそ読みたい!ライト文芸15選

ということで第三弾ライト文芸編です。一般文庫とライト文芸で一本作ろうと思ったのですが、選んでみたら一本ずつ作れそうなので別に作りました。先の2つもそうですが、いつも選んでいるのをセレクトすると目新しさがないので、あまりこれまでセレクトしてこなかったけれど、印象に残っている作品を選んでみました。違う視点から考えると意外と新鮮ですね。一般文庫編もセレクト自体はしてあるので、整理して更新します。

 

1.青の数学 (新潮文庫nex) ※2巻まで刊行。

青の数学 (新潮文庫nex)

青の数学 (新潮文庫nex)

 

数学オリンピックを制した女子高生・京香凜と、雪の日に偶然出会った高校生の栢山。「数学って、何?」と問いかける彼女に意識され、それに触発されるように栢山もまた数学にのめり込んでゆく青春小説。若き数学者が集うネット上の決闘空間「E2」。そこで他校のライバルたちと出会い競う中で、香凜に対する答えを探す栢山。立ち位置が違う友人たちや考え方が異なるライバルたちと対比させながら、理由も分からないままひたむきに数学に向き合い続ける栢山の姿はとてもまっすぐで、ここから物語として広がっていきそうな今後の展開が楽しみですね。

 

2.ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

  • 作者:葦舟 ナツ
  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: 文庫
 

突然見知らぬ女性に三つの質問を問いかけられた雪の日。誰も好いたことがない掛橋啓太が問いかけた大野千草と夫婦になり、平穏な彼女との生活の中で過ぎ去った過去の日々を追憶させてゆく物語。お互いの過去を知らないまま三つの質問という契約によって夫婦になった二人。引きこもりの兄と共依存関係にあった母との辛い過去。徐々に惹かれ合っているのを自覚するがゆえに、じわじわと重くのしかかってゆく三つ目の質問。それぞれが抱える壮絶な過去も二人でなら乗り越えられると思えただけに、淡々と綴られたその不器用な結末には衝撃を受けました。

 

3.ななもりやま動物園の奇跡 (メディアワークス文庫)

ななもりやま動物園の奇跡 (メディアワークス文庫)

ななもりやま動物園の奇跡 (メディアワークス文庫)

  • 作者:上野遊
  • 発売日: 2016/07/23
  • メディア: 文庫
 

別居中の妻を事故で亡くし、高校生の一人娘・美嘉との関係は冷えきったままの不動産屋社長・幸一郎。そんな時3人の思い出の動物園が閉園危機にあると知り、美嘉の笑顔を取り戻すため何の知識もないまま動物園再建を決意する物語。最初は家族のためだったはずが、いつの間にか仕事一辺倒の状況にすれ違ってしまった関係。一縷の望みを託し動物園再建へ奔走してしまう幸一郎は本当に不器用だと思いましたが、その苦難にも諦めず立ち向かう姿に周囲も協力してくれて、どうにか修復に向けた一歩を踏み出せたことにとても温かい気持ちになれました。

 

4.モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

 

浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。

 

5.三日月邸花図鑑 花の城のアリス (講談社タイガ)

三日月邸花図鑑 花の城のアリス (講談社タイガ)

三日月邸花図鑑 花の城のアリス (講談社タイガ)

  • 作者:白川 紺子
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: 文庫
 

父が亡くなったことで、大名庭園を敷地内に持つ三日月邸を相続し、探偵事務所を開業した八重樫光一。そんな事務所を訪れた不思議な少女・咲に出会い三日月邸を巡る謎に迫る和風ファンタジー。「庭には誰にも立ち入らないこと」という亡父の謎の遺言。咲と踏み入った庭で出会った人々の悔恨と、彼らのためにそれを解消してゆくお人好し探偵・光一。八重樫家とは険悪の仲と聞いていた牧家の兄妹たちとの出会いがあって、明かされる過去や庭園の真相には切ない気持ちになりましたが、光一と不器用な牧兄妹たちのやりとりが妙にツボにハマる物語でした。

 

6.向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

  • 作者:羊, 友井
  • 発売日: 2016/08/27
  • メディア: 文庫
 

ストーカー対策員原向日葵19歳。実は元ストーカーの過去を持つ彼女が、接近禁止を言い渡された元恋人を殺人現場で見かけてしまい、再び運命が動き出すほろ苦青春ミステリー。容疑者とされた彼の無実を何とか証明したいと思うものの、すれ違いの結果として接近禁止になった過去から行動を制限されている向日葵。頭では理解していても強い想いに揺れる彼女の複雑な葛藤が痛いほど伝わってきて、その自らの思考に向き合うことが事件解決の伏線に繋がってゆく皮肉な結末でしたけど、前に進むことを決意した彼女の幸せを願わずにはいられませんでした。

 

7.蝶が舞ったら、謎のち晴れ (新潮文庫nex)

天気予報が大嫌いな気象予報士菜村蝶子と、腐れ縁で蝶子がデイトレ探偵と揶揄する幼馴染右田夏生の元に舞い込む、ささやかで奇妙な依頼の数々。降らなかったはずの雨や半世紀以上前の雷探しなど、二人がああだこうだ言い合いながら挑む謎は、お天気絡みであると同時に誰かを想う気持ちを解き明かすことでもあり、雨上がりのような清々しい気分になれる読後感でした。毎回無愛想で気象解説が意味不明、夏生への皮肉まで織り込んでくるバタフライ蝶子、最初は彼女に振り回されながらも名コンビになってゆく女子アナの二人による天気予報は必見です。

 

8.木崎夫婦ものがたり (富士見L文庫)

著名な作家を父に持つ文筆家の島田ゆすらと、偶然出会った木崎修吾の電撃結婚。父の残した家で共同生活を始めた新米夫婦の日々が綴られてゆく物語。不安定だったゆすらと優しい木崎の美味しいものを食べたり、のんびりと寄り添うような夫婦生活。一方で作家としての自分のありように苦悩するゆすらのこと、作家だった父やふらりと家を出た弟の存在だったり、複雑な想いを抱く幼馴染・崇の存在もあったり、もしかしたらの可能性に切なくなりつつも、夫婦として作家として生きてゆくことにきちんと前向きになれた結末にはぐっとくるものがありました。

 

9.原之内菊子の憂鬱なインタビュー (小学館文庫キャラブン!)

崖っぷち編プロ「三巴企画」の戸部社長と桐谷が弁当屋で見出した原之内菊子。その顔を見た者は自分語りが止まらなくなってしまう特殊能力を活かして、インタビューとして働くお仕事小説。引き出される本音ダダ漏れのインタビューに悪戦苦闘しながらも可能性を感じる桐谷と、自らも苦悩しながらそこに居場所を見出してゆく菊子。苦い過去を積み重ねてきた彼女が特殊能力によってもたらされた事態の重さに逃げ出して、それでもそんな彼女が必要だと追いかけてきた二人や周囲の人たちに認められ、乗り越えてゆく優しい結末はなかなか良かったですね。

 

10.終わりの志穂さんは優しすぎるから (メディアワークス文庫)

東京のはるか南に位置する咲留間島。夏の間に画家として納得できる作品を描けなければ、筆を折ってこの島に骨を埋めようと覚悟して絵を描く森公一朗が、ミステリアスな雰囲気を持つ志穂さんと出会うひと夏の物語。なぜこのような場所にいるのか、いかにも訳ありに見える志穂さんと、島にやってきた志穂の妹・紫杏たちと交流しながら絵が完成に近づいていく一方、疑惑を深めていく公一朗が見つけてしまったモノの真実。できることなら二人がもっと違う形で出会うことができれば良かったですが、これはこれでこの物語らしい優しい結末だと思いました。

 

11.逆転ホームランの数式 (メディアワークス文庫)

仕事にのめり込んで家族に愛想を尽かされた元エリート社員の八雲。野球少年の息子と元妻に再び認めてもらうため、野球経験なしの身から初戦敗退の秋上高校野球部の監督に就任し、転落の元エリートと弱小野球部が奇跡を起こす物語。最初は気持ちも分からず最悪だった部員たちとの出会い。そこから彼らと向き合いながら進めていった、データに基づく合理的な練習と意識改革。興味深い練習に八雲や部員たちの葛藤やそれぞれの想いもあったりで、八雲の息子もいる横道学院との練習試合で果たしたひとつの決着にはなかなかぐっと来るものがありました。

 

12.推定失踪 まだ失くしていない君を (集英社オレンジ文庫)

外務省のグレーゾーンな仕事を引き受ける外交官として働く桐島に宛てて、東南アジアの国・ビサワンで働く元恋人・亜希から謎めいたメールが届き、失踪した彼女を探すためビサワンへ飛ぶ物語。子供兵士の救済を目的とした国際NGOで働いていた亜希の失踪を探るうちに、ビサワンを巡る政情不安な状況に巻き込まれてゆく桐島。各国間の事情や利害関係に振り回されても諦めずに活路を見出そうとする中で、謎めいた彼女の過去も明らかになっていって、何ともやるせない結末でしたけど、最後まで真摯であろうとした彼女のありようはとても印象的でした。

 

13.少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

  • 作者:紙上 ユキ
  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: 文庫
 

周囲に迎合しグループ内で平穏に生きていくことに全力を傾けてきた女子高生の小野ひなた。ある日、憧れの同級生結城さんに誘われグループの約束をドタキャンしたことで周囲から孤立してしまう青春小説。これまで無難に生きることに心を砕いてきたはずが、偶然結城の秘密を知り興味を抱いたことで結果的に失った自分の居場所。息苦しい狭い世界でどう生きるのかというお話でしたけど、焦燥を募らせていた彼女が姉や師匠、結城さんなど、たくさんの人と話し合い悩みながらもこれまでの自分を省みて、大切なことを見出してゆく姿はとても印象的でした。

 

14.即興ワルツ 青遼競技ダンス部の軌跡 (富士見L文庫)

即興ワルツ 青遼競技ダンス部の軌跡 (富士見L文庫)
 

問題を抱える実家から抜け出し大学で一人暮らしを始めた成島拓海が、懇親会で出会った同級生橋本秋帆によって競技ダンス部に勧誘される物語。高身長の秋帆に釣り合う存在として190cmの大柄なポテンシャルを見込まれ、とりあえず夏までと嫌々ながら始めた拓海。物語はそんな彼が多くの人との出会いや秋帆のことを知ってゆくうちに競技ダンスの楽しさに目覚めてゆく王道展開で、パートナーと向き合う大切さだけでなく、チーム競技でもある競技ダンスの面白さがひしひしと伝わってくる爽やかな青春小説でした。

 

15.そして僕らはいなくなる (講談社タイガ)

そして僕らはいなくなる (講談社タイガ)

そして僕らはいなくなる (講談社タイガ)

 

優等生の「着ぐるみ」をかぶって生活する高校生・宗也。帰宅の遅い幼馴染を捜しに出かけ事故に遭った宗也は断片的な幻覚に襲われるようになり、クラスで孤立する志緒と謎を追う青春ミステリ。不可思議な幻覚を共有した志緒と関わり、事件の真相を追ううちに少しずつ変わってゆく宗也の日常や心境。誰もが複雑な思いを抱える登場人物たちの心理描写は繊細で、幻覚を頼りに迫った事件の意外な真相は明示されないまま推測するに留まりましたが、それでもぐいぐい読ませる緊張感のある展開と、彼らが迎えた悪くない結末には充実した読後感がありました。

 

以上です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。