読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

オススメお仕事小説ライト文芸編20選

前から作ろうと思いながら、忙しくてなかなか着手できていなかったお仕事小説企画ですが、少しだけ時間ができたのでまた勢いで作りました(苦笑)ライト文芸編と一般文庫編でそれぞれ20作品セレクトする予定です。さいきんお仕事小説めいた作品は増えていて、候補の作品数としてはわりとあったので、今回あやかしとかファンタジーめいた要素が絡む作品は除外しています。

 

どれを入れるのか入れないのか、これはお仕事小説にしていいのか等々...いろいろな意味でボーダーライン上の作品についてはいろいろ悩ましい部分もありましたが、あまり多すぎてもあれなのでえいやと決めました。一般文庫編も近いうちに公開予定です。これが終わったら部活小説も構想にありますが、いつになるかは忙しくならないことを祈るしかないですね…(遠い目

 

1.これは経費で落ちません!  (集英社オレンジ文庫)

入社以来経理一筋、きっちりとした仕事ぶりで評価される森若沙名子27歳。過剰なものも足りないものもないことを理想とする生活を送る彼女が、社内外で次々と起こる経理絡みの問題に巻き込まれてゆく物語。特に噂好きでもなく、社内の複雑な人間関係からどこか一歩引いた位置にいる彼女。怖いと誤解されてしまうこともあるけれど、やや不器用なだけできちんと相手を気遣える優しさを持っていて、幸せになりたくないわけじゃないんですよね。実はみんなに慕われていて、そんな彼女がいいと言ってくれる同僚の存在に気づく結末はとても良かったです。現在5巻まで刊行。

【関連作品】「風呂ソムリエ 天天コーポレーション入浴剤開発室」(集英社オレンジ文庫

2.Bの戦場 (集英社オレンジ文庫)

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

 

物心ついた頃からブスで、結婚式に憧れ自分は無理でもそれを演出する人になろうと、ウェディングプランナーになった北條香澄。そんな彼女が絶世のブスと絶賛されやり手で絶世の美男子・久世課長に求婚される物語。これでもかと香澄のブスっぷりを真正面から突きつけられる展開は少なからずグサグサ突き刺さりましたが、さらに突き抜けている久世課長の存在感(苦笑)そういう決断しちゃうのかーとは少し思いましたが、お仕事小説としても面白かったですし、仕事に真摯に向き合う香澄の姿勢やその人柄が愛されているのが伺えてなかなか良かったです。全6巻。

3.ゆきうさぎのお品書き (集英社オレンジ文庫)

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

 

貧血で倒れた大学生の碧が、小料理屋「ゆきうさぎ」を営む青年大樹に助けられ、バイトとしてとして働くことになる物語。母を亡くして食が細くなっていた碧や大樹が女将から跡を継ぐ前は常連だった父、お向かいの洋菓子店の兄妹やお店の常連客など、周囲の身近な人たちとの相手を思いやるような交流だったり、美味しそうな料理とらしさを取り戻した大食漢・碧の食べっぷりとか、猫の武蔵も存在感があって、特に目新しさはなかったですけど、心温まるような雰囲気が読んでいてとてもいいなと思いました。現在7巻まで刊行。

4.ちどり亭にようこそ  (メディアワークス文庫)

京都・姉小路通沿いにある仕出し&弁当屋「ちどり亭」。店主の花柚さんと彼女に料理を教わるバイトの大学生・彗が、お弁当を作りながら周囲の人たちと交流してゆく物語。家付き娘で毎週お見合いをして人脈を広げている残念な花柚さんと、同級生に密かに恋する彗の二人で読んでいるだけでも美味しそうな料理を作りながら、お弁当を作る手助けをしたり、一緒に花柚さんの師匠を看取ったり、そして花柚さんの元婚約者との切ない関係だったり、不器用でなかなか素直になれない人たちの一途でくすぐったい気分になる優しい思いに満ちた素敵な物語でした。全4巻。

5.日本酒BAR「四季」春夏冬中 (メディアワークス文庫)

新潟の酒蔵で親と衝突し、東京に出てきたものの行き倒れになりかけていた冴蔵が、恵比寿の片隅で「四季-Shiki-」を営む楓さんに救われ二人で日本酒BARを再開する物語。その出会いは日本酒に詳しい夫が亡くなってから実質的に料理屋状態だった楓にとっても、衝突し家を出てきた冴蔵にとっても転機で、二人が力を合わせて訪れる人達ときちんと向き合って信頼関係を育んでいったことで、それぞれが抱えていたものを乗り越える支えとなる展開はとても良かったです。全2巻。

6.笑う書店員の多忙な日々 (メディアワークス文庫)

笑う書店員の多忙な日々 (メディアワークス文庫)

笑う書店員の多忙な日々 (メディアワークス文庫)

 

東京の小さな書店で新人バイトの紗和が直面する現実。そんな彼女に仕事を教える文庫文芸担当の楠奈津が、某出版社から持ち込まれた新人デビュー作のゲラに衝撃を受けて全店フェアを提案するお仕事小説。都内の書店でもこれくらい過酷な職場環境なのかと感じつつ読みましたが、書店が大好きで仕事に取り組む書店員たちがいきいきと描かれていて、初心者の紗和と経験を積んだ奈津の両視点から書店を描こうとして視点の切り替わりが多かったのはやや気になったものの、周囲も巻き込んで一丸となって本を売りに行く展開にはぐっと来るものがありました。

7.装幀室のおしごと。 ~本の表情つくりませんか?~ (メディアワークス文庫)

きちんとゲラを読んで理解し、本の表情を生み出すのが装幀家の役割だと信じる本河わらべが、出版社の合併で本の内容には目を通さない主義の巻島と組むことになり、ことあるごとに衝突しながらも本の装幀を作り上げていく物語。最初はゲラを読む読まないだけでなく、本に似合う装幀を作りたいと思うわらべと、多少強引でも売上に繋がるような装幀を意識する巻島が毎回衝突して苦笑いでしたけど、試行錯誤していく過程で徐々に連携も取れるようになったり、二人がそんな装幀を意識するきっかけに思わぬ顛末が待っていたりとなかなか楽しく読めました。全2巻。

8.雨ときどき、編集者 (メディアワークス文庫)

急逝した担当人気作家・樫木の死から立ち直れずにいた編集者・真壁が、生き別れたドイツ人の父親に本を届けて欲しいという樫木の遺言を実現するために奮闘する物語。ベストセラーでも海外向けの翻訳はごくわずかという厳しい現実に直面しながら、諦めずに道を探ったり運良く出会えたドイツ人翻訳者ルイルイと衝突したり、和解して理解を深めていく過程は、真壁自身にとっても樫木の死を受け止めて前に進むために必要なことだったのかなと思えた心地よい読後感の物語でした。

9.先生、原稿まだですか! 新米編集者、ベストセラーを作る (集英社オレンジ文庫)

先生、原稿まだですか! 新米編集者、ベストセラーを作る (集英社オレンジ文庫)

先生、原稿まだですか! 新米編集者、ベストセラーを作る (集英社オレンジ文庫)

 

念願かない百万書房に編集として入社した新入社員の平摘栞。大ヒットのデビュー作以降筆を止めていた憧れの作家や、ベテラン作家の新作を担当し編集業に奔走する物語。3年以内に100万部を超えるベストセラーを出せなければ、出版社を辞め見合いして結婚することを両親と約束して就職した栞。どうにか繋がりを持てた憧れの作家との意外な縁。「売れる本とは?」という難題。細部で首を傾げる箇所もありましたが、総じてテンポよく進むストーリーは読みやすく、奔走する栞の姿は素直に応援したいと思えました。続巻あるならまた読んでみたいです。

10.兼業作家、八乙女累は充実している (メディアワークス文庫)

突然の婚約破棄に昇進取り消し。順風満帆からまさかの人生のどん底に陥った大手通信会社営業・八乙女累が一念発起して書いた小説で小説新人賞を受賞し兼業作家デビューを果たすお仕事小説。ヤケを起こし迷走した果てに原点回帰して挑戦した小説新人賞。厳しいダメ出しをする鬼編集と組むことになり、仕事の方も大変なことばかりで厳しいと思いましたが、きちんと見据えて頑張ってみれば見えることもあるし助けてくれる人もいるんですよね。どうにか兼業作家のスタートラインに立てた今回、周囲との人間関係も気になりますし続巻を読んでみたいです。

11.原之内菊子の憂鬱なインタビュー (小学館文庫キャラブン!)

崖っぷち編プロ「三巴企画」の戸部社長と桐谷が弁当屋で見出した原之内菊子。その顔を見た者は自分語りが止まらなくなってしまう特殊能力を活かして、インタビューとして働くお仕事小説。引き出される本音ダダ漏れのインタビューに悪戦苦闘しながらも可能性を感じる桐谷と、自らも苦悩しながらそこに居場所を見出してゆく菊子。苦い過去を積み重ねてきた彼女が特殊能力によってもたらされた事態の重さに逃げ出して、それでもそんな彼女が必要だと追いかけてきた二人や周囲の人たちに認められ、乗り越えてゆく優しい結末はなかなか良かったですね。

12.ななもりやま動物園の奇跡 (メディアワークス文庫)

別居中の妻を事故で亡くし、高校生の一人娘・美嘉との関係は冷えきったままの不動産屋社長・幸一郎。そんな時3人の思い出の動物園が閉園危機にあると知り、美嘉の笑顔を取り戻すため何の知識もないまま動物園再建を決意する物語。最初は家族のためだったはずが、いつの間にか仕事一辺倒の状況にすれ違ってしまった関係。一縷の望みを託し動物園再建へ奔走してしまう幸一郎は本当に不器用だと思いましたが、その苦難にも諦めず立ち向かう姿に周囲も協力してくれて、どうにか修復に向けた一歩を踏み出せたことにとても温かい気持ちになれました。

13.農村ガール! (メディアワークス文庫)

農村ガール! (メディアワークス文庫)

農村ガール! (メディアワークス文庫)

 

営業として月見食品に就職した華の勤務先は秋田の山奥にある営業所。赴任初日に熊に襲われたが偶然職場の上司に救われ、仕事では思ってもみなかった獣害駆除を任されるお仕事小説。農村ガールというより契約農家のお仕事もお手伝いしつつ害獣駆除をお仕事とする展開はちょっと新鮮でしたけど、実際に猟銃を撃つとなると実際に従事するまでの手続きはいろいろ煩雑なんですね。最悪の出会いから始まった上司との関係の変化や、体育会系思考の都会人・華が手痛い失敗をしながらもそれを乗り越えて成長してゆく姿が描かれていてなかなか良かったです。

14.農業男子とマドモアゼル イチゴと恋の実らせ方 (富士見L文庫)

結婚の当ても外れ職も失った状態で30歳を迎えた恵里菜。婚活を調べるうちに見かけた長野県へのバスツアーに参加した彼女が、それをきっかけに長野に移住して手探りで手探りで飛び込む恋と農業ライフ。イケメンとの衝突というきっかけがあったとはいえ、知らない土地・知らないことだらけでゼロから飛び込む勇気はなかなか出ないよなあとか感じたりもしましたが、歳下の優真の助力を得て心機一転農業のいろはを学びつつ真摯に取り組んだり悩んだりな姿には好感。二人の関係にもこれから進展の余地はあるのか気になるシリーズ。現在2巻まで刊行。

15.ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

 

イラストの仕事だけでは食べていけず、夢破れて生きるために親に内緒で地元タウン誌を発行する会社の事務員として採用された夏実。その個性的な面々が集うブラック企業ぶりを描くお仕事小説。周囲の同僚がだらしない人たちで振り回されたり、仕事をスムーズに動かすために始発で行って仕事とか考えるあたりが、すでにもう重症だなと思わなくもないですけど、それはそれとして社会人として仕事をしっかりこなす夏実だからこそ周囲から信頼されるのも納得ですね。大変なことに巻き込まれましたが、林さんとの今後が気になりますね。現在3巻まで刊行。

16.要・調査事項です! ななほし銀行監査部コトリ班の困惑 (集英社オレンジ文庫)

要・調査事項です! ななほし銀行監査部コトリ班の困惑 (集英社オレンジ文庫)

要・調査事項です! ななほし銀行監査部コトリ班の困惑 (集英社オレンジ文庫)

 

顧客をクレーマー化させてしまったことを気に病み、辞職を考えていた入行一年目の小林髙。そんな彼が二年目の年度初めに支店から本部の監査部の個人取引担当―通称コトリ班へ異動するお仕事小説。外貨の偽札や通帳のトラブルといった要調査案件に、上司の矢岳に見守られつつ、きれいだが愛想のない多岐川千咲とコンビを組んで調査する構図で、関係なさそうだった事件が繋がっていって、高の着目や人間関係が事件解決のヒントになったり、少しずつ距離感も変わってきた多岐川千咲とのコンビがこれから面白くなりそうです。

17.銀行ガール 人口六千人の田舎町で、毎日営業やってます (メゾン文庫)

銀行ガール 人口六千人の田舎町で、毎日営業やってます (メゾン文庫)
 

都会に行ってモデルになることを夢見ながら、地方銀行の営業として働く五十嵐吟子、24歳の奮闘が描かれるお仕事小説。渉外として顧客を訪れる吟子の元に次々と舞い込む厄介な相談。戦前から続く雨漏り食堂の修繕費用融資から、リサイクルショップ立ち退き交渉、振り込め詐欺犯逮捕、町おこしに離婚して生き別れた父の過去が絡んできたり、かつての想い人との久しぶりの再会もあって、困っている人たちのために周囲の助けも借りながらアイデアをひねり出し、奔走するうちに自分の目指すところを見出してゆく吟子の姿には心に響くものがありました。

18.やくしょのふたり (メディアワークス文庫)

勤めていた東実電器から急な出向を命じられた社会人3年目の矢田聡司が、痴漢に間違われたところを助けてくれた鏑木彩佳と出向先の消費者省で再会する物語。流されるまま出向先にやってきた聡司が、抱えている想いから苛烈に不正を追求する彩佳に触発され、一方で彩佳もまた徐々に巧みにフォローをする聡司に感化されていくストーリーで、彼らが関わる過去の大切な思い出や悲しい事件も絡めつつ、困難な状況を諦めない二人の熱意が周囲をも巻き込んでいく展開はなかなか良かったですね。心地よい読後感を感じさせる結末でした。

19.長崎新地中華街の薬屋カフェ (小学館文庫キャラブン!)

長崎新地中華街の薬屋カフェ (小学館文庫キャラブン!)

長崎新地中華街の薬屋カフェ (小学館文庫キャラブン!)

 

優秀な営業成績を認められ長崎の店舗へと配属されたドラッグストアで働く藤子。そんな彼女が仕事で遭遇する出来事や長崎新地中華街の「薬屋カフェ」で働く青年・ワンとの出会いが描かれるお仕事小説。真摯に働く藤子が直面する身近な店舗ならではのエピソードや人間関係の難しさ、薬屋カフェらしい美味しい食べ物や飲み物の話は興味深くて、全体としては恋愛小説というよりはやや仕事の方に比重が置かれた展開だったかなと感じましたけど、愛人さんの謎含めてわりと鈍感な藤子さんが遠回りしながらも心を通わせていく結末はなかなか良かったです。現在2巻まで刊行。

20.司書子さんとタンテイさん ~木苺はわたしと犬のもの~ (マイナビ出版ファン文庫)

祖母を亡くし老犬と一緒に暮らしながら、小さな市立図書館の児童室に勤める司書子さん。そんな彼女が“タンテイ"こと反田と知り合い、その世界が広がってゆく優しい物語。狭い世界で完結していた司書子さんと図書館常連のタンテイさんとの出会いで始まった日々の生活の変化。最初馴れ馴れしい印象もあったタンテイさんは、一方で困っている人を放っておけない人でもあって、彼に振り回されたりしつつも自身に起こる変化や気づきを司書子さんが前向きに受け止めるようになってゆく展開はなかなか良かったですね。