読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2017年下半期注目のオススメ新作ライト文芸21選

2017年下半期注目のオススメ新作企画第二弾ということでライト文芸レーベルから21冊セレクトしました。近年はライト文芸レーベルもシリーズものが増えてきて、その中で新作を選ぶような感じになってきてはいますが、下半期はなかなかぐっと来るような印象的な作品もいくつかありました。今回はその中から21点をセレクトしています。

 

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どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

 

  訳ありの過去もあり友人の幹也と采岐島のシマ高に進学した月ヶ瀬和希。そんな彼が初夏に神隠しの入江で倒れていた少女・七緒を発見するボーイミーツガール青春小説。過去からやって来た七緒と少しずつやりとりを重ねてゆく日々。何気なく過ごせていた高校生活の突然の暗転。明かされる過去の真相と、変わらず向き合ってくれる友人たちの存在、そして覚悟を決めた七緒。甘酸っぱく初々しかった出会いの結末には切なくなりましたけど、繋がって行く過去と未来、そして意外な形で届けられた真摯な思いは、かけがえのないとても素敵なものに思えました。

Just Because! (メディアワークス文庫)

Just Because! (メディアワークス文庫)

 

  高校三年の冬、残りわずかとなった高校生活。このまま何となく卒業していくのだと誰もが思っていた中、突然中学の頃に親の転勤で引っ越した瑛太が戻ってきて、少しずつ関係が変わってゆくTVアニメ原作小説。瑛太がかつて淡い恋心を抱いていた美緒、美緒が想いを寄せていた親友・陽斗との再会。陽斗の葉月への想いや、写真部存続のために奔走する恵那の思いも絡めて展開されてゆくこの青春群像劇は、止まったままだった過去の想いにきちんと向き合う物語でもあって、ひたむきで不器用なもどかしい想いを応援したくなるとても素敵な青春小説でした。

 幼いころに出会ったハーフの女の子ユーリヤ。僕をスプートニクと呼ぶ彼女と月を見上げて宇宙飛行士に憧れた夢。そんな二人の成長を描く物語。どんどん成長するスプートニクと生まれつき身体が弱い彼女とのすれ違い。遠く離れ夢に向けて突き進むユーリヤとの再会と、焦燥を覚えつつ遅ればせながら夢を追いかけることを決意したスプートニクの思い。彼女との距離がどんどん遠くなっていっても、お互いかけがえのない存在であることは変わりなくて、素直になれない彼女にきちんと向き合ったスプートニクの覚悟には本当にぐっと来るものがありました。

  屈折した高校生・染井浩平唯一の女友達で、半年前に死んでしまった天才作家・吉野紫苑。退屈な高校生活から逃避して届くはずのない彼女へメールを送り続ける染井の元に彼女のアドレスからメールが届き始める物語。不器用で人を好きになることを知らず、染井と多くの創作を語り合った吉野。そんな彼のもとに現れた転校生・真白。それぞれが抱く思いは複雑でも話の構図としてはわりとシンプルで、遺された吉野の最後の物語と言葉、そして彼女を介して繋がったうまく生きられない二人が少しずつ積み重ねてゆく不器用な関係は心に響くものがありました。

毎年、記憶を失う彼女の救いかた (講談社タイガ)

毎年、記憶を失う彼女の救いかた (講談社タイガ)

 

 <第54回メフィスト賞受賞作>
両親が事故死したショックで、毎年その日近くになると記憶が事故直後に戻ってしまう尾崎千鳥。空白の3年間を抱えた千鳥の元に小説家・天津真人が現れ、ある賭けを持ちかけられる物語。デートするたびに千鳥の心を揺さぶる真人。少しずつ確実に惹かれていくのを自覚しながらも、だからこそ彼を信じていいのか戸惑う臆病な千鳥の想い。そんな中で明らかになってゆく二人の関係、そしてそれ以上に困難にも諦めずに特別で大切な千鳥に向き合い続ける真人の決意には心打たれるものがあって、そんな二人が紡いでいく真摯な想いがとても素敵な物語でした。

殺人鬼探偵の捏造美学 (講談社タイガ)

殺人鬼探偵の捏造美学 (講談社タイガ)

 

 新米刑事・百合が殺人鬼マスカレードに殺されたと思われる怪死体に遭遇し、先輩刑事に捜査協力者として精神科医・氷鉋を紹介されて共に事件解決に挑む物語。妹をマスカレードに殺され家庭崩壊し復讐を誓う百合。調べれば調べるほどいくつもの顔が見えてくる謎めいた被害者・妙高麗奈、証言が食い違う父親、婚約者、恋人。二転三転する展開とそれを独特な視点から解き明かしてみせる氷鉋、そして最後に明かされた真相はこれはこれでわりと楽しめました。邂逅した宿敵とも言える二人が今後どんな結末を見せてくれるのか、続巻に期待したいと思います。

校舎五階の天才たち (講談社タイガ)

校舎五階の天才たち (講談社タイガ)

 

 「東高三人の天才」の一人篠崎から来光福音のもとへ届いた、僕を殺した犯人を見つけてほしいという手紙。福音は同じく手紙が届いた天才の一人加藤沙耶夏と事件を調べる学園ミステリ。遺書を残し電車に飛び込み自殺をした篠崎は誰かに本当に殺されたのか。天才であるということはどういうことか。傍若無人な加藤に振り回されつつ関係者たちから明かされる篠崎像から真相も掘り下げられてゆきましたが、深い苦悩を抱えていた彼のささやかな願いが、天才に憧れていた福音に伝わったのがこの物語の救いでしたかね。デビュー作ということで今後に期待。

 大学を留年しネット小銭を稼ぐ生活を送る葉山理久央が、新曲の作詞を依頼してきた破天荒な天才作曲家・蓮見律子と出会い、いろいろと巻き込まれてゆく音楽ミステリ。気まぐれな律子に振り回される葉山が大学の授業で出会った美沙、そして弟で若き音楽家本城湊人との邂逅。複雑な関係の姉弟との交流からの予想もしなかった急展開は物語の雰囲気をガラリと変えて、探偵役として律子が葉山と解き明かしてみせた謎と事件の真相、ほろ苦く切ないだけでは終わらない結末には著者さんらしさがよく出ていると思いました。シリーズ化を是非期待したいですね。

  大学に入学した新入生・秋太郎が選んだサークルは、人嫌いの来見行が専有する謎の仮面応用研究会。入部を願い出るも断固拒否された秋太郎が、直後にサークル棟で墜落死体を発見する物語。お互いが深刻な事情を抱える秋太郎とコウの邂逅。やや過剰に心配症で正義感が強い秋太郎に寄り添う彼女・ハゴロモ。そして謎めいたコウの兄・ショウの存在。オカルトめいた事件に心理学や哲学を絡めたストーリー、登場人物たちのテンポのよいやりとりは久しぶりに著者らしさを楽しめました。謎を提示するショウが今後もポイントになりそうですね。続巻も期待。

サイメシスの迷宮 完璧な死体 (講談社タイガ)

サイメシスの迷宮 完璧な死体 (講談社タイガ)

 

 警視庁特異犯罪分析班に異動した神尾文孝が、協調性ゼロだが優秀なプロファイラー羽吹允とコンビを組み、連続猟奇殺人の謎に挑む警察ミステリ。マイペースな言動で神尾を振り回す羽吹が抱える過去と、経験したもの全てを忘れることができない超記憶症候群。銀色の繭に包まれた美しいともいえる異常な死体を残す連続殺人事件。その記憶を活かして事件に繋がる鍵を探す過程で、噛み合わなかった二人が徐々にコンビになってゆくのがいい感じで、まだまだ終わらないことを予感させる結末に続巻をまた読みたくなりました。今後に期待の新シリーズですね。

R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室 (新潮文庫nex)

R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室 (新潮文庫nex)

 

  東京五輪後、災厄により中京に暫定首都が移転した世界。急速に治安が悪化する中、テロ計画を未然に鎮圧すべく総理直轄・女性 6 名の特殊捜査班R.E.D.が警察庁に設立される警察小説。いかにも著者さんが好きそうな世界観で、敵も多い傑物な女総理の下、ケチな神代を指揮官に個性豊かな異能を持つ少女たちを従え、副総理と警視総監が絡む難しい政官業巨大疑獄を追う展開。一風変わった彼女たちと上司たちの使い使われる関係も気になるところですが、破格な彼女たちの活躍は圧倒的でした。登場人物たちもいろいろありそうで続巻が楽しみです。

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

 

  周囲に迎合しグループ内で平穏に生きていくことに全力を傾けてきた女子高生の小野ひなた。ある日、憧れの同級生結城さんに誘われグループの約束をドタキャンしたことで周囲から孤立してしまう青春小説。これまで無難に生きることに心を砕いてきたはずが、偶然結城の秘密を知り興味を抱いたことで結果的に失った自分の居場所。息苦しい狭い世界でどう生きるのかというお話でしたけど、焦燥を募らせていた彼女が姉や師匠、結城さんなど、たくさんの人と話し合い悩みながらもこれまでの自分を省みて、大切なことを見出してゆく姿はとても印象的でした。

放課後、君はさくらのなかで (集英社オレンジ文庫)

放課後、君はさくらのなかで (集英社オレンジ文庫)

 

  通勤途中で事故に遭った市ノ瀬桜。目覚めると女子高生・円城咲良として生活する羽目になった桜は、担任の鹿山に事情を打ち明けて咲良の魂を探す青春小説。あまり報われない人生を送っていたはずの桜が直面するまさかの状況。そんな彼女が遭遇するかつての同級生で因縁もある鹿山の存在。難しい立場を自覚しつつも咲良のためにと一念発起して状況を変えてゆく彼女が、これまで知らなかった真実に直面して切なくもなりましたが、そんな彼女へ提示された少なからず複雑な想いも交じる未来は、やや意外でしたけど頑張って欲しいと応援したくなりました。 

家政婦ですがなにか? 蔵元・和泉家のお手伝い日誌 (集英社オレンジ文庫)

家政婦ですがなにか? 蔵元・和泉家のお手伝い日誌 (集英社オレンジ文庫)

 

  短大卒業後、母の遺言で彼女がかつて働いていた蔵元・和泉家で家政婦として働くことになったみやび。そこで泉家の四兄弟やその母と関わってゆく物語。クールで切実にお金を稼ぎたい事情を抱えるみやびが、和泉家で働きたいもう一つの目的。蔵元ネタ自体はほどほどでしたが、母君にコスプレじみたメイド姿にさせられたり、四兄弟に難癖をつけられたり、彼女役を依頼されたりと、忙しい日々の中でいろいろな出来事に遭遇しながら少しずつ和泉家に馴染んでいく展開はなかなか悪くなかったです。今後が気になる終わり方だったので、続刊期待しています。

榮国物語 春華とりかえ抄 (富士見L文庫)

榮国物語 春華とりかえ抄 (富士見L文庫)

 

 榮の貧乏官僚の家に生まれた双子、金勘定にシビアな姉・春蘭と刺繍を得意とする立派な淑女に育った弟の春雷。誤った噂は皇帝の耳にも届き春蘭の後宮入りと春雷も科挙受験が決まり、追い詰められた二人が入れ替わることを決意する中華ファンタジー。双子を利用しようとする野心家・天海宝が出世を目論む理由。妃嬪を避けるため双子が近づいた公主が知ってしまった陰謀。春蘭と口が悪い海宝の毎度いがみ合う関係からの変化や、そんな彼の意外な一面と窮地に双子たちも協力しての大逆転劇はなかなか面白かったです。今後どうなってゆくのか続巻に期待。 

 担当作家と騒動を起こした老舗中小出版社の文芸編集・滝川詠見が、年単位で原稿が上がらない謎のベテラン作家・六道先生の担当を引き継ぐ不思議×出版お仕事物語。連絡手段がなく会いに行くしかない六道先生の元に日参する詠見が知る六道先生の意外な姿と正体。なかなか原稿が上がらない理由と複雑な想いを抱えつつも原稿を書いてきた先生の姿を知って、戸惑いつつもきちんと向き合う詠見のブレない編集者の矜持と相手を思いやる優しさが、あえて安直に流れない間柄として描かれたことで心に響くものがありました。続編あるならまた読みたいですね。

 結婚の当ても外れ職も失った状態で30歳を迎えた恵里菜。婚活を調べるうちに見かけた長野県へのバスツアーに参加した彼女が、それをきっかけに長野に移住して手探りで手探りで飛び込む恋と農業ライフ。イケメンとの衝突というきっかけがあったとはいえ、知らない土地・知らないことだらけでゼロから飛び込む勇気はなかなか出ないよなあとか感じたりもしましたが、歳下の優真の助力を得て心機一転農業のいろはを学びつつ真摯に取り組んだり悩んだりな姿には好感。二人の関係にもこれから進展の余地はあるのかな?続巻あるならまた読んでみたいです。

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする (メディアワークス文庫)

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする (メディアワークス文庫)

 

 人が突然消失するのが日常化した世界。孤独だった悠木が高校時代に一目惚れするもあっさり振られた女の子・凪。卒業から一年と少し後、目の前に突然現れた彼女から100日間だけ一緒に共同性活を提案される恋愛小説。困惑しながらも始まった二人きり、ひとつ屋根の下で始まった田舎での共同生活。過ごすうちに再び凪にどんどん惹かれてゆく悠木、素敵になった凪と過去の真相。凪が共同生活を提案した理由が明らかになってからは、寄り添う二人の想いが切なかったですが、それでも終わってみれば本当に良かったという思いしかない素敵な結末でした。

  中学時代の苦い経験から人と関わることが苦手な女子高生・舞。競技ポールダンス部設立を目指す舞が周囲に猛反対され、部設立を認可する条件として大会入賞を言い渡されてしまう青春小説。マネージャー役を買って出た友人と一緒に立ち上げたポールダンスに加わることになる、わけありで廃部した元競技ダンス部の郁斗先輩と白谷先輩。周囲とのやりとりが拙く空回り気味だった主人公でしたが、友人や先輩たちもまた苦い過去を抱えていて、ぶつかり合いながら競技に挑んで喜びを見出してゆく様子は、展開的にベタではありましたがなかなか良かったです。

おとなりの晴明さん ~陰陽師は左京区にいる~ (メディアワークス文庫)
 

 一家で京都に引っ越してきた女子高生・桃花。隣に住んでいたのは琥珀の髪と瞳をもつ青年・晴明さん。子どもの頃出会っていて不思議な術で桃花の猫を助けてくれた晴明さんと女子高生のあやかしファンタジー。二人の前に現れる優しい鬼や京都の街を守る平安京サル会議、美の御利益をもたらす女神様たち。勉強を教えてもらうはずがいつの間にか弟子みたいな扱いで関わっていた桃花でしたけど、浮世離れした晴明さんはこれまでの作品にも登場していたあのお人で、からくさ図書館の二人や茜さんなども登場したり世界観の広がりを感じる素敵な物語でした。

 祖母を亡くし老犬と一緒に暮らしながら、小さな市立図書館の児童室に勤める司書子さん。そんな彼女が“タンテイ"こと反田と知り合い、その世界が広がってゆく優しい物語。狭い世界で完結していた司書子さんと図書館常連のタンテイさんとの出会いで始まった日々の生活の変化。最初馴れ馴れしい印象もあったタンテイさんは、一方で困っている人を放っておけない人でもあって、彼に振り回されたりしつつも自身に起こる変化や気づきを司書子さんが前向きに受け止めるようになってゆく展開はなかなか良かったですね。続巻あるならまた読んでみたいです。

 

以上です。現時点での予定では28日に一般文庫編、29日にライトノベル恋愛・青春小説22編を更新予定です。よろしくお願いします。

 

上半期のまとめ記事はこちら↓

2017年下半期オススメ企画