読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2017年下半期注目のオススメ新作一般文庫26選

2017年下半期注目のオススメ新作企画第三弾ということで一般文庫編です。近年普通の文庫レーベルでもキャラ文芸ものが増えてきていて、実質的にライト文芸レーベルなどともだんだん境界が曖昧になってきていますが、まとめるとボリューム的にやや大きくなってしまうので、この辺はレーベルで区切って紹介しています。 

応えろ生きてる星 (文春文庫)

応えろ生きてる星 (文春文庫)

 

  結婚直前の廉次の前に現れて突然のキスと謎の予言を残して消えた女。直後に婚約者に目の前で別の男と駆け落ちをされた廉次が、再会した女・朔と婚約者を取り戻すために奔走する物語。新婚旅行に行くはずだった二週間、謎多い朔と一緒に婚約者に見せつけるかのようにデートを満喫するフリをする廉次。彼女のことが気になり始めた頃にうっかり知ってしまうその背景。劇的な展開と爆発的な行動力が物語を動かし、因果応報をしっかり忘れないあたりに著者さんらしさがよく出ていましたが、ほろ苦くも未来を予感させる結末はとても良かったと思いました。

ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)

ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)

 

  両親を亡くし角田村で叔父夫婦に育てられた綾乃。小さい頃からの秘密の親友・大蛇のアロウにプロポーズされた彼女が、別の大蛇に襲われる事件を経て母校ディアーヌ学園で学ぶことになるファンタジー。妖魅子女も通うディアーヌ学園で楽しい友人たちと出会い魔女の修行をする日々。そこから繋がる雪之丞との縁と過去の因縁もまた明らかになってゆく展開で、アロウとの約束に心揺れる綾乃と共に過ごすうちに絆を深めてゆく雪之丞が過去に飛んで、そこで果たした役割が現在に繋がってゆくその結末にはなるほどと唸らされた、とても素敵な物語でした。

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

 

  未来に起こる確率を調べる技術が確立した世界。自らが抱える苦しい思いをどうにかしたくて、確率をつい確認し続けてしまう人たちの物語を描く連作短編集。政略結婚や大怪我、路面電車での出会い、届かぬ思いや父と娘の関係、忘れられない運命の出会いなど、停滞する状況を抱える登場人物たち。それでも人との関わりの積み重ねから事態や心境も少しずつ変化して、それに向き合ったり素直になったり次に向けた一歩を踏み出してゆく7つのエピソードは、表題作でもあるタイトルイメージをいい意味で裏切る思いのほか爽やかな読後感の素敵な物語でした。

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

 

  俳優だった夢を諦めてレンタル彼氏として働いているカオル。そんな彼が高額な料金にもかかわらず職業を偽って予約を入れ続けるエイコと出会う物語。エイコが職業を偽ってお金を払いデートをする理由。偶然エイコの似たような境遇を知り複雑な想いを抱くカオル。夢を追いかけ続けるべきか現実を思い求めるか、分岐点で心揺れる二人が疑似恋愛のデートを重ねるからこそ育まれ、複雑になってゆくそれぞれの想いにはもどかしくなりましたが、不器用な二人が出会ったことで切り開かれた未来に明るい予感をつい期待したくなる不毛で素敵な恋の物語でした。続刊をぜひ期待したい作品です。

恋虫 (角川文庫)

恋虫 (角川文庫)

 

  政府が結婚相手を決めて、恋をした人は「恋虫」に感染したとして他者の感染を防ぐために駆除される世界。念願の『恋虫駆除隊』に入隊した四ノ宮美季が、救世主と呼ばれる上官・冬野花火と出会う物語。同期の首席で誰よりも恋という病に熟知しているはずの四ノ宮が直面する駆除の現実と苦悩する想い。感染した花火の兄・雪尋と婚約者・千春、二人に関わった花火それぞれのエピソード。こんな時代に美しくも儚い恋に向き合った彼らの真っ直ぐな想いにはじわじわと来るものがあって、諦めない孤独な花火が四ノ宮と巡り会えた幸運に救われる思いでした。

  郡上踊りが終わるまでの死と生が入り混じる場所。なぜ死んだのかも忘れた高校生大和と、彼を生き返らせようとする幼馴染凛虎の不器用で真っ直ぐで凛としたひと夏の物語。二年前に死んだ凛虎の兄で親友の雪夜と、雪夜と凛虎の師匠である魔女の存在。理由を明かさないまま愚直に大和を生き返らせると告げる凛虎。終わりに向かう夏を二人で過ごす中で明らかになる事情は過去の謎に繋がっていて、譲らない頑固者の二人が散々ぶつかり合って出した諦めの悪い選択には、よくある切ない終わりの物語とはひと味違う彼ららしい後悔のない充足感がありました。

時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)

時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)

 

 同級生・花森雪希から突然「死神」のアルバイトに誘われた高校生の佐倉真司。成仏できずにこの世に残る「死者」の未練をはらす「死神」の仕事を通じて、自身の思いやありようもまた少しずつ変化してゆく物語。半信半疑のまま始めた死神のアルバイトで様々な死者に花森とともに向き合う日々。もっとできることはなかったのかたびたび後悔に直面する一方で、このアルバイトで共に過ごした時間があったからこそ気づけたことや乗り越えられたこともまたたくさんあって、著者さんらしい泣き笑いの切ない想いがたくさんつまった、とても素敵な物語でした。

夏の祈りは (新潮文庫)

夏の祈りは (新潮文庫)

 

  県立北園高校を舞台に長年の悲願である甲子園出場に向けて、先輩から後輩へ託されてきた夢と、それぞれの熱い夏が描かれる青春小説。過去の伝統の呪縛に苛まれ力を発揮しきれなかったチーム、二人のエースで戦った夏、女子マネたちの存在が光った世代、そして谷間として期待されていなかったハズレ世代の奮闘。それぞれが精一杯戦って最初は否定的だった引き継がれる思いの意味を知り、それをまた後の世代に伝えてゆく。戦ったメンバーたちが卒業後も様々な形でチームを支えて、積み重ねてきた重みの先にあった結末にはぐっと来るものがありました。

天盆 (中公文庫)

天盆 (中公文庫)

 

 小国「蓋」を動かすのは、国民的盤戯「天盆」を勝ち抜いた者。 貧しい13人兄弟の末っ子・凡天は10歳ながらも天盆にのめり込んでいき、異様な強さで難敵を倒していくファンタジー。将棋のような天盆が軸に据えられた世界観で、のめり込んでいく凡天が行く先々で引き起こす事件と、権力者に睨まれて少しずつ追い詰められてゆくその家族。困難に際しての様々な葛藤はあっても血の繋がらない父母や兄弟たちとの揺るぎない絆は確かにあって、頂点を目指す天盆を巡る戦いはどんどん熱くなっていって、劣勢を覆し上り詰めてゆく戦いぶりは痛快でした。

イシマル書房編集部 (ハルキ文庫)

イシマル書房編集部 (ハルキ文庫)

 

 念願かなって神保町の小出版社にインターンとして採用された満島絢子。しかし、当のイシマル書房は親会社から最後通告を受ける―会社存続の危機で、起死回生のベストセラー誕生を目指す出版小説。今年の目標「生き延びる」がリアルで、不器用だけど情熱ある石丸社長が命運を託したのは引退していた文芸編集者と理由あり作家。絢子はもとより元ヤンキーの営業マン、活版職人の絢子の祖父、全国の書店員などにも協力を仰いでの総力を挙げた奮闘ぶりやそれぞれの想いはとても熱く心揺さぶるものがあって、最後には少しばかりうるっと来てしまいました。

ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)

ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)

 

 1クールごとに組む相手を変え覇権を競うアニメ制作現場。伝説の天才監督・王子を口説いた有科、同じクールで勝負を挑む監督・斎藤瞳と行城のコンビ、そして原画に携わる和奈と地元のそれぞれの視点から語られるお仕事小説。人間関係にも苦労する不器用だけどアニメに賭ける想いは熱い登場人物たち。見えているもの思うところは違っても、けれどアニメのためならいくらでも頑張れるし、苦難を乗り越えてしまうパワーが感じられて楽しかったです。ちょっと今後が気になるコンビもあったけど、文庫版で追加された「執事とかぐや姫」も良かったですね。

マンガハウス! (光文社文庫)

マンガハウス! (光文社文庫)

 

  超人気漫画を突如休載した神野拓が指導する新人育成プロジェクト。そこにワケありの三人が集まってぶつかり合いながら切磋琢磨の共同生活を送るお仕事小説。再デビューを目指すが伸び悩む滝川あさひ、会社を辞めて漫画家を志す林一樹、絵は下手だが発想力は人一倍の星塚未来。そして指導役の神野が悩む親子関係と彼が突如休載した真相。それぞれが深い悩みや戸惑いを抱え、身近に競い合う存在がいるとどうしても避けられない嫉妬や悪魔の声に苛まれながら、それでも逃げずに向き合い自らの答えを出してゆく彼らの姿には共感できるものがありました。 

京都烏丸御池のお祓い本舗 (双葉文庫)

京都烏丸御池のお祓い本舗 (双葉文庫)

 

 会社をリストラされ彼にも振られた木崎朋美が、レトロなBARで弁護士・城之内にスカウトされ、本業はお祓いの事務所で持ち込まれる奇妙な依頼を解決してゆく物語。イイ男なのに残念な京男子・ジョー先生や特別な霊能力を持つバイトの美少年高校生・海斗君と組み、3人で力を合わせ猫探しからストーカー退治、憑き物や呪い絡みの案件まで解決する展開で、お人好しだけど人情に厚くピンチの時ほど大活躍の規格外な朋美はこれまでとはまた一味違った魅力のあるヒロインでした。寺町三条のホームズさんたちも登場したりで、今後に期待の新リーズです。

きみのために青く光る (角川文庫)

きみのために青く光る (角川文庫)

 

 心の不安に根ざして発症し、力が発動すると身体が青く光って様々な異能力が発現する病「青藍病」。それに振り回される4人の男女が織りなす切なく愛おしい連作短編集。青藍病によって動物から攻撃されたり、念じるだけで生き物を殺せたり、人の年収や死期を知ってしまったり。青藍病によって引き起こされる異能に戸惑うことも多くて、それによって様々な事件に巻き込まれたりもしますが、困難に直面した恋する相手のために何とかしようと奔走したり、終わってみれば何となくいい感じにまとまってゆく展開は著者さんらしくてとても素敵な物語でした。

丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。 (角川文庫)

丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。 (角川文庫)

 

  本命の一流不動産会社の最終面接で大学生の澪が質問されたのは何と面接官の人数。質問した長崎次郎に霊が視えるその素質を買われ事故物件を扱う「第六物件管理部」で働くことになるオカルト仕事小説。これまで長崎一人だった「第六物件管理部」で働く澪が遭遇する数々の憑いている物件。ホラー展開が怖いわりに解決はわりとあっさりめでしたが、小心なのに暴走気味な澪に無愛想なイケメン・上司次郎、友人で霊障に敏感な爽やかイケメンの高木に霊犬・マメも相棒に加えテンポよく読めてシリーズ化もありそうですね。続巻出たらまた読んでみたいです。

  入社式当日に会社が倒産し路頭に迷った朝霧夕霞。失意の中で公園の掲示板にあった国交省臨時職員募集の貼紙を見つけ、特殊能力を買われて採用されるあやかしお仕事小説。夕霞が不可思議な採用試験を乗り越え採用された、国土開発の妨げになる地縛霊などを立ち退かせるのが仕事で実質的に「人」が夕霞しかいない謎の部署「幽冥推進課」。自殺したアイドルや事故死で家に帰れなくなった会社員、百五十年も橋を守り続けてきた少女など、真っ向から向き合い体当たりでその心残りを解消してゆく夕霞の奮闘ぶりはなかなか良かったです。シリーズ化も期待。

  同級生の不思議美少女・霧香と付き合い始めたばかりの大学生の凪が訪れた路地裏の珈琲店ブラックスノウ。店を手伝うことになった凪が霧香とともに様々なサイバー犯罪に触れてゆくサイバーサスペンス。凪たちが店に通う過程で明らかになってゆく実はサイバーセキュリティに精通しているマスターと、その彼を恨み大規模な犯罪を企む美青年・凌の因縁。最初に存在が示唆されてたびたび登場する凌と通じる内通者Aの正体が気になっていましたが、丁寧に展開を積み重ねていった末の少しばかりほろ苦い結末に、著者さんらしさがよく出ていたと思いました。

 地球人類は国籍の区別なく商連と呼ばれる異星の民の隷属階級に落ちた未来世界。閉塞した日本から抜け出すため、アキラは募兵官の調理師パプキンの誘いで商連の惑星機動歩兵―通称ヤキトリに志願する近未来ファンタジー。国籍も違う癖の強いメンバー四人と実験ユニットK-321に配属され、火星に向かうアキラ。その過程で嫌というほど思い知らされるヤキトリの過酷な待遇。どれだけ屈辱的な扱いを受けたり凹まされても反骨心を失わないアキラたちには凄いなと感心しきりでしたが、だからこそ見出した活路が変革の兆しになるか続巻に期待ですね。

SF飯 宇宙港デルタ3の食料事 (ハヤカワ文庫JA)

SF飯 宇宙港デルタ3の食料事 (ハヤカワ文庫JA)

 

 機械知性により過保護過ぎるほど守られた宇宙世界。中央星域の商家を勘当されたお人好しな若旦那マルスが、辺境の宇宙港でかつての奉公人・祖父の食堂〈このみ屋〉を再開させようと頑張る少女コノミと再会する物語。宇宙グルメを期待して読むと、計算され過ぎた調整食や厳しい辺境の食糧事情に面食らいますが、どんどん厄介事に巻き込まれてゆく若旦那に、バイタリティあふれるコノミや若旦那の妹、異星人まで絡むカオスな展開には勢いがあって、あれ?と思うようなところも散見されますが、荒削りながらもなかなか面白いものを読めたと思いました。

歯科女探偵 (実業之日本社文庫)

歯科女探偵 (実業之日本社文庫)

 

  スタッフ全員が女性の錦織デンタルオフィス。もの静かな美人歯科医・月城この葉が歯科衛生士の高橋彩女とともに周囲で起こる日常の謎や連続殺人事件に挑む歯科医療ミステリ。文中で歯科医療絡みの描写がやたら詳しいと思ったら、そういえば著者さん歯科医でしたよね。法歯科医だった父を持つこの葉が探偵役で彩女が助手、登場するキャラたちや舞台装置はわかりやすくて、発生する事件に奇想天外さはなかったですが、一見関係なさそうに見えるエピソードの数々が、最終的にはこの葉が追っていた過去の事件に繋がっていく展開は上手いなと思いました。 

 母を癌で亡くした大学生の白木恭介は、遺言に従い母が30年前に佐伯義春という友人から貰った宝石を返すため北海道を訪れ、集落の因縁に巻き込まれてゆくひと夏の物語。秘境駅羽帯を訪れた恭介が知る三十年前に東羽帯の集落で起こった凄惨な事件。同時期に訪れた鉄道マニア吉井が知る根室本線に眠る裏金の噂。調べてゆくうちにふとした縁で出会った二人が集落の過去を知って因縁に巻き込まてゆく展開でしたが、情緒溢れる秘境駅近辺の描写を交えながら過去が丁寧に語られ、精算されてゆく結末は読み終わってみるとなかなか趣深いものがありました。

君を一人にしないための歌 (だいわ文庫 I)

君を一人にしないための歌 (だいわ文庫 I)

 

  中3の夏、吹奏楽コンクールの大失敗をきっかけにドラムをやめたモリソンが、高校入学後七海に強引に誘われ凛も加わりバンドを結成する青春ミステリ。ドラムはもうやらないはずがいつの間にか巻き込まれたモリソン。ただ最後のメンバーとして募集したギタリストが訳ありだらけで、なかなか演奏までいかずにもどかしかったですが、普段はおどおどしがちなモリソンが見せる意外な鋭さのギャップ、一方で過去に苦しい出来事があったのは彼だけでなく、彼女たちのヒミツが明らかになるたびに印象も変わり、絆が育まれてゆく展開は上手いなと思いました。 

  部活必須の御出学園で通学地域で社会奉仕を義務付けられた独特の帰宅部。そこに所属する佐々木幸弘が地域で起こる謎や事件を仲間とともに解いていく青春ミステリ。夜な夜な動くという噂のベニヤ製の人形の謎やたたかうにんじん、双子を巡る複雑な想い、商店街文化祭のお姫様コンテストにまつわるあれこれ。やや若干登場人物が多いかなという印象はありましたけど、繊細な人間関係の機微にも配慮しながら解き明かしてゆく謎解きは主人公らしくて、彼がようやく意識し始めた幼馴染との関係が今後どうなってゆくのか、続きが読んでみたいと思いました。

捕食 (創元推理文庫)

捕食 (創元推理文庫)

 

  つらい過去があり男性が苦手な真尋と、彼女と知り合い急速に距離を縮めるいづみ。彼女と一緒なら自分は変われると信じていたはずの真尋に不審が芽生え、いづみの謎多き過去を追うサスペンスミステリ。過去を追う過程で明らかになってゆく、似た境遇だった彼女の選択とその周囲で姿を消してしまった人たち。何かあるたびにハナカマキリのように脱皮を繰り返してきた彼女がなり得たものは何だったのか。やや詰め込み過ぎた感もありましたが、ぐいぐい読ませる展開の末に迎えるいろいろ想像できてしまうエピローグは、この物語らしい結末に思えました。 

螺旋の手術室 (新潮文庫)

螺旋の手術室 (新潮文庫)

 

  大学病院の教授選候補だった冴木真也准教授が手術中に不可解な死を遂げ、教授の座を争った医師も暴漢に襲われ殺害されるなど相次ぐ不可解な死。父・真也の死に疑惑を見つけた息子の裕也が同じ医師として調査を始める医療ミステリ。教授選が鍵と見据えその繋がりを調べる裕也。父の死がスキャンダルとなり婚約者の母に堕胎を迫られる妹の真奈美。真相を執拗に追う過程で明らかになる意外な真実。たったひとつの秘密を守るために起きた事件の真相は何とも切なくて、これから裕也が抱えながら生きてゆくものの重さについていろいろ考えてしまいました。

八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

 

  1943年、北の最果て・キスカ島であった忘れられた救出劇。多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書から、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が明らかになってゆく物語。劣勢に陥りつつあった第二世界大戦末期、北の最果てにあるアメリカから奪った日本の占領地。アッツ島が玉成したことでアメリカ軍に包囲され取り残されたキスカ島の軍人五千人。そんな絶望的ともいえる難しい状況の中で知恵を振り絞ってその救出に向かい、見事それを成し遂げた木村少将たちのありようはとても心に響くものがありました。 

 

 

 上半期のまとめ記事はこちら↓

2017年下半期オススメ企画