今回は9月富士見ファンタジア文庫・GCN文庫の新刊感想まとめです。内訳は富士見ファンタジア文庫の新作4点、続巻3点・GCN文庫の新作1点、続巻1点の計8点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
女王陛下に婿入りしたカラス (富士見ファンタジア文庫)
国や領地をも家と見なし管理・経営する『家政学』専攻の学生ウィル。論文で略奪・戦争国家と批判した隣国オノグルの女王イロナから突然求婚されるファンタジー。外貨を得る手段がなく戦争・略奪しかないオノグルを、戦争以外の方法で飢餓から救いたいというイロナの真意を知り、彼女のために何とかしたいと決意するウィル。戦争の負の連鎖を積み重ねる敵国エースター出身故に、王宮の使用人たちにも敵視される状況から打開策を模索しなければいけない展開で、様々な思惑が入り乱れる中で周囲の意識を変えていきながら、いくつかの可能性を見出していった矢先の窮地でしたけど、それでも彼女の想いが無に帰さないよう、最後まで諦めなかったウィルが切り開いてみせたその結末はなかなか良かったです。
放課後の教室に、恋はつもる。 (富士見ファンタジア文庫)
地味で暗い国語教師の筧莉緒に、今日も告白してくるカーストトップの生徒上原メイサ。7歳も年下の教え子に振り回される生徒×教師の歳の差ガールズラブ。ぐいぐいと来るメイサをいなしながら、ついつい押され気味の莉緒。莉緒が女性を恋愛対象として意識するきっかけになった、学生時代の恩師・緋紗子先生との出会いと続いてきた友人関係。そしてこれまで恋というものにピンときていなかったメイサが、1対1の赤点補修をきっかけに芽生えた莉緒への想い。最初は生徒のために奔走していたはずが、クリスマスを共に過ごし一つのベッドで眠って、手首へのキスを受け入れ、彼女から連絡がないと不安になる、いつの間にか意識する関係へと少しずつ変わっていった2人がどんな関係を築くのか今後に期待。
ギャルにも負ケズ (富士見ファンタジア文庫)
宮沢賢治が生まれた岩手を舞台に、高校でひとり文芸部の部長を務めていた遠谷幸文の静かな日常が、東京から転校してきたギャル渋沢美鐘が入部してきたことで変わっていく青春小説。岩手にやってきて宮沢賢治に興味を持ったらしい美鐘と一緒に、宮沢賢治の足跡を追ったり「ほんとうのさいわい」を探してみたりと、少しずつ彼女のペースに巻き込まれてゆく幸文。これまで自分に自信がなく、美鐘のことも最初は自分と住む世界が違うと思い、どこか臆していた幸文でしたけど、美鐘と過ごしてその境遇を知ってゆく中で、自分がどうしたいのかだんだんと覚悟も定まってきた今後の展開が楽しみですね。可愛くてちょっと変わっていた幸文の妹・真央の存在も物語のいいアクセントになっていました。
けもみみ巫女の異世界神社再興記 神様がくれた奇跡の力のせいで祀られすぎて困ってます。 (富士見ファンタジア文庫)
けもみみ巫女の異世界神社再興記 神様がくれた奇跡の力のせいで祀られすぎて困ってます。(1)
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いつきみずほ/risumi KADOKAWA 2024年09月20日
実家の神社を巫女として手伝う女子高生・御守涼香。ある日、異世界へと転移してしまった彼女は、再び信仰を集めて欲しいと神様から依頼されるスローライフ系ガールズファンタジー。集めた信仰をポイントに換算して《奇跡》を起こす不思議な力や、狐の耳と尻尾(神様の趣味)を与えられた涼香。行き倒れていた教会の聖女ソフィを救って仲間にした彼女たちが、村長の娘アンリを枯木病から救ったり、トレントの森を開拓して村人たちの信頼を得て、村を基点に信仰を広めていく一方、涼香を慕うソフィの溺愛っぷりはなかなか微笑ましかったですが、利害が対立する悪どい商売をする教会とも対立してゆく構図の中で、村が直面する危機を力を合わせて乗り越えた彼女たちのこれからが楽しみです。
クラスの優等生を『妹』にする約束をした。どうやらいっぱい甘えたいらしい。2 (富士見ファンタジア文庫)
クラスの優等生を『妹』にする約束をした。どうやらいっぱい甘えたいらしい。2
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氷高 悠/たん旦 KADOKAWA 2024年09月20日
父親との対立を経て、正式に加古川家の一員となった流稀。しかし流稀の実の母親がやってきたことで日常に影を落としてゆく第2弾。家に戻るように説得されたことで混乱してしまい、加古川家の面々ともギクシャクしてしまう流稀を上手く気分転換させようとする家族たち。そんな中で加古川家の頼れるお母さん的存在の青緒が流稀に甘える姿を意識するあまり、自らの抱える悩みを家族に相談できずに抱え込んでしまう絆菜。頑なに1人で何とかしようとする絆菜に、それを放っておけない流稀を中心に家族としての改めて絆を深めていく加古川家がなかなか良かったですけど、最後に投げかけられた思わぬ波紋がこれからどう影響を及ぼしていくのか気になるところです。
妹が女騎士学園に入学したらなぜか救国の英雄になりました。ぼくが。6 (富士見ファンタジア文庫)
妹が女騎士学園に入学したらなぜか救国の英雄になりました。ぼくが。6
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ラマンおいどん/なたーしゃ KADOKAWA 2024年09月20日
なぜか王女のトーコさんが遷都宣言で辺境伯領に引っ越してくる中、ユズリハさんに誘われスズハ兄がサクラギ公爵本家の部外者厳禁の秘祭になぜか参加する第6弾。意味も分からぬままトーコさんの謁見にたびたび駆り出されたり、幽霊が出没するという旧王都の地下にの調査に赴いて思わぬ大発見をしたり、サクラギ公爵本家の儀式の途中で変な女の子の幽霊に懐かれて意外なものを託されるスズハ兄。彼がヒロインたちの贈り物のドレスを用意すべく素材集めで、これまで訪れた各地を巡って再会した人たちと新たな伝説を次々と作っていくあたりは相変わらずでしたけど、そんな状況が続いたらますます彼の存在は必要不可欠になるわけで、これは時間の問題だったというか、必然の結末でしたね(苦笑)
転生王女と天才令嬢の魔法革命9 (ファンタジア文庫)
完成に向けて着実に整備も進み大いに賑わう魔学都市。一方、隣国アーイレン帝国の不穏な動きが垣間見える第9弾。プリシラが思わぬ再会を果たした旧知の男の意外な正体。そこから明らかになっていくプリシラの過去、そして一部の帝国貴族が計画するアニスの暗殺計画。これまでアニスの周囲や国内で起こる様々な出来事にいかに対処していくかがメインでしたけど、ここでにわかに隣国帝国の存在がクローズアップされて否が応でも巻き込まれていく形になりましたね…外から見た王国やユフィの評価は興味深くて、皇帝もなかなか面白いキャラでしたが、場所を変えての新展開がこれからどうなってゆくのか続巻が楽しみですね。
人生二周目の鏑木先輩 (GCN文庫)
どこにでもいる普通の高校生・日宮友樹。ある日、誰もが認める天才美少女で人生二周目らしい鏑木美春から突然秘密を告白される青春ラブコメ。突然友樹を作家としての取材に付き合ってほしいと、自分だけが部員の文芸部に誘う鏑木先輩。入部届と称して婚姻届にサインさせようとしたり、自分が人生二周目で未来のお嫁さんだと明かしてぐいぐい迫る先輩にタジタジになる友樹。彼と一緒にいるのが嬉しくてイキイキとしている先輩が微笑ましくて、けれどそんな彼女が時折見せる暗い表情が何なのか、一周目から変わったこと、それでも変わらなかった想いがあって、彼女の葛藤ごと受け止めた友樹はカッコ良かったですし、一緒に乗り越えた2人のこれからをまた読んでみたいと思いました。
毎日家に来るギャルが距離感ゼロでも優しくない3 (GCN文庫)
毎日家に来るギャルが距離感ゼロでも優しくない 3
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らいと/柚月ひむか マイクロマガジン社 2024年09月20日頃
涼子の提案で一緒に旅行に行くことになったギャルたち。麻衣佳の追試という試練も力を合わせて乗り切って、太一が幼少期を過ごした海沿いの田舎町にやってくる第3弾。皆で一緒に行く旅行にヒートアップして、海や温泉に盛り上がるギャルたち。一方で太一は存在をすっかり忘れていた因縁の幼馴染・大井暁良と再会する展開で、明らかになってゆく太一に大きな影響を及ぼしていた暁良との過去、そして家の事情に振り回されてきた暁良の今と婚約者の存在があって、そんな状況が何となく面白くない不破という構図から、いろいろな意味で状況をぶち壊した太一の行動には笑ってしまいましたが、むしろこれで話が終わるわけがないですよね(苦笑)ますますカオスになりそうな今後の展開が楽しみです。