今回は1月角川スニーカー文庫・HJ文庫・23年12月ファミ通文庫・KADOKAWA新文芸の新刊感想まとめです。内訳は角川スニーカー文庫が新作4点、続刊が3点、HJ文庫が新作1点、続刊が1点、12月のファミ通文庫続刊が1点、KADOKAWA新文芸の続刊が1点の計11点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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君を食べさせて?私を殺していいから (角川スニーカー文庫)
【カクヨムプロットコンテスト<受賞>】
原因不明の殺人衝動により誰にも打ち明けられない苦しみを抱え生きていた高校生・有町要。しかしある日クラスメイトの旭日零にそれを気づかれて、密かに二人で契約関係を結ぶ青春小説。K-ウィルスにより狼男の怪異に蝕まれる有町と同様に、原因不明の再生能力と吸血衝動に悩んでいると打ち明けた孤高の美少女・旭日が提案した人で飢えを満たし合う二人だけの秘密の共依存関係。感染しているものしかわからない思いを共有する関係だからこそ、その契約関係はウィルス感染が必要不可欠で、あれほど渇望していたはずの普通の生活と、共にあることのどちらを選ぶのか岐路に立たされた彼が、ただ一人の特別になりたい彼女の願いを知ってどんな選択をしたのか。その後の二人の距離感がなかなか印象的な物語になっていました。
俺の幼馴染はメインヒロインらしい。 (角川スニーカー文庫)
【第8回カクヨムWeb小説コンテスト・ラブコメ(ライトノベル)部門<大賞>】
1周目の人生に絶望し、タイムリープして2度目の人生をやり直し始めた街鐘莉里。1周目にはいなかった幼馴染・水無月彩人と出会ったことで、その人生が変わってゆく青春小説。やや鈍感主人公気味でも、幼い頃にいじめられていた彼女の心を救い、共に進学した高校では起こっていたはずのトラブルや事件のフラグを粉砕してゆくイレギュラー彩人の存在。彼の影響で莉里も変化して、ラブコメハーレムの一員になるはずだった運命もこんなに変わるんだなとしみじみ実感する展開で、それぞれの視点から語られる物語は登場人物の何人がタイムリープしているのかも気になるところですけど、幼馴染のメインヒロインになりたい彼女は今度こそ幸せになれるのか、今後の展開に期待したいシリーズです。
バンドをクビにされた僕と推しJKの青春リライト (角川スニーカー文庫)
【第8回カクヨムWeb小説コンテスト・エンタメ総合部門<特別賞>】
バンドをクビにされた僕と推しJKの青春リライト(1)
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水卜 みう/葛坊 煽 KADOKAWA 2023年12月28日
メジャーデビュー目前にバンド仲間からクビを宣告された芝草融。絶望に打ちひしがれる中で推しアーティストの自殺を知って、後追いした結果タイムリープしてしまうやり直し学園青春リベンジ。最悪の未来を変えるため1周目のバンド仲間からの誘いを断り、同じ軽音楽部に所属していた過去にトラウマを抱える将来の推しアーティスト時雨や、家の事情を抱えるヤンキーJKの片岡理沙をフォローしてバンド結成を持ちかける融。そんな彼らが大会出場を賭けてかつてのバンド仲間と対決する王道展開で、1周目の経験も活かす融が不器用な二人との関係を巧みに繋いでいって、お互いの相乗効果でよりよい音楽を生み出した彼らが、妨害にも負けずに乗り越えて仲間と見せてくれた楽しそうなセッションがなかなか熱かったですね。
日陰魔女は気づかない (角川スニーカー文庫)
相野 仁/タムラ ヨウ KADOKAWA 2023年12月28日
憧れの王都暮らしを始めるも人見知りからうまくいかず、師匠に勧められて田舎暮らしを始めた魔女アイリ。しかしそこでアイリの思わぬ才能が輝く静かに暮らしたい日陰魔女の、無自覚つよかわファンタジー。普通の魔法はあまり得意でなくても規格外レベルで人外に好かれるアイリが、精霊たちと仲良くなって農地を改善したり、魔獣を手懐けて周囲から認められるアイリ。王都の魔法学園に入学して天才と評価されている妹リエルの姉大好きっぷりや、姉自慢が周囲にすっかり認知されているのには苦笑いでしたが、妖精たちや大物人外にも好かれていることで、王都でも評価されそうな勢いになりつつある中、それは自分の力ではないと未だやや自己肯定感低めなアイリの取り巻く環境もこれから激変していきそうで、今後の展開が楽しみです。
なぜかS級美女達の話題に俺があがる件2 (角川スニーカー文庫)
正体を知られた沙羅に二人だけの時間を作ることを条件に、誰にもバラさないことを約束させた晴也。今度は結奈が中学時代のバスケ部の部活仲間と口論している場面に遭遇する第二弾。晴也を認識して意識するようになり、お昼休みに屋上で一緒にご飯を食べ始めるようになった沙羅。一方、結奈の中学時代の部活仲間からその苦い過去を聞き、注意深く観察するうちに結奈が実はまだバスケをしたいのではと感じた晴也。そんな彼女のために担任でもある部活の顧問にも根回しをしながら、彼女の思いにしっかりと寄り添って背中を押す展開はなかなか良かったですね。過去を乗り越えた彼女も晴也のことを改めて意識して、正体がいろいろバレかけている気もしますが続刊も期待しています。
我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.2 魔王軍、ぶった斬ってみた (角川スニーカー文庫)
我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.2 魔王軍、ぶった斬ってみた(2)
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すめらぎ ひよこ/Mika Pikazo/徹田 KADOKAWA 2023年12月28日
なんだかんだで異世界に順応して、好き勝手しまくる残念美少女ホムラたち。そんな彼女たちが魔物の襲撃事件調査のために港町オーレリークを訪れる第二弾。同行するアレクたちを振り回す彼女たちが出会った、欲望のままに圧政を繰り返す領主の娘エリーリヤ。今回もなぜかビーチでサメと戦い、隣の漁村ではジンが鬼退治決行したりとハチャメチャな展開で、這鮫の群れを率いる魔族ナージャの襲来に立ち向かい、それぞれがらしい奮闘を見せてくれましたけど、そんな中で今回を表紙を飾ったジンが妖刀をものにして、そもそもの原因に対峙する姿がなかなかカッコ良くて熱かったですね。魔王が今どうなっているのか、暗躍する黒幕の存在などいろいろ気になるところですが続刊も期待しています。
エロゲのヒロインを寝取る男に転生したが、俺は絶対に寝取らない3 (角川スニーカー文庫)
エロゲのヒロインを寝取る男に転生したが、俺は絶対に寝取らない3
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みょん/千種 みのり KADOKAWA 2023年12月28日
心の闇が晴れたことで本来のエロゲの道筋から外れて、斗和の彼女として共に前を向いて歩き始めた絢奈。斗和の家で蜜月を過ごす彼女が自分の母と向き合う覚悟を決める第三弾。幼い頃から絢奈の心の闇を深めた原因の一つでもある母・星奈。彼女と向き合って心の内を話すうちに、斗和の父母と星奈が古い付き合いであることを知ってゆく展開で、過去にやったことは消えなくても何だかんだで母同士も含めてわだかまりは解消できたんですかね。二人は相変わらずラブラブな感じで、修の周囲にいた伊織や真理たちも変わりつつあって、修の母や妹にも事実を突きつけた今となっては、残るは自分は悪くないと現実から目を背け続ける修との対峙ですか…。
勇者殺しの花嫁 I - 血溜まりの英雄 - (HJ文庫)
【第3回HJ小説大賞中期<受賞>】
魔王を討ちながら教会や国に懐柔されない勇者シオン。業を煮やした教会の枢機卿から、神々の花嫁兼異端審問官であるアリシアに勇者の暗殺指令が届くファンタジー。神々の加護を持ち暗殺が不可能だとされる勇者を殺す方法は勇者から愛されること。神々の花嫁として勇者に近づいてその攻略法を探るうちに、シオンが実は同い年の少女と気づき情が移ってしまうアリシア。シオンの師である英雄の存在、次々と殺される枢機卿、そして魔王軍残党の都市襲撃など、テンポよく読ませる展開で勇者を巡る様々な思惑や魔王との戦いの真実が明らかになってゆく中、少しずつ変わってゆく二人の少女の距離感と、彼女たちの間に育まれた絆がなかなか印象的な物語になっていました。
黒聖女様に溺愛されるようになった俺も彼女を溺愛している 3 (HJ文庫)
黒聖女様に溺愛されるようになった俺も彼女を溺愛している 3
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ときたま/秋乃える ホビージャパン 2023年12月28日
季節が過ぎてやってきた2月。節分祭をきっかけにさらに亜弥との仲を深めた深月は、それを妬んだ男子らにあらぬ誤解を広められてしまう第三弾。深月がボランティアに強制参加させられることを知り、自らも志願した亜弥の心境の変化。そしてバレンタイン当日の初々しいやりとりと、皆の前で深月の無罪を主張する聖女様の憤慨、その断固とした態度に驚くクラスメイトたち。改めてお互いを意識するようになってゆく中で、深月母との邂逅があったり、亜弥のシビアな状況も明らかになっていきましたけど、そんな彼女をしっかりとフォローする深月の存在があって、周囲も暖かく見守る中、きちんと思いを通じあえた二人がなかなか良かったです。
ギャルに優しいオタク君2 (ファミ通文庫)
文化祭も成功し優愛の誕生日が近づく中、女子にプレゼントをあげたこともないオタク君が、悩んだ末に優愛と共通の友人であるリコに相談をもちかける第二弾。リコの提案で優愛と一緒に出かけて誕生日プレゼントを選ぶことになったオタク君。ハロウィンイベントに参加したり、第2文芸部でコミフェ参戦したりと、オタク君を意識し始めた優愛の関係を中心に、同様に彼に興味津々のリコや委員長たちも絡めた、ヒロインたちとの人間模様になっていきましたけど、もはやロッカーに潜むのが持ちネタになりつつある委員長だったり、初参加のコミフェであるあるネタをやらかしたり、ヒロインたちそれぞれに印象的なシーンがあって、今回もなかなか楽しかったです。
サバト帝国の奇策シルフ攻勢によりまさかの敗走を余儀なくされた王国。あまりの急展開に上層部の判断も後手に回る中、ガーバック小隊は城塞都市マシュデールへの撤退を目指す第二弾。飢えと渇きに苦しみながら命からがら城塞都市マシュデールへと辿り着いたトウリたち。しかしすでに眼前にまで迫るサバト軍相手の防衛戦で、唯一の衛生兵として臨時医療本部の監督役に任命されるトウリ。激戦で過酷なトリアージを求められ、さらに生き延びるためにシビアな判断を迫られる厳しい展開の連続でしたけど、しかるべき停戦のタイミングを逃すとこれはもう泥沼ですね…果たして一体どんな結末が待っているのか、日記を辿っている側も含めて続刊が気になるところではあります。