今回は10月のMF文庫J・ダッシュエックス文庫・オーバーラップ文庫・ファミ通文庫・ブレイブ文庫・メディアワークス文庫新刊感想まとめです。MF文庫Jが新作3点、続刊1点、ダッシュエックス文庫が続刊3点、オーバーラップ文庫が続刊1点、新作1点・ファミ通文庫が新作1点、ブレイブ文庫が新作1点、メディアワークス文庫の新作が3点の計14点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
陰キャぼっちは決めつけたい これは絶対陽キャのしわざ! (MF文庫J)
六畳 のえる/大熊 まい KADOKAWA 2023年10月25日
高校生になってかつて親友だった岩里織羽に再会した雨原亮介。誰もが振り返るような美少女に成長しながら、陽キャへの復讐に燃える不器用な彼女に協力する陽キャ撲滅系ラブコメ。昔交わした約束を果たすため、彼女の復讐に協力することにした雨原。自分の席を陽キャに奪われ居場所を求めて校内をさまよう二人が、学園内で起きた楽器を傷つけた犯人探し、化粧ポーチが亡くなった理由、回転寿司チェーン店内で撮った動画やパパ活疑惑の真相といった日常の謎の真相に迫る展開で、その原動力が織羽の陽キャへのこじらせた偏見だったことには苦笑いでしたけど、それ以上に人を陥れようとする悪意には本当に容赦なかったですね。思わぬ形で居場所を得た二人の距離感がこれからどう変わってゆくのかにも期待したいところです。
大っっっっっっっっっっ嫌いなアイツとテレパシーでつながったら!? (MF文庫J)
かつび 圭尚/五七 翔二 KADOKAWA 2023年10月25日
経済特区・東京都白銅区の学園で、毎日毎日いがみ合う高校一年生の有栖川譲と赤坂彼方。実はドキドキすると心の声が勝手に送信されるテレパシーで繋がる二人の青春逃避行アクション。権力の不正を裏付ける存在として、正体がバレれば「不正能力者」として糾弾される世界。秘密を共有する財閥の跡継ぎ娘と没落した名門の末裔の二人による、特区を支配する大企業、暗躍する公安警察、陰謀論や様々な思惑に巻き込まれ、何を信じればいいのか誰のことを信じられるのかもわからない逃避行。いがみ合いながらも時には助け合い、共に逃亡生活を過ごす中で育まれていったかけがえのない絆があって、激動の展開を乗り越えた先で明かされた過酷な運命に、一緒に立ち向かう覚悟を決めた二人のこれからが楽しみです。
ショットガン・ナウル (MF文庫J)
七瀬レナにとって特別だった桐谷とたくさん遊んで笑った高校最後の一年。彼も応援するハリウッド女優になる夢を叶えるため、単身アメリカへ行くことを決意する物語。レナの危機を救ってくれた一流のハリウッド女優ヴィクトリアとの運命の出会い。脚本家志望のエヴァと同居して、アルバイトをしながらオーディションを受け続けたレナに足りなかったものとは何か。それでも覚悟を決めてエヴァとともに挑む映画祭の映画製作で気づいた大切なことがあって、なかなかうまく行かなくても競い合う存在に刺激を受けて、切磋琢磨しながら見事夢を叶えてみせたその結末はなかなか良かったですね。
男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと3 (MF文庫J)
端桜 了/hai KADOKAWA 2023年10月25日
豪華客船における合宿の最中、魔人アルスハリヤと共に爆死したはずのヒイロ。しかし気づけばその決して相容れないはずの仇敵(絶対百合壊すウーマン)である魔人と一体化して蘇ってしまう第三弾。アルスハリヤと一体化して魔神教改め神聖百合帝国の教主となり、現界に復帰して彼が行方不明になったことに絶望していたヒロインたちの危機を救い、再び希望をもたらしてゆくヒイロ。そんな中で天才魔法士のクリスに彼女の妹・学園の寮長ミュールが理不尽に蔑まれている場面に出くわして、姉妹百合のためにその関係修復に密かに動くものの、計画の詰めが甘いために彼のお陰なのはバレバレで、さらにヒロインたちに好かれてしまいそうなヒイロがとても彼らしいと思いました。
迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について 5 (ダッシュエックス文庫)
ネコクロ/緑川 葉 集英社 2023年10月25日頃
球技大会を経て恋人としてより親密になった二人。この幸せな日々を守るため、明人が姫柊財閥との関係を決着させようと動き出す第五弾。以前にも増してイチャイチャする毎日を過ごす明人とシャーロット。しかし関係を変えるのは容易ではなく、シャーロットとの関係は認められず、彼女の帰国も示唆されて、さらには球技大会での様子が動画拡散されるトラブルも起きる問題山積の状況。それでも諦めず彼らなりに何とかしようと打開策を模索する明人でしたけど、そこから繋がってゆく過去の約束がこの苦境を救う展開には二人の運命を感じましたね。これからどんな展開が待っているのか新展開が楽しみです。
許嫁が出来たと思ったら、その許嫁が学校で有名な『悪役令嬢』だったんだけど、どうすればいい? 3 (ダッシュエックス文庫)
疎陀 陽/みわべ さくら 集英社 2023年10月25日頃
ついに幼馴染・智美と涼子からの告白を断った浩之。しかし相変わらず前途多難な四角関係に巻き込まれていた後輩・瑞穂が動き出す第三弾。告白を断っても相変わらず諦めない2人から宣戦布告を突きつけられて、ややタジタジ気味の浩之と彩音。そんな状況で尊敬する先輩で想い人でもある浩之に、打ち込むバスケで直面する悩みを打ち明けて教えを請う瑞穂。そして彼女のために特訓に協力した成果が出始めた矢先の悲劇。誰が悪いわけでもない、どうするのが正解なのか難しい状況で、浩之が出した提案とそれに応えてくれた仲間たち。思わぬ関係が芽生えたり、まさかのオチもあって微笑ましい気持ちになりましたが、彼らの頑張りが瑞穂の心を揺さぶることができるのか続刊が楽しみです。
オタク知識ゼロの俺が、なぜか男嫌いなギャルとオタ活を楽しむことになったんだが 2 (ダッシュエックス文庫)
猫又 ぬこ/千種 みのり 集英社 2023年10月25日頃
桃井真帆と無事に友達になった妹の琴美。そんな妹を心配していた陽斗が、ある日、その琴美から相談を受ける第二弾。学校では高瀬鳴海が一緒だと恥ずかしくて桃井とほとんど喋れない琴美から、桃井の誕生日に向けてプレゼントの推しのぬいぐるみ作りを手伝ったり、みんなでカラオケにいったり、ナンパよけとしてついていったり、琴美の友人作りために協力する陽斗。一方で彼自身は相変わらず高瀬に思いを寄せながら、周囲に向けては桃井と恋人のふりを継続するという複雑な構図で、高瀬とたびたび仲良くなる機会はあるものの、友人の彼氏という状況では進展しようもないですね（苦笑）むしろ桃井との距離感の変化が気になるところではあります。
攻撃力ゼロから始める剣聖譚 2 (オーバーラップ文庫)
大崎アイル/kodamazon オーバーラップ 2023年10月23日
伝説の魔王エリーニュスと契約を結んだことで、制限はあるものの最強の力を手に入れたユージン。異世界から召喚された少女スミレを元の世界に帰すため、迷宮五百階層踏破を目指す第二弾。状況が変わったことでかつての相棒でユージンに好意を寄せる聖剣魔法の使い手サラも仲間に加えて、時にはユージンの奪い合いをしたり、ユージン自身もいろいろ試行錯誤を重ねながら百階層へと到達した彼らの前に現れる思ってもみなかった相手。国の守護者たちすら翻弄され敗北する相手に、実力が不足しているはずなのに指名されたユージンたちが繰り広げた熱い戦いの結末、そしてスミレやサラとの変化してゆく三角関係には苦笑いでしたけど、彼らに対する評価もまた変わってきそうな今後の展開が楽しみになってきました。
絶滅騎士の魔導教室 (オーバーラップ文庫)
世嗣/TEDDY オーバーラップ 2023年10月23日
空を飛んで魔物と戦う魔導師を育成する魔導都市アウロラの新任教師として赴任したアドレー・ウル。彼がかつて孤独に雨に濡れていたところを救った生徒会長セレナと、生徒会の顧問として再会する学園ファンタジー。空を飛べず魔物を倒す「騎士」が、絶滅したとされる世界で、ポテンシャルはありながらも魔法を上手く使えず、生徒会メンバーも協力してくれない孤独な現状に苦悩するセレナ。演習で遭遇した魔竜を撃破するアドレーを見て師事することになった彼女が、燻り続ける魔族の陰謀に巻き込まれる展開で、そこで明らかにされてゆく彼女のもうひとつの事情からその難しい立ち位置が伺えましたけど、自身もまた苦い悔恨を抱えているアドレーが彼女をどう導くのか、今後の展開に期待したいシリーズです。
三傑のサッカーは世界を揺らす! (ファミ通文庫)
頭のなかに別の人間ヤマヒコの声が聞こえる中学生・佐田明。中学最後の球技大会のサッカーで、『日本サッカーの救世主』と呼ばれる天才ストライカー滋賀槍也と運命の出会いを果たすサッカー小説。後に日本サッカーの三傑と呼ばれるアキラと槍也の出会い。耳のいいヤマヒコの音の情報によるサポートを受けて、素人ながら槍也だけがその凄さに気づいた衝撃的なシーンを演出して、彼から興味を持たれたアキラ。槍也のために動く双子の妹・琴音も巻き込んで、槍也と一緒にプレーした野良試合で次第に順応していったアキラに抱いた確信。エリートならありえない決断までしてあえて同じ平凡な公立高校に進んだ彼らが、これからどんな旋風を巻き起こしてくれるのか。高校編が今からとても楽しみです。
北欧美少女のクラスメイトが、婚約者になったらデレデレの甘々になってしまった件について (ブレイブ文庫)
軽井広/pon 一二三書房 2023年10月25日頃
学校で一番可愛いと噂の北欧美少女・愛乃リュティを書店で偶然助けた連城透。彼女から政略結婚を拒否するために婚約者になってほしいと告げられる青春ラブコメ。彼女から懇願されたものの、かつて婚約者だった女の子を守れずに婚約を解消された苦い過去から躊躇する透。しかし実は政略結婚の相手が透だと知って、途端に婚約に乗り気になり始める愛乃。そこから同棲が決まるまでの展開はなかなか早かったですけど、透に積極的にぐいぐい来る一方で、初々しさも垣間見せる愛乃がなかなか可愛いかったですね。甘い雰囲気を漂わせる二人に対して、そんな急展開に納得がいかない元婚約者で従兄妹の知香が介入してこれからどうなるか、今後の展開が楽しみになってきました。
不遇令嬢とひきこもり魔法使い ふたりでスローライフを目指します (メディアワークス文庫)
丹羽 夏子 KADOKAWA 2023年10月25日頃
由緒ある魔法使い一族に生まれながら、魔法の才を持たないネヴィレッタ。彼女が異母妹ヴィオレッタに押し付けられ、残虐な噂の絶えない魔法使いエルドに会いに行くファンタジー。世間から存在を隠され虐げられてきた彼女が、自らの力を戦争に使われることを厭うエルドとの交流でお互いのことを知っていって、少しずつその存在に癒やされてゆく心。しかし戦争で存在感を示したい王と、そんな状況を終わらせたい王太子の対立の構図に二人が巻き込まれてゆく展開で、戦いが不可避になって彼女のために戦う覚悟を決めたエルドに、自分もできることをと志願したネヴィレッタにも意外な展開が待っていましたけど、栄達よりもかけがえのない大切なものを選んだエルドたちが幸せそうで良かったです。
いずれ傾国悪女と呼ばれる宮女は、冷帝の愛し妃 (メディアワークス文庫)
ある日反乱で後宮を焼け出され全てを失った林王朝の公女・紅玉。不吉の象徴と忌まれる白髪を持つ彼女が、かつて後宮を燃やして冷帝と呼ばれる現皇帝・関玿の後宮に宮女として入る中華風後宮ミステリ。五年後、紅林と名乗り貧しい平民暮らしをしていた彼女が、数奇な運命の巡り合わせで入ることになった後宮。変わり者の衛兵に扮した現皇帝・関玿と一緒に、後宮内の女人を使った妃嬪たちからの窃盗や宴での毒の混入といった事件の謎を、公女時代の知識で鮮やかに解き明かして真相に迫る紅林。一連の事件は過去の因縁や思わぬ真相にも繋がっていて、シリアスな展開を乗り越えたその結末は、誤解も解けたことでわりと微笑ましい感じになっていてなかなか良かったですね。
犬を拾った、はずだった。 わけありな二人の初恋事情 (メディアワークス文庫)
縞白 KADOKAWA 2023年10月25日頃
戦後の混乱から休み無しで働かされ続けて、拾ったばかりの犬を理由に帰宅をもぎとった魔術師のマリス。しかし彼女には犬にしか見えないそれが、実は失踪中の「救国の英雄」ゼレクだということが判明するファンタジー。犬にしか見えないクロを周囲はゼレクとして扱う摩訶不思議な状況。そして普段は無口で周囲にも無関心なゼレクがマリスにだけは懐いていて、独占欲を見せることに驚きを隠せない部下たち。それが王家の伝説にも絡む一大事件に繋がってゆく展開でしたが、絶対強者なのに彼女には甘えるゼレクと、しっかりと彼を調教して手綱を握るマリスの関係性が肝で、最初の頃の様子を思えば、彼女と出会ったことでかけがえのない存在と居場所を得たゼレクが、どんどん人間らしくなっていくと周囲が話すのも分かるような気がしました（苦笑）
