【Kindle40%ポイント還元】実業之日本社 『天久鷹央シリーズ』刊行記念! 知念実希人フェア (10/12まで)
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【Kindle40%ポイント還元】新潮社 新潮文庫・新潮新書 ポイント還元キャンペーン
今回は各種オンライン書店で開催の「実業之日本社『天久鷹央シリーズ』刊行記念! 知念実希人フェア」とKindleで開催中の「新潮社ポイント還元キャンペーン」対象作品の中からおすすめ30作品をセレクトしました。気になる作品があったらこの機会に是非読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
1.硝子の塔の殺人
雪深き森で燦然と輝く硝子の塔。ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など一癖あるゲストたちが招かれ、この館で次々と惨劇が起こるミステリ。館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体、さらに血文字で記された十三年前の事件。名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬が謎を追う、昔よくあったお約束設定に挑戦する展開で、こういうのもあったなと作中で紹介されるミステリ作品群を懐かしく思いながら読んでいましたが、紆余曲折の末にちゃんとうまい具合に着地させてくれる結末の余韻は自分好みでした。
2.仮面病棟 (実業之日本社文庫)
療養型病院にピエロの仮面をかぶった強盗犯が籠城し、自らが撃った女・愛美の治療を要求。先輩医師の代わりに当直バイトを務める外科医・速水秀悟が事件に巻き込まれる物語。愛美を緊急手術で救い、衝動的な行動も多いピエロと交渉する中で愛美と心を通わせてゆく速水。通報や脱出の手段を探るうちに明らかになってゆく病院の隠された秘密。急展開から事件が解決したとされる中、一人事件からぽつんと取り残された感もあった速水の中で違和感が大きくなってゆき、いくつもの伏線が繋がってひとつの結末に向かうラストはなかなか面白かったですね。
3.時限病棟 (実業之日本社文庫)
目覚めると見知らぬ病院のベッドで点滴を受けていた梓。同じように監禁された男女5人が謎のクラウンから6時間というタイムリミットを設けられて、脱出ゲームに挑む物語。病院内に仕掛けられた時限爆弾による死から逃れるため、監禁された5人が強制参加させられるゲーム。その背景にあったある男の死。一見関係なさそうに見えた参加者たちにもそれぞれ隠された事情があり、テンポよく進む展開の中で繋がって明かされる真実と決着は、あの事件がまだ終わっていなかったことを強く実感させました。
4.崩れる脳を抱きしめて (実業之日本社文庫)
広島から神奈川の病院に実習に来て、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会い次第に心を通わせてゆく研修医の碓氷。実習を終え広島に帰った彼の元にユカリの死の知らせが届くが、その死に疑問を抱く青春ミステリ。過去に縛られていた碓氷が、解消してくれたユカリに惹かれるも果たせず終わった結末。その死に感じた違和感をそのままにできず、神奈川に飛びユカリの足跡を追う碓氷。ミステリとしての構図はさほど意外なものではなかったですけれど、読みやすくテンポよく進む展開と最後にたどり着いた結末は、その真摯な想いが報われた素敵な読後感でした。
5.レゾンデートル (実業之日本社文庫)
末期癌を宣告され絶望の日々を送る医師・岬雄貴。ある日、不良から暴行を受けた岬が、偶然連続殺人鬼「切り裂きジャック」、そしてトラブルに巻き込まれていた少女・沙耶と邂逅し運命が回り始める物語。雄貴の存在を知って事件に巻き込んでいくジャック、そんな日々の中で出会った沙耶との奇妙な同居生活で少しずつ心境が変わってゆく雄貴。最初は視点の切り替わりが少し多いかなと感じましたけど、読めば読むほどテンポも良くなっていって、いくつもの事件・人物が繋がってゆく終盤の展開は流石で、切なくもぐっと来る結末もなかなか良かったです。
6.リアルフェイス (実業之日本社文庫)
バイト先として天才形成外科医・柊貴之のクリニックを紹介された麻酔科医・明日香が、次々と舞い込む奇妙な依頼や彼の過去の因縁に巻き込まれていく医療ミステリ。天才的な手腕以外はまるでダメ人間な柊は自分が納得した手術しか受けない主義で、そんな彼に明日香が振り回されながらもその生き様に感化されていく物語。。。かと思ったのですが、後半は柊と弟子・神楽を巡る因縁で状況が二転三転するスリリングな急展開でした。読みやすくて依頼解決パートも話として面白かったです。
7.誘拐遊戯 (実業之日本社文庫)
女子中学生を誘拐した謎の犯罪者ゲームマスターとのゲームに失敗、被害者を死なせてしまい職も家族も失った刑事上原真悟。その4年後再びゲームマスターを名乗る誘拐犯が現われる物語。必死に探していた有力容疑者が自殺してしまい自暴自棄になっていた上原。そんな彼を再びゲームの相手に指名するゲームマスター。ギリギリの状況が続くテンポの早い展開はあっという間で、犯人を追ううちに明らかになってゆくまさかの真実を知り、思わずタイトルを見直しました。その異常な執着の結末がどうなったのか、想像するしかないですが気になるところです。
2020年、中2の夏休みの始まりに、また変なことを言い出した成瀬あかり。全力で我が道を突き進む彼女を周囲の視点から浮き彫りにしてゆく青春小説。突然閉店を控える地元の西武大津店に毎日通って中継に映ると言い出したり、幼馴染の島崎とM-1に挑戦したり、膳所の祭りの司会も務めたり、自身が信じた方向へ自由に突き進む成瀬。別視点からのエピソードもありましたけど、何より地元への愛に溢れていて、突然突拍子もない行動をするその存在感に周囲も目をそらせなくて、様々なところに影響を与えていく成瀬が痛快で面白かったです。お互いに認め合う島崎との友情もなかなか効いていました。
9.木挽町のあだ討ち
疑う隙なんぞありはしない、あれは立派な仇討ちでしたよ。語り草となった大事件、その真相は――。ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顛末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。新田次郎文学賞など三冠の『商う狼』、直木賞候補作『女人入眼』で今もっとも注目される時代・歴史小説家による、現代人を勇気づける令和の革命的傑作誕生!
10.あなたはここにいなくとも
人生に迷いが生じた時、どうすればいいのか分からなくなった時、誰かの存在が助けになる。もつれた心を解きほぐす温もりに満ちた五つの連作短編集。恋人に紹介できない家族、会社でのいじめによる対人恐怖、人間関係をリセットしたくなる衝動、わきまえていたはずだった不倫、ずっと側にいると思っていた幼馴染との別れ。知られたくない、自分は間違っている、こうするしかないと思いこんでしまうと、そこから抜け出せなくなることがありますけど、抜け出せれば意外とそんなことはなかったと、客観的に冷静に物事を見れるようになるんですよね。そんな迷える主人公たちに手を差し伸べてくれる周囲の人たちの優しさが心に染みる物語でした。
11.花に埋もれる
この想いを知ってしまったら、そのままではいられない。何とも複雑な思いが思ってもみなかった結末を呼び寄せる、緻密で繊細な六篇の連作短編集。彼氏よりソファの肌触りに執着する女。妊娠で豹変し別れた妻と、父に会う娘の悲壮な覚悟。すれ違う恋人への複雑な想い。身体から出た石を交わし合う恋人たち。父を意識するあまり役に投影して自ら白木蓮の花に姿を変えた夫。身に花を咲かせる世界で転がり込んできた猫のような彼女と彼との結末。自分の中に確かにあったはずの愛は、けれど必ずしも上手くいく結末に繋がっているとは限らなくて、少しずつすれ違ってどうにもならなくなった自らの思いに、何とか向き合おうとするそれぞれの姿がとても印象的な短編集でした。
病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。調査に赴いたまま戻らない助手を心配して教団の本拠地に乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。奇蹟を信じる人々に、現実世界のロジックは通用するのか? 圧巻の解決編一五〇ページ! 特殊設定、多重解決推理の最前線!
13.君といた日の続き
10歳の娘を亡くし、妻の紗友里ともすれ違い、離婚してコロナ禍のリモートワークを言い訳に自宅に引きこもっていた譲。そんな彼が家の近くである日ずぶ濡れの女の子「ちぃ子」を拾うひと夏の物語。話を聞く限り1980年代からタイムスリップしてきたらしい彼女とのギャップに戸惑いながら、ちぃ子と共に過ごすなかで少しずつ癒やされてゆく日々。繋がってゆく幼き日の苦い記憶があって、どうなることかと思われた二人のかけがえの生活の末に気づいた、全てが今に繋がる思い違いがあって、それは譲がこれまで見ていたものの意味も大きく変えましたけど、絶望しかなかった未来で、もう一度前を向いて歩いて行ける希望を感じさせてくれた結末にはぐっと来るものがありました。
14.#真相をお話しします
日常に潜む小さな歪みが、違和感とともに浮き彫りになっていってそれが衝撃の結末へと繋がる五つの連作短編ミステリ。家庭教師の派遣サービスに従事する大学生が母子に抱いた違和感、女の子をホテルに連れ込んだ男の真の目的、精子提供によって生まれた自分の娘と会ったことで気づいてしまった思わぬ真実、リモート飲み会から始まる浮気発覚騒動の顛末、ある事件をきっかけに島の人々がやけによそよそしくなった理由。話の流れの中に感じた違和感は何だったのか?そこから導き出される意外な真相と、そこからさらに明かされてゆく思っても見なかった結末にはなかなか強烈なインパクトがありました。
15.ループ・オブ・ザ・コード
疫病禍を経験した未来。世界生存機関に所属するアルフォンソは、児童200名以上が原因不明の発作に見舞われる奇病の現地調査を命じられる近未来小説。20年前に民族のアイデンティティが消去され、再生のテーマパークとも揶揄されるその国での調査中、抹消の元凶となった生物兵器が強奪されて、悲劇の再来を恐れる事務総長から密命を言い渡される展開で、国がなくなってしまうことによってアイデンティティが喪失することの意味だったり、多様な価値観が配慮される未来ではどういうことが起こるのか、やや情報量が多めではありましたけど、思考実験としてもいろいろと考えさせてくれるなかなか読み応えのある一冊でした。
16.コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―(新潮文庫nex)
九州に展開するコンビニ「テンダネス」の門司港こがね村店。勤勉なのに老若男女を意図せず籠絡するフェロモン店長・志波三彦と、彼を慕ってやってくる常連客たちがコンビニを舞台に繰り広げるお仕事小説。バイト野宮が密かに抱えていた後悔、夢と現実の狭間で悩む塾講師・桐山、幼馴染との関係に悩む梓、定年後妻との距離感が分からなくなった夫、パート・光莉の息子・恒星が抱いた疑惑、クリスマスの騒動など、店長や周囲の登場人物たちを絡めたドタバタ劇が楽しくて、その優しさが関わる人たちの心を癒してゆくとてもじんわりと来る物語でした。
17.覇王の譜 (新潮文庫)
プロになって7年。将来を嘱望されながら未だC級2組に留まっている「賞味期限切れの元天才」直江大が、王座としてトップ棋士の一員となった奨励会同期の剛力英明に挑む将棋小説。旧友との間に開いた目も眩むような格差。諦めかけていた彼の転機となった京都の天才少年・高遠拓未との邂逅、棋界の第一人者・北神との対局、そして現在の師である師村の猛特訓。これまで最底辺だった境遇から這い上がろうとする直江が自分の実力を信じ続けることは容易ではなくて、高い壁に何度も跳ね返されながら、それでも諦めず挑み続ける熱い展開とその結末が心に響く印象的な物語でした。
18.ケーキ王子の名推理(新潮文庫nex)
19.龍ノ国幻想(新潮文庫nex)
20.さよならの言い方なんて知らない。(新潮文庫nex)
美味しいケーキ大好きな女子高生・未羽が、失恋直後に迷い込んだケーキ屋でパティシエ修行をしている同級生の冷酷イケメン王子・颯人に遭遇する物語。少女漫画のような設定や展開でミステリとして見るとあっさりめですが、出会った当初はお互いあまり印象が良くない二人が、夢に向かって頑張る颯人を徐々に応援する気持ちになっていったり、ケーキであっさり釣られるもののイケメンだからといって特別視しない未羽は信用できると感じたり、飾らない二人の距離感が心地良かったです。そんな二人の恋の予感はこれからですかね。続きが楽しみなシリーズです。
一原八洲の一つ龍ノ原で皇尊が崩御。三人の候補が皇位の座を巡り競う状況で、実は女の異端の皇子・日織皇子が運命に翻弄されながら新しい国を目指す男女逆転建国宮廷ファンタジー。龍の声を聞く力を持たない女が「遊子」呼ばれ虐げられる現状を変えるため、男として皇尊を目指す日織。持たざる者と持たない者の邂逅から動き出す運命、そして過酷な現実を突きつける展開にはぐいいぐい読ませるものがあって、多くの人に思いを託されて乗り越えた先に、ここからどういった新展開が待っているのか、未だ先の見えないこの物語には期待感しかありません。
さよならの言い方なんて知らない。
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河野 裕 新潮社 2019年08月28日頃
臆病であることを誇る高校生・香屋歩と幼馴染秋穂が迷い込んだのは、8月がループする街「架見崎」だった。戦闘の役に立たない能力を希望した二人が、乏しい物資を巡る戦争に巻き込まれてゆく物語。設定されたルールの中で戦うゲームのような世界に飛ばされ弱小「キネマ倶楽部」に所属することになった二人が、いきなり戦闘に巻き込まれてゆく展開でしたけど、ゲームの本質を見極めつつ強者との駆け引きの読み合いで一歩先を行く二人は存在感がありましたね。もう一人の幼馴染がちょっと意外でビックリでしたが、続巻でどうなるか期待のシリーズです。
21.幽世の薬剤師 (新潮文庫nex)
24.クローゼット (新潮文庫)
25.か「」く「」し「」ご「」と「 (新潮文庫)
26.わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)
紺野 天龍 新潮社 2022年03月28日
自身が専門とする漢方と現代医療の狭間で苦悩する薬剤師の空洞淵霧瑚。そんな彼が帰り道で不思議な少女に導かれ、幽世で謎の感染現象に苦しむ人々に直面する異世界医療ファンタジー。認識が現実を書き換えてしまう異世界で急増する吸血鬼化のような症状。幽世の巫女・御巫綺翆のサポートを受けながら、漢方の知識を活かしてその症状を緩和して原因を探ってゆく霧瑚。ふとした気付きから真相に至るまでの展開はなかなかテンポも良くて、わりと鈍感気質な霧瑚を巡る人間模様も気になるところですが、一方で霧瑚と幽世にもいろいろと因縁もありそうな様子が垣間見えてきて、この物語の続きをまた読んでみたいと思いました。
22.君と漕ぐ―ながとろ高校カヌー部―(新潮文庫nex)
両親の離婚で引っ越してきた高校一年生の舞奈。地元の川でカヌーを操る少女・恵梨香に出会った彼女が、一緒にながとろ高校カヌー部に入部する青春部活小説。長年コンビを組むも少しずつ想いがすれ違ってきた先輩の希衣と千帆。実力者恵梨香の出現による希衣の決意。初心者の舞奈は今後に期待ですけど、過去に執着していたり今の自分を見て欲しいと願う、それぞれの繊細で複雑な心情を巧みに描きつつ、ずっともやもやしていた思いをぶつけ合って、前に進む力に昇華させてゆく展開にはぐっと来るものがありました。
23.呪殺島の殺人(新潮文庫nex)
呪術者として穢れを背負った赤江一族が暮らした呪殺島。伯母・赤江神楽に招待され、友人の古陶里とともに島を訪れた秋津真白が、記憶を失い神楽の遺体の前で目を覚ます密室ミステリ。ミステリ作家の神楽に招かれた8人が密室状態の殺人事件に遭遇し、連絡も絶たれた孤立状態で発生する連続殺人という典型的な展開でしたが、お互い疑心暗鬼な状況で肝心の真白が記憶を失っていることも効いていて、前提を覆される意外な事実と人物配置の妙、これこそ呪いだったのかと唸らされた結末がなかなか印象的でした。
千早 茜 新潮社 2020年11月30日頃
男なのに女性服が好きというだけで傷つけられた過去を持つ芳と、幼い頃のある事件のせいで男性恐怖症を抱えていた纏子。服飾美術館を舞台に洋服の傷みと心の傷みにそっと寄り添うお仕事小説。芳が働くデパートでの特別展示を機に出会った服飾美術館の洋服補修士・纏子。芳は機会あって訪れた服飾美術館でめくるめく服の奥深い世界に魅せられて、美術館の中で働く人たちの雰囲気もなかなか興味深くて、それぞれの過去が繋がってしっかりと向き合い、服だけでなく心もまた少しずつ補修されて、新たな一歩踏み出す展開にはぐっと来るものがありました。
25.か「」く「」し「」ご「」と「 (新潮文庫)
みんなには隠している、ちょっとだけ特別なちから。なんの役にも立たないけれど、そのせいで最近気になって仕方ない。そんなクラスメイト5人のかくしごとがそれぞれの視点で描かれる連作短編集。それぞれ誰にも言えない秘密があって、抱えている想いがある。みんな頑張っているけど不器用だから勘違いして空回りして、傍から見てるともどかしいばかりなんですが、そこで思い切って一歩踏み出してみたらなあんだと思うようなことだったりで、そんな青春している5人が十年後どうなっているのかちょっと知りたくなるような、そんな素敵な物語でした。
苦い過去の経験から定時で帰ることをモットーにウェブ会社で働く東山結衣。ブラック上司に曲者揃いの同僚相手に定時で帰る?仕事する気あるの?という空気の中奮闘するお仕事小説。働き方も婚約者もやや極端から極端に走りがちな感もあった結衣でしたが、無理を精神論で通そうとする天敵の勘違い上司や、同僚や取引先に振り回され続ける展開には共感めいたものを覚えてしまいますね。それでも何とかしてみせた結衣の奮闘っぷりは流石で、婚約者は正直どっちもどっちだけれど、とりあえず巧は止めておいて正解だった気がしました(苦笑)
27.この恋が壊れるまで夏が終わらない (新潮文庫nex)
28.処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな(新潮文庫nex)
29.エナメル (新潮文庫nex)
この恋が壊れるまで夏が終わらない
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杉井 光 新潮社 2022年04月26日
時を遡る力を持つ高校生・柚木啓太。彼が初めて恋をした先輩が夏休み最後の日に凄惨な死体で発見され、先輩を救うために時を遡るタイムリープ青春グラフィティ。力もさして活用せずひっそりと過ごしてきた彼が、密かに恋をした図書委員の純香先輩。放課後は司書室に入り浸り、勧められるままに美術部に入部して絵を描いた啓太が直面する悲劇。遡るたびに変わる状況、止まらない彼女の死、ボロボロになりながら明らかになってゆく状況がまた何ともほろ苦くて切ない気持ちになりましたけど、けれどそれだけでは終わらない、その先に待っていたもうひとつの結末がなかなかに効いていて、著者さんらしいとても印象的なひと夏の物語に仕上がっていました。
処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな
posted with ヨメレバ
葵 遼太 新潮社 2020年05月28日頃
留年して二回目の高校三年生となった佐藤晃に話しかけてきた同級生・白波瀬巳緒。それをきっかけに居場所がないと思っていた学校で周囲に輪ができて、かけがえのないものを取り戻してゆく喪失と再生の青春小説。留年の経緯で明らかになってゆく深い愛には驚かされましたが、あっけらかんとしたギャルの白波瀬巳緒、綺麗な声が耳に残る少女・御堂楓、そしてアニメ好きな和久井と出会い、大切な友人・藤田たちにも支えられながら、みんなで結成したバンドを通して熱い想いをぶつけ合い、未来に希望を見出してゆく結末にはぐっと来るものがありました。
寝たきりの高飛車美少女で大金持ち天才探偵の甘宮メルと、彼女に献身的に付き従う寡黙な彼氏兼助手の江名。二人が都市伝説や日常の謎を気まぐれに解決してゆく青春全否定暗黒恋愛ミステリ。女子高校生小説家をめぐる嘘と真実、殺人鬼予備軍をめぐる顛末、もうひとりの幼馴染との再会と格差再生産、二人のデートと過去の真相。二人にもとにもたらされる重い社会的テーマを背景とした事件の解決に挑む展開でしたけど、何よりも一見強気そうでもどこか不安で何回もエナを試してしまうメル、掘り下げれば掘り下げるほど、その献身は贖罪なのか愛なのか考えてしまうエナの何とも絶妙な関係がとても印象に残る物語でした。
30.冬の朝、そっと担任を突き落とす (新潮文庫nex)
校舎の窓から飛び降りた担任教師。遺書は残されていなかった。奇妙な平穏が続いた理系特進クラスに転校生・中西美紀がやってきたことで、教室の贖罪が始まる青春ミステリ。学校側が否定する担任の自殺の原因はこのクラス全員が知っている。死の真相を探り始める美紀が、そしてその後を引き継いだ田嶋春が、目をそらしていたクラスメイトたちに投げかけた波紋。すれ違いの連続が悪意なき残酷さを生んで、その積み重ねによって事態の様相もガラリと構図を変えていって、全てが繋がった末に提示されるその結末にゾクリとさせられる印象的な物語でした。