少し前から #1日1文庫 のハッシュタグで読んだ本の中から1日1作品紹介するようにしていますが、このまま流して終わりなのもあれなので、ここから10日ごとにまとめていこうと思います。Twitterの紹介は140文字に収まるようあっさりめですが、こちらはもう少し長めの紹介です。
【#1日1文庫41日目】
君が死ぬ未来がくるなら、何度でも (集英社オレンジ文庫)
とある日の朝、幼馴染の高遠原櫂から急に呼び出され、おメダイを渡された時計紡。櫂の妹で親友でもある暖の死を目の当たりにした紡が、その死を回避すべく運命の朝を繰り返してゆく物語。繰り返し条件を変えていってもなかなか回避できない友人たちの死。回避の鍵を握る幼馴染の櫂と暖を巡る複雑な三角関係と、運命線を分岐させる死亡フラグと恋愛フラグの存在。大切な人たちを誰も失いたくない一心で葛藤し続けた紡の悲壮な決意には切なくなりましたが、遠回りこそしたものの彼らがたどり着いたその結末には、本当に良かったと胸が熱くなりました。
【#1日1文庫42日目】
スマッシュエース! (メディアワークス文庫)
将来を嘱望されながら致命的な怪我を負い、それでも諦めずにバトミントン部に入部した高校生・翼が、ふとしたきっかけで凄まじいスマッシュを持つ不器用な少年・千波矢と出会い、ダブルスを組んで再び走りだす物語。ハンデを負いながらも再び這い上がってきた翼が出会った、何を考えているのかよく分からないスマッシュだけの千波矢。最初一方的な関係だった二人がそれぞれの葛藤を知って対等になり、熱かったライバルたちとの戦いの中で喜びを分かち合うようになってゆく姿にとても心を揺さぶられました。是非続編を期待したい注目の青春小説です。
【#1日1文庫43日目】
妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)
未来に起こる確率を調べる技術が確立した世界。自らが抱える苦しい思いをどうにかしたくて、確率をつい確認し続けてしまう人たちの物語を描く連作短編集。政略結婚や大怪我、路面電車での出会い、届かぬ思いや父と娘の関係、忘れられない運命の出会いなど、停滞する状況を抱える登場人物たち。それでも人との関わりの積み重ねから事態や心境も少しずつ変化して、それに向き合ったり素直になったり次に向けた一歩を踏み出してゆく7つのエピソードは、表題作でもあるタイトルイメージをいい意味で裏切る思いのほか爽やかな読後感の素敵な物語でした。
【#1日1文庫44日目】
暁花薬殿物語 (富士見L文庫)
薬師を目指していたはずが代役で急遽入内することになってしまった暁下姫こと千古。大貴族出身4人の后候補が揃う宮廷でうまく抜け出すことばかり考えていた彼女が、帝と出会い少しずつ変わってゆく平安宮廷風ファンタジー。幼馴染や乳母たちと共に後宮入りすることになったお転婆で快活な千古が巻き起こす数々の騒動。宮廷内で味方もなく孤立する案外似た者同士だった帝との意外な出会い。そんな彼女が周囲に支えられつつらしさを発揮し、帝とも前向きに向き合うようになってゆく展開はなかなか良かったです。現在6巻まで刊行。
【#1日1文庫45日目】
ネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲 (角川文庫)
19世紀末、ロンドンの画廊で展示されたルーベンス未発表の真作。その絵に目を奪われたエディスが「贋作」と断言する美貌の青年・サミュエルと運命の出会いを果たすファンタジー。訳ありな貴族の娘・エディスと、絵より現れた異形の怪物から彼女を救ったサミュエル。ジョン・ラスキンやヴィクトリア女王など実在の人物も絡めつつ、サミュエルと宿敵・ブラウンの贋作に宿る怪物を巡る戦いを描く展開でしたけど、虚構も織り交ぜながら展開されるストーリーはなかなか面白かったですね。未だ謎多きサミュエルとエディスの物語をまた読んでみたいです。2巻まで
【#1日1文庫46日目】
たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に (祥伝社文庫)
上司のパワハラに悩みながら資格試験の勉強をする冴えない伊東公洋の毎日を一変させた大学生・奈々との出会い。彼女に惹かれてゆく一方で、職場の峰岸からも好意を寄せられ何かが狂い始めてゆくミステリ。真面目で優しい不器用な公洋が、地味な同僚の峰岸にどんどん追い詰められてゆく展開は怖かったですが、そこから第二章以降の視点も変わる急展開にはビックリしました。事件の背景に意外な繋がりが見えてきて、思惑と譲れない意地が入り混じる真相には何とも複雑な気分になりましたし、タイトルに込められた意味をいろいろと考えてしまいますね。
【#1日1文庫47日目】
知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)
勤務先で先輩の失敗を押しつけられて辞め、叔父が住んでた家に籠もっていた陽向。彼の元に届けられた叔父のテープを原稿起こししてもらうため、音谷反訳事務所の久呼と出会うお仕事小説。訳ありで個人宛てテープは起こさない信条の久呼に反訳のやり方を教えてもらううちに、テープの真意や反訳の奥深さを知って彼女に師事しその仕事を手伝うようになってゆく陽向。意気込みが空回りすることもありましたけど、自身も抱えているものがある久呼とは足りないところをお互い補い合えるいいコンビになりつつあって、続巻あるならまた読んでみたいです。
【#1日1文庫48日目】
僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)
交通事故で一日ごとに記憶がリセットされ、新しいことを覚えられないという症状を抱えている小説家の岸本アキラ。そんな状況で不安と戦い葛藤しながら小説を書き進めるアキラの物語。毎朝自分が書いた引き継ぎを読みながら、試行錯誤して小説を書き続けるアキラとカフェで働く翼との出会い。サッパリした彼女とのやりとりが刺激になり書き上げていく小説に込められていった思い。まさかの急展開にはもどかしくなりましたけど、それでも諦めなかったアキラの挑戦と、失われていた間の出来事が次第に明らかになってゆく結末はとても良かったですね。
【#1日1文庫49日目】
知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫nex)
大学を卒業し就職活動するわけでもなく、毎晩以前泥棒に奪われた大切なものを取り戻すべく、自転車で徘徊する無為な日々を送っていた枇杷。最初は何でこんなことをしているんだろうと首を傾げましたが、彼女から大切なものを奪った親友の元カレもまた理由を同じくする大きな喪失感を抱えていて、家族に家を追い出されてしまった枇杷が、彼とともにリハビリのような奇妙な共同生活を送りながら徐々に立ち直っていくストーリーは、これまでの著作とはややテイストが異なるものの、さすが竹宮ゆゆこさんらしい、一気に読ませる読後感のよい物語でした。
【#1日1文庫50日目】
臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 (講談社タイガ)
言葉の真偽・虚実を瞬時に判別できてしまう本多唯花。大学で心理学を学ぶ彼女のもとに旧家の跡取り息子、文渡英佐から依頼が持ち込まれる物語。特異な障害に起因する唯花の卓越した「嘘」を見抜く論理的鑑定とそれをサポートする晴彦。閉じられた文渡村で起こった殺人事件と文渡一族の複雑な関係。謎解きのアプローチはやや難解な感がありましたが、ストーリー自体はわりとあっさりめで、研究分野以外はあまり興味なさ気な唯花が意外な部分に反応したり、意外な方向に収束してゆく展開は面白かったです。2巻まで