少し前から #1日1文庫 のハッシュタグで読んだ本の中から1日1作品紹介するようにしていますが、このまま流して終わりなのもあれなので、ここから10日ごとにまとめていこうと思います。Twitterの紹介は140文字に収まるようあっさりめですが、こちらはもう少し長めの紹介です。
【#1日1文庫1日目】
霊感検定(講談社文庫)
バイト帰りに同級生の羽鳥空と印象的な出会いを果たした転校生の修司。彼女と再会した図書室で風変わりな司書・馬渡の心霊現象研究会の活動に巻き込まれてゆく青春ホラー。霊の想いに寄り添うちょっと変わった女の子・空と彼女を見守る幼馴染・晴臣。彼ににらまれながらも空とのやりとりを貴重に思う修司。仲間と解決する霊絡みのトラブルは切なかったり重かったりもしましたが、それ以上に彼らの優しい想いがつまった甘酸っぱい青春している雰囲気をたっぷりと味わえました。登場人物も魅力的でページの割にはとても読みやすい楽しみなシリーズ。3巻まで刊行。
【#1日1文庫2日目】
天盆(中公文庫)
小国「蓋」を動かすのは、国民的盤戯「天盆」を勝ち抜いた者。 貧しい13人兄弟の末っ子・凡天は10歳ながらも天盆にのめり込んでいき、異様な強さで難敵を倒していくファンタジー。将棋のような天盆が軸に据えられた世界観で、のめり込んでいく凡天が行く先々で引き起こす事件と、権力者に睨まれて少しずつ追い詰められてゆくその家族。困難に際しての様々な葛藤はあっても血の繋がらない父母や兄弟たちとの揺るぎない絆は確かにあって、頂点を目指す天盆を巡る戦いはどんどん熱くなっていって、劣勢を覆し上り詰めてゆく戦いぶりは痛快でした。
【#1日1文庫3日目】
装幀室のおしごと。(メディアワークス文庫)
装幀室のおしごと。 〜本の表情つくりませんか?〜
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範乃 秋晴 KADOKAWA 2017年02月25日頃
きちんとゲラを読んで理解し、本の表情を生み出すのが装幀家の役割だと信じる本河わらべが、出版社の合併で本の内容には目を通さない主義の巻島と組むことになり、ことあるごとに衝突しながらも本の装幀を作り上げていく物語。最初はゲラを読む読まないだけでなく、本に似合う装幀を作りたいと思うわらべと、多少強引でも売上に繋がるような装幀を意識する巻島が毎回衝突して苦笑いでしたけど、試行錯誤していく過程で徐々に連携も取れるようになったり、二人がそんな装幀を意識するきっかけに思わぬ顛末が待っていたりとなかなか楽しく読めました。2巻まで刊行。
【#1日1文庫4日目】
エプロン男子(集英社オレンジ文庫)
エプロン男子 今晩、出張シェフがうかがいます
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山本 瑤/玉島 ノン 集英社 2017年04月20日頃
激務の仕事はうまくいかず、恋人にもフラれたデザイナーの夏芽。心身ともにボロボロの彼女がイケメンシェフが自宅に来て料理を作ってくれる「エデン」を紹介される物語。やって来た海斗の作る食事と優しさに触れ立ち直るきっかけを得た夏芽が、次々と出会うメンバーたち。エデンを立ち上げた相馬と参加する男たちが抱える事情と料理に賭ける想い。それぞれのやり方で求められた人たちのために真摯に向き合う彼らの料理には癒されそうで、でも接触禁止で恋愛禁止な契約という縛りがなかなか興味深かったです。2巻まで刊行。
【#1日1文庫5日目】
藤倉君のニセ彼女(一二三文庫)
学校一モテる藤倉君に自称・六八番目に恋をした尚。遠くから眺めるだけだった彼女が、ふとしたきっかけからモテすぎて女嫌いを発症した藤倉君の女除け役として「ニセ彼女」に立候補する青春小説。少女マンガのようにモテまくる藤倉を好きにならないという宣言から始まったニセ彼女生活。普通の男子生徒として扱ってくれる尚への安心感があって、一緒にいても苦にならない関係だからこそ少しずつ確実に変化してゆく二人の心境があって、ここまで拗らせるとどうなることか心配でしたけど、いつの間にか育まれていた大切なものに気づけて良かったです。
【#1日1文庫6日目】
筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。(宝島社文庫)
祖父が残した謎を解き明かすため、大学生の美咲が著名な書道家で端正な顔立ちながら毒舌家の同級生・東雲清一郎を訪ねる連作短編ミステリ。清一郎が書に対する知識を披露しつつ筆跡を分析して様々な事件を解決していくストーリーで、始めは美咲を邪険に扱っていた清一郎も、真っ直ぐな彼女と接するうち意外な優しさを見せたり、最後の酷い事件はもし清一郎がいなかったら...と思うと少しばかり暗澹たる気持ちになりましたけど、美咲のために事件解決に奔走したりと徐々に感化されてゆく過程がなかなか良かったです。4巻まで刊行。
【#1日1文庫7日目】
終わりの志穂さんは優しすぎるから(メディアワークス文庫)
東京のはるか南に位置する咲留間島。夏の間に画家として納得できる作品を描けなければ、筆を折ってこの島に骨を埋めようと覚悟して絵を描く森公一朗が、ミステリアスな雰囲気を持つ志穂さんと出会うひと夏の物語。なぜこのような場所にいるのか、いかにも訳ありに見える志穂さんと、島にやってきた志穂の妹・紫杏たちと交流しながら絵が完成に近づいていく一方、疑惑を深めていく公一朗が見つけてしまったモノの真実。できることなら二人がもっと違う形で出会うことができれば良かったですが、これはこれでこの物語らしい優しい結末だと思いました。
【#1日1文庫8日目】
ずっとあなたが好きでした(文春文庫)
バイト先の女子高生との淡い恋、転校してきた美少女へのときめき、年上劇団員との溺れるような日々、集団自殺の一歩手前で抱いた恋心、そして人生の夕暮れ時の穏やかな想いが綴られてゆく恋愛小説集。年齢や状況もバラバラな恋の行方と意外な結末。最初は普通の恋愛小説ではあまりない展開で新鮮だなあと思いつつ読んでましたが、途中から読んでいてうん?となって、だんだんその違和感に気づいて、最後でやられた!となりました。一気読みするには分厚いですが、その分手応えを感じた一冊で巻末の解説も必見。それにしても懲りてないな~(苦笑)
【#1日1文庫9日目】
捕食(創元推理文庫)
つらい過去があり男性が苦手な真尋と、彼女と知り合い急速に距離を縮めるいづみ。彼女と一緒なら自分は変われると信じていたはずの真尋に不審が芽生え、いづみの謎多き過去を追うサスペンスミステリ。過去を追う過程で明らかになってゆく、似た境遇だった彼女の選択とその周囲で姿を消してしまった人たち。何かあるたびにハナカマキリのように脱皮を繰り返してきた彼女がなり得たものは何だったのか。やや詰め込み過ぎた感もありましたが、ぐいぐい読ませる展開の末に迎えるいろいろ想像できてしまうエピローグは、この物語らしい結末に思えました。
【#1日1文庫10日目】
赤くない糸で結ばれている(角川文庫)
本屋さんのお姉さんが気になって1冊読み終わるたびに本を買う高校生、ふと父親の不可解な言動が気になりだした友人、ラジオ番組の投稿者が気になる秀才、高校時代の同級生に翻弄される女子大生、同性を崇める女子中学生を描いた連作短編集。最後に舞台裏として明かされてゆく心境がまた何とも複雑で、それぞれの物語は思わぬところにゆるく繋がっていたりもして、なかなかうまく行かない中でのわりとほろ苦い話が多かったりもしますが、けれどその中にもはっとさせられるような救いを見い出してゆく切なく優しい結末がなかなか印象的な物語でした。
以上です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。