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【Kindle無料&50%オフ】一二三書房 一二三文庫9月新刊配信キャンペーン (9/18まで)
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今回は各種オンライ書店で展開されている「KADOKAWA 秋のグルメ・旅小説フェア」「幻冬舎電本フェス本祭 」「一二三文庫9月新刊配信キャンペーン」の対象商品の中から30作品をセレクトしました。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
1.わが家は祇園の拝み屋さん(角川文庫)
わが家は祇園の拝み屋さん(1)
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望月 麻衣 KADOKAWA 2016年01月23日頃
とある理由から中学の終わりから不登校になってしまっていた16歳の小春が、京都に住む祖母・吉乃の誘いで祇園の和雑貨店「さくら庵」で住み込みの手伝いをすることになる物語。和菓子職人の叔父・宗次朗やはとこの澪人、不思議な依頼を受ける吉乃ら優しい人々と過ごす日々。様々な人との出会いがあったり依頼を一緒に手伝ったりして過ごすうちに、自ら立ち直るきっかけを掴むことができて良かったなあと思えました。著者さんらしい京都周辺の描写も多く、のんびりとした優しい物語の雰囲気はとても良かったので、続編に期待したくなるシリーズですね。
2.おいしいベランダ。(富士見L文庫)
竹岡葉月 KADOKAWA 2016年05月
ダメダメな一人暮らし生活を送る大学生の栗坂まもりが、ふとしたきっかけからベランダで植物を育てては食すお隣のイケメン園芸男子・亜潟葉二の真の姿を知り、一緒に育てるようになる物語。一人暮らしにありがちなトラブルに巻き込まれて葉ニに救われるまもり。育てたものを一緒に食べることで育まれてゆく二人の交流と、そんな葉二に変わるきっかけを与えた千鶴との再会。不安を抱えながらも自分の思いに正直になって、不器用なりに決意したまもりの奮闘ぶりや、変わってゆく葉ニのまもりを呼ぶ名前の変化はなかなか良かったです。
3.ひとり旅日和 (角川文庫)
人見知りで要領が悪く、紹介されて就職した先でも叱られてばかりの日和。そんな時に社長から気晴らしに旅に出ることを勧められ、旅好きの同僚に後押しされ一人旅を始める物語。初めて日帰りで行った熱海を皮切りに、千葉の水郷佐原、仙台、金沢、福岡と、時には失敗しながら遠くへ足を延ばしてゆく日和の気ままなひとり旅は楽しそうでしたね。それをきっかけにいろいろ変化の兆しが見えはじめて、状況が好転してゆく展開は良かったですけど、意外なところで繋がっていた縁がこれからどうなるのか、彼女の様子をもう少し見守ってみたいと思いました。
4.ビストロ三軒亭(角川文庫)
ビストロ三軒亭の美味なる秘密
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斎藤 千輪 KADOKAWA 2019年03月23日頃
セミプロの舞台役者だった神坂隆一が、姉・京子の紹介で来る人の望みを叶える魔法のような店『ビストロ三軒亭』でギャルソンとして働くことになるグルメミステリ。奇妙な客の荷物と残した料理の謎、仲違いを解決した七面鳥の栗詰め、チーズたっぷりな試食会にやってきた三人の大食い魔女の事情、シェフが作れないキッシュに隠された秘密。若きオーナーシェフ・伊勢が作る料理はとても美味しそうで、隆一をサポートしながら悩めるお客様に真摯に寄り添う個性豊かな先輩ギャルソンたちがいて、隆一の成長も最後の話のその後もまた読んでみたいですね。
5.最後の晩ごはん(角川文庫)
若手イケメン俳優の五十嵐海里は、ねつ造スキャンダルで活動休止に追い込まれてしまう。全てを失い、郷里の神戸に戻るが、家族の助けも借りられず……。行くあてもなく絶望する中、彼は定食屋の夏神留二に拾われる。夏神の定食屋「ばんめし屋」は、夜に閉店し、始発が走る頃に閉店する不思議な店。そこで働くことになった海里だが、とんでもない客が現れて……。幽霊すらも常連客!? 美味しく切なくほっこりと、「ばんめし屋」開店!
6.向日葵のある台所 (角川文庫)
シングルマザーで中学二年の娘・葵を育ててきた美術館に勤める学芸員・麻有子。極力関わらないようにしていた根深い遺恨がある母が倒れ、その母と突然同居することになってしまう物語。これまで散々母に甘えながらも、いざとなると妹の麻有子に押し付けようとする姉・鈴子。すれ違いばかりだった過去のわだかまりはあまりも重くて、そう簡単には解消できないよなあと感じましたが、それでも母に様々なことを思い起こさせる自分と娘の関係の積み重ねがあって、不器用なりにお互い少しずつ向き合えるようになってゆく結末には救われる思いがしました。
7.おうちごはん修業中! (角川文庫)
かなり出世は早いけど、彼氏も料理の作り方もさっぱりわからないまま34歳になってしまった独身の滝田和紗。健康診断でメタボ予備軍とされ一念発起で自炊生活に挑戦、利害が一致した同期の村越と一緒に料理研究を始める物語。仕事では有能な雰囲気が伺えるのに、なぜか二人ともびっくりな料理音痴ぶりでしたが、事あるごとに対抗心を燃やす同期の腐れ縁な二人の料理に対する切実な戸惑いと、周囲の人間模様を絡めてゆく展開は、ようやく向き合うようになった二人の関係が変化してゆく物語でもあって、随分遠回りしましたけど悪くない読後感でした。
8.京都烏丸のいつもの焼き菓子 母に贈る酒粕フィナンシェ(富士見L文庫)
京都烏丸のいつもの焼き菓子 母に贈る酒粕フィナンシェ
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古池 ねじ/イナコ KADOKAWA 2020年09月15日頃
無愛想でしゅっとした菓子職人と可愛い店員さんが営む和の食材を使った京都の小さな焼き菓子屋「初」。丁寧に作られた心が満たされるお菓子を愛する人々の物語。自分らしく生きたいデザイナー、常連のドイツ人大学教員とその教え子、お店のお菓子に魅せられて京都にやってきた就活生、そして店長と店員さんと両親のこと。食べたくなるようなお菓子の描写も素敵ですが、誰もが素直になれない一面を抱えていて、そんな不器用な登場人物たちのはっとするような繊細な想いを巧みな視点で浮き彫りにして、導かれてゆく結末がとても印象に残る物語でした。
9.茶寮かみくらの偽花嫁(角川文庫)
茶寮かみくらの偽花嫁(1)
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あさば みゆき KADOKAWA 2021年01月22日
いくら食べてもお腹が空く原因不明の虚弱体質による病欠続きで出席日数が足りず、ついに高校を留年した大島小鳥18歳。ある日行き倒れていたところを、助けてくれたミステリアスな料理人・坂頼兼と結婚……とは形ばかりの奇妙な同居生活を始める契約結婚譚。鎌倉を舞台に出会った人をその特異体質で頼兼ととともに救う一方で、なぜ彼はわたしを助けてくれるのか?という疑念を膨らませてゆく小鳥。まあ確かに彼は分かりづらいしもっともな疑問でしたけど、頼兼の作る美味しそうな料理を通じて心を通わせてゆく二人の関係はなかなか良かったですね。
10.藤倉君のニセ彼女(一二三文庫)
学校一モテる藤倉君に自称・六八番目に恋をした尚。遠くから眺めるだけだった彼女が、ふとしたきっかけからモテすぎて女嫌いを発症した藤倉君の女除け役として「ニセ彼女」に立候補する青春小説。少女マンガのようにモテまくる藤倉を好きにならないという宣言から始まったニセ彼女生活。普通の男子生徒として扱ってくれる尚への安心感があって、一緒にいても苦にならない関係だからこそ少しずつ確実に変化してゆく二人の心境があって、ここまで拗らせるとどうなることか心配でしたけど、いつの間にか育まれていた大切なものに気づけて良かったです。
11.隣の席の佐藤さん(一二三文庫)
地味でパッとしない佐藤さんと隣の席になった山口くん。隣の席で交流を積み重ねながら、二人の心境が少しずつ変化してゆく青春小説。始めは鈍くさいけど素直な佐藤さんに調子が狂いイライラしていたのに、いつの間にか彼女が気になってゆく山口くん。だからといってすんなり上手くいくわけでもなくて、ままならない状況でどう接するのがいいのか懸命に考える山口くんが微笑ましいですね。いろいろ遅れがちな彼女を気にかけて寄り添う山口くんの姿勢はカッコよくて、周囲にもバレバレで生温かく見守る二人のその後がまた読んでみたいと思いました。
12.蜜蜂と遠雷(幻冬舎文庫)
近年その覇者が音楽界の寵児となる芳ヶ江国際ピアノコンクール。自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以来、弾けなくなった栄伝亜夜20歳。楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳。完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。天才たちによる、競争という名の自らとの闘い。その火蓋が切られた。
【関連作品】祝祭と予感(幻冬舎文庫)
13.鳥居の向こうは、知らない世界でした。(幻冬舎文庫)
鳥居の向こうは、知らない世界でした。
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友麻碧 幻冬舎 2016年11月
複雑な家庭事情のために孤独な生活を送る女子大生・千歳。彼女が二十歳の誕生日に神社の鳥居を越え「千国」という異界に迷い込み、仙人薬師・零に拾われ彼の弟子として働くことになる物語。日本人が初代国王となって建国したどこか日本に似たところがある国「千国」。優しい人たちにも恵まれて新天地で生きてゆくことを決心した千歳が、王国の後継者争いに巻き込まれながらも自分らしさを取り戻し見出してゆく物語は、いかにも著者さんらしい美味しいご飯描写もあったりで、続巻が楽しみなシリーズですね。
14.コンサバター 大英博物館の天才修復士(幻冬舎文庫)
コンサバター 大英博物館の天才修復士
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一色 さゆり 幻冬舎 2020年06月11日
世界最古で最大の大英博物館。その膨大なコレクションを管理する天才修復士ケント・スギモトと、その助手を務めることになった日本人修復士・晴香が、美術品にまつわる謎を解いてゆくアート・ミステリー。すり替えられたパルテノン神殿の石板、なぜか動かない和時計の修理、札束が詰めこまれたミイラの木棺、そしてケントの父親の失踪。大英博物館の立ち位置などはなかなか興味深かったですけど、誰もがひとくせある大英博物館で働く人々やケントの関係者も絡めつつ、晴香を振り回すケントと二人で事件を解決していく展開はなかなか面白かったです。
15.ピカソになれない私たち (幻冬舎文庫)
選ばれし者だけが集まる、国内唯一の国立美術大学・東京美術大学油画科。スパルタで知られる森本ゼミに属することになった望音・詩乃・太郎・和美、それぞれの葛藤を描く青春小説。地方出身で天才的な画風の望音、技術はあるがこれといった特徴のない詩乃、美大生としての自分に迷いをもつ太郎、前衛的で現代的な作風の和美。厳しい森本の下で才能とは何か、過酷な現実を何度も突きつけられ、周囲を妬みぶつかり合うその厳しさを痛感させられましたけど、それぞれが悩んできたことに対する自分なりの解答を見出してゆくその結末はなかなか印象的でした。
16.残酷依存症 (幻冬舎文庫)
櫛木理宇 幻冬舎 2022年04月07日
東京・青梅で起きた凄惨な女子大生殺害・死体遺棄事件。時を同じくしてサークル仲間の三人が何者かに監禁され、犯人は彼らの友情を試すかのような指令を次々と下してゆくクライムサスペンス。互いの家族構成を話せ、爪を剝がせ、目を潰せ。要求が次第にエスカレートしてゆく中で変化してゆくリーダー格の航平、金持ちでイケメンの匠、お調子者の渉太、三人の関係性。さらに暴かれてゆく葬ったはずの過去の罪。読んでるともうクズとかいう次元ではない悪辣な彼らの所業に胸糞悪くなりますが、それを思うと因果応報なのでは…とつい思ってしまうような結末、そこで垣間見える彼女の影にまだまだ物語が終わらないことをはっきりと突きつけられました。
17.殺人依存症(幻冬舎文庫)
息子を六年前に亡くした捜査一課の浦杉。その現実から逃れるように仕事にのめり込む彼が連続殺人事件の担当となり、捜査線上に実行犯の男達を陰で操る一人の女の存在が浮かび上がるホラーミステリ。最悪の状況を脱した先に待っていた地獄。破綻した家族から逃れるように家を出て暮らす浦杉たちの調査で明らかになる、加担者たちの犯罪者意識のなさ、彼らを扇動し操って息をするように罪を重ねる女の壮絶な過去。どこまでも救いのない中で浦杉に突きつけられる衝撃の事実と極限の選択は業が深いと慄きました。
18.改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ (幻冬舎文庫)
バイト先として天才形成外科医・柊貴之のクリニックを紹介された麻酔科医・明日香が、次々と舞い込む奇妙な依頼や彼の過去の因縁に巻き込まれていく医療ミステリ。天才的な手腕以外はまるでダメ人間な柊は自分が納得した手術しか受けない主義で、そんな彼に明日香が振り回されながらもその生き様に感化されていく物語…かと思ったのですが、後半は柊と弟子・神楽を巡る因縁で状況が二転三転するスリリングな急展開でした。依頼解決パートも読みやすくて面白かったです。
19.プリズン・ドクター(幻冬舎文庫)
岩井 圭也 幻冬舎 2020年04月08日
奨学金免除のため刑務所の矯正医官になり、患者にナメられ助手に怒られ憂鬱な日々を送る是永史郎。そんなある日の夜、自殺を予告した受刑者が変死する医療ミステリ。矯正医官としての鬱屈に要介護状態の母の世話もあってどうすべきか失いかけていた史郎が、CTで発見されなかった病の解明、獄中で起きた突然死や不審死の真相、仮釈放受刑者の拒否問題などに挑む展開で、大学時代の友人たちや恋人の助けも借りながら公私の問題を解決していく中で、徐々に今ここで働いている意味を見出してゆくほろ苦さ混じりの結末にはぐっと来るものがありました。
20.麦本三歩の好きなもの(幻冬舎文庫)
大学図書館勤務の20代女子、麦本三歩のなにげなく愛おしい日々を描いた日常小説。優しい先輩や怖い先輩、おかしい先輩などに囲まれながら、気になることを見つけたり、ミスしても懲りずにマイペースな日々を送る三歩。単純で天然だけどだけど何も考えていないわけではなくて、時には苦悩したり誰かのために奔走したり、変わった行動に走って先輩たちをドン引きさせたり、物語としては特に大きな山や谷があるわけではないですが、そんな日々を送るよくも悪くも真っ直ぐでお茶目な彼女が、先輩たちに可愛がられるのも何か分かるような気がしました。
21.ぼくときみの半径にだけ届く魔法 (幻冬舎文庫)
ぼくときみの半径にだけ届く魔法
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七月 隆文 幻冬舎 2020年04月08日
売れない若手カメラマンの仁が偶然撮影した窓辺に立つ美しい少女・陽。難病で家から出られない彼女との出会いが二人の人生を奇跡のように変えてゆく物語。同級生の活躍に屈折した想いを抱いてしまっていた仁が、偶然出会った陽の依頼で様々な景色を撮って届けることになる運命の転機。それをきっかけに仁が活躍の場を広げてゆく一方で、難しい病に絶望を感じていた陽の逡巡にきちんと向き合おうとする育んできた二人の想いがあって。大変だった彼女の家族を思うとやや複雑な心情も残りますが、二人の出会いがもたらした奇跡には救われる思いでした。
22.花村遠野の恋と故意(幻冬舎文庫)
織守 きょうや/秋 赤音 幻冬舎 2020年08月06日
九年前一度会ったきりの美しい少女を想い続ける大学生の花村遠野。大学にほど近い住宅街で吸血種の仕業とも噂される惨殺事件が続いて、サークル仲間と現場を訪れた遠野が記憶の中の美しい少女にそっくりな姉妹と出会う物語。運命的な再会を果たした少女と繋がりを持ち続けるため、警戒されない言葉や距離感を慎重に選びながら事件解決に協力を持ちかける遠野。思わぬ方向に向かう事件にもブレない彼には感心しましたが、迎えた皮肉な結末は…本人的に結果オーライとはいえなかなか重いものを背負いまいましたね。そんな彼らのこれからが楽しみです。
23.片想い探偵 追掛日菜子(幻冬舎文庫)
片想い探偵追掛日菜子
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辻堂ゆめ 幻冬舎 2018年06月08日頃
好きになった推しの対象を徹底的に調べ上げて見守るストーキング体質な女子高生・追掛日菜子。しかしなぜか好きになった相手は次々と事件に巻き込まれ、彼女が事件解決の糸口を見つけ出すミステリ。舞台俳優、若手力士、天才子役、覆面漫画家から総理大臣まで、惚れっぽく法律ギリギリアウトな手法で見守る日菜子が推しのために奔走する探偵劇。彼女の好意が事件を引き寄せてるのでは?と思わなくもないですが、コミカルでテンポのいい展開は楽しくて、振り回されるお兄ちゃんは大変でしたが、それでも懲りない彼女の活躍をまた読んでみたいです。
24.ヘタレな僕はNOと言えない 公僕と暴君(幻冬舎文庫)
ヘタレな僕はNOと言えない
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筏田かつら 幻冬舎 2019年02月07日頃
前任者の指示で県内に住む凄腕の女職人・彬のもとへ向かった県庁職員・浩己。納品する代わりにあらゆる雑用を命じられ、いじられるのに彼女が気になってゆく年上美女×年下ヘタレの不器用な恋と仕事の物語。真面目で融通が効かず垢抜けない浩己と、彼をいじることが楽しそうな彬の面倒くさい距離感が絶妙で、強烈なインパクトがあった浩己の忘れられない過去や、彬にもいろいろ複雑そうな事情もあったりで、読んでいる方がもどかしくなる展開でしたけど、だからこそ遠回りしながらもいろいろなものが繋がった結末がかけがえのないものに思えました。
25.その日、朱音は空を飛んだ(幻冬舎文庫)
その日、朱音は空を飛んだ
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武田 綾乃 幻冬舎 2021年04月08日
学校の屋上から飛び降りた川崎朱音。自殺現場の動画がネットに流れ、明らかになってゆく自殺の原因。クラスメイトに配られたアンケートから見え隠れする歪められた青春ミステリ。動画撮影者、地味なクラスメイト、対立者、学年一位、恋人、幼馴染、そして本人の視点から浮き彫りになってゆく自殺に至るまでの構図。視点が変わるたびに見えてくるものも変わって、愚直なまでの想いがすれ違いからどんどん歪んでいって、それがどうにもならないところまで行き着いた先にあった真相と、最後に提示されたもうひとつの目次や結末はなかなか衝撃的でした。
26.石黒くんに春は来ない(幻冬舎文庫)
石黒くんに春は来ない
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武田綾乃 幻冬舎 2019年12月05日
典型的なスクールカーストが形成されたクラスで起こった、スキー教室における石黒君の遭難事件。平穏なようでいて歪な日常を取り戻した生徒たちに突然、意識不明の重体だった石黒君からメッセージが届く学園サスペンス。気ままに君臨するグループに事なかれの主義の教師、それによって生じる不登校や少しずつ溜まってゆく不満。それを巧みに扇動するものが現れることでガラリと様相が変わる狭い社会における群集心理の怖さが生々しかったです。途中から傍観者だった主人公恵美でしたけど、一度作られてしまった流れをどうにかするのは難しいですね。
27.出張料理みなづき 情熱のポモドーロ (幻冬舎文庫)
会社を辞めて本郷で下宿を営む祖母の家に転がり込んだ季実。無気力状態の彼女に同居人の桃子が「出張料理」の手伝いを頼むお料理小説。実家の両親と上手くいかないキャリアウーマン、大好きだったはずの料理が作れなくなってしまった専業主婦、入院した妻の代わりに夫に仕込むお弁当の作り方、そして桃子に多大な影響を与えた元旦那の義母との最後の食卓。料理を通じて強張った心に向き合って、根気強く解きほぐしてゆくような切なさも入り交じる優しい展開にはぐっと来るものがありました。腐れ縁の元旦那さんはいい人なんですけどね…そう簡単には元に戻れない、新たな関係を作り直せないのがもどかしかったです。
28.がらくた屋と月の夜話 (幻冬舎文庫)
がらくた屋と月の夜話
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谷瑞穂 幻冬舎 2017年11月
仕事も恋も上手くいかないつき子が、数合わせの合コン帰りに道に迷い、ガラクタに秘められた物語を売る河嶋骨董店に辿り着き、河嶋老人やその息子・天地たちと関わっていく連作短編集。一見ガラクタばかりの骨董品から生まれる物語と、それに魅入られた人たちの転機。一つ一つのお話も良かったですが、河嶋老人とのわだかまりを抱えたままの天地や、不器用で騙されてばかりいたつき子が、周囲の人たちも含めた関り合いの中で、手探りでお互いの信頼関係を育んでいくもどかしい展開がとても良かったです。
29.金継ぎの家 あたたかなしずくたち (幻冬舎文庫)
ほしおさなえ 幻冬舎 2019年10月09日
割れた器を修復する「金継ぎ」を仕事とする千絵。進路に悩みながらその手伝いを始めた孫の真緒が漆のかんざしを見つけ、それをきっかけに二人で千絵の故郷・飛驒高山へと千絵の記憶をたどる旅に出る物語。二人が思い切って出かけた旅の中で千絵が思い出してゆく、複雑な想いも絡む過去の記憶。真緒に助けられながら向かった過去の気がかりに向き合う旅では、様々な出会いがあったり漆に関わる現状もあって、それに単身赴任中だった真緒の母・結子との関係も絡めながら、母から娘そして孫へと確かに受け継がれてゆく温かな想いが印象的な物語でした。
30.年下のセンセイ (幻冬舎文庫)
中村航 幻冬舎 2018年04月10日頃
予備校に勤める28歳の本山みのり。後輩に誘われ生け花教室に通い始め、助手を務める8歳下の透と出会う彼女が、元カレの結婚式の帰りにバーでバイトをする透に再会する恋愛小説。変化のない日々をこれでいいのかという思いと、変化を恐れる気持ちで揺れるみのりが出会った年下の透。惹かれるけれど臆病になってしまうみのりと、進学で地元を離れるのに真っ直ぐに思いをぶつけてくる透のやりとりがドキドキして、もやもやしたりどうしようもなく恋しくなったり、二人を繋いだ生け花を効果的に使いながら綴ってゆく、可愛くて甘い素敵な物語でした。