読書する日々と備忘録

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異彩を放つ青春小説 講談社ラノベ文庫16選

個人的にいろいろ本をオススメする中で、レーベル別オススメ企画みたいなものを前々からやってみたいと思いその機会を伺っていたのですが、何となく今月は企画を立てる勢いがついているので、その勢いで第一弾として講談社ライトノベルの青春小説を16作品紹介したいと思います。

 

講談社ライトノベルは少し前から精力的に青春小説を刊行していて、まあ他では出ない出せないだろうなと感じる濃い作品がぽろぽろ刊行されています。必然的に玉石混交感も物凄くて読んでみてこれは…という作品にもよく当たりますが、印象的な作品も多くて個人的に注目しているレーベルの一つです。今回はそんな講談社ラノベ文庫から16作品を紹介したいと思います。

 

1.友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

 

 妙なこだわりで高校で友達ができない新藤大輔に、存在感のないクラスメイト澄田が持ちかけてきた困ったときに助け合う「友達いらない同盟」そんな同盟から始まる二人の物語。それぞれが複雑な家庭事情を抱えてはいるけれど、一見同じようでいてまるで対照的な新藤と澄田。グループから浮いた城ヶ崎も加わって三人で楽しそうに見えたのに、なぜか澄田が距離を置くようになってゆく危機的状況でしたが、本音で引き留めようとする新藤の提案はかなり無茶苦茶でしたね(苦笑)このレーベルでたまに出てくる不思議な魅力のある物語。全2巻。

 

2.公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

 

 昔からの幼馴染、瀬川エリカと吾妻千里。そんな二人とその友人たちを中心とした公園でのやりとりや日常が描かれる青春小説。お隣さんな二人の家の近くの公園で繰り広げられる仲間とダベったり野球をしたり、走り回ったり少し喧嘩したりのありふれた日常。でもそんな中にも幼馴染の二人が積み重ねてきた様々なことや、傍から見たら何で付き合っていないの?とついちょっかいを出したくなる二人の確かな絆があって、それでいて相手の知らないことに遭遇すると思わず動揺してしまう関係が微笑ましくて、何かじわじわとこみ上げてくるものがありました。

 

3.こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。 (講談社ラノベ文庫)

こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。 (講談社ラノベ文庫)

こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。 (講談社ラノベ文庫)

 

 成績優秀だがクズを自認する浅井悠馬が偶然クラス演劇主役を演じることになり、幼馴染の明日香とともにクラスの中心に君臨する荒川唯のグループに巻き込まれてゆく青春ラブコメディ。行動をともにする機会が増えてゆく唯の見た目とは全然違う純真さとひたむきさ。少しずつ惹かれてゆく悠馬が知ってしまった唯のらしくない秘密。何ともほろ苦い気持ちを抱えながら、それでも彼女のために奮闘する悠馬の姿は心に響きましたが、だからといって頑張れば報われるとは限らないのが現実で、そんな迷える彼らの行く末を続巻でまた読んでみたいと思いました。2巻まで刊行。

 

4.俺はアリスを救わないことに決めた (講談社ラノベ文庫)

俺はアリスを救わないことに決めた (講談社ラノベ文庫)

俺はアリスを救わないことに決めた (講談社ラノベ文庫)

 

 かつて孤独の淵で悪魔的魅力を持つ少女・有栖に救われ、遊び飽きたおもちゃのように捨てられた立川誠が、忘れられない彼女への複雑な想いに壊れてゆく物語。奔放で誠をいいように振り回し一方的に主導権を握る有栖との関係。彼女を憎み復讐を誓う一方で手に入らない彼女を渇望して壊れてゆく誠、そんな彼が出会った良くも悪くも正直で誠を諦めない少女・りる。どちらのヒロインもベクトルが違うだけで振り回されそうな予感しかしませんが、基本的にその三角関係が軸になりそうな展開の中、抗いがたい有栖との関係にどう決着をつけるのか続巻に期待。


5.真面目系クズくんと、真面目にクズやってるクズちゃん #クズ活 (講談社ラノベ文庫)

真面目系クズくんと、真面目にクズやってるクズちゃん #クズ活 (講談社ラノベ文庫)

真面目系クズくんと、真面目にクズやってるクズちゃん #クズ活 (講談社ラノベ文庫)

 

 クラスの立ち位置を気にする真面目系クズの八卜が、性格の悪い黒内に絶対見られたくない場面を見られ、それをネタに八卜の潜在的クズを開花させるべく一緒にクズ活することを強要される青春小説。二人がクズ活を続ける過程で関わってゆく聖人君子のような白庭さんと、幼馴染なのに学校では交流が断絶しているトップカーストの鈴堂。黒内によって次々と本性が暴かれてゆく一方、相反する複雑な想いや距離感に戸惑う心理描写は繊細で、らしさを自覚してゆく八卜と彼女たちの関係が描かれた今回も期待を裏切らない著者さんらしい怪作でした(褒め言葉)

 

6.彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)

彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)

彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)

 

 幼馴染の詩歌だけにはダメな一面も見せる美少女の彼方。そんな彼女が神社での事故から3人の付喪神の女の子を生み出してしまい、その3人と一人暮らしの詩歌が同居生活を始める物語。「詩歌への想い」「記憶」「食欲」の強い想いを失い、どこかよそよそしくなってしまった彼方。欲望に忠実な3人に振り回される詩歌。以前の駄彼方に戻って欲しいと思う一方で、彼方も加えて共に過ごし家族のような関係と感じるようになってゆく彼らは難しい決断を迫られましたが、彼らの強い絆を信じて応援したくなったちょっぴり切ない幼馴染たちの恋の物語でした。

 

7.二線級ラブストーリー (講談社ラノベ文庫)

二線級ラブストーリー (講談社ラノベ文庫)

二線級ラブストーリー (講談社ラノベ文庫)

 

 生徒会副会長の松尾家之助が片思いする書記の月本紗姫は、親友で会長の一ノ瀬秋にぞっこん。しかし秋の秘密を知ったことから話がややこしいことになっていく物語。斜め上の展開が続くうちにそれぞれが相手に寄せる尋常ならぬ思いも明らかになっていって、自分本位に手段を選ばず突き進んで泥沼にもなりますが、自分の思いや向けられた想いにきちんと向き合うことで見えてくることもありますね。紆余曲折の末に収まるべきところに収まった奇妙な三角関係。あくまで思いを貫こうとする三人のありようが、とても印象的な物語でした。

 

8.リア充になれない俺は革命家の同志になりました (講談社ラノベ文庫)

リア充になれない俺は革命家の同志になりました1 (講談社ラノベ文庫)

リア充になれない俺は革命家の同志になりました1 (講談社ラノベ文庫)

 

 入学した高校でスクールカースト最下層に身を置く白根与一が、担任から廃部にハンストで抵抗する美少女・黒羽瑞穂の監視役として図書部に入るよう命じられる物語。序盤は既視感を感じる設定やキャラ造形ですが、そこから明らかになってゆく少し学べば何でも人並み以上にこなしてしまう天才少女・瑞穂の境遇や、幼馴染である中禅寺さくらとの複雑な関係。一見こじらせた言動ばかりに思える瑞穂のありようは、それでいて白根も目をそらせないほど真っ直ぐでとても印象的でした。全2巻。

 

9.ハロー・ワールド ――Hello World―― (講談社ラノベ文庫)

ハロー・ワールド ――Hello World―― (講談社ラノベ文庫)

ハロー・ワールド ――Hello World―― (講談社ラノベ文庫)

 

 一人暮らしの高校生・朋生が、クリスマスイブのバイト帰りに、行き倒れの銀髪少女と出逢うお話。民間軍事企業の施設から逃げてきた、世間知らずな天才少女麗奈との拙いながらも微笑ましい生活。そして組織を裏切った麗奈の姉・純と三人で、「家族旅行」という名の思い出作りの逃避行。冬休みを舞台とした短くも濃厚な物語は、設定の斬新さこそなかったものの、それぞれの思いがうまく描写されていますね。2巻まで刊行。

 

10.双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

 

 幼馴染の葉月に告白できないまま、彼女やその双子の妹・水希と彼女たちの実家の喫茶店でバイトしている篝。ある日、水希が持ち出した古本から出てきた妖精キキに願いを勘違いされ、葉月ではなく水希の方と縁を結ばれてしまう物語。篝と水希が付き合っていると周囲に認識されている世界。最初は状況を解消しようと焦る篝でしたけど、水希が支えたからこそ乗り越えられた過去があって、弱音を吐けない彼女のために奔走する一面もあったりで、積み重ねによって少しずつ変化してゆく距離感や繊細な描写がとても良かったです。2巻まで刊行。

 

11.紙透トオルの汚れなき世界 (講談社ラノベ文庫)

紙透トオルの汚れなき世界 (講談社ラノベ文庫)

紙透トオルの汚れなき世界 (講談社ラノベ文庫)

 

 夢を叶えてくれる「夢の木」と超能者「継人」が密かに存在する世界。やさぐれたくなるような出来事に立て続けに遭遇した里谷リトが、差別と偏見に満ちた世界を変えようとする少女・紙透トオルと出会う物語。トオルら変革委員会の意図を阻止しようとする生徒会に巻き込まれたリトという構図、好きな女の子・小夜子への想いとトオルを救いたいと思う気持ちで揺れるリトを中心に描かれる人間模様は、やや錯綜気味ながらも相手を想う気持ちが感じられて、最後は良かったなと思える結末でした。2巻まで刊行。

 

 12.君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫)

君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫)

君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫)

 

 高校入学した今井健人が、小学校の頃素直になれずにいじめてしまった苦い過去を持つ相手で記憶障害を持つ明日葉待夢にまさかの再会を果たす物語。いじめていた健人を覚えておらず、周囲から浮きがちな待夢を助けるうちに惹かれ合ってゆく二人。だからこそ過去を隠していることに苦悩する健人。ふとしたきっかけで気づいた過去には動揺もありましたけど、一方で彼女をたくさん救ってきた今があって、「過去は変えられないけど未来を変えられる」と待夢の記憶障害の原因を突き止め、二人で乗り越えようと奔走する姿が心に響くとても素敵な物語でした。

 

13.自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

 

 ある朝、同級生の雨宮翼が列車へ飛び込み自殺を図るのに関与してしまった永瀬。その自殺が忘れられない彼が友人の深井から過去に戻れるカプセルを手渡され、やり直すために過去へ遡る物語。最初は彼女に関わらないと決意したはずなのに、逆に雨宮に関わる機会が増えてしまう永瀬。そんな彼に改めて突きつけられる「蝶は羽ばたかない」という事実。それでも当事者の変えようとする意志によって変わることもあって、多くの人にとってはさほど変わらない、けれど確実に変わったその結末に、一抹のほろ苦さを感じながらもどこか救われる思いがしました。

 

14.わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)

わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)

わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)

 

 憧れの同級生小夜原さんに告白したものの「顔面がジャガイモみたいな人とは付き合えません」と振られた紙白九炉。しかし彼女とうまくやらないと同じ日を繰り返すループに巻き込まれる青春小説。秘密を抱えた面倒くさい残念美少女・小夜原さんと仲良くなってゆく日々に突如現れた、もう一人の繰り返す要因・繊月仄火の存在。違う意味で面倒な仄火にも振り回されるようになってからの急展開にはびっくりしましたが、大切なものを自覚した九炉の決意と何度失敗しても諦めずにチャレンジし続けてようやく引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。

 

15.→ぱすてるぴんく。 (講談社ラノベ文庫)

→ぱすてるぴんく。 (講談社ラノベ文庫)

→ぱすてるぴんく。 (講談社ラノベ文庫)

 

 他人との関わりを避け、ぼっち高校生活を送っていた軒嶺緋色のネット恋愛の恋人スモモ。引きこもりだったはずの彼女が突如緋色の高校に入学してきて、リアルの彼女になってしまう青春小説。緋色の高校生活を一変させたスモモの存在と思い描くほど上手くいかないリアルな日常、そしてふとしたきっかけから対応を誤り炎上してしまう二人の関係。不用意な面もあったとはいえコミュ障には厳しい展開でしたが、ここで黒歴史だったはずの元カノの存在がなかなか効いてましたね。2巻まで刊行。

 

16.星空の下、君の声だけを抱きしめる (講談社ラノベ文庫)

星空の下、君の声だけを抱きしめる (講談社ラノベ文庫)

星空の下、君の声だけを抱きしめる (講談社ラノベ文庫)

 

小説が書けない文芸部員・シュウのスマホに、詠名という少女から届いた謎のメッセージ。絶望を感じていた詠名と交流を重ね、親しくなっていった彼女が実は五年前を生きる人だったという衝撃の事実に直面する恋愛小説。閉塞感しかない環境にいる詠名が書き上げた脚本で、文芸部を目の敵にする生徒会長と一緒に劇を演じることになったシュウ。物語の構図自体はとてもわかりやすかったですが、交わらないはずの五年の歳月を乗り越える彼らのやりとりはぐっと来るものもあって、危機的状況でも諦めなかった彼らが引き寄せた結末に救われる思いでした。

 

以上です。改めて並べてみると濃いラインナップだなあと思わなくもないですが、気になる作品があったらぜひ読んでみてください。