講談社 文芸作品最大70%OFFクーポン配布(12月21日(木)23:59まで)
今回はbookWalkerで2023年11月15日までに配信された講談社の文芸作品に使えるクーポンを配布中ということで、今年刊行された対象商品の中からおすすめ作品30作品をセレクトしてみました。気になる作品があったらこの機会に是非読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
講談社の文芸作品に使える40%OFFクーポン
クーポンコード:2312kdbgi40
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講談社の文芸作品を20,000円(税抜)以上購入で使える70%OFFクーポン
クーポンコード:2312kdbgi70
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1.なれのはて
ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動したテレビ局員の守谷が、異動先で出会った吾妻が祖母から譲り受けた一枚の不思議な「絵」の謎を追い、事情を確認するために秋田へ向かうミステリ。不思議な一枚の古い絵を展覧会で使うために、「イサム・イノマタ」という名前しかわからない謎の画家の背景を調べてゆくうちに明らかになってゆく、秋田の猪俣一族を巡る複雑な事情。終戦直前に秋田を襲った悲惨な空襲の様子や、猪俣家三代を中心とする何とも込み入った人間模様も描かれる中で、明らかにされてゆく確かな絆やそれぞれの結末があって、真相を追っていて少なからず影響を受けていた守谷たちのその後も印象的な物語になっていました。
2.星を編む
あれからどうなったのかとても気になっていた、『汝、星のごとく』で語りきれなかった不器用な登場人物たちのエピソードを丁寧に描いた三つの愛の物語。櫂と暁海を支えた教師・北原の過去と、彼に病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題。漫画原作者で作家となった櫂を担当した編集者二階堂と植木の二人が、時間を掛けてでも最後まで諦めずに繋いだ大切なもの。北原先生と暁海の関係の変化、そして周囲の人々のその後が描かれたエピソード。北原先生の過去エピや諦めずに奔走し続けた二人の熱い編集者たち、遠回りしながらも時間を掛けていい感じの夫婦になっていった二人の関係が丁寧に描かれていて、いろいろあったけれど良かったなと思えるその結末が読めてとても嬉しかったです。
3.レーエンデ国物語
多崎 礼 講談社 2023年06月14日
聖イジョルニ帝国の英雄ヘクトルの娘として生まれ、家に縛られてきたユリア。彼女が父と一緒に向かった呪われた地・レーエンデへの旅で、寡黙な射手・トリスタンと出会うファンタジー。街道を切り拓くために向かったレーエンデの地に魅了され、初めての友人を得て、仕事に従事して恋をするユリア。そんな彼女が期せずして様々な思惑が絡むレーエンデ全土の争乱に巻き込まれていく展開で、それぞれ秘密を抱えながら、自分のなすべきことを見据えて覚悟を決めるヘクトルやトリスタン、そして彼らの生き様を見て自らがすべきことを見出してゆくユリアの成長があって、激変してゆく状況に翻弄されながら、それでも各々がなすべきことをやり遂げる強さが心に響く重厚で読み応えのある物語でした。
4.うたかたモザイク
人生の喜怒哀楽を繊細に掬いあげる恋と愛と性と怪。どんな時も気持ちに寄り添う、甘くてスパイシーで苦くしょっぱい13編の連作短編集。プロポーズに自らが人魚だと告げる女性、敏くて鈍い男が世の中をBL世界にしたり、双子に嫁いだ似た者同士の提案、歳の離れた従兄への恋心、地下アイドルの同級生を密かに推すモデルの女子高生、ホームから落ちて死んで生まれ変わり妻に拾われた猫、亡くなった彼になりすますウィルスとの交流、一目惚れで買った真っ赤なソファが語る持ち主の30代など、積み重ねられてゆくどうにもならない想いが丁寧に綴られていて、もう少しうまく立ち回れればと思ってしまうくらい不器用でしたけど、変わらない一途な想いがとても印象に残りました。
5.真夜中法律事務所
〈その日から僕は、死者が視えるようになったのである──〉それは暗い夜のことだった。検事である僕・印藤累(いんどう るい)は、夜道に立ち尽くす幽霊の存在に気づいた。動揺する僕の前に現れたのは「案内人」を自称する親しげな青年・架橋昴(かけはし すばる)。彼はこの世に未練を遺す幽霊を、ある場所に導くというのだ。それは、真夜中にだけ開かれている弁護士事務所……その名は「深夜法律事務所」という。リーガルミステリの旗手が拓く新境地!
6.十戒
父と共に伯父が所有していた枝内島を訪れた浪人中の里英。島の視察を終えた翌朝に同行していた不動産会社社員が殺され、犯人から十戒を課されるミステリ。島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。殺人犯を見つけてはならないという戒律を課されて、島内の爆弾に怯えながら指定された3日間を過ごす中で起きる殺人。限定された状況で犯人いかに計画的に犯行を重ねていったのか。振り返ると確かに首を傾げた箇所がいくつかあって、二人を中心に進めてきたストーリー構成や、用意周到に完遂させた犯行が最終的にひとつに繋がってゆくその結末はお見事でした。
7.うるうの朝顔
水庭 れん 講談社 2023年06月14日
少しだけ変わった過去をもう一度体験できて、心のズレが直る不思議な朝顔の種「うるうの朝顔」。霊園事務所で働く青年・日置凪からもらった種が、出会った人々を少しずつ変えてゆく連作短編集。ふとしたきっかけから凪より「うるうの朝顔を託された、息子に手を上げた夫と離婚したばかりで鬱々とした日々を過ごしていた母、ずっと誰にも語らなかった過去の悔恨を抱えてきた男、大切なものを見失いかけていた男が抱える複雑な想い、亡くなった学校の先生の幽霊を見るようになった少女。託した人たちの変化の兆しを目の当たりにして、凪自身もまたずっと目を背けていた苦い過去に向き合うことを決意するその姿には、確かな未来への希望が感じられました。
島原湾に浮かぶ孤島、徒島にある海上コテージに集まった7人の男女と1人の漁師。先輩の無念を晴らすため密かに復讐の準備をしていた樋藤清嗣が、仇たちの死に直面してゆくミステリ。事前にグループに入り込んでいたことから、計画を目の前にして殺意が鈍り始めてしまう清嗣。そんな彼をあざ笑うかのように次々と殺される仲間たち。その惨劇は新たな始まりでしかなくて、一人の少女を中心に展開されてゆくもうひとつの事件があって、それぞれが抱えていた複雑な因縁が繋がって、見えてきた事件の全貌を解き明かす過程で決着をつけて、未来に新たな希望を見出してゆくその結末はなかなか面白かったです。
9.不実在探偵の推理
井上 悠宇 講談社 2023年06月28日
幼い頃から不思議なものが見えていた大学生の菊理現と、思い出のダイスに触れた途端、見えるようになった長い黒髪に白いワンピースの美しい女性。彼だけが認識する言葉を持たない不実在探偵が提示した正解から、真相を推理する水平思考ミステリ。何とも奇妙な事件を解決するため、親戚の刑事・百切と部下烏丸により持ち込まれる、藍の花を握りしめて女性が死んだ理由、宗教施設で血を流す大きな眼球のオブジェの原因解明と、そこから繋がる事件で判明した思わぬ真相。「はい」か「いいえ」だけを答える異色の探偵が提示する解答をもとに、個性的なキャラたちが真実にアプローチする展開はなかなか斬新で、全てが繋がってひとつの真実にたどり着くその結末には唸らされました。
10.ゴリラ裁判の日
カメルーンで生まれて人間に匹敵する知能を持ち、手話を介して人と会話もできるニシローランドゴリラのローズ。アメリカに渡り動物園で暮らすようになった彼女が、4歳の人間の子どもを助けるためにゴリラの夫を殺されてしまうリーガルミステリ。人と普通に会話をするローズがアメリカに見出した希望。子供を助けるために夫を銃で殺されてしまった理不尽に裁判を起こしたことで突きつけられる、人であることを前提とした法と倫理の現実。実際にあったアメリカで激しい議論を巻き起こした「ハランベ事件」をモチーフにしたストーリーで、まさかプロレスまで出てくるとは思いませんでしたけど、裁判を通じて垣間見える何とも皮肉な構図の変化、そして視点や立場が変わればまたいろいろと見えるものも変わってゆく展開とその結末には、いろいろと考えさせられるものがありました。
11.無限の月
中国のある町で起こった奇妙な出来事。脳科学をテクノロジーに昇華させ「時代」を作ったIT経営者の不思議な経験。全く関係なさそうな出来事が思わぬところで繋がってゆく近未来SFミステリ。中国で引き起こされた、真夜中にパソコンのディスプレイに「誰かたすけて」の文字が連鎖してゆく怪現象。相手の不倫が原因で別居をしていた夫と久しぶりに会った妻が感じた決定的な違和感。会わなかった間に一体何が起きていたのか。思わぬ形で繋がった運命的な邂逅と決定的な変容に直面して、危機を救うために奔走するダイナミックなストーリーの先には、さらに斜め上の結末が待っていて驚かされました。意欲的なチャレンジで鮮烈な作品を書き続ける著者の次回作に期待。
12.ハジケテマザレ
コロナで派遣切りに遭い、食い繋ぐためにイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」に辿りついた「ウルトラノーマル」な真野と、バイト仲間たちとの愉快で切実な日々を描いた連作短編集。恒例となってゆくベテランのマナルイコンビとの閉店後の深夜飲みから始まる、バイト仲間のYouTuber彼氏襲撃、先輩に誘われて初めてのクラブで爆踊り、カレーとDJに目覚めたフランス人、激辛フェスで後輩のプロポーズをプロデュース。一見好き放題やっているように見えるマナルイ先輩たちですけど、二人が牽引して引き起こす様々なエピソードを見ていると、さりげなく上手く行かないことを抱えているバイトたちのかけがえのない居場所となっていて、彼女たちを支えて立ち直らせてゆく弾けて楽しい日々がとても印象的な物語でした。
13.数学の女王
伏尾 美紀 講談社 2023年01月25日頃
新札幌に新設されたばかりの北日本科学大学で起きた爆破事件。道警本部の警務部に異動となった博士号を持つ異色のノンキャリ警察官・沢村依理子が事件に挑む警察ミステリ。思惑が透けて見える人事に複雑な思いを抱きながらも、突然班長を任されて公安との駆け引きの中で進めていく捜査。一体誰がどんな理由でこんな事件を引き起こしたのか。調べてゆく中で思わぬところから繋がってゆく因縁があって、明らかになってゆくその背景を思うと、当時とはまた違う意味で、今もまた厳しい状況ではあることを考えずにはいられませんが、才能があっても人間関係の構築が上手くないと、どうしても不遇な境遇に陥りがちなのは今も昔も変わらないですね…。
15.スモールワールズ (講談社文庫)
周囲には理解されづらい何とも複雑な思いを抱えている不器用な主人公たち。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作短編集。夫婦円満を装う主婦と家庭に恵まれない少年、出戻ってきた姉と再び暮らす高校生の弟、初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族、人知れず手紙を交わし続ける訳あり男女の関係、向き合うことができなかった父と子、大切なことを言えないまま別れた先輩と後輩、そしてもうひとつの物語を加えたそれぞれがゆるく繋がる世界の中で繰り広げられてゆく、目の前の現実に向き合って受け入れて、そっと寄り添うようになってゆく優しい物語はとても良かったですね。
16.タイタン (講談社タイガ)
野崎 まど 講談社 2023年01月17日
至高のAI『タイタン』のサポートで、人類は仕事から解放され自由を謳歌する未来。心理学を趣味とする内匠成果を世界でほんの一握りの就労者ナレインが訪れ、彼女に仕事を依頼する近未来SF。突如として機能不全に陥ったタイタンAIのカウンセリングを託されることになった成果。仕事という概念がない世界で様々なことを考察することや、働くことの意味、仕事しかしたことがないコイオスと共に旅する中で目にする様々な出来事、そんな中でコイオスの成長や彼女自身の心境の変化もあって、未来に生きるとはどういうことか、現段階ではあまりこういう世の中を想像できないですけど、いろいろと可能性を垣間見せてくれる物語でなかなか面白かったです。
17.法廷遊戯 (講談社文庫)
五十嵐 律人 講談社 2023年04月14日
法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義と織本美鈴。二人の過去を告発する差出人不明の手紙をきっかけに不穏な出来事が続き、意外な形で事件に巻き込まれてゆくリーガル・サスペンス。ある日を境に、二人の「過去」を知る何者かによる嫌がらせが相次ぐ状況で、清義が相談を持ち掛けたのは異端の天才ロースクール生・結城馨。思いもしなかった形で起訴された美鈴と、それを弁護することになった清義という構図になる中、人生を諦めたくなかった久我清義と織本美鈴の苦い過去、明らかになってゆく意外な事件の真相があって、突きつけられる司法界の問題と、それぞれの良心が問われる中で導かれてゆく結末の持つ意味がなかなか深い物語でした。
18.海神の娘 (講談社タイガ)
海神たる蛇神の抜け殻からできたという、世界の南の端にある「花勒」「花陀」「雨果」「沙文」の四つの島。領主を決める海神に仕える巫女王の託宣を巡る物語を描いた連作短編集。領主が海神の娘を娶ることで、島は海神の加護を得て繁栄すると言われ、領主と彼女たちの物語が描かれていて、かつて家を滅ぼした領主の息子に嫁ぐ黥面の少女。次男を偏愛する元海神の娘が犯した禁忌と領主を信じる娘。暴虐の君主が迎える必然の結末と、嫁いできた少女が密かに抱える辛い過去。それぞれに想い人がいる少女たちに下された託宣。真意も知らされず、様々な想いを抱えながら嫁いだ海神の娘たちが、苦難に向き合い、それを乗り越えて幸せになってゆく姿がなかなか印象的な物語になっていました。
19.傷モノの花嫁 (講談社タイガ)
猩猩に攫われ額に妖印を刻まれてしまい、陰陽五家の一家・白蓮寺家の跡取りとの結婚も破談した菜々緒。里中から蔑まれ死んだように日々を過ごしていた彼女が、皇國の鬼神と恐れられる紅椿夜行に見初められる傷だらけの二人の恋物語。猿面を付けていた菜々緒と出会い、美味しいご飯と高い霊力を評価して、その場で妻にすると宣言した夜行。里を出て皇都に向かった菜々緒が知ってゆく、紅椿家に代々受け継がれた忌まわしい秘密。それでも自らの居場所を得て癒やされる菜々緒と、甘やかす夜行の少しずつ変わる関係が良かったですけど、誤解からのすれ違いがあったり、過去の事件の真相が明らかになったり、彼女を巡る妄執に振り回されたりしても、一緒にそれを乗り越えてさらに絆を深めた二人のこれからが楽しみですね。
20.不可逆少年 (講談社文庫)
どんな少年も見捨てない若き家庭裁判所調査官・瀬良真昼。そんな彼が狐面の少女の凄惨な殺人事件に遭遇し、信念を大きく揺さぶられる青春リーガルミステリ。ネット上で中継されたナイフ、トンカチ、ロープ、注射器を狂気とした常軌を逸した犯行。十三歳の少女が犯した連続殺人事件が抱える不可解な共通点。被害者遺族の男子高校生を担当していたことから、思わぬ形で真相に迫ってゆく真昼。明らかになるたびに事件を巡る構図も大きく変わっていって、追い詰められてゆく少年少女の悲壮な決意には胸を締め付けられましたけど、意外な形で示唆されたもうひとつの可能性に、つい複雑な想いを抱いてしまう結末がとても印象に残る物語でした。
21.ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介 (講談社文庫)
ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介
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川瀬 七緒 講談社 2023年05月16日
東京の高円寺で小さな仕立て屋を営む桐ヶ谷京介。美術解剖学と服飾の深い知識で服を見ればその人のすべてがわかる彼が、少女殺害事件に疑問を抱き調べ始める仕立屋探偵ミステリ。京介が偶然目にしたテレビの公開捜査番組。10年前とはいえ遺留品として映された奇妙な柄のワンピースのあまりにも時代遅れのデザイン。服を見ればその人の受けた暴力や病気などまでわかる特殊な能力を持つ彼が、ヴィンテージショップの小春とともにそのわずかな手がかりから、犯人はおろか少女の身元さえわかっていない痕跡に寄り添い、未解決事件の真相に迫る展開はなかなか読み応えがあって面白かったですけど、結末はなかなかやるせなかったですね…。
22.推理大戦 (講談社文庫)
日本で見つかった、ある「聖遺物」。世界的にも貴重なその「聖遺物」をかけ、「推理ゲーム」が北海道で行われることになり、驚異の能力を持つ「名探偵」たちが、決戦の地に集う推理ゲームミステリ。世界的にも貴重なその「聖遺物」を手に入れるため、威信と誇りをかけ名探偵を探し始めた世界中のカトリックと正教会。アメリカ、ブラジル、ウクライナ、日本などの「名探偵」たちが、描かれたそれぞれのエピソードで見せつける特異な能力の数々。そんな聖遺物をかけた推理ゲームを前に起きた殺人事件。事件解決のために名探偵たちが持てる力を使って導き出してゆく推理の数々にはワクワクさせられて、その先にあった思ってもみなかった結末にはつい唸らされてしまいました。
23.人喰い鬼の花嫁 (講談社タイガ)
五大アヤカシが力を持つもうひとつの日本。母を亡くし義母と義姉に迫害される生活を続けてきた春日部莉子が、指名された義姉の身代わりとして酒呑童子という鬼の嫁に嫁ぐファンタジー。嫁を食い殺してしまっているのではと言われる相手に、ひっそりとお屋敷に向かった莉子に掛けられる「欲しかったのは、端からおまえだ」という酒呑童子の言葉。愛を知らなかった莉子が自分を認めてもらえて、一途に大切にしてくれる彼のもとで初めて愛を知っていって、自分のことを肯定できる居場所。他のアヤカシの嫁たちもそれぞれの愛のかたちを感じさせてくれて印象的でしたけど、たとえ何があっても変わらない愛を誓える揺るぎない二人の絆を感じさせてくれた、とても優しくて素敵な物語でしたね。
24.アイアムマイヒーロー! (講談社文庫)
アイアムマイヒーロー!
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鯨井 あめ 講談社 2023年06月15日
自堕落で未来に希望を見出だせない日々を過ごす大学生・敷石和也。10年ぶりの同窓会を抜け出た彼は、駅のホームから転落する女性を目撃。直後に意識が遠のき、気がづくと10年前の過去にタイムスリップしていたことに気づく青春SF小説。気がつくと眼前に小学生時代の無鉄砲な自分タカナリがいて、自身は見知らぬ子どもの和也になっている。そんな状況に困惑を覚えながらも事情を知る凛子に助けられ、仲間たちと不審な事件の解決に挑む和也。何も分かっていない過去の自分に苛立つ彼が相対することになる、追いかけていた不審人物の正体。否が応でも自分に向き合わざるをえない状況はなかなかしんどいなと思いましたけど、それでも今の自分に本当に必要なものは何だったのかに気づいて一歩を踏み出すその結末はなかなか良かったですね。
25.愛されなくても別に (講談社文庫)
学費と家に月八万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。そんな彼女が傍若無人な同級生・江永雅と運命の出会いを果たす青春小説。浪費家の母を抱えて友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす日々を送っていた陽彩。自分は母親に愛されていると思っていた陽彩が、訳ありの江永雅と出会ったことで気づいてまう衝撃の真実。それが当たり前だと思わされ、がんじがらめに囚われていた登場人物たちが抱えるしんどさはあまりに重く心揺さぶられましたが、だからこそその呪縛を断ち切り、未来に希望を見出そうとする彼女たちの決意を応援したくなる物語でした。
26.パンダより恋が苦手な私たち (講談社文庫)
夢破れて恋も仕事も超低空飛行なカルチャー雑誌の編集者・柴田一葉。憧れのモデル・灰沢アリアの恋愛相談コラムを自分で執筆することになってしまい、「恋愛」を研究する准教授・椎堂司の噂を聞き付け助けを求めるお仕事小説。一羽に丸投げしていかにも自分らしい文章を書けという灰沢アリアの横暴、交際経験が少なく自信がない一葉が頼った動物の求愛行動にしか興味がない変人・椎堂の講義をヒントに書かれるコラム、二人に振り回されながら交流を積み重ねてゆく中で、明らかにされてゆく意外な過去の繋がりがあって、逆境を見事に乗り越えてみせたアリアの矜持、そして一葉と関わっていくうちに少しずつ変わってゆく椎堂との関係がなかなか印象的な物語でした。
27.杜ノ国の神隠し (講談社文庫)
父母を亡くし、不思議な光に誘われて豊かな森にのびる真っ白な道を通りぬけた二十歳の大学生・真織。どこか神社のような暗がりの中で、生き神としてまつられる神王・玉響に出会う古代和風ファンタンジー。真っ赤な炎と袴姿の少年との運命の出会い。そこに忍び込んでいた千鹿斗に救われ、現代とはまた違った世界にたどり着いてしまったこと、杜ノ国における神事を司る水ノ宮と千紗杜を始めとする郷の関係を知ってゆく真織。彼女を追ってやってきた神王・玉響と不思議な繋がりで結ばれた真織が、この国の状況を変えるため、十年に一度行われる御種祭に向かう玉響の宿命を乗り越えるために一緒に立ち向かってゆく展開は、この物語ならではの世界観を感じられてなかなか良かったですね。
28.天狗と狐、父になる (講談社タイガ)
あやかしとして富と力を奪い続けてきた天狗・黒舞戒。そんな彼に仇敵の霊狐と人間の赤子を育てる試練が待ち受けるあやかし子育て物語。600年の間に人は山を拓きビルを立てたというのに、変わらない自分に飽き飽きして一念発起し、ボロボロの社から山を下りた黒舞戒。そこから長年争ってきた狐狸の宮杵稲と人間の子供・実華を育てる展開で、あやかしの力も子育ての前には無力な様子が微笑ましかったですけど、何だかんだで協力して一緒に問題を解決するようになって、実華だけでなくお互いのこともかけがえのない存在になってゆくその結末は良かったですね。
29.いつの空にも星が出ていた (講談社文庫)
全てホエールズ、ベイスターズを巡るエピソードで綴られる、ベイスターズを愛する登場人物たちを描いた連作短編集。物静かな高校の先生が連れて行ってくれたスタジアムの思い出。予備校に通う女子高生と青年の出会い。家業の電気店を継いだ若者の好きなもの。洋食店のシェフの父で応援団長だった祖父と初めて出会った少年野球ではピッチャーを務める息子。自分はファンというわけではなかったですけど、当時は父親の影響でよく観てましたし、低迷期とか関係なく応援し続ける複雑な気持ちとか、それでも心から好きなんだと思う気持ちが心に響くそんな物語でした。
30.時空犯 (講談社文庫)
私立探偵・姫崎智弘の元に舞い込んだ報酬一千万円という破格の依頼。6月1日がすでに千回近く巻き戻されている原因を突き止めるため、姫崎を始めとするメンバーが巻き戻しを認識することができる薬剤を口にするミステリ。情報工学の権威・北神博士によって集められたメンバーたち。そこでの思ってもみなかった再会と、再び6月1日が訪れた直後、他殺死体で発見された博士。博士を殺したのは一体誰なのか、その犯人探しに乗り出す展開で、繰り返し自体はわりとあっさりめでしたが、疑心暗鬼に陥ってもおかしくない状況の中、思ってもみなかった犯人の動機があって、甘酸っぱくて切ないもどかしさも絡めながら迎える結末はなかなか良かったですね。
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